CLINICAL CALCIUM 25巻5号 (2015年4月発行)

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特集　血管石灰化の基礎と臨床

Preface

巻頭言～血管石灰化の発症メカニズムと治療戦略の新展開～小川純人 25巻5号 , 2015年4月 , pp.633-633

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Review

血管石灰化の発症機構塩井淳 25巻5号 , 2015年4月 , pp.635-643

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　血管石灰化は心血管疾患の発症に関わる重要な病態であり，動脈硬化性石灰化とメンケベルグ型中膜石灰化に大別される。血管石灰化の発症には，マクロファージおよび血管平滑筋細胞のアポトーシスに伴って放出される基質小胞による微細な石灰化と血管平滑筋細胞が骨芽細胞様細胞に形質転換することによる能動的な石灰化の２つの機序が存在する。動脈硬化性石灰化では，炎症反応が石灰化の発症に先行して見られることが最近のイメージング研究により明らかにされ，炎症依存性石灰化の概念が確立されつつある。一方，中膜石灰化では，エラスチン分解酵素活性の上昇によるエラスチンの断片化と細胞外ピロリン酸代謝調節機構の破綻が重要な役割を果たしている。

慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常（CKD-MBD）と血管石灰化小俣百世 , 深川雅史 , 角田隆俊 25巻5号 , 2015年4月 , pp.645-653

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　慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常（CKD-MBD）は末期腎不全の患者に限定した病態ではなく，保存期のかなり早い時点から始まっていることが認識されるようになった。CKD-MBDは，検査値異常・骨の異常・血管石灰化の３つの異常によって構成される。透析患者においては心臓血管死が，全死亡の40％以上を占めている。血管石灰化は心血管病変発症進展の病理組織学的機序として重要であり，CKD患者の死亡率増加の重要な因子であると認識されている。血清FGF23濃度はCKD進展と相関するだけでなく，多くの研究結果から，総死亡率・心血管病・血管石灰化にも密接な関係が示唆されている。　腎機能障害はklothoの発現低下・リン排泄障害を生じるが，血清リン値はFGF23とPTHの上昇によりCKD早期には正常範囲に保たれる。しかしこの時期からCKD-MBDの進展は始まっており，その予後改善には保存期CKD-MBDへの介入が検討されるべきであろう。

骨・血管連関と血管石灰化山本昌弘 25巻5号 , 2015年4月 , pp.655-660

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　古くより，骨粗鬆症と血管石灰化が臨床的に共存することが知られていたが，近年血管の石灰化は骨組織における骨形成に類似した分子メカニズムにより生じていることが明らかにされ，骨・血管連関が提唱されている。　RANK/RANKL/OPG経路が，この関連を説明する有力なメカニズムとして注目されている。しかし，閉経後女性に対する抗RANKL抗体による治療介入試験では，この関連を支持する所見が得られなかった。骨・血管連関のさらなる研究の発展が必要とされている。

Seminar

血管石灰化における血管平滑筋細胞の役割倉林正彦 25巻5号 , 2015年4月 , pp.661-669

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　血管石灰化は加齢，慢性腎臓病（CKD），糖尿病および動脈硬化をもつ患者では頻繁にみられる。これまでは，血管石灰化は，カルシウムとリンの受動的な蓄積と考えられてきたが，石灰化病変には，骨形成に関わる遺伝子が発現していることが示され，骨形成と類似した能動的な機序が働いていることが明らかにされてきた。血管壁にて石灰化する細胞の起源については，中膜平滑筋細胞，骨髄由来単核球，血管壁に存在する間葉系細胞などが報告されているが，マウスの発生工学的手法を用いて血管壁にて石灰化する細胞の起源はほとんどが中膜平滑筋細胞であることが実証されている。したがって，血管石灰化は，血管平滑筋細胞の分化異常と捉えることができる。われわれは，最近までに，（i）Runx2，Notchなどの分化調節因子が骨芽細胞への分化を引き起こすメカニズム，（ii）FGF23，advanced glycation end-product（AGE）/receptor for AGE（RAGE）系および長鎖飽和脂肪酸のパルミチン酸が直接に血管平滑筋細胞に作用して，骨芽細胞へ分化させることを見出した。血管石灰化の分子機序の解明は，現在の臨床血管医学の主要課題として注目されている。

高齢マウスにおける血管石灰化秋好沢諭 , 小川純人 , 秋下雅弘 25巻5号 , 2015年4月 , pp.671-677

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　血管石灰化は高齢者に多く見られる脳心血管系疾患の危険因子であり，高齢者に多く認められる病態である。血管石灰化の抑制，さらには治療改善についての探求は，健康長寿を全うできるかだけではなく，社会的には医療費の削減にもつながると考えられる。　しかし，血管石灰化研究は，細胞実験による分子機序の探求と，動物実験による石灰化像の観察に二分されている現状で未だ不明な点が多いため，実験モデル構築を含め，更なる研究が必要である。

不安定プラークにおける石灰化の意義稲葉真由美 , 上田真喜子 25巻5号 , 2015年4月 , pp.679-686

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　急性冠症候群の発症には，血栓形成を伴うプラーク破裂やプラークびらんが関与する。プラーク不安定化にはプラーク炎症や酸化ストレスの増大が寄与し，ヒト冠動脈の不安定プラーク（破裂性プラークやびらん性プラーク）の部位には，炎症細胞としてマクロファージ，Ｔリンパ球，好中球が認められる。一方ヒト血管壁の石灰化は，動脈硬化性プラークの石灰化と，メンケベルグ型中膜石灰化とに大別される。急性心筋梗塞患者の責任冠動脈の破裂性プラークには，小石灰化巣（spotty calcification）が散在性に認められることが報告されている。血液透析患者では，動脈石灰化や心血管イベントが高頻度に認められる。我々は最近，血液透析患者では毎回の透析セッション直後に血漿中酸化LDL値が有意に上昇することを明らかにした。この毎回の透析セッションに関連して起こる血漿中酸化LDL値の上昇は，透析患者における動脈硬化性病変の進展や石灰化の増強に寄与し，ひいては心血管イベントの発生につながると考えられる。

Topics

FGF23によるミネラル代謝調節と石灰化制御福本誠二 25巻5号 , 2015年4月 , pp.687-691

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　線維芽細胞増殖因子23（fibroblast growth factor 23：FGF23）は，腎近位尿細管リン再吸収と血中1,25-水酸化ビタミンＤ［1,25（OH）2D］の低下を介した腸管リン吸収の抑制から，血中リン濃度を低下させるホルモンである。このため，過剰なFGF23活性による低リン血症性疾患では，骨石灰化障害が惹起される。一方FGF23作用障害は，高リン血症，高1,25（OH）2D血症を特徴とする高リン血症性家族性腫瘍状石灰沈着症の原因となる。本症では，大関節周囲や血管などに異所性石灰化が生じる。従ってFGF23は，骨石灰化や異所性石灰化の防止に必須の役割を果たしている。

klotho欠損環境における血管石灰化長谷川智香 , 山本知真也 , 本郷裕美 , 坪井香奈子 , 網塚憲生 25巻5号 , 2015年4月 , pp.693-699

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　klotho遺伝子欠損（kl/kl）マウスは，FGF23/klotho軸の破綻により著明な高リン・高カルシウム血症を呈し，動脈中膜にメンケベルグ型血管石灰化が生じるモデル動物である。近年，中膜石灰化の病理機序として，血管平滑筋細胞内にリンが流入することにより，血管平滑筋細胞が骨芽細胞の様々な表現型を獲得し，生物学的に石灰化が生じる可能性が示唆されている。血管石灰化の病理機序の詳細を明らかにすることは，本疾患の治療・予防法の開発に広く応用できると考えられる。本稿では，kl/klマウスの大動脈でみられる血管石灰化について組織学的・微細構造学的な知見を紹介する。

石灰化大動脈弁組織におけるテネイシンＸ松本健一 25巻5号 , 2015年4月 , pp.701-710

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　我々は，細胞外マトリックス（ECM）・テネイシンファミリーのメンバーの一つであるテネイシンＸ（TNX）の発見当初より関わり，それ以来TNXの機能解明を目指して研究を行ってきた。TNXの機能の一つとしては，コラーゲンの組織構築や線維形成が挙げられる。また，TNX遺伝子（TNXB）は， I 型（古典型）および III 型（関節可動亢進型）エーラス・ダンロス症候群（EDS）の原因遺伝子の一つとして同定された。一方，この数年来，我々は，心血管疾患の病態を分子レベルで明らかにするために，プロテオミクス解析を基盤とした研究を進めてきた。その中で，大動脈弁狭窄症患者の手術時に切除された石灰化大動脈弁組織の一部を用いて，近傍の正常大動脈弁組織に比べ，発現変動を示す蛋白質の発現差異プロテオミクス解析を行った。その結果，興味深いことに，最も発現減少した蛋白質としてTNXを同定した。また，その他，コラーゲン組織構築や線維形成に関与する多くのECMの発現減少も明らかとなった。　本稿では，石灰化大動脈弁組織の発現差異プロテオミクス解析の結果と，最も発現減少を示したTNXの機能を概説し，コラーゲン線維の減少・破壊による大動脈弁の石灰化機構を考察する。

Therapy

血管石灰化とリン吸着薬花房規男 25巻5号 , 2015年4月 , pp.711-721

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　慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常（CKD-MBD）において，血管石灰化は心血管疾患を通じて予後と直接関連する異常である。高リン血症が血管石灰化とは深い関連があるが，高リン血症の治療としてリン吸着薬が使用される。リン吸着薬には，カルシウム（Ca）含有リン吸着薬，Ca非含有リン吸着薬があるが，Ca過負荷が石灰化を促進させる懸念が存在する。多くの臨床試験でも，Ca非含有リン吸着薬が，石灰化の進行を抑制することが示されている。また，鉄，マグネシウムなど新たなCa非含有リン吸着薬も開発されてきている。コスト，内服錠数，あるいはわが国に特有の状況などを考慮しながら，適正なリン吸着薬を選択することが必要である。

血管石灰化とビスホスホネート黒住旭 , 岡田洋右 , 中野和久 , 田中良哉 25巻5号 , 2015年4月 , pp.723-728

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　本邦では高齢化に伴い，糖尿病や慢性腎臓病患者数が増加の一途を辿っている。糖尿病や慢性腎臓病患者ではしばしば血管石灰化を併発し，これらは生命予後に大きな影響を与えるものの，根本的な治療は進んでいない。近年，血管石灰化の病態形成機構が解明され，骨の石灰化過程との類似性が明確にされてきた。その結果，治療法が未確立の血管石灰化に対して，骨吸収阻害薬であるビスホスホネート（BPs）の有用性が注目されている。本稿では，血管石灰化への治療薬としてのBPsの可能性について，当科における知見も加えて概説する。

血管石灰化（CKD-MBD）とシナカルセト横山啓太郎 25巻5号 , 2015年4月 , pp.729-736

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　Calcimimetics（カルシウム感知受容体作動薬）である塩酸シナカルセトは副甲状腺の主細胞に働きPTH分泌を抑制するのみならず，活性型ビタミンＤと異なり，血中リン（Ｐ），Caに対する低下作用も認められている。そのため，血管石灰化に抑制的に作用することが期待されている。腎不全モデル動物において，Calcimimeticsが血管に発現するカルシウム感知受容体（CaSR）を介し血管石灰化を抑制することが報告されている。EVOLVE試験は透析患者を対象として，塩酸シナカルセトの血管石灰化および心血管合併症の抑制効果を評価した。Intent-to-treat解析では有意な効果を見出すことはできなかった。しかし，最近になりEVOLVE試験の後解析において塩酸シナカルセトのアテローム型内膜石灰化関連病変（心筋梗塞，非出血性脳梗塞，不安定狭心症による入院，末梢動脈硬化性病変，心臓カテーテルによる死亡，大動脈瘤破裂，解離性大動脈瘤）には効果を認めなかったが，メンケベルグ型中膜石灰化関連病変（心不全，脳出血，突然死，肺梗塞，その他）に対する効果が見出された。

理解を助けるトレーニング問題

ATPおよびピロリン酸・リン酸代謝調節に関わる分子について塩井淳 25巻5号 , 2015年4月 , pp.737-738

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（2015年５月号特集：「血管石灰化の基礎と臨床」に関連した設問です。知識・情報の整理にお役立て下さい） ※PDFでは，本企画（理解を助けるトレーニング問題）の本号分すべてをご覧になれます。

血管石灰化における血管平滑筋細胞の役割について倉林正彦 25巻5号 , 2015年4月 , pp.738-739

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連載　注目の海外文献（37）

１．術後副甲状腺機能低下症－骨折，精神疾患，悪性腫瘍，白内障および感染リスクの検討大和梓 , 竹内靖博 25巻5号 , 2015年4月 , pp.742-743

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Lineup １．術後副甲状腺機能低下症―骨折，精神疾患，悪性腫瘍，白内障および感染リスクの検討

２．牛乳の摂取と死亡率および骨折リスクの関係：コホート研究原口瑞樹 , 竹内靖博 25巻5号 , 2015年4月 , pp.743-744

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Lineup ２．牛乳の摂取と死亡率および骨折リスクの関係：コホート研究

３．前破骨細胞が分泌するPDGF-BBは骨形成の際に血管新生を誘導する林恭秉 , 竹内靖博 25巻5号 , 2015年4月 , pp.744-744

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Lineup ３．前破骨細胞が分泌するPDGF-BBは骨形成の際に血管新生を誘導する

第36回東北骨代謝・骨粗鬆症研究会〈抄録〉 25巻5号 , 2015年4月 , pp.745-752

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バックナンバー 25巻5号 , 2015年4月 , pp.775-779

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特集予告（６月号，７月号） 25巻5号 , 2015年4月 , pp.781-781

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CLINICAL CALCIUM
25巻5号
(2015年4月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0917-5857 医薬ジャーナル社

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