特集 精神疾患をもつ女性の周産期ケア
「連携」をとおしてのサポート―精神疾患合併妊婦への“抱えこまない”ケア
晴山 路子
1
,
菊地 まゆみ
1
,
藤本 真由子
1
,
佐藤 節子
1
,
松田 秀雄
2
,
古谷 健一
2
1防衛医科大学校病院産科病棟
2防衛医科大学校病院産婦人科
pp.142-146
発行日 2003年2月1日
Published Date 2003/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100468
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
妊娠・分娩が精神疾患の発症や増悪に関連することは以前より知られており1),母親の精神障害が,児の情緒や発達および配偶者にも影響を及ぼすことが報告されている2)。しかし現在,周産期のメンタルヘルスのサポートシステムが十分に確立されているとはいえず,その結果,家族機能が損なわれ,子どもへの虐待といった事態も発生し,大きな社会問題にもなっている。
平成13年度,埼玉県が地域保健総合推進事業の一環として実施した「児童虐待に係る支援事例からみた保健婦・士の役割りに関する研究」の報告書によれば,虐待予防へのかかわりの契機は(表),母親からの連絡や乳幼児健診,新生児訪問によるものがほとんどであり,医療機関が契機となったものは5.8%にすぎない3)。
3次救急指定病院および特定機能病院である当院では,精神疾患を合併したハイリスク妊婦の対応経験は多く,これまでにも人格障害,精神分裂病,パニック障害などの疾患を抱えた母親をケアしてきた。特に第1子を1歳で乳幼児突然死症候群にて亡くしている,人格障害合併の母親に対するケアの経験から,平成12年より妊娠期から地域・他科との連携をはかる一貫した継続的ケアに力をいれている。
本稿では虐待の早期介入が可能となった精神疾患合併の母親Tさんへのケアとサポートシステムを振り返り,施設助産師の役割を考えたい。
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.