Frontiers in Alcoholism 8巻1号 (2020年1月)

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薬物依存症臨床でしばしば問題となってくるのはアルコールである。英国で行われた調査1)では,最も危険な薬物はアルコールであるという結果が報告され,アルコールは違法薬物と比べて安全であるとは決していえない。また,アルコールと薬物を併用することで,うつや飲酒運転など,さまざまな問題を引き起こすリスクが高くなってしまう。また断薬をしても,飲酒をすることによってアルコール依存症を併発したり,精神病症状が悪化して入院となる症例も少なくない。酩酊状態のときに,薬物の再使用に至ることも多い。ベンゾジアゼピン系薬剤とアルコールの併用も健忘や呼吸抑制などを引き起こすなど,非常に危険である。依存症臨床では,アルコールを「薬物よりは安全」とは考えず,「薬物と同様に危険である」と認識し,より健康度の高い生活を目指すような治療を行うことが重要である。「KEY WORDS」薬物依存症,アルコール,アルコール使用障害,覚せい剤,ベンゾジアゼピン

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DSM-5やICD-11で,ギャンブル障害が嗜癖行動として初めていわゆる「依存症」に分類され,社会情勢も相まって,ギャンブルの問題が関心を集めている。精神科医療に治療介入を求められる機会も増え,戸惑っている治療者も多いのではないだろうか。ギャンブル障害とアルコール使用障害は併存率も高く,相互に移行することもあり,それぞれのスクリーニングや必要に応じて簡易介入も行う意義があるかもしれない。ギャンブルやアルコールの問題のみではなく,背景にある生きづらさと両価性に注意してかかわることで忌避感情は減る。それぞれに有効な治療は共通するところも多いが,依存症を必要としない人生を支えるためにも医療だけで抱えるのではなく,本人や家族,さまざまな社会資源と協働して取り組むことが肝要であると考える。「KEY WORDS」ギャンブル障害,アルコール使用障害,依存症,嗜癖行動,生きづらさ

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アルコールとニコチン(タバコ)は嗜好品であり,適正に使用すればリラクゼーション効果などを介して生活の質(QOL)を豊かにしてくれる。一方で,いずれも依存性物質であることから,過剰な使用あるいは不適切な使用によって依存症を生じる。依存症ではクロスアディクションと表現されるように,複数の物質や行為に対して依存(嗜癖)が形成されることが多い。特にアルコールとタバコは日常的に併用されることが多いだけに,その問題は見逃されやすい。本稿ではアルコールとタバコを併用することの問題点や相互作用,併用に繋がる脳内報酬系の機能変化,新たな治療法など,最新の治見を交えて考える。「KEY WORDS」アルコール依存症,ニコチン依存症,クロスアディクション,治療報酬効果

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依存には,アルコール・薬物などの物質使用障害とギャンブル障害などの行動嗜癖があり,それぞれ共通点や異なる点がある。最近,ゲーム障害が新たに行動嗜癖に類されることとなり,物質使用障害,特にアルコールとの関連性についていくつかの研究結果が報告されている。アルコール依存症とゲーム障害では,臨床的には渇望など共通の症状もあるが,好発年齢や物質による化学毒性,ゲームによる視覚・聴覚的刺激など,異なる要因も多い。このような共通点や相違点などの特徴を踏まえつつ,これまで蓄積されてきた物質使用障害の知見が,新たな概念であるゲーム障害の診断や治療法の開発などに繋がるよう,今後もさらなる研究が発展していくことを期待したい。「KEY WORDS」物質使用障害,行動嗜癖,ゲーム障害,アルコール依存症,アルコール使用障害

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性的アディクションは,現在のところ公式の診断名ではなく,診断基準も定まっていない。現時点では,パラフィリア障害や強迫的性行動症など包摂する概念であると考えられる。また,性犯罪とみなされるものも多く,明確な被害者が存在することが他のアディクションと異なるところである。共通する症状としては,性衝動や性的行動の反復的な制御の失敗があること,望ましくない結果が生じているにもかかわらず継続していること,生活上の機能に重大な問題が生じていること,などが挙げられる。生物学的病因として性的刺激への反復的曝露による報酬系の感作,心理学的な病因としてストレスへの脆弱性やコーピングスキルの欠如,性や女性に対する認知の歪みなど考えられている。治療には薬物療法と心理社会的療法があるが,認知行動療法に一定のエビデンスが集積されている。性的アディクションには医療者側の偏見も大きく,意識の変革が求められる。「KEY WORDS」性的アディクション,パラフィリア障害,強迫的性行動症,性犯罪,認知行動療法

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盗む衝動に抗しきれずそのリスクに見合わない少額の盗みを繰り返すのが窃盗症(k/cleptomania)(本症)であり,行動嗜癖である。本症者は,反省しつつも繰り返す自身の窃盗の理由を明確に説明できない。16世紀の万引きに始まり,19世紀前半にkleptomaniaと命名されたこの障害は,現在も決して稀な疾患ではなく,東西の古典的記述やICD,DSMにおいても,衝動性と嗜癖性が本質であり,「窃盗症は衝動性の障害として発生し,嗜癖問題として進行する」3)。つまり犯罪でも精神障害でもあるといえる。物質使用障害に合併した摂食障害者の常習窃盗併存者の対応に迫られた赤城高原ホスピタルでは,以降,司法判断待ち時期の治療導入,クレプトマニア対応マニュアル,治療契約書作成,自助グループに準じた集団療法,先輩回復(途上)患者からのメッセージプログラム,返金作戦,サイコドラマ,裁判見学などを行っている。「KEY WORDS」窃盗症,万引き,欲動,衝動性,嗜癖性

「人」

第12回 竹元 隆洋
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鹿児島で断酒会の結成にかかわり,アルコール依存症治療に取り組んでいたが,ミーティングなどの集団療法だけでは一歩踏み込みが足りないと感じて,「内観療法」を導入したのが1975年であった。その技法と効果を病院のスタッフが身をもって感じ取れるように,1週間の集中内観を1人の男性看護師に体験してもらった。当時まだ創始者である吉本伊信先生も健在であり,直接面接指導を受けて帰ってきた第一声は「内観はすごいですね」という言葉であった。持病の腰痛が内観療法の1週間で治ったというのである。

アルコールと芸術

①映画(第3回) 森川 恵一
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こんにちは。松原病院の森川です。また,お会いしましたね。前回は,映画の伴奏音楽が印象的なアメリカ映画1作・日本映画1作を取り上げました。今回は,AAのメンバーから,リクエストの多かった不朽の名作2本を紹介します。是非,患者様や御家族様の心理教育や断酒プログラムの一助として,あるいは皆様の多忙な診療の合間の一服として,楽しんでいただけたら幸いです。まず1本目は,「28days」(2000年,アメリカ映画,日本未公開,DVDのみ発売)です。主演は,アクション映画「スピード」で,一躍人気者になったサンドラ・ブロックです。

若手ドクターの広場

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なぜこの人は依存症になってしまったのだろうか,その背景を知りたい,何とかできないのだろうか,というのが依存症診療とかかわりたいと思う純粋なきっかけでした。旅先でみかけるシンナーを吸う少年たち,密造酒を飲みながら運転するドライバー,日本でも駅のホームや道端で酩酊状態にて寝ている社会人は,もはやありふれた光景です。依存症のなかでも,アルコール依存症は特に日本では身近な依存症であり,まずそのようなアルコール依存症診療にご縁がありかかわらせていただいていること,またこのような原稿執筆の機会を与えていただいたことにお礼を申し上げたいと思います。今回,「日常診療で感じること」というテーマをいただきましたので,若手として診療を継続するなかで,日々どのようなことを感じているのかをお伝えしたいと思います。

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私が依存症の治療に携わるようになって早6年目になります。その間に多くのアルコール依存症およびギャンブル依存症患者さんを診察させていただき,患者さんにはそれぞれにさまざまな背景があるということがわかってきました。彼らの人生は百人居れば百様です。人生の9割以上を仕事に費やし,いつしか家族を背後に置き去りにしてしまい退職後の人生にはお酒という友人しかいなくなった方,仕事で異動になったら転勤先では心を癒してくれるものが何もなく,気が付けばアルコールこそが唯一の楽しみになってしまった方,幼少時から家庭は修羅場であり,ゆえに生きることの苦しみを癒すためにはお酒に依存するしかなかった方など,アルコール依存症の方それぞれにお酒に耽溺した理由があります。

Clinical Report

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アルコール依存症臨床場面において,若年女性アルコール依存症は数としては多くはないものの,中高年男性とは異なった特徴をもっており,治療に苦慮することも多い。筆者も以前,女性アルコール依存症病棟を担当していたときに,それまでの男性アルコール依存症治療経験が通じず,自信を喪失しかけたことがある。本報告では,その時に経験した若年女性アルコール依存症2例を通して若年女性アルコール依存症について考察したい。

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第54回日本アルコール医学会総会は,2019年10月4日(金)~6日(日)の3日間,札幌コンベンションセンターで開催されました。2019年アルコール・薬物依存関連学会合同学術総会としてアルコール関連問題学会と共同で開催され,900人ほどの参加がありました。プログラムも幅広く,内容は多様で充実していたと思います。シンポジウムは18題,教育講演は9題,特別講演3題,国際シンポジウム・一般演題121題(講演51・ポスター70)など,国内外から数多くの発表がありました。柳田賞は,東京医科歯科大学の高橋英彦先生が受賞されました。「依存症と脳機能・脳科学」の関心が高まっており,参加者は大いに興味を持たれました。

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奥付

基本情報

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Frontiers in Alcoholism
8巻1号 (2020年1月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:2187-9613 メディカルレビュー社

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