BRAIN and NERVE-神経研究の進歩 70巻12号 (2018年12月)

特集 主訴に沿う—俯瞰し収束する画像診断の目

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特集の意図

画像診断が目覚ましい進歩を遂げる一方で,精確な画像診断のためには患者からの「主訴」に立ち返ることが求められる。本特集では神経放射線のエキスパートたちにより,「主訴」に沿ってどのように検査を組み立てるのか,どのように画像と臨床現場とを結びつけるのかなど,臨床に役立つ画像診断技術を豊富な画像とともに語っていただく。

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「主訴に沿う—俯瞰し収束する画像診断の目」と題し,「①ふるえる」「②頭が痛い」「③二重に見える」「④人が見える」「⑤お腹が痛い」の5項目にわたり,現在の画像診断技術を駆使することによって,どこまで「主訴」の背景にある病態に迫れるか,を特集した。この総論では,各論を読むことで立ちのぼってくる著者らの真摯な日常を読者諸氏にお伝えし,「画像所見にできるだけ沿い,患者さんの困っていることに近づきたい」画像診断医の思いを伝えたいと考える。

ふるえる 原田 太以佑 , 工藤 與亮
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ふるえ(振戦)は日常臨床でしばしば遭遇する病態であるが,ふるえをきたす疾患は多岐にわたり,画像検査は診断に大きな役割を担う。MRIによる形態や信号変化,神経メラニン,鉄沈着による評価に加えて,核医学検査による心臓交感神経やドパミントランスポーターを評価することで病態の本質に迫ることが可能となる。本論ではMRIや核医学検査の役割や適応,読影の際の注意点について概説する。

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近年,頭痛を呈する代表的な疾患の1つである脳動脈解離の画像診断に非侵襲的かつコントラスト分解能の高いMRIが用いられることが多い。しかしながら,脳動脈解離の本態である動脈壁の異常を評価するには血流のアーチファクトに強く,壁を明瞭に描出する空間分解能の高い撮像法が必要であり,漫然とMRIを撮像しても病変を見落としかねない。本稿では脳動脈解離のMRI診断に関して,血管壁イメージングを中心に解説する。

二重に見える 森 墾
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物が二重に見える複視や眼球運動障害では,まず単眼性なのか両眼性なのかの確認から始まる。次いで,発症した年齢,急性,亜急性もしくは慢性などの発症パターンおよび,神経症状をはじめとするその他の症状の組合せを調べ,これらを根拠に当該病態の疾患カテゴリー分類や病変部位を推定する。そして,その検証手段として的を絞った画像検査を行い,疾患病理についての作業仮説を見直す。

人が見える 宮田 真里 , 掛田 伸吾
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今回,視覚情報処理のながれを概説し,誤って「人が見える」病態について複雑幻視を中心に述べる。幻視を認める代表的な疾患にレヴィ小体型認知症があるが,近年の研究により,その病態にシャルル ボネ症候群,大脳における視覚情報処理の異常,上行性神経伝達物質の異常などが関わっていることが明らかになってきた。中でも脳画像研究が果たしてきた役割は大きく,さまざまな仮説の証明だけでなく,近年では安静時脳内ネットワーク障害の関与など新たな仮説を提唱している。

お腹が痛い 松木 充
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頭痛や振戦,複視をきたす神経疾患と言えば,神経疾患を扱う医師にとっては鑑別すべき疾患が容易に挙がると思う。しかし,腹痛をきたす神経疾患と言えばどうだろうか。例えば腹痛などが間欠的急性に発症する急性間欠性ポルフィリン症が有名であるが,かなり稀な疾患で,そのほかはなかなか頭に浮かばない。そこで,感染症によって中枢神経障害と消化器障害を起こす疾患について代表的なものを症例をもとに解説する。また統合失調症をはじめとする精神疾患患者,パーキンソン病患者の慢性便秘は,日常臨床においてしばしば遭遇し,多くは保存的加療を行う。しかし,その中には早期診断・早期治療が予後に大きく影響を与える疾患が潜んでいる。そのような疾患の病態,画像診断について詳細に解説したい。

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大脳皮質に単位回路が繰り返した構造があるかは不明だった。われわれはさまざまな皮質領野において第Ⅴ層の神経細胞が細胞タイプ特異的なクラスター(マイクロカラム)を形成し六方格子状に並ぶことを見出した。マイクロカラムの細胞は共通な神経入力を持ち,類似した神経活動を示した。これらは第Ⅴ層がマイクロカラムを単位とした繰返し構造を持つことを示し,多数のマイクロカラムによる並列処理が多様な皮質機能を担うことを示唆する。

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症例は31歳女性,一過性の手指のしびれ感,構音障害を数回生じた。血液検査でアミラーゼ高値,血沈亢進,免疫グロブリンG高値,抗SS-A抗体陽性,脳脊髄液検査でわずかな細胞数増多と蛋白増加を認めた。MRI拡散強調画像で左基底核に高信号病変がみられ,MRAで多発脳動脈狭窄が疑われた。唾液腺造影,口唇唾液腺生検の結果,シェーグレン症候群(SjS)と診断された。これらの結果から,一過性脳虚血発作を思わせる一過性の神経症候,脳動脈狭窄とSjSに関連があることが推測された。

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はじめに

 2018年の京都の夏は38℃を超える酷暑であった。お盆も過ぎ猛暑が幾分やわらいできたいま,第23回世界神経学会議(京都大会,The XXII World Congress of Neurology:WCN 2017)実行委員会幹事の最後の仕事として,日本神経学会アーカイブズ平田幸一委員長のもと,WCN 2017報告書(アーカイブズ)の校正のお手伝いをしている。われわれの世代の記念すべき国際事業となったWCN 2017京都大会を,現在そして未来の日本神経学会員に紹介する充実した内容となっている。まもなく校了予定であり,本誌が手元に届く頃には皆様にご覧いただいているものと思われる。最終校正で内容をチェックしていると,大会の直前の準備と大会本番が懐かしく思い出された。WCN 2017の学会印象記を執筆する機会を編集部よりいただいたが,WCN 2017実行委員会幹事の立場から,WCN 2015以降の準備活動,そして過去最高の8,617名が参加し歴史的成功を収めた大会を振り返りたい。

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目次

欧文目次

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 日本臨床薬理学会の重鎮であられる,小林真一,長谷川純一,藤村昭夫,渡邉裕司の4教授責任編集『臨床薬理学(第4版)』が上梓された。臨床薬理学というと,「ADME」という言葉がすぐ思い浮かぶように,薬物の体内動態に関する学問というイメージが強い。もちろん,薬物動態は臨床薬理学の重要な一分野であるが,冒頭の「刊行によせて」において,渡邉教授が「臨床薬理学は,薬物とヒトとのあらゆる側面に関与する科学」であると述べているように,本書では,薬物の薬理作用とその機序といった基礎的な分野から,薬物動態,薬力学,実臨床における薬物の使い方,処方箋の書き方,そして新薬の開発プロセス,薬事行政に至るまで,臨床医,薬剤師,その他の医療スタッフが理解しておくべき臨床薬理学の多岐にわたる内容が丁寧に記述されている。2色刷りで読みやすく,本書はまさに日本臨床薬理学会が総力を挙げて作られた臨床薬理学のスタンダードブックと言える。

 言うまでもなく,薬物療法は医療の基本である。医学生が学ぶ標準カリキュラムである医学教育モデル・コア・カリキュラムにおいては,「生体と薬物」の項に,主に薬物動態,薬力学に関する履修内容が記載されており,また「加齢と老化」の項に,薬物動態の加齢変化,ポリファーマシーの記載がされているが,臨床薬理学の体系的な学習という点ではまだまだ不十分と思われる。厚生労働省による「臨床研修の到達目標」においては薬物療法に関する独立した項目はない。このような状況下で,医療の基本である薬物療法を,医学生,医師(特に研修医),薬学生,薬剤師の方々が深く学ぶために,本書は大いに役立つであろう。さらに,看護学生,看護師など,すべての職種の医療スタッフが薬物療法の基本を学ぶのに有用であることは申すまでもない。

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 発達障害者支援法が2004年に制定された。当時,発達障害の子どもを持つ親が相談に行ける場所は少なく,また,保育園・幼稚園,小学校,中学校と環境が変わるたびに障害を説明し理解と協力を求めるといった状況であった。早期の,そして切れ目ない支援を確立すべくこの法律が制定され,その効果もあって,児童の発達障害に関する認識は急速に広がり,早期発見,早期支援の取組みも格段に進んだ。

 一方で,こうした早期支援の網の目にかからずに大人になった人への対応は,いまだ研究や支援が大きく遅れている。支援が遅れたために社会適応がうまくいかないいわゆる「対応困難例」などについて取り扱う専門書は少なく,その一方で,マスメディアなどが発達障害者の関わった犯罪をセンセーショナルに報じるなど,間違った印象が一般の人々に伝えられている状況も看過できない。

今月の表紙 河村 満 , 岡本 保 , 菊池 雷太
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 今回で本連載は最終回です。3年にわたりお読みくださり,誠にありがとうございます。最終回ということで,本連載でわれわれが目指していたことを象徴する写真を選びました。写真だけみていただけたらそれがすべてなのですが,これで終わりにするわけにもいきませんので,少しだけ。

投稿論文査読者

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次号予告

あとがき 森 啓
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「されど主訴」

 本特集号では,難解な事例の多い脳神経系疾患に関連する主訴に沿った診断をどのように導き出すのかという臨床医一般の疑問について,脳画像診断という視点から丁寧な説明と多数の図表を含む原稿を集めることができた。その結果,悩みの多い諸症例の具体的症例を取り上げる中で確定診断に至る主訴そのものについての意義を探る座右の書ともなるべき解説本となっている。

 さて,読影力とは何か? 脳画像を精緻に読み解く技術,知識と思いきや,カルテに書かれた主訴等の臨床所見を精読することを指摘する放射線科医が多いことに気づく。臨床の場では,患者の話に耳を傾ける,患者の主訴に学ぶとは頻繁に言われていることであるが,実は患者と触れあって話をする機会が限られた放射線科医がカルテに書かれた主訴に耳を傾けていることが多く,病院の中央部門として各診療部門には欠かせないパートナーであることは言うまでもない。

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基本情報

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BRAIN and NERVE-神経研究の進歩
70巻12号 (2018年12月)
電子版ISSN:1344-8129 印刷版ISSN:1881-6096 医学書院

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12月3日~12月9日
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  • 第1位 ふるえる 原田 太以佑,工藤 與亮 BRAIN and NERVE-神経研究の進歩 70巻 12号 pp. 1331-1340 (2018年12月1日) 医学書院
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  • 第5位 主訴に沿う—俯瞰し収束する画像診断の目 德丸 阿耶 BRAIN and NERVE-神経研究の進歩 70巻 12号 pp. 1321-1329 (2018年12月1日) 医学書院
  • 第6位 お腹が痛い 松木 充 BRAIN and NERVE-神経研究の進歩 70巻 12号 pp. 1369-1378 (2018年12月1日) 医学書院
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  • 第9位 急性弛緩性脊髄炎 吉良 龍太郎 BRAIN and NERVE-神経研究の進歩 70巻 2号 pp. 99-112 (2018年2月1日) 医学書院
  • 第10位 音楽性幻聴 二村 明徳,河村 満,小野 賢二郎 BRAIN and NERVE-神経研究の進歩 70巻 11号 pp. 1147-1156 (2018年11月1日) 医学書院