胃と腸 6巻8号 (1971年7月)

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はじめに

 幽門部(pyloric portion)とはどこを指すのかという点にかんしては,今までは,常識的に,習慣的にその名が使われてきたきらいがある.それに,小彎,大彎,前壁,後壁と部別な呼び方も使っている.陥凹性病変,隆起性病変の別もあるわけである.この別に従って,それぞれ検査方法が違うはずである.症例について,この部の検査法と検査するとき注意を払わなければならない点をとり上げて考察したい.

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はじめに

 胃の病変を,より微細に診断しようという努力は,最も病変の多い胃角部を中心として,高位や前壁の病変の診断をも可能にした.

 しかし,多くの研究者はつぎつぎと目標をかかげて,より高度の質的診断の可能性を求めて日夜努力を重ねている.

 こうしたなかで,胃前庭部の病変は変化が比較的強く現われる部位であるため,病変の特殊性が論じられているが,さらに,幽門近傍の病変になると疾患の数も少なく,その診断に関する報告も少ない.

 ここではあたえられた主題について,症例を供覧しながら幽門前部潰瘍のX線診断についていささか述べたい.

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はじめに

 従来,胃内視鏡検査にあたっては,胃上部とか胃角対側大彎部が検査の盲点とされてきたが,最近では器械の高度な発達と熟練せる手技によって胃内病変に対し検査の盲点は一応なくなったと思われる.しかしながら,場所によってはなお検査を行なうのに充分の注意と努力を払わねばならない所もある.すなわち,病変の種類によって,また部位によって起こされる変形や狭窄のために検査が不能になったり,あるいは観察,読影の不正確,粗漏をきたし,そのために病変が見落される場合も決して少なくはない.幽門部ならびにその近傍はこれに当るものと思われる.筆者は,現在まで主としてP2型,V型,Va型胃カメラでroutineの胃内撮影を行なってきているが,幽門部ならびに近傍が胃カメラで果して満足し得る程度に撮れているだろうかという疑問は,常に抱いていた.数年前までは「大体幽門部は撮れている」という程度のものも最近の目でみると,実際には前庭部の半分位までしか読影できぬものがかなりあった.こういう感想は筆者だけのものではない,過去の文献や報告でも幽門部の実際の描写精度については余り触れられていなかったようである.このように,今から振り返るとかなり甘い検査で経過するものがあったために,幽門部附近の胃内視鏡所見では,はっきり病像をつかまえてないのに,その病変部から胃生検によって癌を確診し得た症例を何回か経験するにいたってはじめて幽門部附近の内視鏡検査が簡単なことではないと思い知らされた次第である,以下,筆者らが幽門部に特に注意を払うに到った次第を述べる.

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現在の診断学をもってしても,幽門部の微細病変の診断は困難な点が多い.この部位の検査に有効なレントゲン検査法とroutineの手順,さらにはP型,Va型,FGS,FSの各内視鏡器種に熟練の先生方にその器種の特徴と検査法のコツについてお話し願いました.

一頁講座

幽門輪の内視鏡観察 竹本 忠良
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 胃カメラの発達,ファイバースコープの登場によって,幽門輪を内視鏡的にみることが完全に解決したかというと決してそうではない.X線でもそうだが,内視鏡も沢山の問題をかかえている.

 Horwitzら(1929)によると,幽門の厚さは3.8~8.5mm,平均5.8mmで輪状筋が主体をなしており,輪状筋は幽門で終っているのに対し縦走筋は幽門の構成上役割がすくなく,かつその線維の一部は十二指腸の筋層にのびている,といわれている.輪状筋は幽門において2つのループを形成しており,ループは大彎側で分れているが,小彎側では結合して結び目をつくっている(Thompson1)の論文より引用).

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 早期胃癌のうちで,ある種の例を除いて,内視鏡的に診断し易い型の1つがⅡc型です.この,ある種の例といいますと,第1には,直径数mm程度の微小Ⅱc,次いで,良性単発性の大きいびらん…….これはわたくしの経験では2例しかありませんが,1例は生検でGroupⅢ,1例は再生上皮と診断されています.

 第3には再発性潰瘍の瘢痕です.これらの特殊の例については,Ⅱc型早期胃癌を疑い,生検組織によってのみ,確実な診断,除外ができます.これらの例外的症例を除けば,Ⅱc型早期胃癌は比較的内視鏡的に診断し易いといえます.

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 患者:51歳 男

 主訴:心窩部痛

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 患者:71歳 男

 主訴:食直後軽度心窩部痛

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 患者:32歳 女

 初診:昭和43年10月5日

 主訴:胃部圧迫感・悪心・食欲不振

 既往歴:2年前より胃部重圧感を覚えて受診し,胃潰瘍,あるいは十二指腸潰瘍の診断により投薬を受けていた.

 現病歴:最近胃部圧迫感に軽度の疼痛・悪心・食欲不振が加わったため,胃レ線検査を受けた結果,十二指腸潰瘍の診断で手術を薦められた.

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 患者:M.S. 38歳 男

 家族歴:父が肝臓癌にて死亡.

 概往歴:18歳にて腎盂炎.

 現症の経過 5年前に心窩部痛あり,12指腸潰瘍と言われ治療を受ける.4カ月前に再び軽い鈍痛,食思不振,黒色便などを訴えるも再三の検査にて診断困難,ついに幽門直前部に小さなニッシェ様像を認め,胃カメラにてⅡc+Ⅲの早期胃癌と考え手術を施行した.

 術前臨床検査成績 尿:蛋白(-),糖(-),ウロビリノーゲン(-).糞便:潜血(++),虫卵(-).血液:Hb.14.4g/dl,E. 452万/mm3,L. 8,900/mm3,Ht. 41%.血液化学:総蛋白量6.4g/dl,GOT.7.5,GPT.11,LDH.150,CCF(-).

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はじめに

 噴門部より上,いわゆる天井の病変として考えられるものに憩室,ヘルニア,粘膜下腫瘍,静脈瘤,潰瘍,癌などがあるが,筆者らは,術前悪性変化を強く疑い病理学的検索の結果,限局肥厚型のRLH(癌研中村文献番号1)であった症例を経験したので報告する.

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はじめに

 近年,胃疾患に対する診断技術の向上とともに,同一胃内に多発する病変についても術前に精確な診断が可能となってきた.筆者らは,胸痛を主訴として来院した患者の糞便潜血反応が陽性であったために,胃レ線,内視鏡検査を行なった結果,幽門前部から角上部にかけて3つの病変を認め,進行癌,早期癌,異型上皮の併存であった症例を経験したので若干の考察を加えて報告する.

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はじめに

 筆者らはレ線造影可能なBarium加Catgutを創案し,吻合部の全層縫合に使用し,術後吻合部の研究に役立てた1)~3).しかし,このCatgutの造影期間はせいぜい2週間止りであった.そこで,Bariumの代りに図1~2のごとき直径0.04~5mmの金または銀線維をCatgutに撚入することにより,Catgutの強靱度は失なわれず,造影度と造影期間を延長することができた.これを前回同様全層縫合に使用し,術後経過を追って経口的造影剤とあわせレ線検査を行ない,Barium加Catgut使用症例では得ることのできなかった数々の知見を得た.

技術解説

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はじめに

 戦後,外国の書籍が開禁になって,どっとわが国にも輸入され始めた頃のことである.筆者は,BückerのGastritis,Ulkus und Karzinomにのっている圧迫像に魅せられてしまった.それに負けまいとして,圧迫像をさかんに撮ってはみたものの,造影剤の量や撮影体位,圧迫の程度や方向,被検者の個人差などによって,うまくいった場合もあったが,失敗することも多かった.elastischな検査とは,まさに圧迫法に最もよくあてはまると思ったほどである.

 その後,二重造影法があまりにも普及しすぎて今や二重造影法中毒の時代になってしまったようである.しかし,二重造影法にも欠点はあるし,限界もある.たとえば,隆起性病変やⅡcの微小なものは圧迫法でないと適確に描写できないことがよくある.そこで,筆者の病院で,遠隔操作によるX線テレビを使って,胃のルーチン検査を実施する際には,充盈法や二重造影法のほかに,圧迫法を不可欠の検査としている.今までのX線装置に比べて,X線テレビでは,はるかに微細な所見までもが透視でよくみえるので,圧迫法の威力は大きいのである.

 一方,数年前,ヨーロッパの学会に出席して,世界の趨勢を見聞してこられた白壁先生から,Frikなどのドイツ学派の圧迫像が実にすばらしいといった話をきいたことがある.また,近年,青山大三先生が,Bückerは胃全体を圧迫像で見事に描写すると絶讃しておられた.両先生の話を思い出したり,X線テレビの発達などを考え合せると,今後,胃のX線検査にはX線テレビを利用した圧迫法が大いに活用されるようになるであろう.

 そこで,今回は,胃の大彎側の比較的大きなⅡcの症例を例にして,圧迫法を検討してみる.

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欧文目次

編集後記 岡部 治弥
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 幽門部の病変にはおのずから特徴があり,特に幽門輪部近傍の病変はX線学的にも,内視鏡学的にも案外と見落とされやすく,また,たとえ見落とされなくとも性状診断が困難であるということより,幽門部を一つ主題として取りあげてみようということになった.しかし,その際,幽門部とはどの範囲をいうのか,幽門部の幽門輪側は何と呼ばれているのか,または何と呼べばよいのか,さらに幽門前庭部とはそもそもどの範囲なのかということが問題となり,編集会議は俄然,たいへん活発な討論の場となった.これはいわば当然なことで,本誌早川氏の論文にくわしくあげられた各先人の幽門部(pyloric portion)の定義も決して一様でない.本邦においては,胃診断学がこれほど微細精巧化した現在,早急に胃内各名称の統一がはかられなければならないとしみじみ感じたことである.そういうことで,幾分曖昧な定義のままに,この主題をもらった執筆者の方々も,当然その受けとり方に微妙な差があり,3本の主題の表現も,幽門部(pyloric portion),幽門前部,幽門部とその近傍,とすべて異なっている.読者の諸先生も,その点やや混乱されるむきがあると思われるが,内容をお読みいただけば,おのおのの意図される点は極めて明瞭であるので,この3本の力作を熟読玩味されて,大いに今後の診療に御参考としていただきたい.

基本情報

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胃と腸
6巻8号 (1971年7月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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