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特集 「認知症高齢者の尊厳(意思)を重視した看護の取り組み」
2.急性期病院における身体拘束ゼロ病棟達成の取り組み
高齢者の「尊厳」と「安全」を守る—急性期病院における身体拘束ゼロ病棟達成の取り組み
Maintaining “Dignity” and “Security” of the Elderly: Achieving Activity for “Physical Restraint Zero Ward” in an Acute Care Hospital
佐藤 晶子
1
Masako Sato
1
1社会福祉法人聖隷福祉事業団総合病院聖隷三方原病院
1Seirei Mikatahara General Hospital
pp.25-31
発行日 2019年7月31日
Published Date 2019/7/31
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Ⅰ.はじめに
急性期病院では,治療遂行上の安全確保や安静保持の目的で身体拘束が依然行われている現状がある.最近の全国調査(中西,2019)では,認知症患者の約4割に身体拘束が実施されていることが示された.介護保険施設では1999年厚生省令で身体拘束禁止規定として基準が示されたが,医療機関では身体拘束に関する明確な規定がない.また,看護師が個々の判断で身体拘束をせずに自己抜去や転倒が起こった場合,医師や上司,同僚から責任を追及される場合も少なくない.
2018年,急性期病院においては困難とされていた身体拘束のない看護を病院として実現した金沢大学附属病院の取り組み(小藤,2018)が報告された.
A病棟は,地方都市の急性期総合病院(934床)の整形外科病棟(表1)である.筆者は老人看護専門看護師(GCNS;Certified Nurse Specialist in Gerontological Nursing)教育課程を修了後,A病棟に2015年3月配属となった.自己抜去や転倒・転落予防を目的とした身体拘束の常態化に対し,スタッフとともに身体拘束をしない看護に取り組んだ.その結果,2年3か月後の2017年6月,病棟として身体拘束ゼロを達成したため,その取り組みをここに報告する.
なお,ここでいう身体拘束は,「衣類または綿入り帯等を使用して一時的に該当患者の身体を拘束し,その運動を抑制する行動の制限」(厚生省,1988)に準じ,四肢拘束帯,体幹ベルト,Y字型拘束帯,抑止着,ミトン型手袋(以下,ミトン)を使用し,身体の動きを制限するものとする.
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