言語聴覚研究 2巻3号 (2005年12月)

講演 第6回日本言語聴覚学会特別講演

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 Impairments of word-retrieval and production are a common and distressing feature of language disorders, both developmental (e.g. specific language impairment) and acquired (e.g. acquired aphasia), and much clinical time is devoted to attempts at their remediation. The Cognitive Neuropsychological approach to language argues that treatment will be maximally effective only when the direction of treatment is determined by precise knowledge of the individual's processing strengths and weaknesses:Analysis limited to surface symptoms will not enable one to construct effective treatments because such symptoms can arise in various ways. Within this approach, hypothesis-driven assessment aims to systematically test the components of a language processing model in order to determine which components are impaired and which are operating with (at least partial) efficiency. Following assessment, the components of the system which are not functioning normally have been identified, and the clinician knows what abilities should be targeted by the treatment program. This paper discusses the levels of processing in word production, symptoms of impairment at each level and how to distinguish between each level of impairment. It concludes by outlining the most successful approaches to the treatment of different levels of word production impairments.

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 モヤモヤ病術後の脳梗塞により,字性錯語の自己修正が特徴的にみられた小児失語症一例の認知神経心理学的な障害構造を報告する.本例に対し,呼称,実在語と非語の復唱,逆唱,仮名音読,およびRANの各課題を実施した.本例では,左縁上回,角回を含む下頭頂小葉に病巣を認めた.本例は語音認知障害がなく,聴覚的理解障害が軽微であり,発話内モダリティに共通の音韻性誤反応を認め,自己修正が多いこと,自己修正の単位や発話を中断した位置が成人の伝導失語例と類似していることなどから,小児の伝導失語と思われた.また,呼称,復唱,仮名音読において,全反応に占める音韻性誤反応の割合がほぼ同率であったことから,質,量の両側面において発話の下位モダリティに共通の障害が存在する可能性が示唆された.非語の復唱,RAN,実在語の逆唱の成績が劣り,仮名音読で語彙化がみられたことなどから,本例には音韻処理機能に障害があると思われた.

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 本研究の目的は,未就学児より長期記憶の評価が可能な小児版図形学習検査を作成・実施し,視覚性記憶の発達変化を分析することである.対象は5~8歳の健常発達児54名.手続きは,Reyの聴覚性言語学習検査(RAVLT)の標準的な方法に従い,被検児には単語の代わりに図形を呈示して,描画による自由再生をさせた.刺激図形は5歳児が模写可能な無意味図形を作成し,各図形には採点基準を定めて採点を行った.その結果,再生課題・再認課題ともに,6~7歳にかけて成績に顕著な差がみられた.再生課題では短期記憶,学習効果,長期記憶ともに,6~7歳で顕著な発達変化がみられ,視知覚認知,運動機能,記憶方略の3点の発達が推測された.再認課題では,本検査の方法で図形を正確に再認できるのは7歳以降と推測された.本検査は,未就学児から施行可能で視覚性記憶の多面的な評価に貢献しうると考えられた.

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 音声言語理解に比し発語面に特異な症状を呈した言語発達遅滞の一例に,文字やジェスチャーの視覚的モダリティを用いて訓練を実施したところ,発語が可能となったので,訓練経過を分析し若干の考察を加えた.本例は4歳2か月時に当科を初診した.当初から音声言語理解面に比し発語に重篤な障害がみられた.本例は,文字言語が音声言語表出に先行し,呼称が困難な場合でも書称が可能であり,それを音読する経由で音声言語表出が可能なことがみられた.そこで視覚的モダリティを取り入れて訓練を実施したところ発語が促進された.以上より,発語より文字言語が先行する症例の存在を認識し,訓練プログラムを立案する必要があると考えた.

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 当院回復期リハビリテーション病棟に入院した失語症患者116例のCADL成績と,患者が病棟で実際に行っているコミュニケーション活動の状況(以下,実行状況)を比較し,CADL成績から実行状況が推定可能かどうか検討した.その結果,挨拶や氏名・住所伝達など,社会生活で習慣化されたコミュニケーション活動については,CADL成績から実行状況を推定することが可能であった.しかし,「ダイヤルを回す」,「値段の判断」といった複雑な物品操作や動作を伴う活動に加え,「時刻を告げる」,「エレベーターの階を言う」などの生活文脈や視覚情報を活用できる活動では,CADL項目と実行状況での評価側面の統一が難しく,CADL成績と実行状況の一致率は低いことが明らかになった.今後,実行状況の評価に向けて,評価対象となる病棟内コミュニケーション活動の選定,コミュニケーション能力や実行状況に関する知見の蓄積が課題である.

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Ⅰ.はじめに

 言語聴覚士におけるリスクマネージメントとは,安全意識や危機管理知識・技術を職種間で共有し,安全で有効なサービスを提供するためのシステムおよび一連のプロセスを意味する.リハビリテーションの対象者の多くは運動器の障害や様々な合併症を有し,本質的にハイリスクの領域といえるが,一方で転倒や合併症のリスクを恐れて活動性が低下すれば廃用に陥るリスクがあるとともに対象者にとっては不利益につながるため,リスクマネージメントは不可欠である(前田ら 2005).

 言語聴覚士の業務においても,1)摂食嚥下訓練や人工内耳の調整など,診療の補助業務の高度化,2)介護保険施設における高齢者,あるいは軽度発達障害など利用者,患者層の多様化,3)運動・認知障害,医療機器装着などのリスク要因を伴う患者の増加など,事故が生じやすい条件が増大してきており,安全確保の重要性は高まっている.また,言語や聴覚に障害をもつ方を対象とする言語聴覚療法の特殊性を考えると,人格や精神的側面に配慮した適切な働きかけや十分な説明などが必要(小島ら 2005)であり,言語聴覚士におけるリスクマネージメントの枠組みとして安全だけでなく安心・信頼・信用の確保も重要な課題である(表1).

 しかし,言語聴覚士の業務に関するアクシデント・インシデント事例の集積,事故発生要因の整理と分析,対策の実施と評価などの基礎的な資料は乏しい.日本言語聴覚士協会リスクマネージメントワーキンググループでは,2004(平成16)年から,正会員を対象に『言語聴覚士のリスクに関するアンケート』による実態調査を行っており,今回この結果を中心に言語聴覚士の業務に伴うリスクおよび対応策の現状と課題について報告する.

リポート「現場,最前線」

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1.はじめに

 一般的に,発症後長期間経過したコミュニケーション障害者では,言語聴覚療法の効果が得られにくいといわれている.しかし,当院では1994(平成6)年12月より,発症後長期間経過した症例も含めて,訪問によるアプローチを積極的に行っている.その結果,発症後長期間経過した症例にも言語聴覚療法の効果を認めている.

 今回,これまでの訪問言語聴覚療法の経過をまとめ,訪問言語聴覚療法の意義と役割について検討・考察したので報告する.

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 第7回日本言語聴覚士協会総会・日本言語聴覚学会は本学会として初めて関東圏を離れ,2006年5月に金沢で開催致します.金沢は日本列島のほぼ真ん中,加賀百万石の伝統文化や温泉,海の幸や山の幸,お酒からお菓子まで色々な楽しみの多い土地です.今回は「地域における言語聴覚士の役割―コミュニケーション障害のある人の生活支援」をテーマに下記のようなプログラムを予定しています.学会専用ホームページが立ち上がっておりますので是非ご覧下さい(http://square.umin.ac.jp/jas7th/).

 なお,市民公開プログラムとして,言語聴覚士や協会活動などを広く知っていただく公開展示,「劇・遊び・表現活動Ten seeds」障害のある子どもたちの演劇上演,摂食嚥下障害に関する公開講演会を考えています.また,初日の学会プログラム終了後,Happy Hourと称して会員交流会(参加無料)を予定しています.夜の金沢探検の前に,気楽な会員相互の交流の場として,多くの方々にご参加いただきたいと思います.

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 本協会は平成16年11月に言語聴覚障害学領域およびその近接領域に関する学術専門誌「言語聴覚研究」を創刊しました.本誌は各種言語聴覚障害の基礎と臨床に関する学術論文を掲載することになります.

 購読会員を募集していますので,下記のとおりご案内いたします.

投稿規定

執筆要綱

投稿誓約書

編集後記 藤田 郁代
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 今,那須野が原の秋はたけなわで,紅葉が那須岳の麓にまで降りてきました.近年は暖冬続きで眼の覚めるような紅葉にはなかなかお目にかからなくなりましたが,それでも秋の夕陽に映える紅葉の美しさはひとしおです.2巻3号をお届けする頃には落葉も終わり,初冬の風が吹いていることと思います.

 本号は第6回言語聴覚学会での講演についてLyndsey Nickels先生より寄稿いただき,その内容を掲載することができました.Lyndsey Nickels先生は国際的に活躍されている認知神経心理学者であると同時に言語病理学の専門家でもあります.特に,単語の情報処理に関しては多数の論文と著書があり,世界で最も注目されている研究者のひとりです.今回の題目は「Assessment and treatment of impaired word retrieval:A Cognitive Neuropsychological approach」であり,近年の単語の情報処理モデルの紹介と,それに基づき失語症の評価および訓練を組み立てる方法論が丁寧に解説されています.言語聴覚障害がある方々への訓練は,対象者ごとに障害構造を調べ,先行研究等が明らかにしたevidence(論拠)に基づき訓練プログラムを立案し,訓練過程においてその効果を確認していくことになります.仮説があってこそ訓練の効果を検証することは可能であり,本論文は語彙訓練の仮説を考える上での重要な示唆を多く含んでいます.

基本情報

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言語聴覚研究
2巻3号 (2005年12月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1349-5828 日本言語聴覚士協会

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