胃と腸 7巻9号 (1972年9月)

今月の主題 胃集検で発見された胃潰瘍

主題

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 胃集検は,癌をより早期に発見したいという期待をもって始められた.そして,その目的はある程度達成されつつある.ところが癌のピックアップに平行して,ポリープと潰瘍がふんだんに発見されるようになった.集検の隠れた功績である.

 日本人には胃潰瘍が多い.欧米諸国で潰瘍といえば十二指腸潰瘍であるが,日本では胃潰瘍である.そして御承知のように胃癌もとくに多い.この両者の間に因果関係がありはしないかと考えるのは当然のことであろう.それは即ち潰瘍癌という考えとなって長い間私どもの頭を支配した.しかし,最近は潰瘍を長い間観察していてもなかなか潰瘍癌は発生して来ないということで,この関係に疑問がもたれるようになった.もう一つは癌が先行した潰瘍と癌の共存例でも,悪性サイクルの中に巻き込まれると,組織学的にはどちらが先か区別がつき難くなるということも分って,学問的な納得もある程度つくようになった.

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 胃集団検診は,健常者より胃癌の早期発見を第一の目的として発展してきた.その際に当然として,良性胃疾患も拾いあげられる.ことに胃潰瘍は,その発見頻度が胃癌の約10倍になる高率であり1)2),無自覚性潰瘍や潰瘍瘢痕の多いことにも注目され,陥凹性早期胃癌との鑑別上でも問題となる3)

 胃集検が地域住民を対象とするのみでなく,職域における健康管理の一環として実施されることが多くなってきた現状では,一層,胃潰瘍も重要視されねばならない.

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 胃潰瘍の疫学的諸事項の検討は古くから行なわれているが,その成績はまさに千差万別で一定の見解として理解するにはまだ程遠いと言わざるをえない.幸いわが国には胃集団検診という独得の検査方法が次第に体系づけられてきたので,この方面からのアプローチが可能となり,従来までと異った方向から疫学的全貌を把握する緒が得られるようになってきた.中でも発生頻度と発見胃潰瘍の分析成績は,検査器機とそれにたづさわるものの技術と能力によって較差が生じることは避けられないところであり,従って今回はこのような点も考慮して昭和44年度より同46年度までの最近3年間の胃集検発見胃潰瘍の分析を試みた.

検討方法と対象

 検討項目としては頻度,発見胃潰瘍の性状を主とし,対象は岡山県胃集検の精検報告書より得た40歳以上の胃潰瘍の発見成績の分析を行ない,さらに某山村地域の一般住民を対象にして間接X線テレビのスクリーニングに始まり精検,治療,経過追跡に至るまで全て自験で行なった発見胃潰瘍と同じく間接X線テレビによる胃集検で全てを自験で行なった某職域の発見胃潰瘍の症例を併せて胃潰瘍の頻度,分布,大きさ等を性別,年齢別に検討しさらに職域検診と一般住民検診との間の差異について検討した.

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 胃集検が,胃の悪性病変の早期発見に貢献した実績と意義は,高く評価されて良い.

 しかし一方,胃集検で発見されている胃疾患の中で,良性疾患の発見頻度は胃癌よりはるかに多く,早期発見,早期治療によって人類社会へ大きく貢献している.

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 疾病の頻度を論ずる場合,それを集計処理する立場によって,いろいろな数値がでてくる.たとえば,公衆衛生学的立場からは死亡統計が,内科医は臨床統計を,外科医は手術例から,病理学者は剖検例からの病理統計を,という具合に様々な角度からその疾病の発生頻度が算出される.特に胃潰瘍の場合は胃癌とちがって治癒,再発という可逆的状態を含んでおり,いきおい,ある時点の罹病状態という断面についての集計にならざるを得ない.

 しかし,これらの数値は一定の民族や地域における一般住民の疾患の頻度としては,実態を把握するに適切なものとはいいがたい面がある.

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 どの疾患にでも言えることだが,疾患の頻度と性状および動態を知るためには,集められた資料の条件が一定にされない限り,その意義づけは慎重であらねばならない.

 胃潰瘍についても全く同じことが言えそうである.幸い胃集検が普及されてきたため健康人中に存在する胃潰瘍について色々の情報がえられるようになったが,もし健康人中の胃潰瘍の正確な頻度と疾患の性状,およびその動態が分かれば,胃潰瘍の分析に大変役に立ちそうである.

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 胃癌による死亡率の著明な低下を来たすまでにはいたらないが,胃集検の普及により全国で数多くの早期胃癌が発見され胃集検は次第にその初期の目的を達成してきている.同一集団を対象とした逐年検診では胃癌の発見率すら減少し,これ以上は間接フィルム読影の限界であるというところまでになってきた.

 このような状況になってくると,胃集検においては胃癌の早期発見という第一目的以外に,他の胃疾患の発見やその動態を知るということも大きな目的と役割の一つになってくる.ことに,職域胃集検では同一集団を継続して検診することが多いため,集団内の胃潰瘍の動態を知り,さらに一歩進んでこれを管理することは健康管理のうえからも重要な責務の一つである.

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 春の連休も終った5月中旬のある日私のもとに一通のぶあつい封書が松山からとどいた.それは四国地方がんセンターの浅野医長と読影委員会研究班の徳永金正氏が中心となってまとめあげた愛媛県胃集検の業績集であった.その内容は「モデル地区における5力年間の逐年胃集検1)」の成績を中心とした詳細な資料で,私も心待ちにしていたものであった.それというのも,昭和41年の秋に松山市に四国地方がんセンターが開設された際,東京の国立がんセンターから数人のスタッフが応援にかけつけ,ほぼ同時期に発足した胃集検についても,その企画立案の段階から全面的に参画し,私自身も第2陣として43年夏から2年間赴いたといういきさつがあったからである.資料を開いてまず目についたデーターの主なものは,次のようなものであった.

 ①モデル集団1,965人に対して,昭和42年度から行なっている逐年検診の5年連続受診率は80.3%,精検受診率の平均は96.2%と高率を維持していること.

 ②発見胃癌についてみると,進行胃癌は2年目で0,3年目に1例,4年目以降は0であり,また早期胃癌は4年目以降0となっていて,逐年検診の有効性を示していること.

 ③昭和43年度から実施しているストレート精検**の推移をみると,その受診率は常に90%以上であり,その平均は95.1%と高く,地域住民の管理方式としてストレート精検の有用性の高いことを示していること.

 **これは,前年度までの精検,処置によって病変の存在の明らかな要管理群,および恒常的と思われる胃変形や術後胃などを有する間接X線非適応群に対して,次回より間接集検を省き直ちに精検を施行して集検の能率化を図るもの.

 このような職域検診の成績にも匹敵する予想以上の好成績をみるにつけ思うことは,地元市町村の衛生担当者の熱意,わけても保健婦の果たす役割が如何に大きいものであるかということである.もちろん,モデル集検の基幹病院である四国地方がんセンター,県立中央病院,赤十字病院の3病院において,少ないスタッフをやりくりしながら,診療活動と集検活動を併行して努力している医師グループや運営当局が,集検のかなめであることはいうまでもない.しかし,3病院ともそれぞれの事情で医師の移動が頻繁に行なわれ,集検開始当初の担当医師が1人も居ない現状である.このような人事交流の動きは,昨今では松山だけの特殊事情ではなく,むしろ全国的な傾向といえるようである.このような状況のもとで多年に亘る逐年検診を充実させ.円滑に行なうには,地域住民に密着している保健婦との緊密な連けいを保つことが不可決の要素と考えられるのである.因みに2,3のエピソードを紹介しておこう.

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Ⅰ.潰瘍患者対策としての胃集検の意義

 胃集団検診のそもそもの出発点に於ける第一の目標は,胃癌の早期発見,就中早期胃癌の発見にあり,これと関連したその他の良性胃疾患,例えば胃・十二指腸潰瘍,胃ポリープ状隆起性病変の発見はむしろ附随的な意味をもつものであった.しかし,現実的には集検により発見される胃癌患者はたかだか0.1~0.5%程度の頻度にしか過ぎないのである.勿論致命的な疾患である以上,発見数の多寡によってその評価を低くみる考えは毛頭ない.しかし,胃癌の10ないし20倍の頻度の消化性潰瘍が発見されて来た事実は,まさに注目に値するものである,本来,癌に比べ愁訴を有することが多いと考えられていた潰瘍患者が,実は無自覚あるいは一過性のごく軽度の心窩部不快感,圧重感等を感じるのみで,実際には健康だと考えて日常の生活を送っていることの少なくないことが明らかとなった.一方また,消化器症状を訴えつつも器質的変化を証明できず,癌ノイローゼ傾向の強い人達も多い.それでこれらに対する対策が重要視されねばならないのは当然の帰結といってよい.したがって胃癌の発見に重点をおく地域住民を対象とした集検はともかく,職域における胃集検には早期胃癌の発見もさることながら,消化性潰瘍患者の発見とその対策という点に大きな意義をもたせるべきことをかねてより主張して来た.ここに職域集団の健康管理対策の一環としての胃集検の意義を強調するものである.

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 胃癌の早期発見を目的として実施している胃集検において,胃潰瘍はかなり高い頻度で発見されている.筆者らの施行してきた成績では,集検対象および年度によって差はあるものの,瘢痕を含めて3.0~6.0%の頻度で発見されている.今回はこれらの胃潰瘍例についてどのように処理し,管理しているかという面から検討してみた.

対象

 筆者らの実施している胃集検の対象は,その集団と集検方式(精検を含めて)で分けてみると3つの形に大別される.

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 司会(市川)「胃集検で発見された胃潰瘍」という特集をやることになり,芦沢さんと信田さんと私とが編集をまかされたわけです.今日は,ベテランの先生方からいろいろとお話をお聞きしようというわけです.普通,外来で見ている胃潰瘍と集検が行なわれるようになってからわれわれの目に止まるようになった胃潰瘍とではどこが違うかということが主眼となると思いますが,どうぞご自由にご発言いただきたいと思います.

発見率

 芦沢 ある職域検診ですが,瘢痕は除いてオープンの潰瘍だけに限りますと,その発見率は初年度は多く,6%ぐらいおりましたけれども,次年度からはだんだん減って,結局総計5,000人ぐらいやったところで100人強の人が胃潰瘍と診断された.平均年2%ぐらいということになります.ある集団で連続検診を行なう1つの意義は,胃潰瘍の実際の発生率はどうのくらいかということがわかることです.

一頁講座

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 ある病変をもった胃の粘膜の形態学的および機能的変化を知ることが,その病変の発生病理を論ずるに不可欠である.つまり,随伴性胃炎と胃液分泌の状態を知ることである.胃癌に隆起を示すもの,反対に陥凹,潰瘍を有するものがあるが,それらの基盤となる粘膜は,どのような胃炎性変化を示すか,また胃液分泌動態は,どのようであるかを知るのは大変興味深い.古くから胃癌の多くは,萎縮性化生性変化の粘膜をprecursorとし,ほとんどの例で無酸を示すといわれてきた.高齢者にみられる隆起型胃癌では不思議でないが,陥凹,潰瘍を有する型では多くの矛盾点に遭遇する.では一体,胃癌粘膜上の陥凹や潰瘍はいかにして生ずるか.Malloryは1940年,癌の消化性潰瘍を主張し,酸分泌がほぼ正常の早期癌では,消化性潰瘍の発生は,比較的ありふれたことだと述べた.Palmerらは1944年,癌の上におこった消化性潰瘍の内科的治療による治癒を報告し,“Malignant cycle”の発端をきった.この議論は,米国学派が早くから良性胃潰瘍の癌化に疑問を投げかけ,癌粘膜の消化性潰瘍化を主張したに反し,日本学派が同じ病像をとらえて,良性潰瘍の辺縁に癌が発生したと老え,1966年の東京での世界消化器病学会でも沸騰した.すなわち,Ⅲ型早期胃癌に関する見解の相異がここにある.筆者は,この議論に深入りするつもりはないが,早期胃癌でのⅢ型病変の存在,あるいは進行癌における潰瘍発生あるいは,潰瘍型癌は,胃液のPeptic activityと密接な関連があるのではないかとの日頃の持論を証明すべく,手許の資料で,肉眼型と胃液中の遊離塩酸の有無との関連を調べた.血管法や,Katch-kalk法は信頼性が乏しいので,HistalogまたはGastrin様peptideで刺激した症例を取上げた.隆起性胃癌では,早期胃癌Ⅰ,Ⅱa,BorrmannⅠ型を含め,無酸性が多く,全例に萎縮性胃炎を認めた.良性の胃ポリープ,異型上皮でも同様な傾向をみた.隆起性病変では,良悪性をとわず,無酸,萎縮性胃炎が優勢だった.隆起,陥凹の混合型であるⅡa+Ⅱc型,BorrmannⅡ型では,過半数が有酸を示した.さて,陥凹型になるとⅡcの28例中27例まで有酸で,粘膜萎縮は半数以上にみられ,Ⅱc+Ⅲ型では,13例全例有酸,萎縮性胃炎は3例にのみ認められた.BorrmannⅢ型でも,有酸が80%以上を占め,萎縮性胃炎は25%にみられたにすぎない.良性疾患では,胃潰瘍での傾向はⅡc+Ⅲ型病変の場合にその傾向が酷似していた.従来,胃癌では無酸性が多いといわれてきたが,これは刺激法が適正でなかったためで,KayのHistamin法,その後世に出たHistalog,Gastrin様peptide等で刺激すると,壁細胞が胃粘膜に存在すれば塩酸分泌があると考えてよい.胃粘膜の組織学的変化を考慮すると,癌が年齢による萎縮性化生性変化の基盤の上に出現する腸上皮型胃癌でも,胃固有腺が完全に消失する例は稀である.ここで,胃癌での刺激前後の有酸,無酸の比率を調べると,刺激前は有酸30%,無酸70%が,刺激後には有酸83%,無酸17%になり,胃癌といえども適正刺激を与えれば有酸者が圧倒的に多いことを示している.なかでも,びらん,潰瘍を有する型の胃癌では90%以上に有酸を証明している.Ⅱc,Ⅱc Ad,Ⅱc+Ⅲ,Ⅱc+Ⅲ Ad.を合計すると41例で,刺激前は27例が無酸だったが,刺激後の無酸はⅡcの1例のみで,これらの例では癌粘膜表層の陥凹性変化,殊にⅢはPeptic digestionによるものと考えられ,その一つの証拠に制酸剤,遮断剤等の潰瘍治療で,みかけ上の治癒を示すものがある.以上より,びらん,潰瘍を伴なった癌またはBorrmannⅣ型の如く,腺構造を余り侵さずに粘膜下間質層を拡がる癌では,胃固有腺が存在し,Locus minorisと考えられる癌粘膜に消化性潰瘍をつくりやすいのではないか.初めの約束を破って,癌が先で,潰瘍が二次的に発生するとの考えを支持する如き結末になってしまった.

胃癌の経過(2) 中島 哲二
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Case 1

T. K. 58 year-old male had been suffering from heartburn and taking medicine for gastric ulcer on one clinic for 6 years.

Gastrectomy; on July 14, 1971, at our hospital Pathologic diagnosis; Cancer of the stomach of Borrmann Ⅲ type.

Histological diagnosis; Adenoca. tubulare.

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〔第5例〕K. I. 31歳,女

 主 訴:心窩部痛

 理学的検査所見:特に異常なし

 胃液酸度:ガストリン法で最高総酸度50mEq/L

 胃カメラ所見:図1に示すように胃角小彎の後壁よりに活動期の不整形の潰瘍あり.口側辺縁および肛側前壁よりの辺縁に不正出血あり.潰瘍の周辺には粘膜ひだが集中している.それぞれ腫脹しているが階段状のヤセや不規則な中断をみる,また発赤,白苔の付着等,びらん性の変化を示す.

 胃生検:図2.内視鏡検査と同日に行なった潰瘍辺縁から採取された胃生検標本でPoorly differentiated adenocarcinomaと診断された.

 手術は43日後に施行された.

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 正常の結腸においても,ある特定部位で強い収縮をおこし,X線上狭窄所見を示すことがある.知らないと器質的な疾患と迷ってしまってあとでとんだ恥をかかないともかぎらない.

 このような収縮部位は結腸の一定の部位にみられるので,最初に記載した人の名前を冠して……のsphincterといわれることが多い.このような収縮をおこしやすい部位(いわゆるsphincter)は3種類に分類できる1)

 ①縦走筋と輪状筋の限局性の肥厚があって真の意昧でsphincterといえるもの,結腸ではHirsch(上行結腸),Moultier(S状結腸),Busi(上行結腸盲腸境界部)のsphincterがこれに相当する.

 ②神経反射にともなう収縮にすぎないもの.Rossi(直腸S状結腸境界部),Balli(S状結腸下行結腸境界部),Payr(脾彎曲部)のsphincterがこれにあたる.

 ③上下の腸間膜神経叢の支配が重なる部位で,神経刺激のずれによるもの,有名なCannon・Böhm点(横行結腸の近位側の1/3あるいは肛側の2/3)がこれであり,Roith sphincter,Casey and Barclay sphincterとも呼ばれるが,DiDioらの本にはpylorus of the transverse colonとも書いてある.このCannon-Boehm sphincterがx線的に見えるためには両神経叢の神経刺激にずれがあることが条件である.

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 最近の胃診断学の進歩によって,いわゆるびらん性胃炎がにわかに注目されている.その肉眼像は特異であり,タコイボ型,ポリープ型,蛇行型,棍棒型などがあげられている1).筆者らは最近,いわゆるタコイボ型びらん性胃炎のX線ならびに内視鏡像ときわめて酷似した若年者胃転移癌の1例を経験したので報告する.

症例

 患 者:岡○美○子 22歳 女

 主 訴:心窩部鈍痛.

 家族歴;特記すべきことなし.

 既往歴:昭和44年8月(当時20歳),当科で横行結腸癌の診断にて結腸右半切除を施行,6×4.5cm大のBorrmannⅡ型の潰瘍形成癌で,組織学的には全層を侵す粘液細胞結節癌(mucocellulonodular carcinoma)を示した(Fig.8).腫瘍細胞のリンパ管侵入像が散見され,また稀ながら静脈内侵入像も認めた(Fig.9).領域リンパ節25個のうち,5個のものに同様組織像からなる転移を認めた.Dukes Cの癌であり,断端部への癌細胞の波及は認めなかった.術後化学療法を施行し,46病日に退院し,以後経過良好であった.なお,手術後の胃X線検査では全く異常を認められなかった.

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 最近筆者らは胃体部大彎側前壁の多発性胃潰瘍として経過観察中,胃生検でgroupⅣの結果を得て手術を施行したところ,その切除胃病理診断で意外に癌浸潤が広範囲であった早期胃癌症例を経験したのでここに報告する.

症例

 患 者:村○正○ 66歳 男性

 主 訴:心窩部痛

 家族歴;特記すべきことなし.

 現病歴:昭和46年3月末頃より食後約30分ないし60分後に背部へ放散するような心窩部痛を訴えるようになった.上記症状は約1カ月間持続した.昭和46年5月精査のため当院外科外来を受診の際は自覚症状は全くなかった.胃透視,胃カメラの検査の結果,多発性胃潰瘍として経過観察され,同年6月再度胃透視,胃カメラの検査を行なった結果,早期胃癌を疑われ,胃生検を受け,groupⅣの診断で手術を目的として入院した.

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 巨大皺襞症に関しては,Ménétrier以来,Butz,Reese,Schindler,その他多くの報告があるが,未だその臨床的,病理組織学的にその概念が確立されたとは言えない.さらに今日においては,広義な意味での巨大皺襞症と,狭義のそれの一つであるMénétrier氏病とが混同されている感すらうける.

 今回われわれは,レントゲン,内視鏡的に巨大皺襞を示し,臨床的病理組織学的に興味ある1例を経験したので,多少の文献的考察を加えて報告する.

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 1972.5.21から5.27まで米国のTexas州Dallas市Fairmont Hotelで,“1972 Digestive Disease Week”が開催された.すなわち,この期間に,同市でAmerican Gastroenterological Association(AGA),American Society for Gastroenterological Endoscopy(ASGE),そしてそれぞれの学会のPostgraduate Course,American Association for the Study of Liver Disease,Gastroenterology Research Groupという6つの学会,あるいはPostgraduate Courseが開かれた.

 私はなんの幸いか5.22~5.23のASGE主催の第3回のPostgraduate Coursein Gastroenterological EndoscopyのFaculty Memberの1人として招聘され,2つの講義と1つのPanel Discussionを受持った.私より優れた先輩方が沢山おられるのに私が招かれた理由は,多分私が最初に胃カメラをアメリカで,Wisconsin大学のMorrissey教授らに教えたことと,英語がほんの僅かできるという2点からであると考える.

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 Parisにおける第2回欧州内視鏡学会,第9回国際消化器病学会への出席者の参加を考慮して,1972年6月25日より29日までチェコスロバキアの首都Pragueにおいて14th Czechoslovak Congress of Gastroenterology with International Participationが開かれ出席する機会をえた.ちょうど昨年6月初旬同じPragueで緊急内視鏡検査に関する国際シンポジウムが開催されたので,1年ぶりに美しいPrahaの街をみることができたわけである.何度みてもあきのこない落着いて,しかも自然と調和のとれたPrahaの街々を歩き廻って懐しさをおぼえたが,ソ連邦の食糧不足を反映してか,街角の果物屋などでは昨年より,ものが乏しく,オレンジなどもホテル外ではついに手に入らず,そのほか街を歩く人達の表情とか服装にも一層共産圏としての締めつけのきびしさを感じさせられた.われわれ一行の泊ったホテルは昨年の学会場であったPraha 6区のlnternational Hotelで,相変らずcheckinその他非能率であったが,Czechoslovak Travel BureauのCEDOKの食券の使い方もすっかり馴れて,ワイン,ピルゼンビール等の味を楽しんだ.

 学会場はホテルからさほど遠くないCzech Technical UniversityでHall A,B,C,Dとも階段教室で,Hall Aでは英,仏,独,露,チェコ,スロバキア語の同時通訳があったが,他の会場はCzech-English translationのみであった.

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 最近,胆・膵管系疾患の術前診断に,十二指腸内視鏡検査や内視鏡的膵・胆管造影が試みられるようになった.その結果,従来より診断上盲点であったこの分野で有力な診断法であることが認識された.十二指腸内視は,乳頭部の病変観察には有力であるが,癌が膨大部に限局して乳頭・十二指腸粘膜に変化が波及していない場合は形態的に乳頭炎との鑑別が難しいことがある1).また膵・胆管造影もつねに成功するとはかぎらない.このような場合,病変部位の中枢側異常所見を提供する経皮経肝胆道造影や乳頭部および膵頭部病変を描写する低緊張性十二指腸造影などのX線検査が有効である.上記の各種術前検査法の駆使により,かなりの診断率向上がみられつつあるが,一方,われわれ外科医の立場からみると,まだなにか決め手を欠くといった感じがする例に手術時,遭遇することがある.そして確定診断の下しえないまま手術を行なってみても新知見を得られず,診断ならびに術式決定に迷うことをしばしば経験する.たとえば膨大部周辺に小腫瘤を触れた場合,結石,腫瘍,膵炎などの相互間の鑑別は,かならずしも容易でない.Warren2)らは浮腫や膵実質の硬化のみられる総胆管膵部に嵌頓した結石では,癌の存在が示唆されると述べており,胆管癌の成因で粘膜上皮の慢性炎症性変化が基盤となって癌化へ移行するのであろうとする意見が多い現在,癌早期発見のためにも新しい診断法の確立が望まれる.

 胆道系術中診断法としてJelinek3)は①胆道触診,②透光法(Kirschner),③射出法(Payru.Beckner),④消息子による聴診法(Kirby),⑤術中胆道造影,⑥マノメトリー,⑦胆道鏡などを挙げている.触診法は手術時routineに行なわれているが,客観性,確実性に乏しい.ブジーによる触診も繁用されるが,限局された範囲での狭窄・閉塞の原因を区別するのに困難を感ずることが多い.術中造影も経皮経肝胆道造影以上の所見を得られないことがある.

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欧文目次

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 309頁,179図の本書をよんで著者の胆道疾患への情熱がひしひしと感じられた.第1章にBobbsはじめSimsからMirizziに至る18人の胆道疾患研究の先達の肖像と略歴を掲げ,第2章で病因論を説いている.実験的,臨床的業績をSheinは総合的に解析し,急性胆囊炎は胆囊管閉塞に起因すると述べ,誘因に胆石,胆汁酸塩,膵液,胃液,細菌,粘膜傷害,アレルギーなどをあげている.自律神経,液性因子とくに迷走神経の役割りは,業者が多年業績をあげている分野なので本書の随所に蘊蓄がかたむけられており,胆囊の低緊張状態と感染成功機転が詳細にしかもシエマテイクに解説されている.とくに各種の胆道と無関係な手術後に発生する急性胆嚢炎を多数集計し,術後全身の面から胆囊機能をとらえようとするのは胆道と他臓器との相関をさぐる新しい研究で興味深い.第3章から第8章までは臨床編であり,病理,触診法からレントゲン診断,各種診断法,内科治療さらに手術術式,術後合併症までをやさしく懇切にのべており,第9章(終章)には将来の課題を指摘している.急性胆囊炎を表題にしているが,実は胆石症の成因から病理,診断から治療にいたるまで著者の考えをのべてあり,慢性胆囊炎をも取扱った広汎な胆道疾患の本である.私どもは炎症という言葉をなかなか使わないのは定義が難しいからであるが,著者は臨床病理的な広く自由な立場から急性胆囊炎という表題を上手に駆使して胆道疾患への著者の情熱を展開したといえよう.末尾にSchein自身の21編の文献を含めて629編の文献リストをかかげており,槇,亀田ら日本人の名前も6人ほど散見された.

編集後記 市川 平三郎
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 国際学会とか,海外において講演した後では,「胃集検というものは,早期胃癌1人発見するのにどのくらいの費用がかかるのか」という質問をしばしば受けるものである.まじめな日本人は,1000人に平均2人の胃癌が見つかるとして,そのうち大凡1人が早期胃癌だから,100O人を集検でスクリーニングする費用と,要精検者平均20O人に要した費用との合計が1人の早期胃癌発見のために要する費用であると答える人が多いようである.すると,米国においてすら,「それは高すぎる,日本は金持だ」などといって,彼等が胃集検をやらないのを弁護する理由に使っているようである.

 早期胃癌を見つけるのが主眼であるとはいっても,集検の費用の面で大きなメリットをあげているのが「集検で発見された胃潰瘍」なのである,「集検で発見された胃潰瘍」に早期に適切な治療を行ない,経過を追求し監視して行くことが,患者個人のみならず,その属する職場ないしグループに,間接的費用も含めると,どれ程のメリットを与えているか計り知れない面があろう.こういう説明をすると納得して貰えるのである.

基本情報

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胃と腸
7巻9号 (1972年9月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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