胸部外科 71巻9号 (2018年9月)

今月の臨床

  • 文献概要を表示

心臓外傷は軽症から重症まで多様な病態を呈するが,重症例ではきわめて死亡率が高い.われわれは,過去18年間に7例の重症心臓外傷に対する手術を経験したので報告する.

まい・てくにっく

  • 文献概要を表示

先天性僧帽弁膜症では弁輪,弁尖,腱索,乳頭筋それぞれの形態異常が,単独もしくは複数箇所に存在する.弁形成手技も多岐にわたり,そもそも心臓自体が小さいこと,弁下組織の複雑な形態異常が多いことなどから弁形成術は決して容易でない1).本稿では代表的な僧帽弁形成手技としてKay-Reed法による弁輪縫縮術2)とePTFE 糸を用いた人工腱索3)について概説する.

  • 文献概要を表示

単心室症では房室弁自体の形成不全を合併することが多く,左室性単心室で41%,右室性単心室で76%の房室弁形態異常を認める.そのうち44%が房室弁逆流を発症する1).特に乳幼児期は成長に伴い時々刻々と血行動態が変化するため,房室弁の形態異常を伴う症例は弁逆流が出現しやすく1),心機能低下から心不全増悪をきたすため,房室弁逆流はFontan型手術の遠隔成績悪化の1要因にあげられている1).心機能を維持し,左房圧上昇に伴う肺動脈圧上昇を回避するため,房室弁に対する外科的介入が必要になる場合がある.一般に小児では房室弁に対する外科的介入は形成術が第一選択である.体格が小さく,使用できる人工弁のサイズが限られ,将来再手術が必須であること,術後の抗凝固療法の調整が成人に比してむずかしいこと,抗凝固療法中の外傷に伴う出血リスクが高いことなどがその理由である.しかし,必ずしも弁形成術が可能な症例ばかりではなく,房室弁置換術(atrioventricular valve re­placement:AVVR)が不可避となる場合も少なくない.このようにAVVRはFontan型手術の適応となる小児の房室弁機能不全に対して重要な役割を果たしているが,その適応をはじめ,適切な置換弁サイズ・耐用性,再置換の施行時期など明らかでない点が多い.

  • 文献概要を表示

心臓血管外科領域での癒着は再手術時に問題となり,特に心臓表面の癒着発生は再開胸時の心臓および大血管の損傷の原因となり,大出血のリスクとなる.その発生頻度は2~6%と報告されており,もし再開胸時に大出血をきたせば死亡率は39%になるとの報告もある1~4).また,大出血が発生すれば重篤な合併症発生が予想され,臨床成績と予後に多大な影響を与えることから,再手術における癒着剝離は長時間を要し,手術時間や麻酔時間の延長を余儀なくされている1,2,5).近年の心臓血管外科領域において,成長に伴って複数回の開胸を要する先天性疾患手術など,再開胸を要する手術はまれではなく,外科医の癒着剝離作業は日常的な課題となっている4,5).現在,心膜代用剤として既承認製品は複数存在するが5,6),癒着防止効果があるとする報告がある一方,癒着を軽減することができないとする報告も存在しており7),特に再手術例が多い先天性心疾患手術では癒着防止膜が必要とされている5,6).しかし癒着防止効果を評価するための標準となるような動物モデルは提示されておらず,各々で作成された動物モデルで開発した製品の解析・評価が行われているが,製品ごとの性能にばらつきも存在している6).そこでわれわれは,製品開発をすすめるために不可欠な要素である標準的な評価系の構築を行い,そのモデルによる既存医療用代用膜の癒着防止性能評価を行った.さらに,われわれが開発した生体由来組織からなる脱細胞化組織と組織接着剤(フィブリン糊)を併用させた代用膜の癒着防止性能評価も併せて評価することで,胸部外科領域における動物モデルの妥当性と機能評価に関する研究も行った.

1枚のシェーマ

  • 文献概要を表示

1994年9月の手術録からのシェーマである.67歳・男性,陳旧性心筋梗塞,狭心症の患者の手術であった.心機能がわるいうえに,上行大動脈に著明な石灰化があり,人工心肺を使用した通常の冠状動脈バイパス術(CABG)は困難と考えられた.1990年代から始まり,今でこそスタンダードとなった心拍動下CABG(OPCAB)であるが,当時はオクトパスのようなスタビライザーもシャントチューブもなく,どうやって心臓を固定するか,どうやって出血をコントロールするか,頭を悩ませていた時期であった.

  • 文献概要を表示

乳頭状線維弾性腫(PFE)は,比較的まれな原発性心臓腫瘍の中では粘液腫に次いで発生頻度が高い1)良性腫瘍である.PFEは致死的塞栓症を引き起こすことがあり,診断後はすみやかな外科的摘出が推奨されている.脳梗塞を発症し,精査の結果PFEと診断された3例を経験したので,報告する.

  • 文献概要を表示

心室中隔穿孔(VSP)は急性心筋梗塞(AMI)の重篤な機械的合併症であり,その発生率は低いが現在でも死亡率は高い.われわれは,右冠状動脈(RCA)を責任病変とする亜急性期心筋梗塞(RMI)に対する経皮的冠状動脈形成術(PCI)後,遅発性に生じた高位下壁のVSPに対し,待機的に経右房アプローチによる修復術を行い,良好な結果を得たので文献的考察を加えて報告する.

  • 文献概要を表示

食道アカラシアは原因不明の食道運動機能障害である.本邦の年間発症は人口10万あたり1人と比較的まれな疾患である.われわれは肺癌術後に合併したまれな症例を経験したので,報告する.

  • 文献概要を表示

多発血管炎性肉芽腫症(GPA)は,従来Wege‑ner肉芽腫症とされていた疾患で,上下気道や腎病変を有する全身型の場合は抗好中球細胞質抗体(ANCA)陽性を示し,比較的容易に診断可能であるが,ANCA陰性限局型の診断は困難な場合が多く,病理組織診断が決め手となる.われわれは胸部X線像で6年の経過中に消長を繰り返した結節陰影について,最終的に胸腔鏡下肺生検病理像から肺限局型ANCA陰性GPAと診断しえた1例を経験した.1995年以降の本邦報告7例の解析も含めて報告する.

連載 行ってきました! 海外留学 (第48回)

  • 文献概要を表示

2016年4月~2018年3月の2年間,インドネシア国立循環器センターHarapan Kita(Harapan Kita病院)へ留学させていただいた.

  • 文献概要を表示

はじめに 大動脈弁狭窄症(AS)と冠状動脈疾患(CAD)を同時合併する症例に対しては,通常,外科的大動脈弁置換術(SAVR)と冠状動脈バイパス術(CABG)の同時手術が選択されてきた.しかし,開心術ハイリスク重症ASにCADを合併した場合,治療方針の決定に苦慮することも多い.われわれは,心筋梗塞発症後で虚血残枝を有する開心術ハイリスク重症ASに対して待機的に心尖部アプローチ(TA)での経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)とCABGを同時施行した1例を経験したので報告する.

  • 文献概要を表示

はじめに われわれは,結核による左肺虚脱および高度な縦隔左方偏位をきたした症例に対し,僧帽弁置換術および三尖弁輪縫縮術を施行した.解剖学的異常や呼吸機能低下といった問題点があったが,良好な経過が得られたため文献的考察を加えて報告する.

  • 文献概要を表示

はじめに 冠状動脈瘤は経皮的冠状動脈形成術(PCI)の合併症としては比較的少ないが,PCI施行件数の増加に伴って遭遇する機会が増えている.右冠状動脈(RCA)近位部におけるPCI後の仮性冠状動脈瘤に対し,冠状動脈バイパス術(CABG)後にカバードステント留置で瘤閉鎖する二期的治療を行った症例を経験したので,報告する.

  • 文献概要を表示

はじめに 原発性心臓腫瘍の頻度は剖検例の0.02~0.3%であり,そのうち乳頭状線維弾性腫(PFE)は粘液腫,脂肪腫に次いで3番目の頻度で約8~10%である.左心室内腔より発生した場合,小さいとその発見は困難である.われわれは重症僧帽弁閉鎖不全症による心不全で入院した患者で,左室流出路にある小さなPFEを術前に発見し,摘出術を行ったので報告する.

  • 文献概要を表示

はじめに 特発性大動脈破裂は大動脈解離や大動脈瘤,大動脈の外傷を伴わず突然に大動脈壁が破裂する,きわめてまれでかつ予後不良な疾患である.病理組織学的にも動脈硬化性変化を認めない上行大動脈の破裂例を救命しえたので,若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 文献概要を表示

はじめに 脊椎固定術後慢性期に椎弓根スクリューによる胸部大動脈損傷が疑われ,外科的治療が必要となった症例を経験したので報告する.

  • 文献概要を表示

はじめに 十二指腸乳頭部癌の根治術後に肺転移のみで再発し,肺切除を行えた症例の報告は少ない.単発性肺転移で再発した十二指腸乳頭部癌に対して肺部分切除術を施行した症例を経験したので,文献的考察を含めて報告する.

  • 文献概要を表示

はじめに 肺非結核性抗酸菌症(pulmonary non-tuberculous mycobacteriosis:NTM)と原発性肺癌の同時発症例の報告は散見され,診断および治療法選択に苦慮することがある1,2).われわれは,左上葉NTMに対する薬物療法中に対側肺右上葉に発症した大細胞神経内分泌癌(large cell neuroendocrine carcinoma:LCNEC)を経験し,両病変に対して外科治療手術を施行したので報告する.

  • 文献概要を表示

はじめに 弾性線維腫は,高齢者の肩甲骨下部に好発する比較的まれな腫瘤性病変である.われわれは弾性線維腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

胸部外科医の散歩道

  • 文献概要を表示

小生,岩手医科大学呼吸器外科を平成30年3月31日付で定年退職し,胸部外科医も引退した.本欄はあくまでも「個人的見解」なので,お気に障った場合はご容赦を.

基本情報

24329436.71.09.jpg
胸部外科
71巻9号 (2018年9月)
電子版ISSN:2432-9436 印刷版ISSN:0021-5252 南江堂

文献閲覧数ランキング(
9月17日~9月23日
)