CLINICAL CALCIUM 23巻9号 (2013年8月発行)

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特集　続発性骨粗鬆症～骨脆弱性をもたらす病態概念の拡がり～

Preface

巻頭言　～Secondary contributors to bone loss in fracture in osteoporosis という概念～竹内靖博 23巻9号 , 2013年8月 , pp.1249-1249

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Review

続発性骨粗鬆症の原因と病態山内美香 , 杉本利嗣 23巻9号 , 2013年8月 , pp.1251-1256

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　続発性骨粗鬆症は骨粗鬆症を惹起する特定の原因を有する場合を称し，多くの疾患や薬剤，栄養障害などが原因となる。続発性骨粗鬆症は原疾患の治療により，劇的に改善するため，原発性骨粗鬆症の診断時に続発性骨粗鬆症を鑑別することは極めて重要である。続発性骨粗鬆症はそれぞれ原因となる病態が異なるため，骨折リスクにおける低骨密度の関与も様々である。薬剤性続発性骨粗鬆症は原疾患に対する治療薬の副作用によるものであり，治療開始と同時に薬剤の骨への影響を回避すべき対応を要する。ステロイド性骨粗鬆症と同様に，性腺機能抑制療法における骨粗鬆症への対応については認知されてきている。

Seminar

内分泌学から見た骨代謝福本誠二 23巻9号 , 2013年8月 , pp.1259-1264

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　硬組織である骨は，生体の支柱，内臓の保護器官として機能することに加え，ミネラル代謝や造血にも必須の役割を果たしている。これらの機能の遂行のためには，骨と他の臓器との機能連関が必要である。内分泌系は，この骨と他臓器連関を担う機序の一つとしても機能している。骨は多くのホルモンの標的臓器として機能することに加え，自らホルモンを産生する内分泌臓器としても作用することが明らかにされた。

免疫学から見た骨代謝田中良哉 23巻9号 , 2013年8月 , pp.1265-1270

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　生体内において免疫系と骨代謝系は，強く影響を及ぼし合うことが分かってきた。また，免疫系の不均衡，および，それが引き起こす炎症性刺激は，破骨細胞の分化誘導，骨芽細胞の分化抑制を介して，骨代謝回転の不均衡を引き起こし，続発性骨粗鬆症をはじめとした様々な病態を形成する。例えば，免疫系を活性化・遷延化するT細胞サブセットであるTh1やTh17は炎症性サイトカイン産生を介して破骨細胞を誘導し，逆に免疫抑制を担うTregはCTLA-4（cytotoxic T-lymphocyte antigen 4）を発現して破骨細胞分化を抑制する。また，炎症性サイトカインは，破骨細胞の分化誘導，骨芽細胞の分化抑制を生じ，骨代謝回転の不均衡をもたらす。逆に，免疫系や免疫関連因子を標的とした治療は，免疫異常の制御とともに，骨代謝異常の是正を促すことがある。

血液学から見た骨代謝安倍正博 23巻9号 , 2013年8月 , pp.1271-1277

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　骨髄環境は，造血とともに破骨細胞や骨芽細胞の分化・活性化にも重要である。骨量は破骨細胞と骨芽細胞を中心とした細胞間，および細胞と骨基質の間のネットワークにより巧みに調節され維持されている。骨内で進展する多発性骨髄腫や一部のリンパ腫は，腫瘍由来因子により骨代謝系を干渉し，骨病変を形成するとともに，自己の増殖に有利な骨髄微小環境を確立している。骨代謝と造血あるいは骨内での腫瘍増殖とは密接な関連があると思われるが，一部の疾患を除き血液疾患の各種病態における骨代謝の実態は十分に解析されていない。また，各種治療の骨代謝への影響の検討も重要な臨床課題である。

神経学から見た骨代謝福田亨 , 竹田秀 23巻9号 , 2013年8月 , pp.1279-1283

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　レプチン欠損マウスにおける骨量増加の発見により，骨代謝が神経系にも制御されることが明らかとなった。特に交感神経，副交感神経系が骨代謝調節に機能することが解明されつつある。さらに最近では，感覚神経が骨代謝を制御することも明らかとなっている。このように，神経系は骨代謝と密接に関係している。

Topics

酸化ストレスと骨代謝野津雅和 , 山口徹 23巻9号 , 2013年8月 , pp.1285-1292

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　近年の疫学的な検討から，糖尿病や動脈硬化性疾患などの生活習慣病において骨折リスクが高まることが明らかとなっており，この機序の一つとして酸化ストレスが骨代謝に与える影響が注目されている。生活習慣病，加齢，閉経のいずれの状態においても活性酸素の産生亢進により酸化ストレスが増加し，骨代謝に関わる細胞や骨基質蛋白に影響することで骨脆弱性を引き起こす。酸化ストレスに対する治療については現時点で有効とされるものは少なく，さらなる治療薬の探索は今後の重要な課題である。　本稿では糖尿病，動脈硬化，腎機能障害，閉経など酸化ストレスの増加をきたす各々の状態において，酸化ストレスが骨代謝に及ぼす影響を概説する。

電解質異常と骨代謝～慢性低ナトリウム血症に伴う骨粗鬆症～椙村益久 23巻9号 , 2013年8月 , pp.1293-1298

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　低ナトリウム（Na）血症と骨折との相関に関する報告が増えてきている。従来，原因の一つとして低Na血症では認知機能の低下とともに歩行安定性が低下し転倒のリスクが高くなり骨折が増えると考えられているが，我々は，米国の疫学的検討より低Na血症が骨粗鬆症を起こすこと，また抗利尿ホルモン不適合分泌症候群（SIADH）動物モデルと細胞培養によって慢性Na血症が破骨細胞の活性化を引き起こすことを見出し，その機序として酸化ストレスの関与を提唱している。　本稿で，最近の疫学研究を紹介すると共に，我々の研究結果を中心に低Na血症と骨粗鬆症について概説する。

カドミウムや鉄などの重金属と骨代謝木戸慎介 23巻9号 , 2013年8月 , pp.1299-1306

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　カドミウムおよびその化合物は，強毒性を有し生態系で生物濃縮を引き起こす環境汚染物質であり，イタイイタイ病の原因物質でもある。本症は近位尿細管障害（Fanconi Syndrome）と骨粗鬆症を伴う骨軟化症（Osteomalacia）を特徴とするが，その進行は緩慢で進行度を判定する基準も乏しく，その明確な診断は困難であった。我々は，カドミウム（Cd）曝露による腎・骨障害などの健康障害を個人や集団レベルで早期かつ特異的に把握する新たなバイオマーカーとして，リン利尿因子であるfibroblast growth factor 23（FGF23）に着目した。また，鉄欠乏性貧血の治療に用いられる含鉄酸化鉄剤（SFO）もまた，低リン血症ならびに骨軟化症様症状を引き起こすとともに，血中FGF23値の顕著な上昇が認められることから，Cdや鉄（Fe）等の重金属類により引き起こされる腎・骨障害の発症には何か共通の機序の存在が示唆される。

薬剤による骨代謝障害と骨折鈴木尚宜 23巻9号 , 2013年8月 , pp.1307-1312

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　多くの薬剤が骨折リスクを増加させる可能性がある。骨粗鬆症は，原発性あるいは続発性に分類される。薬物による骨粗鬆症は，続発性骨粗鬆症の一つである。　グルココルチコイドは，薬物による骨粗鬆症の中でも最も頻度の多い原因である。しかし，その他にも骨折リスクを増加させる可能性のある薬剤があり，その中には，サイロキシンの過剰，gonadotropin-releasing hormone（GnRH）アゴニスト，アロマターゼ阻害薬，チアゾリジン系，プロトンポンプ阻害薬，ループ利尿薬，抗凝固薬，選択的セロトニン再取り込み阻害薬（SSRI），三環系抗うつ薬，抗痙攣薬などが含まれる。　本稿では，臨床試験と薬剤による骨折の機序について議論する。

ビタミンＤ欠乏と骨折渡部玲子 , 岡崎亮 23巻9号 , 2013年8月 , pp.1313-1319

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　ビタミンＤは骨・カルシウム代謝の維持に必須の因子である。ビタミンＤ欠乏は，続発性副甲状腺機能亢進症により骨密度低下をきたすだけでなく，骨石灰化障害の原因となる。さらに転倒リスクも上昇させるため，骨折リスクとなる。ビタミンＤ充足の指標には血清25（OH）D濃度が用いられ，30 ng/mL以上が推奨されているが，わが国ではその測定が保険適用になっていない。ビタミンＤ欠乏に対するビタミンＤ補充は，骨密度増加と転倒防止効果を介して，骨折抑制効果をもたらす。骨粗鬆症の診療・治療において，ビタミンＤ充足度の評価と適切な天然型ビタミンＤの補充は重要な前提条件である。

呼吸器疾患と骨代謝異常平井豊博 23巻9号 , 2013年8月 , pp.1321-1326

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　呼吸器診療における呼吸器疾患と骨代謝異常との関係は，慢性呼吸器疾患に対するステロイド治療によって起こる骨粗鬆症だけでなく，近年COPD（慢性閉塞性肺疾患）を中心に呼吸器疾患そのものが骨代謝異常に関係していることが明らかになり注目されてきている。COPDは，全身性炎症により肺以外の臓器にも影響する全身性疾患として考えられ，その併存症の一つが骨粗鬆症であり，COPDの管理上，重要視されてきている。　本稿では，COPDを中心に呼吸器疾患と骨代謝異常について概説する。

糖尿病と骨代謝異常山本昌弘 23巻9号 , 2013年8月 , pp.1327-1335

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　メタ解析を含む複数の臨床研究により，糖尿病患者では対照群より骨折リスクが高いことが示され，糖尿病は続発性骨粗鬆症をきたす基礎疾患であることが明らかとなった。糖尿病では骨密度から予測される以上に骨折リスクが高く，骨コラーゲンの糖化亢進や低骨形成を伴う低骨代謝回転による材質特性の劣化や，長幹骨の皮質骨菲薄化や多孔化などの構造特性の劣化による骨質低下型の骨脆弱性亢進を特徴とする。糖尿病による続発性骨粗鬆症は罹患率が高いと思われる。しかし，糖尿病に対する診断基準と標準的治療法は存在しておらず，これらを確立するために，大規模な観察研究および治療介入研究が必要である。

Therapy

ステロイド性骨粗鬆症の治療戦略早川伸樹 , 鈴木敦詞 23巻9号 , 2013年8月 , pp.1337-1344

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　ステロイドで治療する疾患は多岐にわたるが，その代表的副作用である骨粗鬆症および関連骨折は，続発性骨粗鬆症の最多の原因の一つである。そのため，ステロイド性骨粗鬆症（GIOP）の管理と治療を目的としたガイドラインは日本を含む各国で作成されている。GIOP治療の第一選択薬であるビスホスホネート薬は，GIOPに対して十分な骨折予防のエビデンスを有する。さらに第二選択薬として，わが国のガイドラインではビタミンDとビタミンKがあげられている。GIOPの病態は骨形成作用低下が主体であるため，海外のガイドラインでは，著しい骨折高リスク群に対しては，骨形成促進作用を有するPTH1-34製剤（テリパラチド）が推奨されている。最近，わが国でも上市された抗RANKL抗体もGIOPに対する有用性が期待されている。

関節リウマチにおける骨粗鬆症治療戦略大野久美子 , 大橋暁 , 田中栄 23巻9号 , 2013年8月 , pp.1345-1352

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　関節リウマチ（rheumatoid arthritis：RA）は，慢性炎症を伴う免疫系の異常により破骨細胞が活性化され，その結果，傍関節性骨粗鬆症や関節局所の骨破壊が発生し，骨びらんや関節変形をきたす。加えてステロイドなどの薬剤や身体活動性の低下といった複数の要因により，全身の骨代謝回転が亢進し，骨密度や骨質の低下といった全身性骨粗鬆症を引き起こし，骨折危険性が高くなる。RAの骨粗鬆症治療は，発症早期から疾患装飾性抗リウマチ薬（DMARDs）や生物学的製剤を使用し局所の炎症を抑制し，さらに骨粗鬆症治療薬を積極的に併用することで，全身の骨粗鬆化を予防し骨折の危険性を軽減することが重要である。

● 理解を助けるトレーニング問題

2型糖尿病の骨折リスクについて山本昌弘 23巻9号 , 2013年8月 , pp.1354-1354

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（2013年９月号特集：「続発性骨粗鬆症～骨脆弱性をもたらす病態概念の拡がり～」に関連した設問です。知識・情報の整理にお役立て下さい） ※PDFでは，本企画（理解を助けるトレーニング問題）の本号分すべてをご覧になれます。

ステロイド性骨粗鬆症およびその治療について早川伸樹 , 鈴木敦詞 23巻9号 , 2013年8月 , pp.1355-1355

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連載　注目の海外文献（17）

１．カルシウム摂取，血管石灰化，そして血管疾患　２．牛乳とヨーグルトの摂取は，高い骨密度とは関係するが，大腿骨頸部骨折とは関係しない　３．なぜカルシウムとビタミンＤの無作為化比較試験は，時には失敗するか上西一弘 23巻9号 , 2013年8月 , pp.1358-1360

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Lineup １．カルシウム摂取，血管石灰化，そして血管疾患２．牛乳とヨーグルトの摂取は，高い骨密度とは関係するが，大腿骨頸部骨折とは関係しない３．なぜカルシウムとビタミンDの無作為化比較試験は，時には失敗するか

バックナンバー 23巻9号 , 2013年8月 , pp.1383-1387

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特集予告（10月号，11月号） 23巻9号 , 2013年8月 , pp.1389-1389

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基本情報

CLINICAL CALCIUM
23巻9号
(2013年8月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0917-5857 医薬ジャーナル社

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