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モルガーニ(1682~1771)は近代的な病理学の手法を【創】始した人として知られている。彼はイタリア北部のフォルリの名家に生まれ,ボローニャで医学と哲学を学んだ。マルピーギの弟子で解剖学者のヴァルサルヴァの助手として働き,その後1711年にパドヴァの解剖学の教授に就任した。この椅子はかってヴェサリウスが占めたことがある。さて,テオフィル・ボネーの「墓地または実用解剖学」(Sepulchretum, 1679)はフォリオ版3巻の大冊で,ガレノスから17世紀に至る約450人の医学者による3,000例の剖検記録をまとめたものであった1,2)。これは単に解剖の結果を記載したにすぎなかったが,臨床と解剖学を結びつけ,それからまた臨床へという手法を取り入れたのがモルガーニであった。表記の書物は,彼が79歳という高齢時に2巻本として出版された。第2版は1763年に3巻本で,第3版は1766~1767年に4巻本で出版された。筆者の蔵書は彼の死後1799年に四つ折り版,3巻本で出版された本である3)。この書の英訳は1769年にベンジャミン・アレクサンダーによるものと,1822年にウィリアム・クックによるものの2種がある。特に前者は1980年にNew York Academy of Medicineによって3巻のファクシミリ版が出ている4)。
これを頼りに1巻の頭部疾患の全頁を読むことができた。彼の著書を今でも新しいものとしているゆえんに,索引の充実―それも4つの索引があろう。第1の索引は巻ごとの索引であり,第1巻頭部疾患は14章から成っていることがわかる。第2の索引(Index Primus)は疾患,症状,外因など,例えばaphonia(アフォニー),apoplexia(脳卒中),capitis in latus inclinandi difficultas(頭部を一側に傾けることが困難)などが挙げられ,第3の索引(index secundus)は死体に認められた所見,例えばcerebri abscessus- abscessus sui generis(脳全体の膿瘍)などを示している。第4の索引は重要な固有名詞,例えばaphonia(アフォニー)が載っている。彼は詳細に臨床を記録し,剖検によって推測し,そして再び臨床に向かうのである。
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