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読者の皆様,本年も残り少なくなってきました.今年も人々を笑わせ,そして考えさせるような研究に対して贈られる「イグ・ノーベル賞」が米ボストン大学で9月18日発表されました.日本人では農業・食品産業技術総合研究機構の研究者らが生物学賞に選ばれました.受賞テーマは「シマウマのような縞模様を牛に描くと,吸血昆虫の付着が減るか」でした.すでに2019年に論文が発表されています.具体的には,黒毛の牛に白いスプレーで幅4〜5センチのしま模様をつけ,通常の黒い牛,黒いスプレーを用いた牛の3種類を比較しています.牛の右半身に付いたアブやサシバエの数を調べたところ,通常の牛は平均128匹,黒く塗った牛は111匹だったが,シマウマ模様のシマウシは55匹にとどまったそうです.また,牛が頭を振る・足踏み・尾振りといった虫よけ行動の頻度も約25%ほど低下したそうです.牛にとっても吸血昆虫は嫌な存在なようで,それを近づけないことで痛みやかゆみのストレスが減り,牛の発育に好影響があると期待されるようです.この研究は,一見ユーモラスに思えるテーマながら,畜産業における虫害対策・動物福祉・環境負荷低減への応用可能性が指摘されており,殺虫剤を使わない代替手段という意義も注目されています.
このニュースを聞いて,さっそくこれをネタにチャットGPTに編集後記を作ってもらおうと思い操作してみました.キーワードはイグ・ノーベル賞とシマウシとして600字で記載してもらうように依頼しました.そこで回答されたのは,イグ・ノーベル賞についてのありきたりの説明と沖縄の牛に関しての回答でした.これを見てAIも完璧ではないなと落胆しましたが,その2日後に同じプロンプトを試すとたいへん立派な編集後記が仕上がってきました.しかしソースは東海テレビのみのようで,単一情報からの回答でした.なぜ東海テレビ情報なのかは不明ですが,生成AIは深層学習の成果であるため,フレッシュなニュースには対応できないことがわかりました.つまり全く新規のアイディアで生成AIに文章を作ってもらおうとしても生成AIにその情報がないため的確な文章はできません.やはりレビュー論文が多い分野での生成AIは素晴らしい能力を発揮します.このように状況を把握したうえでAIをいかに使いこなすのかが大切なようです.

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