助産雑誌 74巻6号 (2020年6月発行)

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特集1　「助産」とは何か　改めてその専門性を問う

扉 74巻6号 , 2020年6月 , pp.401

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医療現場では専門分野が細分化され，医療技術もめまぐるしく進歩しています。少子化，ハイリスク分娩の増加など，助産師を取り巻く状況も変化しています。また，多様な生き方や考え方が尊重される時代にあって，分娩や育児に対する女性の考え方はもちろん，支援の求め先も多様化しているでしょう。助産師は今，岐路に立っているとも言えます。

その流れの中で，助産師のみに許された「助産」という専門性は，どのように発揮されているのでしょうか。そもそも助産の専門性とは，いったいどのようなものを言うのでしょうか。本特集では二つのテーマ「無痛分娩」と「産後ケア」を選び，対談を通して，答えを見つけるヒントを探していきたいと思います。

—【対談①】—無痛分娩を通して助産を問う田辺　けい子 , 水尾　智佐子 74巻6号 , 2020年6月 , pp.402-410

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助産師は正常分娩のエキスパートと称されますが，分娩の医療化の最たる無痛分娩の下では，専門性を発揮することができないのでしょうか。時代と共に女性の出産観が変わってきている今，本対談では，無痛分娩を通して「助産」の本質を考えてみます。

—【対談②】—産後ケアを通して助産を問う宮下　美代子 , 市川　香織 74巻6号 , 2020年6月 , pp.411-416

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事業が本格化する以前から産後ケアに携わってきたお二人に，「産後ケア」を通して見えてくる“助産”を語っていただきました。話題は分娩，育児支援，助産師教育などにも及び，助産師の将来の課題にも触れられました。

特集2　助産師の新たなアプローチ　子どもを持つ女子受刑者の出所後も含めた支援とケア

扉 74巻6号 , 2020年6月 , pp.417

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現在，日本には11の女子収容施設があり，年間約4000〜5000名の受刑者が服役しています。その中には，受刑中に妊娠・出産を経験する女性や，子どものいる母親も多く，近年，彼女たちを支援するための「女子施設地域連携事業」が進められています。

女子受刑者の中には，被虐待経験のある人や，薬物などの依存症・メンタルヘルスの問題を抱える人たちがいますが，いずれ地域で子どもと暮らし，社会生活を送ることを考えると，支援の手は欠かせません。妊婦健診から社会復帰の教育，地域での生活まで，助産師が母子の支援活動にどのように貢献し，どのような役割を担えるのか，本特集を通して考え，また女子受刑者の支援の輪を広げていきたいと思います。

—【座談会】—女子受刑者に対する助産師の役割や支援の課題望月　明見 , 鈴井　江三子 , 岩本　美佐子 74巻6号 , 2020年6月 , pp.418-425

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あまり多くの人が知らない女子受刑者の実態—彼女たちはどのような人で，どんな支援が必要なのでしょうか。本稿では，女子受刑者の支援を日頃から実践されている3名の助産師の方に，受刑者の実情や，実際に受刑者と関わって見えたものを中心にお話しいただきました。

「女子施設地域連携事業」の概要と助産師による女子受刑者への支援西田　麻衣子 74巻6号 , 2020年6月 , pp.426-430

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女子刑務所は，これまで孤立した存在でした。しかし，2013年に「女子刑務所のあり方研究委員会」の発足により，大きく状況が変わりました。ひいては助産師が，女子受刑者と子どもの健康や愛着形形成に効果的に関わっているそうです。その具体的な取り組みをご紹介いただきました。

—コラム—期待される助産師の役割堂本　暁子 74巻6号 , 2020年6月 , pp.431

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　そもそも私が刑務所問題に関わるようになったきっかけは，「女子刑務所で受刑者が出産すると生後わずか2，3日で子どもが母親から離されています。あまりに早い母子分離は問題なのではないでしょうか」との助産師さんからの訴えでした。この一言に背中を押されて，8年前に初めて女子刑務所を訪れました。

　まず目についたのが髪の白い，腰の曲がった高齢者の姿でした。女子受刑者は男子受刑者より高齢者率が高く，罪名は窃盗と覚せい剤取締法違反とで8割以上を占めていました。

刑務所における母親としての気持ちを支える援助—受刑後の親子再統合につなげるために望月　明見 74巻6号 , 2020年6月 , pp.432-436

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妊婦や既に子どものいる女子受刑者への，助産師による支援が始まった初期段階から関わってきた筆者。女子受刑者の抱える困難や背景を知ることで，一般の妊婦とは違ったアプローチが必要なこと，その一方で，子どもを思う母親としての気持ちは同じであることを実感します。そうした経験や取り組んでいる研究を基に，出所後の生活も見据えた支援の実践内容を執筆いただきました。

子どもの育ちと親の刑務所収容—子どもの権利から考える後藤　弘子 74巻6号 , 2020年6月 , pp.437-440

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子どもの各権利条約や子どもを持つ女性受刑者の日本における現状，加えて韓国の刑務所の視察などを通して，「子どもの最善の利益」を保障するための考え方をまとめていただきました。

ダルク女性ハウスの「子どもプログラム」—子どものための居場所をつくる『助産雑誌』編集室 74巻6号 , 2020年6月 , pp.441-445

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ダルク女性ハウスで17年前から始まった「子どもプログラム」のことを中心に，ハウス施設長の上岡陽江さんと，子育て中の施設利用の女性，元受刑者の女性たちにお話を伺いました。(『助産雑誌』編集室)

Focus

—「母子のための地域包括ケア病棟のモデル事業」の推進①—モデル事業の内容解説：日本看護協会から井本　寛子 74巻6号 , 2020年6月 , pp.447-449

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分娩取扱医療機関のうち，約8割が産科混合病棟だと言われています。妊娠期から育児期までの切れ目のないケアが求められる中，2020年度より，日本看護協会の呼びかけの下，「母子のための地域包括ケア病棟のモデル事業」が始まりました。本稿ではその事業内容について解説していただきます。

—「母子のための地域包括ケア病棟のモデル事業」の推進②—春日井市民病院における取り組み中橋　香那子 74巻6号 , 2020年6月 , pp.450-455

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本稿では，「母子のための地域包括ケア病棟モデル事業」に参加された春日井市民病院での実践を紹介します。プロジェクトを始めてから助産師外来，院内助産などに起きた変化をまとめていただきました。

連載　続・いのちをつなぐひとたち・18

フランス・ドゥ・ヴァールさん＆井上裕美さん 74巻6号 , 2020年6月 , pp.393-396

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類人猿の出産・育児に学ぶ「共感社会」の再生

「社会生活を送る生き物は全て，競争の本能と共に，他者に共感し，他者を思いやり相手の世話を焼く本能を持っており，それは生きていく上で途方もない価値を持つ」世界で最も著名な動物行動学者の一人フランス・ドゥ・ヴァールさん（エモリー大学教授）はそう強調する。そして，「共感する力」は，母子関係が，その土台となるという。2020年1月，湘南鎌倉総合病院お産センター／湘南鎌倉バースクリニック共催の国際シンポジウムのために来日したドゥ・ヴァールさんと，招聘を企画した実行委員のお一人である井上裕美さん（湘南鎌倉総合病院副院長・産婦人科主任部長）との対話を通じ，産科医療の現場が類人猿研究から学べることは何かを考える。

連載　宝物，教えてください・52

矢島助産院の子宝草大田　えりか 74巻6号 , 2020年6月 , pp.397

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　今から13年ほど前，博士課程の学生だった私は，ベトナムで妊産婦の研究調査を行っており，日本とベトナムを行ったり来たりの生活をしていました。当時は結婚して4年目で，そろそろ子どもが欲しいと思っていましたがなかなか授からずに悩んで，大学院の先輩である松崎政代さん（現大阪大学大学院教授）によく相談していました。そんな時に松崎さんが，アルバイト先の矢島助産院から，「ご利益があるから」と子宝草をお裾分けしてくれました。

　子宝草は，ベンケイソウ科に属する植物の子宝弁慶と胡蝶の舞を交配させて作られた品種で，たくさんの子孫を残す植物であり子孫繁栄の象徴とされています。有名な矢島助産院の矢島床子院長のパワーが入った縁起物の子宝草，お裾分けいただいてとてもうれしかったことを思い出しました。

連載　ワタナベダイチが解説！両親学級アイスブレイク集　こんな時，どんなアイスブレイク？・3

こんな人だと聞きました渡辺　大地 74巻6号 , 2020年6月 , pp.458-461

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はじめに

　前回，男女を分けて2人1組のペアを作った場合に使えるアイスブレイクとして「第一印象を教えて」を紹介しました。今回も同様に，2人1組のペアを作った際に有効なアイスブレイク「こんな人だと聞きました」を紹介しますね。これは，いわば「他己紹介」のことなんですが，われわれファシリテーターの案配でアイスブレイク効果をより高めることができるような工夫をしてみましょう。

　先に，右ページの「進め方」をご覧ください。

連載　現場が変わる！　チームに働きかける母性看護CNSの実践　現象学的分析編・2

「何かおかしい，あれ，この人どうしたんだろう？」—実践場面における問い村上　靖彦 74巻6号 , 2020年6月 , pp.464-468

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▶現象学的分析編の第2回を迎えて

　2019年1〜12月号にかけて，連載「現場が変わる！　チームに働きかける母性看護CNSの実践」を掲載した。母性看護専門看護師(CNS)が，高度専門職として水準の高いケアを提供し，現場でどのような役割を果たしたか，漫画と事例紹介で，可視化することに努めた。

　9月号の事例提供者である八巻和子氏(助産師，甲府病院)に，その後，村上靖彦氏(現象学者，大阪大学)が2時間にわたるインタビューを実施し，八巻氏の臨床経験や実践を通して感じた思いを12月号で一部ご紹介した。

　今回の連載では現象学的分析編として，より詳しく八巻氏の母性看護CNSとしての10年間の歩みが語られる。本号はその2回目。ある実践場面の短いスパンにおいての「分からなさ」を掘り下げ，スタッフとチームを構築していく過程が語られる。

(『助産雑誌』編集室)

連載　未来の助産師を育てています　わたしたちの教育現場・62

兵庫県立総合衛生学院　助産学科 74巻6号 , 2020年6月 , pp.470-473

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沿革・教育理念

　こんにちは。兵庫県立総合衛生学院助産学科(以下，本学本学科)です。本学は，山と海に囲まれ，人情にあふれるアットホームな街，神戸市長田区に位置します。助産師，看護師，歯科衛生士，介護福祉士を養成する専修学校であり，兵庫県の保健医療福祉を担う人材を育成しています。助産師を養成する専修学校としては県内唯一の施設です。1972年に開校，1995年に起きた阪神・淡路大震災を乗り越え，50年の歴史と伝統を誇ります。

　「生命の尊厳と人権の尊重を基調として，豊かな人間性や社会性を培い，社会に貢献し得る質の高い保健医療福祉従事者の育成をめざす」を4職種共通の教育理念としています。本学科では，出産を核として，女性の一生の健康をサポートできる助産師の育成をめざします。開校から現在まで，輩出した助産師の数は約800名，県内を中心に，病院，診療所，助産所等で，高い専門性を発揮し，第一線で活躍しています。

連載　りれー随筆・425

助産師フォトグラファーとしての想い出野　爽香 74巻6号 , 2020年6月 , pp.474-475

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二足のわらじで自分の純度を高める

　産婆といえば，助産師といえば，皆さんの中で出来上がったイメージがあると思います。助産行為を行う専門職。妊娠・出産・産後・新生児のケア，全ての世代の女性の性と生殖に関連した保健に携わります。私自身も初めは専門職として勉強の日々を過ごしてきました。

　しかしある時から，誰かの型にはまって自分が見えない感覚にすごく違和感を覚えました。要は楽しくないのです。ワクワクしないのです。「仕事なのだから，命を預かる重大な責任が私たちにあるのだから。この日本社会，みんな我慢していることだから間違っても口にしてはいけない。切り替えよう，自分のことは二の次」。そう言いながらも働くことはできるのですが，どれだけ努力しても，そういう気持ちの時は本当の意味で良いケアができません。

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目次 74巻6号 , 2020年6月 , pp.398-399

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Information 74巻6号 , 2020年6月 , pp.445

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バックナンバーのご案内 74巻6号 , 2020年6月 , pp.446

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BOOKS 74巻6号 , 2020年6月 , pp.457

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次号予告・編集後記 74巻6号 , 2020年6月 , pp.476

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基本情報

助産雑誌
74巻6号
(2020年6月発行)

電子版ISSN：1882-1421 印刷版ISSN：1347-8168 医学書院

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投稿規定

助産雑誌 74巻6号 (2020年6月発行)

特集1 「助産」とは何か 改めてその専門性を問う

特集2 助産師の新たなアプローチ 子どもを持つ女子受刑者の出所後も含めた支援とケア

Focus

連載 続・いのちをつなぐひとたち・18

連載 宝物，教えてください・52

連載 ワタナベダイチが解説！両親学級アイスブレイク集 こんな時，どんなアイスブレイク？・3

連載 現場が変わる！ チームに働きかける母性看護CNSの実践 現象学的分析編・2

連載 未来の助産師を育てています わたしたちの教育現場・62

連載 りれー随筆・425