JOHNS 40巻7号 (2024年7月発行)

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特集　頭頸部癌の術前・術後管理のコツ

術前

診断・ステージングのコツ長岡　真人 40巻7号 , 2024年7月 , pp.687-690

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はじめに

　頭頸部癌は，部位ごとの解剖学的特性も把握した診断が大切である。検査計画を立案する前に，身体診察が基本となるが，臨床病期分類には「頭頸部癌取扱い規約」によるTNM分類が用いられる。具体的には，原発部位，リンパ節や遠隔転移などを内視鏡検査，画像検査，組織検査で評価する。頭頸部悪性腫瘍全国登録の2020年度初診症例の報告書^1）では，リンパ節転移を認める症例は42.6％である一方，遠隔転移を認める症例は2.9％と少ない。また，解剖学的特徴として体表に近い部分であるため身体診察から得られる情報は多く，正確な評価が重要である。

術前検査のコツ酒井　昭博 40巻7号 , 2024年7月 , pp.691-696

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はじめに

　術前検査は一般的には，最適な状態で手術に臨めるように，患者の全身状態，血液の状態，呼吸機能，心機能などを評価するために行われる。また，頭頸部癌においては，これらに加えて局所の評価も重要である。そのために行われる検査には，病理組織診断，視診・触診，耳鼻咽喉科内視鏡検査，CT・MRIなどの画像検査，上部消化管内視鏡検査などがある。これらの検査・評価は，手術の成功と安全を確保し，術後の予後を改善するために不可欠である。

画像診断のコツ齋藤　尚子 40巻7号 , 2024年7月 , pp.697-701

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はじめに

　頭頸部癌の画像診断の目的は局所の深達度や広がり，リンパ節転移や遠隔転移の検索，重複癌の検索，その他の副所見など多岐にわたる。特に術前のCTやMRIは重要な検査であり，画像でしか診断できない所見もある。今回は術前の画像診断で特に重要である動脈浸潤と神経周囲進展を取り上げる。これらについて放射線科医の立場から，検査法や読影の際のちょっとしたコツやポイントを述べていく。

手術計画のコツ折田　頼尚 40巻7号 , 2024年7月 , pp.702-706

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はじめに

　頭頸部癌の手術計画を立案するに際して，患者の性別・年齢，既往歴等を含めた全身状態，それに伴う術中・術後の危険性，手術を行うことによって期待できる予後，本人家族の治療意欲・希望，術後の周囲からのサポートの有無，職業を含めた社会的背景・経済状況，など考慮すべき点は多岐にわたる。

術前化学療法のコツ辻川　敬裕 40巻7号 , 2024年7月 , pp.707-710

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はじめに

　進行頭頸部癌への術前化学療法は，喉頭温存へのchemo-selectionとしての位置づけや^1），実臨床における手術待機中の進行抑制，縮小・温存手術を目的として用いられる^2）。本稿では，術前化学療法の管理において，治療前，治療中，治療後において行うべきことや注意点を整理し，レジメンの選択，有害事象の概要と管理，患者説明，減量・休薬，投与間隔について述べる（図1）。

術前栄養管理のコツ今井　隆之 40巻7号 , 2024年7月 , pp.711-716

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はじめに

　頭頸部癌は口腔・咽頭など摂食・嚥下の通路に生じる悪性腫瘍である。そこにはがん特有の代謝異常なども複雑に関与しているものと考えられるが，頭頸部癌患者の35～60％の症例は治療開始前からすでに栄養障害を呈していることが知られている^1）。手術によって口腔・咽頭の構造変化，術後嚥下障害などを生じるとその栄養障害に拍車がかかる。除脂肪体重の減少で示される体タンパクの減少により免疫能の低下，創傷治癒の遅延をきたし，除脂肪体重が30％減少すると窒素死といって生命の維持が困難な状況にまで陥る。よって頭頸部癌の治療において栄養療法は最重要な支持療法の1つであり，適切な栄養管理の実施によって頭頸部癌患者の治療後の予後，QOLの向上にも寄与することが期待される。

術前禁煙のコツ小坂　順子 40巻7号 , 2024年7月 , pp.717-720

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はじめに

　喫煙が手術全般において悪影響を与えることは読者の方々においても周知の事実であると考えるが，改めて術前禁煙の重要性について理解を深めていただき，患者に対する術前禁煙を勧めるコツについてお伝えできればと思う。

術前口腔ケアのコツ光永　幸代 40巻7号 , 2024年7月 , pp.721-723

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はじめに

　頭頸部癌の手術は，呼吸・嚥下・発声などの重要な機能や審美性への影響が大きい上に，広範囲な切除と再建を伴うものでは手術時間も長く侵襲の大きな手術になりやすい。また，頭頸部癌は，飲酒，喫煙などの環境因子が主な発がん因子であり，高齢や並存疾患の増加など患者がハイリスクであることも少なくない。頭頸部癌手術の成功のためには多職種による周術期合併症への対応が必要不可欠であるが，歯科的な評価，治療介入により口腔内を清潔で湿潤した良好な環境に保ち，口腔機能を維持するための一連の管理を行うことで，治療の質の向上，安全性の担保，患者の療養生活の質の向上の一助としようとする考えが，認識として広がりつつあり^1），歯科診療報酬制度で “周術期等口腔機能管理” が算定可能となったことからも，歯科における口腔管理の担い手も拡大している。

チームアプローチのコツ向川　卓志 40巻7号 , 2024年7月 , pp.725-728

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はじめに

　頭頸部癌診療は，最もチーム医療が必要とされる領域の1つと考えられる。頭頸部癌は他がん腫と比較し，手術，放射線治療，化学療法などの各治療管理には高い専門性が必要とされ，かつその治療行程も多岐にわたる^1）。高度な技術や知識を持った各専門職のメンバーが集結することで，頭頸部癌患者の予後改善へも寄与するとされるこのチーム治療の必要性は近年増し，手術加療においても頭頸部外科医のみでは，術前術後の管理は十分ケアできない時代になっている^2）。

情報収集と患者教育のコツ山﨑　知子 40巻7号 , 2024年7月 , pp.729-732

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はじめに

　患者およびその家族に対して，あらかじめ教育（説明）しておくべき内容は多岐にわたる。患者背景，がん種，治療内容はおのおの異なるため，教育（説明）においては配慮が必要となる。患者によっては，多様な支援が必要になることもあり，多職種と連携することが欠かせない。

術後

術後疼痛管理のコツ伊原　奈帆 40巻7号 , 2024年7月 , pp.733-736

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術後の疼痛管理の重要性

　術後痛を放置すると，疼痛により体動が制限されることでさまざまな合併症が起こる。気道分泌物の貯留や末梢気道閉塞によって呼吸機能が低下する。交感神経刺激により，不整脈，頻脈，高血圧，心仕事量増加，心筋酸素消費量の増加，消化管蠕動運動抑制，異化亢進による消耗が起こる。術後痛への適切な対応は，これらの悪影響を軽減し患者の回復を促進する。

術後栄養管理のコツ橋本　香里 40巻7号 , 2024年7月 , pp.737-740

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はじめに

　頭頸部癌はがん全体の約5％を占め，2017年には全世界で約89万人が新規に診断され，頭頸部癌が原因で約50万人が死亡したとされている^1）。頭頸部領域は言わずもがな，摂食嚥下に最も関係する部位である。がんを発症すると，咀嚼や嚥下の障害，嗅覚・味覚低下などによる食欲不振，また治療毒性などに関連して容易に栄養不良をきたし治療的介入を要する。

術後口腔ケアのコツ上野　尚雄 40巻7号 , 2024年7月 , pp.741-743

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はじめに

　外科手術の周術期の合併症を抑制することは，治療予後の改善のみならず医療経済的にも重要な意味を持つ。術後合併症には，口腔内の環境（衛生状態，歯科疾患など）に関連して生じるものもあり，術後も口腔ケアを継続して行うことで，肺炎や創感染など感染性合併症のリスクを軽減し，また手術後の経口摂取再開を支援して，手術後の回復の一助とすることが期待できる（表1）。

機能温存手術後の管理のコツ岡野　渉 40巻7号 , 2024年7月 , pp.745-748

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はじめに

　喉頭機能温存手術は，根治性と喉頭機能を担保するために必要な解剖学的構造を理解し，適応についての理解を深め，適切な術中操作を行うことが重要である。術後管理のコツは術後合併症を最小限に留めるためのポイントを押さえることであるが，そのためには適応，術中の注意点から理解することが必要である。

頭頸部再建，遊離皮弁術後の管理のコツ小野寺　文 , 櫻庭　実 40巻7号 , 2024年7月 , pp.749-752

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はじめに

　頭頸部再建の術後管理のポイントは，①全身管理，②手術部位合併症の予防・早期発見，③患者の早期離床，早期リハビリテーション開始である。輸液，血圧コントロールによる循環動態の管理は基本であるが，頭頸部再建では手術部位の合併症が時に致命的になることもあり十分な注意を要する。また，遊離皮弁術後の場合には皮弁の血流不全による再手術の可能性もある。早期離床は患者のADLの低下を予防し，せん妄発症率を低下させるなどの利点がある。これらを踏まえた上で，医師のみならず，看護師，歯科医師，理学療法士などの多職種がチームとして術後管理を行うことが求められる。

術後（化学）放射線治療のコツ古平　毅 40巻7号 , 2024年7月 , pp.753-757

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はじめに

　局所進行頭頸部癌に対する治癒を目指す根治療法としては手術または放射線治療が選択される。頭頸部癌の多くは初診時に再発リスクが高い局所進行がんで，局所療法単独では十分な成績が得られないため，手術，放射線治療に加えて化学療法を含む複数の治療法による集学的治療を実施することが多い。

術後リハビリテーション医療のコツ堅山　佳美 , 本郷　匡一 , 濱田　全紀 , 尾﨑　敏文 40巻7号 , 2024年7月 , pp.758-762

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はじめに

　がん患者の周術期リハビリテーション医療は近年重要視されている。鼻・副鼻腔，口腔，咽頭・喉頭，唾液腺，甲状腺などにできるがんを総称し “頭頸部癌” として扱われる。頭頸部癌の発生頻度は全身のがん全体の5％未満であるが，日常生活に欠かせない感覚器や運動器などの機能を有している。

術後嚥下リハビリテーションのコツ丸尾　貴志 , 小山　恭平 40巻7号 , 2024年7月 , pp.763-766

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はじめに

　頭頸部癌に対する標準治療は，手術，（化学）放射線療法，化学療法を組み合わせ，集学的に行われる。特に頭頸部領域は，音声・嚥下などQOLに直結した機能が集中する。これらの機能を温存あるいは治療後に回復させることを念頭に入れて，治療戦略を立てる必要がある。

術後言語リハビリテーションのコツ神田　亨 40巻7号 , 2024年7月 , pp.767-771

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はじめに

　「声が出なくなるならば生きていく価値がない」

　「発音がうまくできなくなるならばもう人には会いたくない，仕事も辞めるつもりです」

　術前オリエンテーションの場でこのような想いを吐露する患者と多く接してきた。

看護師による退院後の支援体制の確立宮下　陽子 , 石井　美紀 40巻7号 , 2024年7月 , pp.772-774

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はじめに

　咽頭や喉頭を摘出する頭頸部癌の手術で生じる機能障害は，日常生活だけでなく就労など社会活動や経済的な問題に重大な影響を与える。患者・家族ともがん告知後，精神的動揺がある中，がんを治癒するため声を代償にする決断をしても，退院後に失声以外の予想していなかった日常生活の変化や社会生活の困難に直面することがある。呼吸経路の変更に伴う生活上の課題を具体的にイメージでき，理解した上で治療を選択できるよう支援する必要がある。

術後経過観察・フォローアップのコツ松尾　美央子 40巻7号 , 2024年7月 , pp.776-779

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はじめに

　頭頸部癌治療後に積極的サーベイランスを行う第1の目的は，自覚症状が出現する前に，早期の段階で再発を発見し予後の改善につなげることであり，第2の目的は，治療後の機能障害を早期に発見し，患者のQOL（quality of life）を維持または向上させることである。本稿では前者について，扁平上皮癌と非扁平上皮癌についてそれぞれ述べる。

連載　古典あれこれ

蝸牛内の組織・構造に名を残したKölliker，Reissner，Rosenthal，Nuel 細谷　誠 40巻7号 , 2024年7月 , pp.780-784

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はじめに

　蝸牛内にはさまざまな細胞や組織構造が存在するが，コルチ器（Alfonso Cortiに由来）をはじめとして，人名に由来する細胞や組織も多い。以前，支持細胞のクラウディウス細胞，ダイテルス細胞，ヘンゼン細胞に名前を残した3人の学者の人生について紹介した^1）。今回は，蝸牛内のその他の組織・構造に名を残した4人の学者について紹介したい（図1）。

連載　診療つれづれ

嚥下障害―在宅でのリハビリをどのようにするか？― 藤田　彰 40巻7号 , 2024年7月 , pp.785-787

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はじめに

　当院（藤田耳鼻咽喉科医院，神戸市垂水区）を受診された嚥下障害の方を積極的に診察するようになって15年になる。最初は平成20年6月で，今年1月に307番目の方が受診となった。この症例集積から地域のクリニックでの嚥下障害の診療の中で，本稿では在宅での嚥下リハビリについてまとめてみたい。

連載　わたしの研究歴

内耳電気生理研究から耳硬化症臨床研究へ植田　広海 40巻7号 , 2024年7月 , pp.788-791

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はじめに

　私は，1979年に名古屋大学医学部を卒業し，1年間のローテート研修後名古屋大学医学部耳鼻咽喉科学教室に入局し大学院生となった。三宅弘教授に研究テーマは自分で決めてよいと言われたので，当時ABR検査が出たてのころで他覚的聴力検査に興味があったため，棚橋汀路先生をボスとする聴覚電気生理グループに入った。当時はうさぎを使って，聴覚刺激による脳幹のニューロンの反応を週に1回夜を徹して行っていたが，理論がわからないせいもありあまり興味が持てなかった。そんなときに縁あってNorth Carolina州にあるNIEHS（国立衛生研究所環境健康部門）の小西輝三先生の元へ1年間visiting fellowとして留学する機会を得た。

連載　症例をどうみるか

糖尿病に合併した鼻中隔膿瘍の1例山本　レナ , 竹内　成夫 , 大木　雅文 , 菊地　茂 40巻7号 , 2024年7月 , pp.793-796

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はじめに

　鼻中隔膿瘍は抗菌薬が発達した近年稀ではあるが，外傷や歯牙からの炎症の波及で発症することがあり^1,2），早期診断と適切な処置がなされなければ後遺症として鞍鼻や稀ではあるが，髄膜炎や敗血症など重篤な合併症を引き起こす可能性のある疾患である^3）。

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目次 40巻7号 , 2024年7月 , pp.684-685

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バックナンバー 40巻7号 , 2024年7月 , pp.710-710

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学会・研究会予定 40巻7号 , 2024年7月 , pp.744-744

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バックナンバー 40巻7号 , 2024年7月 , pp.775-775

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学会・研究会予定 40巻7号 , 2024年7月 , pp.797-797

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次号予告 40巻7号 , 2024年7月 , pp.798-798

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JOHNS
40巻7号
(2024年7月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0910-6820 東京医学社

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