訪問看護と介護 5巻12号 (2000年12月発行)

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特集　終末期にできること

特集1

【対談】わがままな最期のために高橋　卓志 , 辻本　好子 5巻12号 , 2000年12月 , pp.960-967

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つながる

　辻本　中川先生（中川米造・大阪大学名誉教授）がお亡くなりになって9月30日で3年です．すごく印象に残っていることがいくつかあるんです．そのうちの1つで，左腎臓の全摘手術をなさるときに「西洋医学で悪いものは取ってもらうが，からだに悪さをする抗がん剤とか放射線治療は私は要らない」と言って，それこそ自分なりの選択をなさいました．

　高橋　原発巣はどこですか．

特集2

思想としての終末期リハビリテーション大田　仁史 5巻12号 , 2000年12月 , pp.968-972

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母が伝えたこと

　父親は1年4か月の植物状態のまま意識を回復することなく死亡した．3日の間に2度の脳梗塞の発作に襲われた．私はその時々に居合わせていた．医師としてはまれな経験だと思う．2度目の発作のとき，徐脳硬直^＊を起こし，両眼を吊り上げ，舌根沈下のため呼吸困難に苦しむ（ように見える）父親のあごに手をあて舌根を持ち上げた．父親の呼吸は楽になった．手を離すとまた呼吸困難に陥る．何回か同じ行為を繰り返しながら，私は妙に冷静に父親の予後を考えていた．救命しえたとしても父親は植物状態になるだろう．そして，家族が介護に苦労をするに違いない．「何をしているのか」という母親に促されて私は救急車を呼んだ．

　父親の療養は私の勤める病院で行なわれた．介護は主として母親と姉が当たった．病院という恵まれた環境であったが，家族には厳しい毎日が続いた．介護が長引くにつれ次第に介護者側の希望は小さくなり，ただただ本人が人間らしく扱われることが話題になっていった．ことに保清がもっとも大きい関心事であった．なにせ徐脳硬直を起こしたくらいだから肢位は不自然だし関節の可動域も狭められがちであった．母親は，小声で何事かをつぶやきながら，毎日父親の口腔から足の指の間まで手順よく丁寧に清拭を続けていた．

特集3

高齢者の終末期をどうとらえるか横内　正利 5巻12号 , 2000年12月 , pp.973-979

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　高齢者の終末期については，多くの誤解と混乱がある．たとえば，高齢者についてもがんの終末期を想定した議論が展開される．その一方で，終末期とは考えられない状態が終末期と即断されて議論されている．高齢者の終末期とは何かという基本的な問題意識を欠いたまま，終末期医療，あるいは，ターミナルケアという言葉だけがひとり歩きしてしまっているのが現状である．もし，このような流れがこのまま医療費抑制の流れに合流すれば，高齢者の生存権そのものが脅かされかねない事態となろう．

　こうした現状を踏まえて，本稿では，高齢者の終末期をどうとらえるべきかについて，高齢者医療に携わる医師の視点で述べてみたい．

特集4

ある看護婦への手紙―看護の病としてのがん考柳原　和子 5巻12号 , 2000年12月 , pp.980-987

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お元気ですか？

　あなたからの電話が途絶え，その後，いかがなさっているのか，と心配しています．私が不用意で心ない言葉を吐いたのではないか？　あれからもいくどとなく思い悩んでいます……．

特集5

看護婦と学ぶ「いのち」のこと内藤　いづみ 5巻12号 , 2000年12月 , pp.988-993

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　「先生，具合が悪くて今日は動けません」

　当院の訪問看護婦，Tさんからふりしぼるような声で電話が入った．今年の甲府の夏は，例年を上回る暑さがしつこく9月まで続いたので，甲府盆地を車で訪問するうちにも私たちはかなり体力を消耗していた．特にTさんは，3人の余命短い患者さんを担当していたので，疲れがたまってきていた．

連載　訪問看護　時事刻々

今月の話題　現場の良識ある判断石田　昌宏 5巻12号 , 2000年12月 , pp.995

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　厚生省が全国の82市町村で行なった調査によると，訪問介護3類型のうち家事援助が占める割合は34.5％であった．家事援助の利用者をみると高齢者単身世帯が53.1％，高齢者夫婦世帯が21.6％．単身や老老介護の世帯で家事援助が活用されていることがわかる．このようにもはや介護保険に欠かせなくなった“家事援助”について，一部に不適切な事例があるという理由で，介護保険給付のあり方の見直し論議が行なわれている．

　そもそも家事援助とは，「利用者がひとり暮らしであるかまたは家族等が障害，疾病等のため，利用者や家族等が家事を行なうことが困難な場合」に介護報酬の単位算定ができるとされており，その場合「具体的な運用については，一律の基準で判断を行なうものではなく，個々の事情に応じ，介護支援専門員，市町村等現場の良識ある判断によるべきものである」と示されている．

連載　野比家とドラえもん・9（最終回）

ドラえもんの魅力―その4　素晴らしき仲間たち横山　泰行 5巻12号 , 2000年12月 , pp.999

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訪問の際，よそ者のあなたが家に入り込むことにとまどう家族を目の当りにした経験はないでしょうか？　この連載では，野比家にやってきたドラえもんがどうやって家族に溶け込み，信頼されるに至ったかを考察していきます．

―カゾクヲコエテ―超・家族・12（最終回）

専門性とは何か上野　千鶴子 5巻12号 , 2000年12月 , pp.996-997

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　「あなたのことは，あなた以上にわたしがいちばんよく知っている」．

　子ども時代のわたしを悩ませたのは，母のこの言葉だった．こういう態度を，パターナリズムという．パターナリズムはパーター（父親）から来ているから，「家父長制的温情主義」と訳す．専門家とは「あなた以上にわたしが知っている」と主張する権利と資格を与えられている人々のことである．したがって専門家の世界には，パターナリズムがはびこる．このせりふにつづくのは「だからわたしに従いなさい」という命令であり，「わたしの言うことに，あれこれ疑問を持たずについてきなさい」という依存関係である．医療関係者の世界では，これまであたりまえであったこの態度も，このところ患者―治療者関係やインフォームド・コンセントやらで，ゆらいできている．

訪問看護ステーション管理月誌・22（最終回）

今からつくる2001年度のステーション清崎　由美子 5巻12号 , 2000年12月 , pp.1000-1004

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　この1年を振り返ると，悲しいかな，介護保険に振り回された……という印象だけが強く残っています．この間，利用者や私たちサービス提供者，ケアマネジャーに徐々に制度の理解が深まり，それなりの業務サイクルができてきて，介護保険開始前後の殺人的な忙しさや現場の混乱がやっと今落ち着いてきたのではないでしょうか．当訪問看護ステーションの管理者やスタッフにも，この上半期を反省し，残りの下半期をどのように運営していこうか……と考える心の余裕が出てきたように感じます．そして，その柔らかい気持ちで今後のことを考えたとき，これから私たち訪問看護ステーションが何をしていかなくてはならないかが見えてくるはずです．

　この1年は，訪問看護ステーション内で訪問看護業務と居宅介護支援業務が入り乱れて，いったい自分たちの業務が何なのかわからなくなったり，介護保険と医療保険の微妙な違いに戸惑って混乱していたことなどはしかたのないことでした．しかし，いつまでもこのままでよいわけはなく，来年4月からのきちんとした訪問看護体制をイメージし，これから何を整えて，何をしていかなければならないのかを考え，実行していく必要があります．

介護保険　今月の動き

診療所の動向―平成11年医療施設（静態・動態）調査・病院報告の概況より 5巻12号 , 2000年12月 , pp.1006-1008

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　厚生省は9月29日に「平成11年医療施股（静態・動態）調査・病院報告の概況」を発表した．今回はこの調査結果から，特に在宅ケアに身近な「診療所」をとりあげ，実態を紹介する．

寝たきり起こし―そのメカニズムとモノ選び・17（最終回）

筋緊張窪田　静 , 河添　竜志郎 5巻12号 , 2000年12月 , pp.1010-1019

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　「筋緊張」についてどのような見識を持っていますか？学んだ記憶がかすかにある，セラピストが「評価したり治療したり」するもので看護・介護とはあまり関係ない……そんな感じではないでしょうか．

　そんなことはない！と言いたくて，まだまだ未開拓なテーマであるにもかかわらず，連載最終回にあたり大胆にも筋緊張に挑戦することにしました．

緩和ケア医のひとり言・6（最終回）

住み慣れた家を離れるとき藤井　勇一 5巻12号 , 2000年12月 , pp.1020-1024

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　この連載の話をいただいてちょうど1年が経過し，あっという間に最終回を迎えてしまった．この間に，僕が働いている緩和ケア病棟は満2歳を迎えた．2年間のうちにのべ400人近い方々が入院し，200人弱の方々が旅立っていかれた．“家へ帰りたい”と希望された患者さんの多くは，外泊や一時退院という形でその希望を果たしたが，在宅での看取りとなったのはわずか数人に過ぎない．もちろん，在宅で看取れたからよくて，病院だからよくないというわけではない．しかしながら，患者本人が自分の家で最期を迎えたいと願ったら，それを支えてあげたいと思っている．

　“家で最期を”と願う患者が，家にいられるためには何が必要なんだろう？逆に，家を離れなければならないのはどんなときだろう？“入院が必要”と考える基準は，病院と地域の医療者の間で，また，家族と医療者の間で，時には家族と患者自身との間でも微妙に食い違っていることが多かったように思う．

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訪問看護と介護　第5巻　総目次 5巻12号 , 2000年12月

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基本情報

訪問看護と介護
5巻12号
(2000年12月発行)

電子版ISSN：1882-143X 印刷版ISSN：1341-7045 医学書院

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