CLINICAL CALCIUM 25巻4号 (2015年3月発行)

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特集　大腿骨近位部骨折～疫学から治療，リエゾンサービスまで～

Preface

巻頭言　～大腿骨近位部骨折　　――予防・治療の進歩と多職種による新たな取り組み～萩野浩 25巻4号 , 2015年3月 , pp.489-489

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Review

大腿骨近位部骨折の発生率　～世界と日本の現状～宮坂大 , 今井教雄 , 遠藤直人 25巻4号 , 2015年3月 , pp.491-498

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　大腿骨近位部骨折は骨粗鬆症性骨折の中で，最も重篤で生命予後に関係する骨折である。世界では骨粗鬆症治療の普及により減少している報告も多い。日本では1985年，新潟県における報告が初めてで，県レベルの全数調査であり，2010年まで経年的な調査が施行された。2010年の報告においても増加しており，減少している報告はない。高齢化社会が今後も継続する日本では早急な対策が望まれる。

大腿骨近位部骨折の危険因子藤原佐枝子 25巻4号 , 2015年3月 , pp.499-504

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　大腿骨近位部骨折の危険因子として，女性，高齢，低骨密度，既存骨折，低体重あるいは低BMI,飲酒，喫煙，骨折家族歴，ステロイド使用，転倒に関連した因子，大腿骨近位部の骨強度を反映する因子など多くの因子が報告されている。転倒に関連した危険因子として，転倒回数，衰弱，脳卒中，麻痺，筋力低下，薬剤（抗不安薬，抗うつ薬，催眠/鎮静薬）などである。大腿骨近位部骨折の二次骨折の危険因子としては認知症，呼吸器疾患などの合併症が挙げられている。

大腿骨近位部骨折の予防が可能な薬剤は？内山茂晴 25巻4号 , 2015年3月 , pp.505-509

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　本邦で使用可能な大腿骨近位部骨折の予防可能なエビデンスのある薬剤は，いずれも骨吸収抑制剤であるアレンドロネート，リセドロネートとデノスマブの３剤である。現時点でのエビデンスはないが，骨密度上昇効果から骨吸収抑制剤のデノスマブと骨形成促進剤のテリパラチドの併用療法も大腿骨近位部骨折予防が期待できる。

Seminar

大腿骨近位部骨折の予後村木重之 25巻4号 , 2015年3月 , pp.511-518

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　大腿骨近位部骨折の機能予後に影響する因子としては，受傷前の機能，認知症が挙げられる。一方，生命予後に関しては，近年の本邦での報告では，１年生存率は改善がみられるものの，受傷後１年以降も生存率は低下し続けている。生命予後の悪化因子としては，男性例，受傷前の低歩行能力，認知症，糖尿病，胃腸切除歴，入院中の肺炎の合併が挙げられる。今後，受傷後の機能維持のための長期リハビリテーションの確立が必要である。

多職種連携による大腿骨近位部骨折治療澤口毅 , 重本顕史 25巻4号 , 2015年3月 , pp.519-529

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　高齢者大腿骨近位部骨折に対し，多職種による集学的診療体制を組織した。連携を行う上での各部門内，部門間の問題点を検討し，改善策のコンセンサスを得た上で，各部門におけるマニュアル，ガイドラインを作成した。また専用電子カルテを作成し，院内紹介状を撤廃した。その結果，受診時に全例内科診察を行い，平均手術待機期間は1.3日となった。また，精神科との連携によりせん妄への早期対処が可能となった。退院時骨粗鬆治療薬処方のチェックを病棟薬剤師が行うことにより，退院時処方率は連携開始前の39％から95％へと著しい改善をみとめた。

大腿骨近位部骨折の治療のケアギャップ解消には何が必要か　～英国の経験を日本で活かすには？～髙橋榮明 25巻4号 , 2015年3月 , pp.531-544

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　英国の医療改革で，医療の継続的「質保証」と「効率」が求められた。わが国で英国の経験を活かすには，大腿骨近位部骨折を治療する病院に，継続的・体系的な自己評価の仕組みである〈1〉クリニカル・オーディット（臨床監査）を導入し，ケアの質を絶えず向上させること，〈2〉骨折リエゾンサービスを設置し，多診療科の支援のもと，多職種協働によって，院内のケアを行い，退院後の骨粗鬆症治療薬の継続と転倒予防を実践することが求められる。

Topics

医療連携による大腿骨近位部骨折の二次骨折予防　～大腿骨頚部骨折地域連携パスを利用して～松下睦 25巻4号 , 2015年3月 , pp.545-550

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　脆弱性骨折が骨折連鎖を引き起こすことはよく知られており，骨折後の二次予防の導入と継続は，大腿骨近位部骨折の増加が止まらないわが国では急務である。2006年から大腿骨頚部骨折地域連携パスが保険採用となったが，骨折の治療（手術とリハビリ）が主体で二次骨折予防の要素が欠けていた。二次予防啓発の文章とイラストを患者説明用紙に加えてみたが，薬物治療率の改善は見られなかった。そこで，回復期リハビリテーション病院退院時のアウトカムとして骨粗鬆症治療薬の導入の有無と種類，紹介先医療機関名を登録してもらい，６カ月後にアンケートで治療状況を把握する試みを開始した。既存の連携パスを利用した骨折リエゾンサービスとして提案したい。

骨粗鬆症リエゾンサービスによる大腿骨近位部骨折の二次骨折予防の実践池田聡 25巻4号 , 2015年3月 , pp.551-558

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　大腿骨近位部骨折患者数は経年的に増加しており，今後90歳以上の患者が増加すると予測されている。骨折をきたすとADLやQOLの低下，生命予後の悪化，医療・介護費用の高騰をまねく。この骨折を予防するためには一次予防も大切であるが，既存もしくは新規骨折患者に対する二次予防が特に重要である。二次予防の実践のためには，院内のみならず地域での医療機関との連携も含めた医師やメディカルスタッフの協力が不可欠である。本稿では我々の施設で取り組んでいる骨粗鬆症リエゾンサービスを紹介し，大腿骨近位部骨折の二次骨折予防の実践の一考となれば幸いである。

骨粗鬆症リエゾンサービス　～わが国での現状～鈴木敦詞 , 植田佐保子 , 垣田彩子 25巻4号 , 2015年3月 , pp.559-563

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　骨粗鬆症リエゾンサービスは，骨折予防におけるケアギャップを埋めるために日本骨粗鬆症学会により展開されつつある事業である。海外のFracture Liaison Serviceが骨折の二次予防を主たる目的としているのに対し，本サービスでは骨検診推進を含めた一次予防ならびに地域での啓発活動まで視野に入れた包括的取り組みである。骨粗鬆症マネージャー資格を取得したメディカルスタッフを本サービスの担い手とすることで，サービスの質の担保と統一性をはかっている。第１回資格試験に合格した骨粗鬆症マネージャーが，平成27年（2015年）４月より活動を開始する。

Therapy

大腿骨近位部骨折の手術療法正田悦朗 25巻4号 , 2015年3月 , pp.565-575

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　高齢者人口の増加とともに，骨粗鬆症を基盤とした骨折は増加の一途をたどっている。特に大腿骨近位部骨折は急激に増加しており，骨折後のQOLの低下や医療費の増加など様々な問題が出てきている。大腿骨近位部骨折においては高齢者が主体であることから，早期の手術的治療による離床，社会復帰が推奨されている。この大腿骨近位部骨折の多くは，股関節の関節内骨折である頚部骨折と関節外骨折である転子部骨折であるが，解剖学的な違いや血流の問題から治療法には違いがある。本稿では，これら骨折の手術的治療について記載する。

大腿骨近位部骨折のリハビリテーション尾﨑まり 25巻4号 , 2015年3月 , pp.577-584

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　わが国では，超高齢の進行とともに大腿骨近位部骨折は年々増え続けている。大腿骨近位部骨折をひとたび起こすと，患者のADLは低下するとともに肺炎，精神障害などの内科的合併症を引き起こし，生命予後も悪化する。　大腿骨近位部骨折患者には術前より可及的早期にリハビリテーションを開始し，筋力低下の予防，日常生活能力の維持，栄養状態を維持することが大切である。術後も翌日から座位を取らせるなど，早期離床に努めるべきである。　急性期，回復期，維持期にわたって多職種で介入し，患者のADL，QOL維持に努めることが大切である。

理解を助けるトレーニング問題

大腿骨近位部骨折の危険因子について藤原佐枝子 25巻4号 , 2015年3月 , pp.586-587

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（2015年４月号特集：「大腿骨近位部骨折～疫学から治療，リエゾンサービスまで～」に関連した設問です。知識・情報の整理にお役立て下さい） ※PDFでは，本企画（理解を助けるトレーニング問題）の本号分すべてをご覧になれます。

非定型大腿骨骨折について内山茂晴 25巻4号 , 2015年3月 , pp.587-587

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連載　注目の海外文献（36）

１．Fam20Cによるリン酸化，GalNAc-T3による糖鎖付加，およびfurinによる蛋白分解を介するFGF23の動的制御２．Dmp1の過剰発現はFam20Cノックアウトマウスの骨および歯牙の異常を是正できない３．FGF23は骨の細胞において内在性にリン酸化している道上敏美 25巻4号 , 2015年3月 , pp.590-593

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Lineup １．Fam20Cによるリン酸化，GalNAc-T3による糖鎖付加，およびfurinによる蛋白分解を介するFGF23の動的制御２．Dmp1の過剰発現はFam20Cノックアウトマウスの骨および歯牙の異常を是正できない３．FGF23は骨の細胞において内在性にリン酸化している

バックナンバー 25巻4号 , 2015年3月 , pp.615-619

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特集予告（５月号，６月号） 25巻4号 , 2015年3月 , pp.621-621

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基本情報

CLINICAL CALCIUM
25巻4号
(2015年3月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0917-5857 医薬ジャーナル社

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