日本老年看護学会誌(老年看護学) 19巻1号 (2014年11月)

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 学会発足から20年目を迎え,会員数も1,500人を超えた2014年度は新たな発展のときを迎えている.会員数は,この6月に1,500人と報告されたのちもさらに増え,もうすぐ1,600人となる勢いである.新しく入会する会員の方たちは,若手の教員や実践の場にいるメンバーたちが多いように思う.教育の場にいる若い方たちの入会からは,本学会が広く発展していく勢いが感じられ,実践の場の方々の入会からは,当初の教育・研究・実践の統合を目指して始まった日本老年看護学会が,ここへきて加速度的にその意味を強めていることが感じられる.実践の知と教育・研究がつながったことによって,さまざまな老年看護の課題が解決に向けて進むことが可能になり,高齢者やその家族の方々などへの看護の質向上に貢献できると考える.このことは,学会の特別委員会として始まった専門看護師・認定看護師活動推進委員会や,専門看護師として実践の力を示してくれている桑田美代子氏が2018年度の学術集会会長となったことなどからも,学会の目的の統合に裏づけされた結果によるものといえよう.

 さて,改めて考えるに,私が看護を学び始めたときには,老年看護学はまだ成人看護学のなかで教えられているにすぎなかった.高齢化率が7.1%であったわが国の特筆すべき1970年(昭和46年)の高齢化社会に向かっているときや,「恍惚の人」がベストセラーになり,東京都老人総合研究所ができた1972年(昭和47年)であっても,まだ老年看護学教育は独立して教育されていなかった.それから20年近くたった1989年(平成元年)にようやく「老人看護学」が独立して教えられることになり,1995年(平成7年)に日本老年看護学会が設立され,1997年(平成9年)には「老年看護学」として,講義だけではなく実習も独立したものとしてカリキュラム構成されるに至った.そして,平成のバブル期は親への扶養意識の変化をも招き,平成に入ってからとくに多様化する高齢者に関する課題は,だれがどのように介護するかという切実な問題,認知症に対するケア方法の模索,終末期ケアやそれらに関連する倫理的問題など,さまざまである.元気な高齢者に対しては,いかに最期までその健康寿命を全うするのかと自らの生き方を問い,老年看護を担当する私たちには,自らはとうてい体験しようのない老年看護を担当する者として,いかに当事者の声を聞き,その人に近づけばよいかを考えさせている.

日本老年看護学会第19回学術集会特集 会長講演

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はじめに

 わが国はほかの諸外国が体験することのない速さで超高齢社会を迎え,今後もその勢いは衰えることなく2025年問題を見据えて高齢者対策の充実が求められている.医療においてはインフォームド・コンセントが重要視され,福祉領域では介護保険制度の導入により利用者主体の契約に基づくサービス利用へと変化を遂げてきた.しかし医療・福祉実践の場において,真に高齢者の主体性は尊重されているであろうかとの疑問や倫理的ジレンマを感じる場面に時折遭遇した.そこで本稿では,高齢者の主体性をキーワードに筆者が行ってきた実践と研究を振り返り,改めて高齢者が主体的に生きることを支えるケアを問い直したいと思う.

日本老年看護学会第19回学術集会特集 海外招聘講演

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 One of the most challenging aspects of family caregiving for older adults with dementia involves the management of dementia-related behavioral symptoms (e.g., asking repeated questions, resisting care or hiding personal belongings). This paper presents a conceptual model that can be used by nurses to assist family caregivers to better manage these symptoms.

 It is well known that we are projected to see an unprecedented increase in the number and relative proportion of older adults over the next 30-40 years. One of the reasons these projections are so important is because the prevalence of functional impairment rises dramatically with age. According to the National Academy on an Aging Society (2000) 40% of people over age 70 need help with one or more activity of daily living. Most of that assistance is provided by family caregivers.

日本老年看護学会第19回学術集会特集 教育講演1

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1.はじめに

 人口の高齢化に伴い認知症高齢者の数は増大し,2013年6月に厚生労働省は認知症高齢者が462万人,さらに軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment;MCI)を含めると862万人になると推定しており(朝田,2013),高齢者の4人に1人が認知症に直面することになるといわれている.さらに認知症高齢者は,脳神経の障害の影響や歩行・バランス機能の低下から介護保険施設で転倒・骨折を起こしやすく,認知症の行動・心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia;BPSD)のために看護・介護に関する負担感が増大していることが指摘されている.現在,とくに急性期病院においては,入院期間の短縮化によるケア治療のスピードや方法が認知症高齢者のケアと対立したり,治療のための行動制限などから生活リズムの障害やBPSDが増悪したり,入院による混乱・せん妄などから合併症を引き起こしやすいなど,認知症高齢者のケアにおいては課題が山積している.さらに,急性期病院では認知症高齢者のBPSDに対する対応が十分にできないことや,身体合併症に起因するBPSDの影響のために適切な診断や治療が実施されていないという報告(熊谷ら,2010)がある.また,抑制や身体拘束などの倫理的課題も多く(諏訪,2012),看護師の負担感を増大させている(松尾,2011).

日本老年看護学会第19回学術集会特集 教育講演2

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1.はじめに

 近代化とともに寿命が伸長した過程は,疫学的転換(epidemiologic transition)として理論的に整理されている(Olshansky et al., 1989).それは感染症の撲滅を主な原因とした死因構造の変化に伴う死亡率低下の過程である.理論のなかでは,人類の死亡の歴史を4段階に分けている(表1).このような疫学的転換は人々の生存確率を変え,ライフサイクルの姿をまったく違ったものにした.それによって人生の時刻表は大きく変わるとともに,社会経済全体をも変えることとなった(Olshansky et al., 1989;鈴木,2007a;鈴木,2007b).

 まず挙げられるのは,今後の死亡数の増大と人口構造の変化である.寿命が伸長している社会で死亡数が増大するということは一見矛盾のように思えるが,過去の長寿化によって順送りになってきた死亡が今後に現れてくるため,死亡数は急速な増加を示す.現在の年間死亡者数は約110万人であるが,団塊の世代がその死亡ピークを迎える2030年ごろには,約160万人に増加すると推定され,その受け皿(=死亡の場合)について深刻な問題をはらんでいる.

 さらに,長寿化は今後の人口高齢化の一因となる.ただし,人口高齢化を引き起こす主因は出生率の低下,すなわち「少子化」である.フランスと日本は長寿化において肩を並べるが,出生率では現在フランスが人口置き換え水準付近にあるのに対して,日本ではその3分の2程度しかない.その結果,将来人口の年齢構成は大きく異なり,日本では人口高齢化がいちじるしく進行する.

 すなわち,厳密には長寿化と高齢化は異なる現象であることを理解する必要があるが,日本では少子化と長寿化が重なることにより,世界でも飛び抜けた人口高齢化を経験することになる.具体的には,虚弱(フレイル)が顕著となる後期高齢者のいちじるしい増加である.

 もう1つの見すごせない問題は,今後の高齢化率の伸びがいちじるしく現れるのが大都市圏ということである.農村部などの地方とは異なり,大都市圏には特有の高齢者を取り巻く環境(高齢者世帯やひとり暮らし等)が存在し,今後のソーシャルサポート等の問題がより顕在化してくる.

 本章では,このようなわが国の直面するいわば超高齢社会において,高齢期における疾病予防と介護予防はどのように調整し,効果的な介護予防とはなにかという視点から,今後の高齢者の健康維持・増進についての糸口を提示したいと考えている.

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抄録

 本研究の目的は,観察法による日本語版アビー痛みスケール(APS-J)とセルフレポートによる疼痛の有症率と疼痛が認知症の行動・心理症状(BPSD)に及ぼす影響を明らかにすることである.2012年8〜10月に介護保険施設に入所する認知症高齢者131名(男性29名,女性102名)を対象に調査を実施した.セルフレポートである疼痛の有無で回答可能であった104名における疼痛の有症率は25.00%(26/104),APS-Jによる痛みの有症率は25.95%(34/131)であった.APS-Jの「表情」「身体的変化」に関して,セルフレポートで疼痛なしと回答した者に比べて回答不明の者が有意に高かった.BPSDの評価であるGottfries-Brane-Steen Scaleの「認知症に共通なその他の症状」とその下位尺度の焦燥,不安,感情の抑うつをそれぞれ目的変数とし,年齢,MMSEをコントロールした重回帰分析では,APS-JがBPSDを有意に促進する要因であった.以上の結果から,言語的な訴えのできない認知症高齢者の疼痛を十分アセスメントしていない可能性や認知症高齢者の疼痛がBPSDを促進していることが示唆された.

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抄録

 本研究の目的は,特別養護老人ホーム(以下,特養)で入居者を看取る家族介護者の経験を明らかにすることである.地方都市にある特養3施設で,調査時点からさかのぼり2か月以上1年以内に死亡した入居者の主な面会者であった家族介護者15人に,入居者を看取った経験について半構成的面接法を用いてデータ収集した.分析は,Colaizziの現象学的分析方法を用いて,質的帰納的に行った.分析の結果,特養で入居者を看取る家族介護者の経験として,【入居者との絆の実感】【入居者のために自分にできるケアの模索】【職員や同室者との折り合い】【医療処置と看取りの場の選択における葛藤】【大切な人を失っていくことへの対処】【入居者の人生と看取りの意味づけ】の6つのテーマが導かれた.看護職は,家族介護者が入居者との絆を感じて行う模索や葛藤を理解し,入居者の死後,家族介護者が入居者の人生や看取りをより満足感をもって振り返ることができるよう支援することが重要である.

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抄録

 本研究の目的は,開発した転倒予防看護質指標の有用性を明らかにするために,認知症看護認定看護師が本指標を使用した評価をもとに,急性期病院と介護保険施設の特性を考慮して検討することである.本研究の対象者である全国の認知症看護認定看護師233人に自記式質問紙を送付し,回答があったのは105人(男性14人,女性91人),回答率45.1%,所属機関は急性期病院87人(82.9%),介護保険施設18人(17.1%)であった.「認知症看護の転倒予防の実践上重要な点が網羅されている」「認知症看護に関する院内の研修・教育やシステムの改善があれば実施できる」など肯定的回答が8割以上であった.実施の評価では【A認知症高齢者と行動を共にしてリスクを判断する】【B認知症高齢者のその人のもつ視点を重視しかかわる】に介護保険施設の8割以上は実施ありと回答し,とくに「B_3認知症高齢者の価値観を引き出し,その人の視点に合わせたケアを実施することで,転倒につながる行動を緩和する」などの5項目が有意に高かった.以上の結果から,本指標の有用性は高いが,院内の認知症に関する研修・教育の必要があり,介護保険施設における実施の割合が高い指標であることが明らかになった.

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抄録

 本研究は療養環境に関連した聴覚刺激による成人と高齢者の生理的および主観的な反応の特性を明らかにすることを目的とした.成人群30名(平均年齢23.2歳,SD=4.6),高齢者群30名(平均年齢74.6歳,SD=5.7)を対象とし,6種類の聴覚刺激(音楽に合わせて体操をしている場面,談話室の複数個所で会話をしている場面,ホワイトノイズ等)の提示に対する,心拍変動と皮膚電位反応と快適度等の主観的評価のデータを得た.

 皮膚電位反応で無刺激時と比較して有意な変化がみられたのは,成人群では,談話室/会話とホワイトノイズ,高齢者群では,球技/レク,道路/救急車で有意に上昇していた.高齢者にとって快適と評価されやすい音,想起しやすい音等,音に対する反応の特徴がいくつか明らかになった.また,高齢者と成人との間に自律神経指標だけではなく,主観的評価でも差があったことから,環境調整の際はケア提供者側の主観的評価に偏重しない判断をすることが求められている.

 聴覚刺激ごとに年齢を共変量として共分散分析を行った結果,年齢の影響を考慮してもLF/HFは聴力低下の有無による有意差が認められ,談話室/会話等の聴覚刺激で聴力低下有群が高かった.

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抄録

 本研究の目的は,関節リウマチをもつ高齢者(以下,RA高齢者)の「老年期のライフイベント」への適応にみられた「能力」から,ストレングスの構造化を図ることである.

 RA高齢者14人に対し面接調査を行い,質的記述的に分析した.その結果,97のキーセンテンス,26のサブカテゴリー,13のカテゴリー【長患いの価値】【自己覚知】【しなやかさ】【謝恩】【根気】【跳ね返す力】【自己決定力】【言語化による自己表現】【臨機応変にセルフケア】【居心地よさの創出】【社会資源の獲得】【世話上手】【次世代の育成】が抽出された.さらに,カテゴリーは,3つのコアカテゴリー《病気の意味の探求》《受容》《相互依存》として抽出された.以上のことから,RA高齢者のストレングスの一構成要素としての「能力」の構造は,病気の意味を探求し受容して,環境と相互依存できる構造であることが示唆された.

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抄録

 本研究の目的は,動脈硬化健診を受診した後期高齢者の主観的健康度と孤独感,社会関連性の実態を把握し,主観的健康度に関連する要因を明らかにすることとした.また,その結果から,主観的健康度の維持増進の支援について検討する資料を得ることを研究意義とした.受診者156名を対象に,主観的健康度と孤独感,社会関連性との関係について分析した結果,以下の知見が得られた.

 女性が60.3%,平均年齢は80.1±3.3歳,家族構成は「夫婦のみの世帯」がいちばん多く,収入が厳しい者は23.7%で,90.4%の者が疾患もっていた.運動習慣のない者は44.9%であった.身体的健康度は精神的健康度,社会関連性指標の合計とその下位3領域の得点と有意な正の相関を認めたが,一方で,孤独感得点と有意な負の相関を認めた.重回帰分析の結果,身体的健康度の関連要因として,運動習慣,社会への関心,他者とのかかわり,孤独感が挙げられた.

 以上のことから,主観的な身体的健康度を維持増進するために,身体的・精神的健康度が相互作用できるよう,運動習慣の維持や仕事を継続することで地域とのつながりをもつことが必要であると示唆された.

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抄録

 目的:地域包括支援センターにおいて,認知症高齢者の女性介護者が相互に交流する家族介護者間交流プログラム(介入プログラム)の効果を検証した.

 方法:対象者は,自治体ごとの高齢化率と介護者交流会の有無を参考に,介入群(4自治体,22名)と対照群(4自治体,32名)に割りつけた.文献をもとに構成した先輩介護者からの情報提供,参加者間の意見交換,専門職からの教育という介入プログラムを,1回90分,月1・2回開催し,1か月後と3か月後における介護負担感,精神的健康度,QOL(生活の質)の変化を比較した.

 結果:介入群と対照群の続柄が均質ではないものの,介入群における介入1か月後の介護負担感の軽減と精神的健康度の改善がみられたが,3か月後には変化がなかった.

 考察:地域包括支援センターで実施する介入プログラムにおける共感的な関係の形成と感情の分かち合いは,介護負担感と精神的健康度の短期間の改善効果をもたらし,専門職とほかの介護者からの実際的な支援が得られる可能性が示唆された.

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抄録

 本研究の目的は,大腿骨骨折により手術を受けた高齢患者の排泄行動において,見守りを止めて良いと判断した看護師の着眼点を明らかにすることである.大腿骨骨折手術を受けた高齢患者への看護に3年以上携わった経験がある看護師14人を対象に,「見守りを止めて良いと判断した看護師の着眼点」について,フォーカス・グループ・インタビューを行い,質的記述的に分析した.その結果,15のサブカテゴリーが抽出され,6つのカテゴリー【活力が蓄えられている】【自立へと気持ちが向かっている】【看護師と意思疎通が図れている】【自分のペースを調節できている】【注意力が高まっている】【動作にしなやかさがある】に集約された.これらのカテゴリーは,日常生活全般のケアを通してとらえられる患者の状況を判断材料にしたものであり,新人看護師をはじめとする看護師にとって,大腿骨骨折術後の高齢患者において排泄行動の見守りを止めて良いかどうかを判断する際の指針になり得るものと考える.

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ワークショップ企画の趣旨

研究・教育活動推進委員会

 高齢者の急増と生活の場の多様化に伴い,介護施設をフィールドとした研究推進のニーズは高まっている.そこで,研究・教育活動推進委員会では,介護施設における看護と介護の専門職が共に研究活動を推進した成功事例を知ることで,会員各自が介護施設における研究プロセスを振り返り,課題解決のヒントを得ることを目指して,ワークショップを開催した.本稿では,ワークショップの概要を報告する.

【日時】2014年6月27日(金)17:00〜19:00(2時間)

【場所】愛知県産業労働センター(ウインクあいち)

【当日の参加者】81名(会員71名,非会員10名/演者・委員等を含む)

基本情報

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日本老年看護学会誌(老年看護学)
19巻1号 (2014年11月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1346-9665 日本老年看護学会

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