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書評「Acute Cholecystitis」
穴沢 雄作
1
1順天堂大学外科
pp.1204
発行日 1972年9月25日
Published Date 1972/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403109138
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309頁,179図の本書をよんで著者の胆道疾患への情熱がひしひしと感じられた.第1章にBobbsはじめSimsからMirizziに至る18人の胆道疾患研究の先達の肖像と略歴を掲げ,第2章で病因論を説いている.実験的,臨床的業績をSheinは総合的に解析し,急性胆囊炎は胆囊管閉塞に起因すると述べ,誘因に胆石,胆汁酸塩,膵液,胃液,細菌,粘膜傷害,アレルギーなどをあげている.自律神経,液性因子とくに迷走神経の役割りは,業者が多年業績をあげている分野なので本書の随所に蘊蓄がかたむけられており,胆囊の低緊張状態と感染成功機転が詳細にしかもシエマテイクに解説されている.とくに各種の胆道と無関係な手術後に発生する急性胆嚢炎を多数集計し,術後全身の面から胆囊機能をとらえようとするのは胆道と他臓器との相関をさぐる新しい研究で興味深い.第3章から第8章までは臨床編であり,病理,触診法からレントゲン診断,各種診断法,内科治療さらに手術術式,術後合併症までをやさしく懇切にのべており,第9章(終章)には将来の課題を指摘している.急性胆囊炎を表題にしているが,実は胆石症の成因から病理,診断から治療にいたるまで著者の考えをのべてあり,慢性胆囊炎をも取扱った広汎な胆道疾患の本である.私どもは炎症という言葉をなかなか使わないのは定義が難しいからであるが,著者は臨床病理的な広く自由な立場から急性胆囊炎という表題を上手に駆使して胆道疾患への著者の情熱を展開したといえよう.末尾にSchein自身の21編の文献を含めて629編の文献リストをかかげており,槇,亀田ら日本人の名前も6人ほど散見された.
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