日本災害看護学会誌 2巻3号 (2000年10月発行)

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【巻頭言】

災害看護教育をすべての看護婦に高橋　章子 2巻3号 , 2000年10月 , pp.1

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　わが国は、自然災害多発国でありながら、1995年の阪神淡路大震災で予期せぬ人命を失い、国としても個人としても、危機管理の貧困さを痛感した。

　医療者も、現代医療レベルとの格差を痛感したが、行なわれた医療の評価は極めてきびしく、技術面もさることながら、認識の甘さが低い評価の最大の原因とされた。

【会長講演】

災害看護活動のリーダーシップ—阪神淡路大震災の経験から新道　幸恵 2巻3号 , 2000年10月 , pp.2-8

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1．はじめに

　日本災害看護学会の第2回の開催に当たりまして、「実践知から理論知へ」をメインテーマに設定して、準備を進めてきました。昨年の第1回大会での発表などによって、予想外に災害看護については実践活動が行われていることを知りました。そこで、この第2回では、災害時の実践的な看護活動を、今後の活動に幅広く活用していけるように、普遍化への努力が今後の課題ではないかと思いまして、災害の実践活動の中から導き出された知識を理論知へと導き出すきっかけ作りになることへの期待をメインテーマに込めました。

　昨年の第1回の大会以降の1年間は、トルコ地震、台湾地震、JCOの放射能災害、有珠山や三宅島、新島などの火山の爆発やそれに引き続く地震等、大きな自然及び人為的な災害が多発致しました。このような災害は、多くの人々の命や健康に大小さまざまな被害を長期間にわたって及ぼし、災害看護活動が求められます。このような災害はいつどこに起こるかについての予測は非常に困難です。それ故に、いつ、誰が被災者になり、災害看護の担い手として求められるようになるかわかりません。災害看護活動の普及並びに、体系化の必要性を痛感しております。

　会長講演には、阪神淡路大震災時の看護活動の体験記録を分析してまとめ、「災害看護活動のリーダーシップ」として報告いたします。

【原著】

災害時の看護の役割の明確化—水害を通した災害時の看護の役割の検討山田　覚 , 加納川　栄子 , 梶本　市子 , 井上　郁 , 松本女里 , 森下　安子 , 阿部　淳子 , 安岡　宣容 , 尾崎　暢希 , 福田　亜紀 , 岡本　幸江 , 明神　末喜 , 橋田　富美 , 池田　百合江 , 秦　管 , 伊藤　眞木 , 助村　妙 , 久川　弘子 , 山崎　美惠子 2巻3号 , 2000年10月 , pp.9-29

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要旨

　災害時の看護の役割を明らかにするために、活動内容の検討と内容妥当性の検証を行う組織として、高知女子大学の12名の教員、高知県内の保健所・病院・高知県看護協会の看護職の代表13名より成る災害時看護支援ネットワーク検討会を編成した。

　災害時の看護の役割を検討する前に、災害時の救援活動に参加した看護職へのインタビューと災害看護活動に関する既存の文献検討により、災害時の看護の役割に影響する要因分析をおこない、①災害の種類、②時間経過、③活動場所、④職種、⑤支援への参加の仕方の5つの要因が明らかになった。これら5つの要因を組み合わせることにより、災害の種類毎に災害時の看護の役割のマトリクス表を考案し、災害時の看護の役割の抽出のための枠組みとした。災害時の看護の役割の抽出のために、県内の看護職を対象に実際の災害時の活動において「何の目的で、何をしたのか／何をすべきであったのか」を行動レベルで記述してもらい得られたデータをKJ法で分析した。分析結果を検討会で吟味し、さらに調査対象者にフィードバックすることによって分析結果の精度を高めた結果、5つの大カテゴリー、13の中カテゴリー、37の小カテゴリー、126の下位項目を抽出した。さらに抽出された災害時の看護の役割が、上記5つの災害時の看護の役割に影響する要因によりどの様に変化するのかを見るために、災害看護経験者に各役割項目の必要度の程度を重み付けにより検討してもらった結果、項目や職種間の相互関係性や時間の経過により災害時の看護の役割がダイナミックに変化することが分かった。

　本研究の今後の課題は、抽出された災害時の看護の役割の項目の適切性を検討し洗練化に努めるとともに、重み付けの結果の再検討とその他の条件の組み合わせによる重み付けの検討により、実際に活用可能な災害時の看護指針の作成へとつなげていくことである。

【報告】

岩手山火山災害に対する地域住民の意識調査野口　恭子 , 中里　克治 , 石井　トク , 細越　幸子 2巻3号 , 2000年10月 , pp.30-38

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要約

　岩手山に隣接する4町村の住民に対して、火山噴火に対する準備状況および不安や心配・GHQ28・NEO−FFIについて質問紙調査を行い、以下の5つの知見を得た。

1．岩手山周辺地域の住民の78％は噴火の発生時期を最も心配しており、噴火による被害が予測できない不安も半数以上にみられた。

2．火山災害に関して97％の人が不安を感じているにもかかわらず、具体的な災害準備をしている人はわずか15％であった。

3．家族に寝たきりの病人がいる人の約半数は、寝たきりの人の避難方法や災害時に救援活動や援助を適切に受けられるかを心配していた。

4．60歳以上では噴火に備えた家族での対応策の話合いをしている割合は高いが、避難場所の確認率は低く、避難訓練をしていないことの心配が高率であった。

5．岩手山に隣接する4町村では、GHQが6点以上の高得点者が42.1％と一般成人の標準割合よりも高率であった。

トルコの地震災害から半年後の看護に関する現地調査報告臼井　千津 2巻3号 , 2000年10月 , pp.39-45

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はじめに

　1999年8月17日に発生したトルコ大地震（現地ではマルマラ地震）、および3ヶ月後の11月12日にも近接地域で同規模の地震が発生し、被災地では甚大なる被害にいまも苦しんでいる。

　わが国と同様に、地震の被害に悩む国の看護職同士で、支援や災害看護に関する情報の交換などができないだろうかとの考えのもとに、日本看護協会の計画により訪問・調査にいたったので貴重な経験を報告する。

有珠山噴火に伴う災害時の看護ニーズの調査報告井伊　久美子 2巻3号 , 2000年10月 , pp.46-54

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はじめに

　2000年3月31日午後、有珠山が噴火した。噴火3日前に火山噴火余地連絡会が緊急火山情報を出し、避難対象地区の住民は全員、噴火前に避難でき、幸いにも死傷者はゼロであった。しかし、噴火活動の終息には相当の時間を要し、一万数千人の住民は不自由な避難生活を強いられた。災害看護学会ネットワーク活動では、このような予防的な避難の場合の、多くの人々の生活が脅かされている状況での看護ニーズについて調査するため初動活動を実施した。また終息宣言があった後のフォロー調査を実施した。調査期間は初動調査は2000年4月13日から17日の5日間であり、フォロー調査は8月3日4日の2日間である。また調査者は、初動調査は臼井千津（神戸市看護大学）、井伊久美子（兵庫県立看護大学）であり、フォロー調査は井伊久美子（兵庫県立看護大学）である。

学会だより

日本災害看護学会　第2回総会報告 2巻3号 , 2000年10月 , pp.55-56

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日本災害看護学会理事・評議員名簿 2巻3号 , 2000年10月 , pp.57

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日本災害看護学会会則・細則 2巻3号 , 2000年10月 , pp.58-62

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日本災害看護学会誌投稿規定 2巻3号 , 2000年10月 , pp.63-64

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編集後記：編集委員／査読委員 2巻3号 , 2000年10月 , pp.65

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基本情報

日本災害看護学会誌
2巻3号
(2000年10月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：1345-0204 日本災害看護学会

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