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つい最近まで,パーキンソン病の認知機能障害といえば,遂行機能障害などの前頭葉機能障害ということになっていた。しかし今では,社会的認知,視覚性認知,うつとアパシーなどの感情的認知,精神緩慢などのさまざまな内容が加わり,その中では扁桃体や中脳辺縁皮質経路との関連が問題になる症状が多い。さらに,実は運動症状より先にこれらの症状が存在する,という考えもあって,MIBGなどの画像診断法の進歩とともに,パーキンソン病における認知機能障害の研究の進展,診療応用からは目を離せない。本号特集を企画した狙いはそこにあり,ユニークで重厚な論文が並び,ここで述べるまでもなく,読者は自然に読んでしまうであろう。
本号に掲載されている論文で目を奪われたもう1つの論文が,柴田先生の片頭痛前兆の神経生理学の総説である。私が今とても興味を持っている内容ということもあり,そう見えるのかも知れないが,かなりの力作である。片頭痛は変わった病気で,紀元前アリストテレスも注目していたらしいが,最近ではオリバー・サックス著のMigraine(1992)が有名である。サックス自身片頭痛持ちで,以前Neurology誌のLetter欄で神経内科医の片頭痛についての論文に彼がコメントしていた。対象になった論文はスペインからのもので,今年6月のストックホルムでの国際頭痛学会で続報のポスター発表があり,やはり神経内科医は片頭痛持ちが多いそうである。前置きが長くなったが,柴田論文を読めば片頭痛前兆を総合的に理解できる。前兆は治療しなくてもよいという意見も多いが,私たちのデータは違う。頭痛に至る前のまぶしさを偏光レンズで防げば,かなりの予防効果がみられるのだ(Koyamaら,Behaviour Neurology in press)。前兆を楽しんでいる人もおり,米国では毎年,片頭痛視覚前兆の品評会が開催される,という話も聞いたことがある。
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