BRAIN and NERVE 59巻9号 (2007年9月)

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はじめに

 若年性パーキンソニズム(JP)という言葉は最近あまり使われなくなったが,l-dopaの著効するパーキンソニズムが,若年に発症した患者群を総称する言葉である。脳内のドパミン(DA)神経細胞が変性しDAが欠乏するという病態に関しては,特発性パーキンソン病(PD)と共通するが,臨床的には筋強剛が目立ち典型的な静止時振戦が少なく,l-dopaが比較的少量でも著効する一方,①治療後早期に,wearing offによる症状のup-downが顕著になり,peak of doseにジスキネジアが誘発される,②家族集積性が高い,③進行が遅い,④精神症状や自律神経症状を合併しない,などPDとは異なる特徴を呈する1)。病理学的にも青斑核に病変がないとか,Lewy小体が認められない症例があるなどの差異が知られている2,3)。JPの知的機能,認知機能について検討した文献は少ないが,Limaら4)は21例中1例も知的機能障害を認めなかったとし,Gershanikら5)も集積症例すべてにおいて,知的機能も認知機能も問題なかったと述べている。さらにJPではdopaminergic drugによって誘発される精神症状も,PDに比べると稀であることが報告されている1)。これらは今から20年以上も前の研究なので,ここでいう認知機能とは遂行機能や記憶について測定されたものを意味する。

 筆者は数年前より,PDの社会的認知機能に関して研究を行っている。社会的認知機能とは,他者の意思や感情を推測したり,それに対して自己の生存に必要な意思決定が行われたりしながら,円満な対人関係を形成・維持していくために必要な能力のことである。従来取り上げられてきた遂行機能障害や手続き記憶障害などの他にも,PDでは社会的認知機能の障害が認められ,それがPD患者の気分障害とも関連するのかもしれない6)。本稿では,社会的認知機能のうち表情認知と意思決定について,PDとJPを比較検討し,若干の考察を加えて報告する。

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はじめに

 パーキンソン病(Parkinson disease: PD)の視覚性認知については,さまざまな障害が報告されている。その中にはかなり確立したものもあるが,真に視覚の問題なのか見極めにくいものも含まれている。それらの障害の原因となる病巣については,不明な部分がさらに多い。しかし,過去の研究の積み重ねにより,ある程度の見通しは語りうる段階にある。以下,PDの視覚認知障害について,

 Ⅰ.視覚経路とパーキンソン病の病理変化,

 Ⅱ.要素的視覚の障害,

 Ⅲ.複雑な視覚認知の障害,

 Ⅳ.複雑な視覚認知障害と脳機能画像,

 Ⅴ.中間段階の視覚認知障害,

 Ⅵ.中間段階の視覚認知障害と脳機能画像,

の順で述べる。

 近年,レビー小体型痴呆(dementia with Lewy bodies: DLB)と呼ばれる疾患が注目されている。これは,痴呆に加え,動揺する認知障害,パーキンソニズム,幻視,転倒,失神,一過性の意識消失,抗精神病薬に対する過敏性,系統的妄想,うつ,レム睡眠行動異常などを特徴とする疾患である。一方,PDも,経過とともに認知障害を併発し,痴呆と呼べる段階に達する例の少なくないことが明らかになっており,痴呆を伴うパーキンソン病(Parkinson disease with dementia: PDD)と呼ぶ。DLBとPDDの特徴は共通1)で,病理学的にも共通性があり,同じ疾患の表現型の違いにすぎないという考え方が優勢である2)。以下の記述では,痴呆のないPDについてを中心に述べるが,必要に応じてPDDやDLBでの研究結果を援用することにする。

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はじめに

 脳血管障害後に生じるうつ病・うつ状態(以下,両者を含めて広義で用いる場合は「うつ」と言及する)は,脳卒中後うつ病post-stroke depressionとして近年注目されているが,脳血管障害と同様,神経変性疾患においても,脳の器質的な変化と関連して,うつが生じることがある。このような器質性のうつは,国際疾病分類第10版(ICD-10)1)(Table1)においては,「症状性を含む器質性精神障害」(F00-F09)のF06コードの中でF06.3器質性気分(感情)障害に分類されている。神経変性疾患の中で有病率の高いパーキンソン病(Parkinson disease:PD)は,振戦・筋固縮・寡動などの運動症状を中核とする病態であるが,認知機能障害や精神症状といった非運動系の症状を伴いやすい。PDで目にする精神症状としては,幻覚・妄想,せん妄,睡眠障害・レム関連行動障害,うつ,アパシー,不安・パニック,興奮,強迫,性行動異常,常同行為,病的賭博,抗パーキンソン病薬の乱用など,多岐にわたる。Fig.1にNeuropsychiatric Inventory(NPI)を用いて評価したPDの精神症状の出現頻度を示す2)。このようなPDの精神症状の中で最もよくみられる問題はうつであり,おおむね20~40%と推測される。しかし,後述するように,典型的な大うつ病の病像を示すものは多くはなく,むしろ半分以上は気分変調症や小うつ病,あるいは発動性減退を前景とするアパシー(無感情)といった状態像に該当する。本稿では,PDにおけるうつとアパシーの診断,評価の要点を述べ,特にアパシーに関するとらえ方や責任病巣について,やや詳しく述べることとする。

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Ⅰ.パーキンソン病患者の動作・行動観察

1.L-DOPA治療開発で恩恵を受けた症状

 1968年(本邦)に始まったL-Dopa治療を魁として,それまでの固縮と振戦にのみの効果を期待して使われてきた抗コリン作動薬の治療に比べて,その後のパーキンソン病治療は格段の進歩が図られ,薬剤治療に限ってもあらゆる薬理作用を駆使して脳内ドパミン補充ないしドパミン機能の補完が確実に図られるようになった。これによって患者は相当の運動機能の補償がなされ,長く日常生活を維持することができるようになった。同時にドパミン系作用薬剤治療の経験は,パーキンソン病の症候理解と大脳基底核機能の理解に大きな示唆を与えたことが特筆されよう。

 有効な治療のおかげで,われわれは既にパーキンソン病病態の自然史をみる機会を失ったが,経過とともに顕在化する筋強剛(固縮)とこれに伴う関節硬縮,およびJames Parkinsonが原著1)で強調した,末期まで執拗に患者を苦しめる振戦とこれらに伴う運動障害などは,的確な治療の下では確実に軽減され,これらの徴候は長期治療例の多くでほとんど消退する。

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はじめに

 痛覚は,身体に傷や何らかの障害が起きたことを生体に認識させる重要な感覚情報である。しかし,末期癌や糖尿病,帯状疱疹治癒後の慢性化した痛みは,患者のQOLを極度に低下させ,その原因疾患の治療に対しても悪影響を及ぼすことから,適切なペインコントロールが必要とされるが,既存の鎮痛薬である非ステロイド性抗炎症薬やモルヒネが奏効しないことが大きな問題となっている。このような慢性疼痛は,神経系の損傷や機能異常に起因している場合が多く,神経因性疼痛と呼ばれ,今現在も十分な疼痛緩和を得る治療法はなく,全世界で多くの患者が痛みに苦しんでいる。

 末梢に加えられた痛みを含む感覚刺激は,末梢と脊髄を結ぶ一次求心性感覚神経の興奮を介して脊髄後角の神経細胞へ伝達され,さらに上位の視床や大脳皮質神経細胞へと連絡され,特定の感覚として認知される(Fig.1)。一次求心性神経と脊髄後角は,神経損傷によって多種多様な変化を劇的に起こす場であり,神経因性疼痛のメカニズムを紐解くうえで重要な鍵が隠されているとされている。従来,疼痛基礎研究のほとんどが神経細胞での変化に焦点をおいたものであったが,非神経細胞,すなわちグリア細胞に関する研究も神経損傷によって形態的に著しく変化することが知られていた。特に脊髄後角では,グリア細胞であるアストロサイトやミクログリアが神経損傷によって形態的に著しく変化する(後述)。しかし,それらの神経因性疼痛に対する因果性は長らく謎であった。筆者らは,細胞外ATPとその細胞膜受容体であるATP受容体のサブタイプであるP2X4受容体が,脊髄のミクログリアに発現し,神経因性疼痛に深く関与していることを明らかにした。このP2X4受容体の役割から,それまで疼痛メカニズムに入る余地もなかったミクログリア細胞が,神経因性疼痛における重要な細胞であることも明らかとなり,脊髄ミクログリアのP2X4受容体を中心とした,新しい神経因性疼痛の発症維持メカニズムが提唱されている。そこで本稿では,その新しい疼痛機序について,最近の知見を含めて概説する。

片頭痛前兆の神経生理学 柴田 興一
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はじめに

 片頭痛における視覚性前兆は5分以上かけて徐々に進展し,多くは20分ほど持続し1時間以内に消失するのが特徴で,閃輝性暗点(scintillation scotoma)として知られている。陽性徴候(刺激性)である閃光様のきらきらした光・点・線に続き陰性徴候(抑制性)である暗点や同名性の半盲を呈することが多い1)。視野の異常は網膜部位再現性(retinotopic representation)があり,視覚一次中枢(V1)に関連して出現すると考えられてきた。

 前兆のある片頭痛(migraine with aura:MA)の亜型である家族性片麻痺型片頭痛(familial hemiplegic migraine:FHM)の遺伝子解析や分子生物学の近年の研究成果にはめざましいものがある。一方,視覚性前兆を自覚するものは約20%で典型的な症状は必ずしも多くはないが,片頭痛の病態を考えるうえで視覚に関連するアプローチは重要である。本稿では,皮質拡延性抑制(cortical spreading depression:CSD)と最近の視覚性前兆に関連する研究について概説する。そのなかで特に神経生理に関連した発作間欠期の心理物理学的な研究を紹介し,片頭痛の発症機序について簡単に触れてみたい。

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はじめに

 頭頸部外傷後の脳梗塞は受傷から発症までに潜伏期を有し,診断に苦慮することも多く予後不良といわれている1-3)。今回われわれは,1997年から2005年まで当科で脳梗塞の診療を行った2,263例中,頭頸部外傷後の脳梗塞5例(0.22%)および1993年の1例を加えた6例について検討した。

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Ⅰ.はじめに

 近年,摂食・嚥下障害への関心が高まり,病院や施設での取り組みが急速に始まっている。脳卒中では高率に誤嚥を伴うことが知られているが,それに気づかず摂食を行えば,肺炎のみならず,窒息のような生命危機に直面する。特に,咳やむせなどの徴候なしにみられる不顕性誤嚥(silent aspiration: SA)1)は見過ごされがちであるが,最近は嚥下造影(videofluoroscopy: VF)によって明らかにされるようになった2,3)。しかし,姿勢や食材,一口量や形態が異なれば,嚥下可能な場合もあるので,嚥下動態を観察評価し,適切な方法を検討することが,誤嚥の予防には重要である。既報4)にて,これらの誤嚥と身体所見,認知機能,スクリーニングテスト等との関係については報告した。本研究では,嚥下造影検査(VF)で誤嚥を確認できた症例に対して,各々の症例に見合う安全な食材や栄養摂取方法ならびにその退院時の摂食状態について検討した。

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はじめに

 近年,単純ヘルペスウイルスの関与が否定的な非ヘルペス性急性辺縁系脳炎16,23)や若年女性に好発する急性非ヘルペス脳炎9,10)が報告されている。今回われわれは,これらの報告と類似してはいるが,一側の大脳皮質にMRI上病変を認める点が異なる非ヘルペス脳炎の1例を経験した。臨床経過は,失語で発症し,亜急性に進行して,極期には重度の痙攣を呈し,回復期にウェルニッケ失語を認め,ほとんど後遺症を残さずに改善した。本例の臨床経過,頭部MRI,脳波,神経心理学的所見を報告する。

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はじめに

 脳血管障害による健忘症候群は,両側海馬を含む側頭葉内側部のほか,前内側視床や視床傍正中部,脳梁膨大部後域,脳弓,前脳基底部などの病変で生じることが知られている1)。しかし,これらが両側性病変で起こるのか,一側性病変でもみられるのかは,一定の見解が得られていない。

 一方,記憶障害に対するリハビリテーションの治療内容やその効果についての報告はそれほど多くない2)。今回われわれは,右側頭葉内側部梗塞により,記憶障害を呈した症例に対して,種々のリハビリテーションアプローチを実施したので報告する。

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はじめに

 脊髄梗塞は稀な疾患であり,血管支配領域により前脊髄動脈,後脊髄動脈閉塞による梗塞,および静脈性梗塞に大別される。頻度の高いものが前脊髄動脈閉塞による脊髄梗塞であり,その原因は動脈硬化症に起因するものが多く,そのほかでは大動脈瘤,血管奇形,腫瘍塞栓,梅毒性血管炎,手術や血管造影による医原性,そして椎間板ヘルニアなどが挙げられている。今回われわれは,頸椎椎間板ヘルニアにより前脊髄動脈閉塞をきたしたと考えられた稀な症例を経験した。椎間板ヘルニアによる脊髄梗塞の発症機序についての文献的考察およびMRIと,血管造影を中心とした神経放射線学的所見の詳細な解析を行ったので報告する。

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 2007年4月28日から5月5日にかけて,ボストンのHynes Convention Centerを中心に開催された第59回米国神経学会年次総会(Annual Meeting of American Academy of Neurology)に参加してきました(写真1)。その様子をご報告します。

 米国神経学会(AAN)は会員数2万人を超える大学会で,年次総会には1万人を超える参加者があり,世界で最も大きな総会の1つです。本年は1,687演題の発表がありましたが,採択率は約30%と難関で,特に海外からの演題採択率は低いそうです。今回は学会場が狭いため,例年に比べ演題数を絞らざるを得ず,さらに難しくなったようです。米国からの演題が多いですが,イギリス,フランスをはじめとするヨーロッパ各国,ブラジル,アフリカ,そして日本からの発表もあり,非常に国際色豊かで,学会場ではさまざまな言語が飛び交っています。

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 モルガーニ(1682~1771)は近代的な病理学の手法を【創】始した人として知られている。彼はイタリア北部のフォルリの名家に生まれ,ボローニャで医学と哲学を学んだ。マルピーギの弟子で解剖学者のヴァルサルヴァの助手として働き,その後1711年にパドヴァの解剖学の教授に就任した。この椅子はかってヴェサリウスが占めたことがある。さて,テオフィル・ボネーの「墓地または実用解剖学」(Sepulchretum, 1679)はフォリオ版3巻の大冊で,ガレノスから17世紀に至る約450人の医学者による3,000例の剖検記録をまとめたものであった1,2)。これは単に解剖の結果を記載したにすぎなかったが,臨床と解剖学を結びつけ,それからまた臨床へという手法を取り入れたのがモルガーニであった。表記の書物は,彼が79歳という高齢時に2巻本として出版された。第2版は1763年に3巻本で,第3版は1766~1767年に4巻本で出版された。筆者の蔵書は彼の死後1799年に四つ折り版,3巻本で出版された本である3)。この書の英訳は1769年にベンジャミン・アレクサンダーによるものと,1822年にウィリアム・クックによるものの2種がある。特に前者は1980年にNew York Academy of Medicineによって3巻のファクシミリ版が出ている4)

 これを頼りに1巻の頭部疾患の全頁を読むことができた。彼の著書を今でも新しいものとしているゆえんに,索引の充実―それも4つの索引があろう。第1の索引は巻ごとの索引であり,第1巻頭部疾患は14章から成っていることがわかる。第2の索引(Index Primus)は疾患,症状,外因など,例えばaphonia(アフォニー),apoplexia(脳卒中),capitis in latus inclinandi difficultas(頭部を一側に傾けることが困難)などが挙げられ,第3の索引(index secundus)は死体に認められた所見,例えばcerebri abscessus- abscessus sui generis(脳全体の膿瘍)などを示している。第4の索引は重要な固有名詞,例えばaphonia(アフォニー)が載っている。彼は詳細に臨床を記録し,剖検によって推測し,そして再び臨床に向かうのである。

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 書評の存在理由は大きく分けて2つあると思う。1つは純粋な批評あるいは評論であり,その書評の対象となる書物の内容に対する評者の意見,評価,感想を率直に述べたものである。これは書物の著者と評者との一種の論争であり,読者はそれを読んで,対象となる書物の扱っているテーマに対する自らの見解を改めて認識することになる。書評の本来の姿は,このようなことを目論んだものであろうが,今日,医学書に対する書評がこのような視点から書かれることは稀である。現在,書評に課せられるもう1つの意義は,読者がそれを読んで,書評の対象となった書物を買うか買わないかの判断材料とするための批判,あるいは推奨ではないだろうか。評者自身が書評の読者となる場合にも,主として後者のタイプの書評を期待しており,書評を読むことによって,その書物を購入するかどうかを決めていることが多い。

 さて,この書評の対象となっている書物が取り扱っているのは,行政用語としての「高次脳機能障害」である。昔から使用されてきた高次脳機能障害の古典的中核病態は,失語,失行,失認であったが,これらの比較的捉えやすい病態を有する人々とは異なり,主に記憶障害,注意障害,遂行機能障害および社会的行動障害などを有する人々の能力障害は,しばしば表面的には捉えがたく,一見健常者との区別がつきにくい。このため,これらの障害を有する人々は,家庭や職場において社会的不利益を受けやすいのにもかかわらず,長らく障害認定や福祉サービスの枠外に置かれてきた。ようやく2001年になり,本書の編者らが中心となって,そのような人々に対する厚生労働省の支援モデル事業が始められ,「高次脳機能障害」を有する人々の実態が明らかにされると同時に,そのリハビリテーションや生活指導,職業訓練への試みが始められたのである。

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あとがき 河村 満
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 つい最近まで,パーキンソン病の認知機能障害といえば,遂行機能障害などの前頭葉機能障害ということになっていた。しかし今では,社会的認知,視覚性認知,うつとアパシーなどの感情的認知,精神緩慢などのさまざまな内容が加わり,その中では扁桃体や中脳辺縁皮質経路との関連が問題になる症状が多い。さらに,実は運動症状より先にこれらの症状が存在する,という考えもあって,MIBGなどの画像診断法の進歩とともに,パーキンソン病における認知機能障害の研究の進展,診療応用からは目を離せない。本号特集を企画した狙いはそこにあり,ユニークで重厚な論文が並び,ここで述べるまでもなく,読者は自然に読んでしまうであろう。

 本号に掲載されている論文で目を奪われたもう1つの論文が,柴田先生の片頭痛前兆の神経生理学の総説である。私が今とても興味を持っている内容ということもあり,そう見えるのかも知れないが,かなりの力作である。片頭痛は変わった病気で,紀元前アリストテレスも注目していたらしいが,最近ではオリバー・サックス著のMigraine(1992)が有名である。サックス自身片頭痛持ちで,以前Neurology誌のLetter欄で神経内科医の片頭痛についての論文に彼がコメントしていた。対象になった論文はスペインからのもので,今年6月のストックホルムでの国際頭痛学会で続報のポスター発表があり,やはり神経内科医は片頭痛持ちが多いそうである。前置きが長くなったが,柴田論文を読めば片頭痛前兆を総合的に理解できる。前兆は治療しなくてもよいという意見も多いが,私たちのデータは違う。頭痛に至る前のまぶしさを偏光レンズで防げば,かなりの予防効果がみられるのだ(Koyamaら,Behaviour Neurology in press)。前兆を楽しんでいる人もおり,米国では毎年,片頭痛視覚前兆の品評会が開催される,という話も聞いたことがある。

基本情報

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BRAIN and NERVE
59巻9号 (2007年9月)
電子版ISSN:1344-8129 印刷版ISSN:1881-6096 医学書院

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