胃と腸 56巻9号 (2021年8月)

今月の主題 「胃と腸」式 読影問題集—考える画像診断が身につく

序説

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はじめに

 近年の内視鏡機器性能の向上,特に画像強調イメージングや拡大内視鏡画像の高性能化,カプセル・バルーン内視鏡の普及,CT/MR enterography, colonographyなどにより,消化管の画像診断学は急速に進歩した.

 また,病理診断学の進歩とともに,生検組織からもより多くの情報が提供される〔HE染色や特殊染色による確定診断や良悪の鑑別のみでなく,組織や消化液(胃液,腸液)などのサンプル採取も含む〕ようになり,これらが相まって消化管診断学は大きな発展をみせている.画像診断を正しく行うためには,従来の通常内視鏡や超音波内視鏡検査(endoscopic ultrasonography ; EUS),X線造影検査などと,前述した新しい画像診断法や病理組織学的検索について,それぞれの検査法の利点を生かしながらどのように組み合わせて診断を進めていくかがますます重要となっている.本特集号を読み始めていただく前に,画像診断,読影の際の注意点を中心に私見を交えて述べてみたい.

読影問題集

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臨床情報

70歳代,男性.主訴はなく,定期検診目的の上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)にて食道に隆起性病変が2個認められた.病変1は切歯より27cm左壁,病変2は同34cm後壁に存在し,蠕動にて容易に変形する軟らかい病変であった.

食道 Case 2 竹内 学 , 渡辺 玄
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臨床情報

70歳代,男性.主訴は特になし.既往歴は65歳時に喉頭癌にて化学放射線療法,68歳時に直腸癌にて低位前方切除術,70歳時に下咽頭表在癌で内視鏡的粘膜下層剝離術(endoscopic submucosal dissection ; ESD).嗜好歴は飲酒,ビール500ml/day(約50年),喫煙60本/day(約45年,現在禁煙).20XX年1月に頭頸部・食道癌サーベイランス目的の当院上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)にて食道に異常を指摘された.

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臨床情報

60歳代,男性.主訴は胃のもたれ感.高血圧症に対して近医通院中であった(薬物療法:カンデサルタンシレキセチル錠).胃のもたれ感が持続するため,近医で上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)を施行したところ,食道胃接合部に隆起性病変を認め,精査加療目的で当科を紹介され受診した.前医検査から約1週間後に当院初回EGDを施行した.その翌日に食道造影検査,さらに2日後に超音波内視鏡検査(endoscopic ultrasonography ; EUS)による精査を行った.

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臨床情報

70歳代,男性.20XX年,特に自覚症状なく胃X線集団検診を受診したところ異常を指摘されたため,精査目的にて当センターを受診した.10年ほど前にH. pylori(Helicobacter pylori)除菌療法を施行し,成功したとのこと.

胃 Case 2 平澤 大 , 長南 明道 , 遠藤 希之
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臨床情報

50歳代,女性.検診の上部消化管内視鏡検査で病変を指摘され精査目的で当科に紹介され受診となった.来院時の検査成績では,尿素呼気試験1.2‰(陰性),抗Hp-IgG抗体<3U/ml(陰性),PG I 66.5ng/ml,PG II 9.4ng/ml,PG I/II比7.1(陰性)であった.問診上はH. pylori(Helicobacter pylori)の除菌治療の既往はなし.

胃 Case 3 小澤 俊文
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臨床情報

50歳代,女性.主訴は心窩部痛,左背部痛.既往歴は,2007年に出血性胃潰瘍〔除菌済み,UBT陰性,抗Hp(Helicobacter pylori)-IgG抗体13.2U/ml〕.服薬歴はなし.2009年3月に,近医での上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)にて胃体上部大彎に異常を指摘された.精査加療目的のため,同年4月に当科へ紹介となり,EGD・胃X線造影検査を行った.5月にEGD(再検)を行った.

胃 Case 4 外山 雄三 , 長浜 隆司
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臨床情報

40歳代,女性.主訴は心窩部痛.既往歴・常用薬は特記事項なし.近医から心窩部痛の精査にて上部内視鏡検査の施行となった.

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臨床情報

70歳代,男性.主訴:なし.既往歴:高血圧症,糖尿病,狭心症,H. pylori(Helicobacter pylori)除菌後.内服歴:ランソプラゾール,ニフェジピン.現病歴:検診の胃X線造影検査で異常を指摘され,前医を受診した.上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)を施行され,胃体部に隆起性病変を認め,同部から生検を施行されたがGroup 1(chronic gastritis)の診断であった.同病変の精査,加療目的に当科に紹介され受診となった.当科で胃X線造影検査,EGDを施行した.入院時検査所見:身長170cm,体重58kg.表在リンパ節腫脹なし.腹部は,平坦・軟で圧痛なく,腫瘤を触知せず.入院時検査成績:血清抗H. pylori抗体は3U/mlで陰性と判定した.

胃 Case 6 井上 貴裕 , 上堂 文也
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臨床情報

60歳代,男性.既往歴,服薬歴は特記事項なし.健診の上部消化管X線造影検査で,胃体下部大彎に腫瘤を指摘されたため,当院に紹介され受診となった.H. pylori(Helicobacter pylori)除菌歴なし.血清抗H. pylori抗体価,血清ガストリン値は測定されていなかった.上部消化管内視鏡像を示す(Fig.1).

十二指腸 Case 1 吉田 将雄 , 小野 裕之
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臨床情報

[症例1] 70歳代,男性.心窩部痛を主訴に近医を受診した.上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)を施行したところ十二指腸球部に異常を指摘され,当科に紹介となった.

[症例2] 50歳代,男性.主訴はなし.任意型検診のEGDで十二指腸下行部に異常を指摘され,当科に紹介となった.

十二指腸 Case 2 斉藤 裕輔
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臨床情報

70歳代,男性.主訴は心窩部痛,腹痛.既往歴は特記すべきことなし.20XX年4月に,心窩部痛,腹痛にて近医受診時の上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)で,十二指腸に異常を指摘され,精査・加療目的にて当科に紹介され受診となった.

血液検査では,低栄養による軽度のアルブミンの低値を認めるのみで,その他,炎症反応,腫瘍マーカーを含めて異常所見を認めない.

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臨床情報

70歳代,男性.既往歴は50歳代時に胃潰瘍.胃潰瘍の既往で前医にて定期的な上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)を受けていた.2017年に施行したEGDにて十二指腸球部に異常を指摘されたため,当科に紹介され受診となった.

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臨床情報

50歳代,男性.主訴は嘔吐.201X年8月より食後の嘔吐が出現し,徐々に増悪するため11月に近医を受診した.近医でのCTにて上部小腸に病変が疑われ,同年12月に当科に紹介され入院となった.入院時現症や血液検査所見に特記すべき異常所見はみられなかった.

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臨床情報

20歳代,男性.主訴は発熱,下痢.20XX年1月下旬より発熱,水様性下痢出現.2月下旬には40℃の発熱,右下腹部痛,1日5〜6行の水様性下痢便に加えて,両側下腿に有痛性結節性紅斑も出現してきたため前医を受診した.下部消化管内視鏡検査(Fig.1)と腹部造影CT(Fig.2)が施行された.Table 1に前医受診時の血液生化学検査データを示す.

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臨床情報

40歳代,男性.主訴は軟便・暗赤色便,腹部重苦感.既往歴は喘息,高脂血症.20XX年に前述の主訴があり近医を受診し,上下部消化管内視鏡検査を受けるも異常を指摘されず,経過観察となった.その後も同様な症状が続いていたが,急激に貧血が進行したため,精査目的で当院に紹介され,入院となった.入院時血液学的検査所見ではRBC 284万/μl,Hb 8.7g/dl,Hct 24.8%と正球性正色素性貧血を認めたが,WBC 8,500/μl,CRP 0.12mg/dlと炎症反応は認めなかった.腹骨盤部造影CTでは,腸間膜リンパ節の軽度の腫大を認めた.入院後,小腸精査目的にてダブルバルーン内視鏡検査を施行し,下部空腸〜上部回腸に病変を認めた.

大腸 Case 1 入口 陽介
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臨床情報

60歳代,男性,主訴は特になし.20XX年に,大腸がん検診で便潜血陽性を指摘され近医を受診し,大腸内視鏡検査を受けたところ,直腸に大腸ポリープを認めたため,精査目的で当科に紹介され受診となった.大腸内視鏡検査および注腸X線造影検査を同日に行った.

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臨床情報

50歳代,男性.便潜血陽性を指摘され,近医を受診し,大腸内視鏡検査で横行結腸に病変を認めた.精査加療目的に当科に紹介となり,注腸X線造影検査,大腸内視鏡検査,拡大内視鏡検査,超音波内視鏡検査(endoscopic ultrasonography ; EUS)による精査を行った.

大腸 Case 3 清水 誠治
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臨床情報

23歳,女性.既往歴:2回の帝王切開.現病歴:1か月ほど前から軟便,粘血便が出現し,排便回数は徐々に増加して1日数行の下痢になった.また,時々腹痛も自覚するようになった.身体所見:身長151cm,体重50kg,体温37.2℃.腹部診察所見:異常なし.臨床検査成績:WBC 7,900/μl,RBC 494万/μl,Hb 13.1g/dl,Ht 40.5%,Plt 29.5万/μl,TP 7.7g/dl,Alb 4.3g/dl,肝腎機能・電解質:異常なし.CRP 1.23mg/dl,便細菌培養:病原菌(−),便中CDトキシン(−).内視鏡所見:前処置なしでS状結腸までの内視鏡検査を行ったところ,15cmまでの範囲に病変がみられた(Fig.1).生検病理組織学的所見:直腸粘膜生検では粘膜固有層全層に高度の形質細胞と好中球の浸潤がみられ,陰窩炎も散見された.上皮のびらんとともに腺管には軽度の配列異常がみられたが,杯細胞は保たれていた(Fig.2).

大腸 Case 4 山野 泰穂
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臨床情報

60歳代,男性.主訴:なし.現病歴:16年前にS状結腸進行癌にて当院消化器外科にてS状結腸切除術を施行し,その後,当科にて定期的に大腸内視鏡検査を施行していた.201X年3月の定期検査時に径10mmの病変を横行結腸中位に指摘した.

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臨床情報

60歳代,女性.家族歴は乳癌(姉).既往歴は虫垂切除,大腸ポリープ切除,脂質異常症.X−7年に,近医で大腸内視鏡検査を施行した際に大腸ポリープを切除され,盲腸に粘膜下腫瘍(submucosal tumor ; SMT)を認めたため,以後フォローされていた.X−5年に,大腸内視鏡検査にて同病変の増大を認めたため当科に紹介となり,大腸内視鏡検査,超音波内視鏡検査(endoscopic ultrasonography ; EUS),注腸X線造影検査を行った.大腸内視鏡検査にてびらん部から生検を行ったが,Group 1であった.

大腸 Case 6 小林 広幸
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臨床情報

30歳代,女性.主訴は排便時出血.既往歴は特記事項なし.20XX年9月より時々排便時の出血を自覚し,症状持続のため近医を受診した.S状結腸内視鏡検査で下行結腸のSD junction近傍に病変を指摘され,精査加療目的で当院外科に紹介され入院となった.

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目次

欧文目次

書評

書評

次号予告

編集後記 小澤 俊文
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 近年の本誌8月号は,掘り下げるべきテーマを絞ることをせず,暑い夏の季節に気楽に読める内容を目指して企画される経緯がある.今回は“「胃と腸」式 読影問題集”と銘打って,読者に問題を解き進んでいただく内容であり,本誌初の試みである.読者には,早期胃癌研究会で読影者として指名された気持ちになって,各問題に取り組んでいただけるような構成とした.また,“X線ではどこまでわかるか”,“通常内視鏡ではどこまでわかるか”,“拡大観察による診断は何か”,“鑑別すべき疾患は何か”,“総合的にどのように診断するか”など,本誌ならではの思考過程を重視した「考える画像診断」能力を鍛える問題集を目指して企画したつもりだが,本特集号の完成度を読者はどのように評価いただけただろうか.各執筆者には,解説に相当する「診断へのアプローチ」では挙げるべき鑑別診断と,それぞれを否定しうる“根拠”に特に力点を置いて執筆していただいた.結果として答え(=最終診断)が違っていても,研究会や誌面上での読影/診断に根拠ある誤診は大いにすべきである,と言っても乱暴ではないと思う.必ずや読者の血となり肉となるはずだ.

 「胃と腸」編集委員を中心に,エキスパートの先生方に問題作成を依頼した.疾患名は特に指定せず各執筆者に委任したものの,最も重要視した「診断過程」については極力統一を図った.小生自身もすべての問題に目を通してみたが,美麗な画像の数々はもちろん,執筆者らの診断課程/進め方もさまざまであり勉強になるだろうと自負している.なお,多彩と言っても,基本となる診断に迫る姿勢(全体から微に入る)はほぼ共通しているものであろう.

基本情報

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胃と腸
56巻9号 (2021年8月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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