皮膚病診療 42巻2号 (2020年2月)

特集 見逃してはいけない薬疹

Editor's eye 馬場 直子
  • 文献概要を表示

 「この皮疹は薬疹でしょうか?」という他科からの質問に悩まされたことのない皮膚科医はいないであろう.他科の医師からは,皮膚科医なら薬疹かそうでないかはみただけで見当がつくと思われている節がある.薬疹の可能性は常に念頭に置かなければならないことはいうまでもないが,薬剤を使っているからといって,安易に「薬疹でしょう」といってしまうと,ほかの大事な疾患を見落とす可能性がある.常に鑑別疾患をできるだけ多く考え,それらを1つ1つ除外しながら薬疹だけが残ったら大いに疑い,詳細に検討するべきである.

 薬疹のタイプは多彩であるから,その分鑑別しなければならない疾患の種類も多い.そのことを意識して,今回は苔癬型,固定,紅斑丘疹型,蕁麻疹型,Stevens-Johnson症候群,TEN(中毒性表皮壊死融解症)などあらゆるタイプの症例の中から,それぞれの鑑別疾患を丁寧に除外していき,どのようにして薬疹を疑い,検査を進めていき確定診断に至ったのかがよくわかる報告を選んでみた.

  • 文献概要を表示

はじめに

 近年,抗PD-1抗体であるニボルマブおよびペンブロリズマブ,抗CTLA-4抗体であるイピリムマブ,抗PD-L1抗体であるアベルマブ,アテゾリズマブ,デュルバルマブなどの免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibiter:ICI)が開発,販売され,悪性黒色腫,非小細胞肺癌,腎細胞癌,ホジキンリンパ腫,頭頸部癌,胃癌,Merkel細胞癌といったさまざまな癌腫においてすでに保険承認されている.ICIの主な作用機序は,細胞傷害性T細胞を再活性化し腫瘍細胞を破壊する.これにより,腫瘍以外の全身の臓器に対しても,免疫関連有害事象(immune-related adverse event:irAE)をひきおこすことがあり,中でも皮膚障害は,もっとも頻度が高いirAEの1つである.

 今回われわれは,当科で皮膚irAEと診断した患者を対象とし,臨床的な皮疹の種類に着目して検討を行ったため,その結果に文献的考察を加え報告する.

  • 文献概要を表示

はじめに

 日本での麻酔中のアナフィラキシー発症頻度は0.01%で,その死亡率は4.76%である1).重篤なアナフィラキシーショックでは症状の進行は非常に早く,抗原曝露から循環虚脱と呼吸停止に至るまでの時間の中央値は薬物や造影剤などでは5分といわれている.

 全身麻酔下の手術中は自覚症状を確認できず,覆布や消毒薬の色などで皮膚症状もわかりにくく,アナフィラキシーの確定診断は困難である.それに加え,全身麻酔中は比較的短時間に多くの薬剤が使用されるため,アナフィラキシー原因薬剤の同定も非常にむずかしい.また,手術が中断されてしまうケースもあり,その後患者が安全に十分な治療を受けられるようにするためにはアナフィラキシーの診断と原因精査は必須であり,われわれ皮膚科医の役割は非常に大きいといえる.

  • 文献概要を表示

・アトモキセチン塩酸塩(ストラテラ)中止後に皮疹の新生がなく,薬剤リンパ球刺激試験(drug-induced lymphocyte stimulation test:DLST)が陽性,48時間・72時間判定でscratch-patch testが陽性であったことよりアトモキセチン塩酸塩による薬疹と診断した.自験例が同剤による薬疹の国内初報告である.

・アトモキセチン塩酸塩の貼布試験用試薬の至適濃度は10%in petでは濃度が高い可能性があり,今後の検討課題である.

(「症例のポイント」より)

  • 文献概要を表示

・ミノサイクリン塩酸塩により生じた右大腿術後創部と両眼周囲の色素沈着を経験した.

・右股関節術後創部の慢性感染症に対してミノサイクリン塩酸塩を3年間内服していた.

・内服中止後,いずれの色素沈着も褪色した.

(「症例のポイント」より)

  • 文献概要を表示

・固定薬疹は皮膚粘膜移行部に好発し,しばしば臨床症状が単純疱疹と類似する.自験例では臨床所見および経過から鑑別を要した.

・固定薬疹の診断に内服歴の問診は欠かせないが,頓服薬については患者が薬剤摂取を記憶していないこともある.

・自験例では皮膚生検は施行していないが,カルバマゼピンの内服誘発試験により皮疹の再燃を確認し確定診断とした.

・カルバマゼピンによる薬疹の報告は,薬剤性過敏症症候群,Stevens-Johnson症候群(SJS)や中毒性表皮壊死症など重症薬疹が多いが,自験例はカルバマゼピンによる固定薬疹であった.

(「症例のポイント」より)

  • 文献概要を表示

・UFT-E配合顆粒[テガフール・ウラシル配合剤(以下,UFT)]による光線過敏型薬疹で光線の作用波長はUVAとUVBの両者に反応がみられた.

・光線過敏型薬疹はその発症機序として光毒性反応と光アレルギー性反応に分けられるが,自験例では両者の鑑別が困難であった.

・UFTは消化器系悪性腫瘍,とくに腺癌でよく使用されている抗癌剤であり,自験例のような症例に日常遭遇する機会はまれではないので注意が必要である.

(「症例のポイント」より)

  • 文献概要を表示

・肺癌に対しニボルマブを投与した後に生じた扁平苔癬を経験した.

・汗腺周囲の稠密なリンパ球浸潤を認めた.

・併用薬であるレボチロキシンナトリウムには扁平苔癬型薬疹の報告があるが,中止せずに継続した.

・ニボルマブ投与終了の約6カ月後,無治療で軽快した.

(「症例のポイント」より)

  • 文献概要を表示

・手背の紫紅色扁平隆起性丘疹として生じ,Wickham線条の発見が診断に役立った.

・降圧薬の変更により約1カ月で軽快した.

・内服テストで症状再現に4~7日要した.

(「症例のポイント」より)

  • 文献概要を表示

・3例ともほぼ全身に瘙痒のある播種状紅斑丘疹型中毒疹が出現した.

・2例にパッチテスト施行し,1例陽性,1例陰性.DLSTは全例陰性であった.

・3例は造影剤使用後,4~6日後に皮疹が発生した.

(「症例のポイント」より)

  • 文献概要を表示

・symmetrical drug-related intertriginous and flexural exanthema(SDRIFE)と考えられる薬疹の1例を経験した.

・おむつ接触部に限局した印象的な分布と形状を示す紅斑から始まり,その後紅斑は間擦部優位に拡大したが,被疑薬の投与中止後は速やかに消褪し全身症状を伴わず経過良好であった.

(「症例のポイント」より)

  • 文献概要を表示

・ラモトリギンによる中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis:TEN)の1例を経験した.

・ラモトリギンとバルプロ酸併用例では,ラモトリギンの血中濃度上昇により,ラモトリギン単剤投与例と比較して,肝機能障害や皮膚障害の副作用のリスクが高くなることが知られている.

・自験例は皮疹軽快後も肝機能障害が遷延し,胆管消失症候群の併発の可能性を考えた.

(「症例のポイント」より)

  • 文献概要を表示

・急性リンパ性白血病の化学療法中の中毒性表皮壊死症(TEN)類似の症例を2例経験し,メトトレキサート(MTX)の毒性によるものと診断した.

・少量のMTXによる表皮壊死症の報告もあり,通常のTENとは機序が異なるものと考えられている.

(「症例のポイント」より)

  • 文献概要を表示

・ST合剤によるStevens-Johnson症候群(SJS)を経験した.

・表皮ケラチノサイトの壊死を認め,診断基準の主要所見をすべて満たしSJSと診断した.

・ステロイド内服,免疫グロブリン大量静注療法(IVIg)を含む集学的治療により治癒した.

(「症例のポイント」より)

  • 文献概要を表示

・セフェム系抗菌薬によるアナフィラキシー症例を経験した.

・プリックテストによって原因薬剤を同定し,その他の抗菌薬についても検討した.

In vitro検査である好塩基球活性化試験(basophil activation test:BAT)も施行した.

(「症例のポイント」より)

Editorial

患者ファースト 向井 秀樹

日常診療に役立つ豆知識

私の視点

私の歩んだ道

出会いに恵まれた人生 幸野 健

リレーエッセイ 私のワークライフバランス

皮心伝心

診察室の四季

着ぶくれ 斉藤 隆三

皮膚科のトリビア

第176回 浅井 俊弥

眠くなる痛み止め 石川 博康

--------------------

目次

次号予告

基本情報

24340340.42.2.jpg
皮膚病診療
42巻2号 (2020年2月)
電子版ISSN:2434-0340 印刷版ISSN:0387-7531 協和企画

文献閲覧数ランキング(
7月27日~8月2日
)