胸部外科 72巻5号 (2019年5月)

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標準的な全胸骨正中切開を行わない低侵襲心臓手術(MICS)は年々広まっており,手術死亡や合併症を減らすのみならず,輸血回避・入院期間の短縮および美容的にも有用であることが報告されている.低侵襲大動脈弁置換術(MICS-AVR)において,従来は胸骨部分切開(PS)が主要なアプローチであり,当科では2013年以降PSによるMICS-AVRを基本術式としてきた.しかし近年は,胸骨切開を行わない右傍胸骨切開・右前方小開胸などのさまざまなアプローチによるMICS-AVRも報告されており,当科でも2016年より基本術式を右腋窩小切開アプローチ(TAX)に変更した.われわれは二つのMICS-AVRについて比較・検討したので報告する.

まい・てくにっく

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Fallot四徴症の心内修復術は,その遠隔成績から現在は自己肺動脈弁温存術式を基本としているが,動脈下-漏斗部心室中隔欠損(VSD)やおおよそZスコア<-5(正常弁輪径の65%以下相当)の症例では,transannularパッチを用いた術式を選択する.右室流出路再建前に経右房でVSDのパッチ閉鎖を行い,可及的に壁側筋束,中隔筋束を切開する.

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僧帽弁閉鎖不全症(MR)に対する手術として,現在では弁形成術が主流となっている.僧帽弁形成術(MVP)における人工腱索による腱索再建は,従来の逸脱弁尖切除を中心とする形成法と比較しても遜色なく,良好な成績が報告されている.しかし,腱索の長さの決定法は一定しておらず,問題点の一つとしてあげられている.そこでわれわれは,Garciaら2)のfolding leaflet techniqueをもとに作成された新しい人工弁輪[Memo 3D ReChord ring:以下,ReChord ring(日本ライフライン社,東京)]を用いて簡便に人工腱索の長さを決定できる腱索再建を行った症例を経験し,良好な初期成績を得たので,文献的考察を加えて報告する.

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経腸栄養の有効性は高く評価されており,集中治療室(ICU)入室後は24~48時間以内に経腸栄養を開始することが推奨されている1~5).その理由は,長期絶食により腸管粘膜が萎縮し,腸内細菌が粘膜上皮を越えて体内に移行して感染を引き起こすこと(バクテリアルトランスロケーション),炎症性サイトカインの産生による全身の炎症や,臓器不全を引き起こすことなどがあげられる.腸粘膜の萎縮は侵襲および絶食後数時間で生じるので,早期の経腸栄養開始が感染症や臓器不全を低減し,患者の予後改善に寄与するとされている6).早期経腸栄養の主な禁忌例は消化管の機能障害であり,昇圧薬投与中でも血行動態が安定していれば投与が推奨されている4).

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現在,肺結核に対する標準治療は化学療法である.過去には胸郭成形術をはじめとする外科治療が積極的に行われてきた.骨膜外パラフィン充塡術が行われなくなって久しいが,術後晩期に発症する合併症の報告が散見される.術後40年を経過し,まれな晩期合併症である脊髄麻痺を呈した症例を経験したので報告する.

1枚のシェーマ

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われわれの第2例目の肺移植で,母親を生体肺ドナーとした生体肺葉移植である.患者は4歳で,骨髄移植後の移植片対宿主病(GVHD)による重症閉塞性肺炎をきたし,人工呼吸器が装着されていた.

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左冠状動脈肺動脈起始症(ALCAPA)は,左冠状動脈(LCA)が肺動脈(PA)から起始するまれな先天性心疾患である.LCAの低酸素飽和度や低血流によって心筋虚血が起き,左室拡大や二次性の僧帽弁閉鎖不全(MR)を発症するのが特徴であり,自然予後は不良である1).われわれは高齢者ALCAPAに対し,冠状動脈バイパス術(CABG)およびLCA入口部直接閉鎖術を施行した1例を経験したので報告する.

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ナトリウムグルコース共輸送体(SGLT)2阻害薬は,糖尿病患者の心血管イベントの発症を抑制することが報告され1),近年循環器領域でも注目されている経口血糖降下薬である.一方で,SGLT2阻害薬による正常血糖糖尿病ケトアシドーシス(euglycemic DKA)は,血糖上昇を伴わないDKAとして報告されており2),日本糖尿病学会の「SGLT2阻害薬の適正使用に関するrecommendation」にも2016年に追記された3).われわれは糖尿病合併患者の冠状動脈バイパス術(CABG)後のSGLT2阻害薬関連euglycemic DKAを経験したので報告する.SGLT2阻害薬の薬理効果と患者の病態を考慮し,周術期における適正な使用について警鐘したい.

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びまん性肺骨形成(diffuse pulmonary ossification:DPO)は,数mm程度の小さな骨形成が広範囲にわたって肺に認められるまれな疾患であるが,無症状であるため剖検例ではじめて発見されることが多い.われわれは生存中に胸腔鏡下肺生検で確定診断されたきわめてまれな特発性DPOの1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

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悪性腫瘍に異所性骨形成を伴う報告が腎癌,肝癌,乳癌,皮膚癌,大腸癌などでは散見されるが1),原発性肺癌において異所性骨形成を伴うことはまれ2~10)と報告されており,そのため異所性骨形成の様式や成因,意義に関しては不明な点が多い.われわれは異所性骨形成を伴った原発性肺癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

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炎症性筋線維芽細胞腫瘍(IMT)は炎症細胞浸潤の著明な腫瘍であり,世界保健機関(WHO)分類では間葉系腫瘍の1亜型として分類されている.その頻度は肺腫瘍全体の0.04%程度と報告1)されており,まれな疾患といえる.われわれは肺に多発した肺IMTの1例を経験したので報告する.

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乳び胸はなんらかの原因で胸管が破綻し,乳びが漏出して胸腔内に乳び胸水として貯留する疾患である1).胸部外科手術では,後縦隔の手術操作時の胸管損傷による医原性乳び胸2~4)や,リンパ脈管筋腫症(LAM)や悪性リンパ腫に併発する乳び胸6,7)を経験することは珍しくないが,原因不明の特発性乳び胸を経験することは非常にまれである.われわれは治療に難渋した特発性両側乳び胸の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

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前回はハノーバー医科大学での留学を紹介したが,今回はハイデルベルグ大学(2006年10月~2009年1月),イエナ大学(2009年2月~8月)における留学を紹介する.

連載 専門医に必要な画像診断技術 (第5回)

2 超音波法―ベッドサイドでリアルタイム情報

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気管支鏡にエコー診断装置を組み合わせた経気管支鏡的エコー法(EBUS)の現行システムは,人手・設備が整った状況で行うべき侵襲的な検査である.この点については本連載の趣旨(ベッドサイド,リアルタイム)とは異なるが,肺縦隔領域の検査法として胸部外科領域の専門医取得に必要な知識であり,概説する.

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はじめに 急性心筋梗塞後の広範な心室中隔解離から偽心室を形成した心室中隔穿孔(VSP)に対し,infarct exclusion法に準じた修復術を行って救命した症例を経験したので報告する.

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はじめに 胸部ステントグラフト内挿術(TEVAR)は,真性瘤をはじめ急性大動脈解離(AAD)に対しても有効性が報告されている.一方,TEVARの重大な合併症として逆行性Stanford A型大動脈解離がある.当院で逆行性Stanford A型大動脈解離に対するTEVAR後,遅発性に新しいエントリーを生じた症例を経験したので報告する.

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はじめに 一般的に肥満は,術中・術後のさまざまな合併症のリスク因子であるといわれている.高度肥満例における心臓手術では,手術時期や周術期管理の面でいまだ議論の余地がある.われわれは,body mass index(BMI)40を超える高度肥満の2例で,減量後に心臓手術を行い良好な結果を得たので,術後管理も含めて報告する.

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はじめに 感染性心内膜炎(IE)によりValsalva洞仮性動脈瘤を形成し,左房および右室流出路へ穿破して急速な心不全の悪化をきたした症例に対し,手術を施行して良好な経過が得られたので,文献的考察を加えて報告する.

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はじめに ペースメーカを含む植込み型心臓電気デバイス(cardiovascular implantable electronic devices:CIEDs)の感染は,難治性である1).CIED感染に併発する菌血症,感染性心内膜炎あるいは抜去術時の出血によって生命を脅かされることもあり,抗菌薬の選択,デバイスの抜去方法や時期,新しいデバイスの植込み時期などを的確にしかも迅速に決めなければならない.非結核性抗酸菌の中でも迅速発育性抗酸菌の一種とされるMycobacterium mageritense(M. mageritense)によるペースメーカポケット感染経験を報告する.

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日本胸部外科学会は,肺結核が猛威を振るっていた時代に,外科療法の需要を受けて1948年第48回の日本外科学会総会時に肺結核外科座談会を発足し,同年の11月に胸部外科研究会の形で設立することになり,2019年で72回を迎えることになります.しかし,肺結核に対する有効薬が開発されるにつれて外科療法の役割が希薄となり,心臓血管系の外科が主体を成すようになりました.呼吸器系では肺癌などの非感染性疾患を中心とした外科の需要が高まることを受けて,1984年に呼吸器外科研究会(3年後に学会へ昇格)が主催され,次世代への挑戦の場となってきました.今や,日本呼吸器外科学会も36年目の総会を迎えることになり,肺癌のみならず,移植外科などの幅広い分野で呼吸器外科医が活躍する場となっています.

基本情報

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胸部外科
72巻5号 (2019年5月)
電子版ISSN:2432-9436 印刷版ISSN:0021-5252 南江堂

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