Japanese
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はじめに
若年性パーキンソニズム(JP)という言葉は最近あまり使われなくなったが,l-dopaの著効するパーキンソニズムが,若年に発症した患者群を総称する言葉である。脳内のドパミン(DA)神経細胞が変性しDAが欠乏するという病態に関しては,特発性パーキンソン病(PD)と共通するが,臨床的には筋強剛が目立ち典型的な静止時振戦が少なく,l-dopaが比較的少量でも著効する一方,①治療後早期に,wearing offによる症状のup-downが顕著になり,peak of doseにジスキネジアが誘発される,②家族集積性が高い,③進行が遅い,④精神症状や自律神経症状を合併しない,などPDとは異なる特徴を呈する1)。病理学的にも青斑核に病変がないとか,Lewy小体が認められない症例があるなどの差異が知られている2,3)。JPの知的機能,認知機能について検討した文献は少ないが,Limaら4)は21例中1例も知的機能障害を認めなかったとし,Gershanikら5)も集積症例すべてにおいて,知的機能も認知機能も問題なかったと述べている。さらにJPではdopaminergic drugによって誘発される精神症状も,PDに比べると稀であることが報告されている1)。これらは今から20年以上も前の研究なので,ここでいう認知機能とは遂行機能や記憶について測定されたものを意味する。
筆者は数年前より,PDの社会的認知機能に関して研究を行っている。社会的認知機能とは,他者の意思や感情を推測したり,それに対して自己の生存に必要な意思決定が行われたりしながら,円満な対人関係を形成・維持していくために必要な能力のことである。従来取り上げられてきた遂行機能障害や手続き記憶障害などの他にも,PDでは社会的認知機能の障害が認められ,それがPD患者の気分障害とも関連するのかもしれない6)。本稿では,社会的認知機能のうち表情認知と意思決定について,PDとJPを比較検討し,若干の考察を加えて報告する。
Abstract
The degeneration of mesocorticolimbic dopaminergic system is assumed to disturbed motivated behavior, intellectual impairment and depression in Parkinson' s disease (PD), and there is growing interest in its role in impaired emotional and social behaviors. Patients with PD demonstrated the impairment of social cognition by the test of facial expression recognition and the Iowa gambling task (IGT). However, the result of facial expressions cognition in patients with juvenile parkinsonism (JP) is not significantly different from normal controls. In the IGT, the JP group learned better performance than the PD group. The relatively spared social cognition in JP as compared with PD could be attributed that dopaminergic depletion being more severe in the nigrostriatal system than in the mesocorticolimbic system.
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