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春の連休も終った5月中旬のある日私のもとに一通のぶあつい封書が松山からとどいた.それは四国地方がんセンターの浅野医長と読影委員会研究班の徳永金正氏が中心となってまとめあげた愛媛県胃集検の業績集であった.その内容は「モデル地区における5力年間の逐年胃集検1)」の成績を中心とした詳細な資料で,私も心待ちにしていたものであった.それというのも,昭和41年の秋に松山市に四国地方がんセンターが開設された際,東京の国立がんセンターから数人のスタッフが応援にかけつけ,ほぼ同時期に発足した胃集検についても,その企画立案の段階から全面的に参画し,私自身も第2陣として43年夏から2年間赴いたといういきさつがあったからである.資料を開いてまず目についたデーターの主なものは,次のようなものであった.
①モデル集団1,965人に対して,昭和42年度から行なっている逐年検診の5年連続受診率は80.3%,精検受診率の平均は96.2%と高率を維持していること.
②発見胃癌についてみると,進行胃癌は2年目で0,3年目に1例,4年目以降は0であり,また早期胃癌は4年目以降0となっていて,逐年検診の有効性を示していること.
③昭和43年度から実施しているストレート精検**の推移をみると,その受診率は常に90%以上であり,その平均は95.1%と高く,地域住民の管理方式としてストレート精検の有用性の高いことを示していること.
**これは,前年度までの精検,処置によって病変の存在の明らかな要管理群,および恒常的と思われる胃変形や術後胃などを有する間接X線非適応群に対して,次回より間接集検を省き直ちに精検を施行して集検の能率化を図るもの.
このような職域検診の成績にも匹敵する予想以上の好成績をみるにつけ思うことは,地元市町村の衛生担当者の熱意,わけても保健婦の果たす役割が如何に大きいものであるかということである.もちろん,モデル集検の基幹病院である四国地方がんセンター,県立中央病院,赤十字病院の3病院において,少ないスタッフをやりくりしながら,診療活動と集検活動を併行して努力している医師グループや運営当局が,集検のかなめであることはいうまでもない.しかし,3病院ともそれぞれの事情で医師の移動が頻繁に行なわれ,集検開始当初の担当医師が1人も居ない現状である.このような人事交流の動きは,昨今では松山だけの特殊事情ではなく,むしろ全国的な傾向といえるようである.このような状況のもとで多年に亘る逐年検診を充実させ.円滑に行なうには,地域住民に密着している保健婦との緊密な連けいを保つことが不可決の要素と考えられるのである.因みに2,3のエピソードを紹介しておこう.
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