カラーグラフ 終える命 つなぐいのち・第16回
彼が遺したかったもの
國森 康弘
pp.549-553
発行日 2016年7月15日
Published Date 2016/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688200490
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福島県南相馬市内、4畳半2間の仮設住宅に勝彦君はいた。すでに、体のあちこちにがんが転移している。「若いぶん……、駆け抜けるように数週間で逝ってしまうかもしれない」と、医師は表情を曇らせた。
勝彦君は28歳だった。左足の痛みに耐えられなくなったのが6、7年前。骨肉腫というがんの一種と告げられた。体に10数回メスを入れ、髪は一時期すべて抜け落ちた。病気を抱えながら、懸命に働いた。東日本大震災の発生時は職場に向かう途中だった。原発事故による放射能汚染のために、実家には戻れない。群馬や福島の内陸部での避難生活と通院を余儀なくされ、ようやく今の仮設住宅に落ち着いた。
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