胃と腸 52巻1号 (2017年1月)

今月の主題 知っておくべき胃疾患の分類

序説

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はじめに

 胃疾患の分類は,Table 1に示すように,疾患別に胃癌,悪性リンパ腫,粘膜下腫瘍(submucosal tumor ; SMT,間葉系腫瘍),神経内分泌腫瘍,胃炎,胃潰瘍,胃ポリープなどさまざまなものがある.それぞれの疾患において病理組織分類,肉眼分類,内視鏡分類,病期分類などがある.病変の所見記載,診断,治療方針の決定はこれらの分類をもとにして行われるため,日常診療や臨床研究において重要な分類を十分に理解しておくことが必要である.また,同じ種類の分類であっても,本邦で用いられる分類と欧米で使用されている分類が異なる場合があり,海外の雑誌に投稿する際には特に配慮する必要がある.

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要旨●胃癌の基本的な病理学的分類として,組織型分類,癌の間質量・浸潤増殖様式,脈管侵襲,生検組織診断分類(Group分類)について概略した.組織型分類は「胃癌取扱い規約」とWHO分類で類似しているが,前者は組織形態による分類であり,後者は組織形態と分化度を組み合わせた分類という違いがある.そのために低分化腺癌の取り扱いが異なっている.しかし,その違いもWHO分類のコンセプトが変わるにつれて少なくなってきている.また,組織型の診断が一致をみないことは昔から問題にされており,解決策として胃癌を2分類するLaurenや中村の分類が用いられている.目的に応じた組織型分類の使い分けが必要である.

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要旨●胃腫瘍は胃癌取扱い規約やWHO分類に従って組織形態学的に分類され,組織発生の観点から分化型と未分化型などに大別されてきた(Lauren分類,菅野・中村分類).これらを踏まえたうえで,初期〜早期病変を多く経験し,病理像と画像所見との詳細な対比を重視するわが国では,主に分化型癌に対して,核異型に注目する異型度分類,細胞分化に注目する形質発現分類(胃型,腸型,混合型など)が注目されてきた.また,手つなぎ型,胃底腺型,胃底腺粘膜型など独特の形容がなされている腫瘍(癌)や腺腫との関連・鑑別がよくわからない腫瘍まで多種多様なものが存在する.拡大内視鏡診断が発達し,これらの分類の重要性が増しているが,同じ腫瘍に対してもいろいろな名前で呼ばれているのが実情である.本稿では,診断者の流儀や日欧米間の概念の異同がリンクできるように“胃癌の実践的分類”を解説したい.

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要旨●胃癌の知っておくべき臨床分類として肉眼型分類と進行度(Stage)分類について「胃癌取扱い規約第14版」ならびに「胃癌治療ガイドライン第4版」に沿って症例を提示し,また歴史的経緯については文献考察を用いて概説した.胃癌の肉眼型分類は胃癌取扱い規約により0〜5型に分類され,進行型は1962年胃癌研究会発足当時にBorrmann分類が採用,改変された1〜5型に分類され,表在型としては日本内視鏡学会の早期胃癌の肉眼分類に準じて亜分類された.その後多くの議論,改変がなされ,基本型は変わらないものの,その解釈や記載法に改変がなされ現在に至っている.進行度(Stage)分類は壁深達度(T),リンパ節転移(N),遠隔転移(M)によって分類され,これにより手術を含む各種治療法とその適応などがガイドラインによって決定される.臨床の現場においても研究においても臨床分類を十分に理解し,これに基づいて正確に分類を行うことが適切な治療方針の決定や後々の症例の解析に重要である.

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要旨●胃リンパ腫の診断に関連した分類には,肉眼分類や病型(疾患単位)分類などがある.肉眼分類は病型の種類を問わず用いることができる.病型分類はWHO分類が世界の標準として用いられており,この先もゴールドスタンダードとして進化し続けると予測される.リンパ腫の診断に際しては,臨床医も病理医も,これらの分類の意味を正しく理解し適切に用いることが肝要である.

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要旨●胃悪性リンパ腫の診療に必要な分類について概説した.組織分類はWHO分類に従う.胃ではMALT(mucosa-associated lymphoid tissue)リンパ腫とDLBCL(diffuse large B-cell lymphoma)の頻度が高い.肉眼/内視鏡分類は佐野分類と八尾分類が汎用され,MALTリンパ腫では表層型,DLBCLでは潰瘍型や隆起型が多い.MALTリンパ腫の生検組織診断にはWotherspoonらの組織スコア,治療後評価にはGELA(Groupe d'Etude des Lymphomes de l'Adulte)Gradeシステムに従うよう推奨される.病期分類にはLugano国際会議分類が用いられる.胃MALTリンパ腫の第一選択治療法はH. pylori除菌であるが,I/II1期の胃DLBCLも約50%の症例で除菌治療が奏効する.各症例の形態学的特徴を理解し,治療前に適切な検査を行い,正確な組織および病期診断を行うことが重要である.

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要旨●胃に生じる多彩な腫瘍性病変・非腫瘍性病変が“粘膜下腫瘍”の形態を呈するが,最も典型的な粘膜下腫瘍は間葉系腫瘍によるものであり,その多くがGIST(gastrointestinal stromal tumor)である.固有筋層に関連して発生し,粘膜下層側あるいは漿膜下から壁外に突出した腫瘤を形成する.腫瘍内の出血や囊胞化をしばしば伴う.切除されたGISTの再発・転移予測は最大径と核分裂像数に基づくリスク分類によって評価されているが,最近では,腫瘍の原発部位と腫瘍破裂を考慮したmodified Fletcher分類が広く使用されている.他の間葉系腫瘍や腫瘍様病変との鑑別,GISTであることの確実な病理診断が重要である.

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要旨●100年以上にわたり消化管の神経内分泌腫瘍は,概念や名称も変遷してきたが,現在では2010年のWHO分類が受け入れられている.2010年のWHO分類では内分泌系の表現型を有する消化器腫瘍を“NEN(neuroendocrine neoplasms)”と総称し,高分化のNET(neuroendocrine tumor)と低分化のNEC(neuroendocrine carcinoma)に分類した.さらにNETは細胞分裂像ないしKi-67指数によりNET G1,G2に亜分類された.また,胃NENはRindi分類により,高ガストリン血症に起因するType I,Type IIと,高ガストリン血症を伴わず孤発性に発症するType IIIに分類される.悪性度の低いType I,Type IIは経過観察や内視鏡治療が選択されることが多く,悪性度の高いType IIIではリンパ節廓清を伴う胃切除が推奨される.しかし,治療方針については,まだ明確になっていない点もあり,今後のさらなる検討が必要である.

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要旨●Schindlerの胃鏡による胃炎分類以来,多くの胃炎分類が世界中で作成されてきた.しかしながら,1983年にWarrenとMarshallがH. pyloriを発見し,臨床の場では,胃炎の診断とともに,H. pylori感染を診断することが重要となった.このような背景のもと,世界共通の胃炎分類として,updated Sydney Systemが1996年に確立された.しかしながら,胃体部胃炎の萎縮評価に用いられる木村・竹本分類や結節性胃炎に関する記載がないなどの問題点から,これまで作成された胃炎分類の歴史を考慮し,2014年に“胃炎の京都分類”が作成された.一方,胃潰瘍については,海外ではForrest分類,日本では崎田分類が作成され,臨床の場で用いられている.PPIの登場とH. pylori除菌療法の普及により,胃潰瘍が減少し,出血性胃潰瘍のForrest分類を除き,胃潰瘍の分類はあまり用いられなくなっている.本稿では,胃炎と胃潰瘍の重要な分類について,歴史的考察を含め述べる.

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要旨●一般臨床において,“ポリープ”というと隆起を呈する良性上皮性腫瘍を指すことが多い.山田らは胃ポリープを4つに分類し,今でも山田分類として用いられている.胃底腺ポリープは半球状を呈する隆起であり,萎縮や炎症のないH. pylori未感染の粘膜に発生する.過形成性ポリープは亜有茎性〜有茎性の発赤調のポリープで炎症やH. pylori感染に関連する.大きな過形成性ポリープは担癌率が高く注意が必要である.hamartomatous inverted polypは異所性胃腺から成る胃底腺領域に好発する孤発性の大型のポリープである.腺腫は良性腫瘍であり胃型,腸型と分けられ,胃型腺腫の30%には発見時に癌が含まれていることがあると言われている.このように“ポリープ”を呈する胃病変はさまざまな種類があり,それぞれに合わせた診断,治療を行う必要がある.

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要旨●胃炎の分類については,これまで主に組織学的分類に基づくUpdated Sydney Systemが国際的に用いられてきた.しかし,その成因論的胃炎分類に関する検討は必ずしも十分ではない.一方,世界保健機関(WHO)が公表している現在の国際疾病分類における胃炎の分類には,Helicobacter pylori(H. pylori)胃炎や自己免疫性胃炎の項目がないなど欠陥が多い.このような現状から,H. pylori胃炎に関する京都国際コンセンサス会議で,成因論に基づく胃炎分類が国際合意を得て,改訂中の国際疾病分類に提案されることとなった.胃炎の分類に関してはなお多くの課題が残されており,学会での継続的な検討が望まれる.

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要旨●患者は20歳代,女性.食思不振と腹痛を主訴に当科へ紹介され受診となった.前医にて十二指腸狭窄を指摘されていた.上部消化管内視鏡検査では胃体部を中心に著明な萎縮粘膜を認め,多数の囊胞様隆起と色素沈着を伴っていた.十二指腸にはKerckring皺襞の消失を伴う粗糙粘膜と撒布性白斑を認めた.生検は病理組織学的にgastroenterocolitis cystica polyposaの所見を呈していた.筆者らは,既往歴が明らかでなかった時点で,その特徴的な内視鏡・病理所見から里吉症候群と診断することができた.里吉症候群は原因不明の非常にまれな疾患であるため,適切な診断と治療のために知見を集積することは重要と考えられる.上部消化管内視鏡検査の通常観察と生検は,本症の特徴的な所見を得るのに有用であった.

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はじめに

 胃癌の組織型は,悪性上皮性腫瘍として,一般型と特殊型とに大別され,さらに一般型はa.乳頭腺癌,b.管状腺癌,c.低分化腺癌,d.印環細胞癌,e.粘液癌に分類される1).胃癌取扱い規約では組織型は量的に優勢な組織像に従い分類され,異なる組織像を含む場合は優勢像から列記する.一方,TNM分類では,量的に劣勢であってもより低い分化度を組織型として分類していることに注意が必要である2).また,胃癌を2分類することもよく行われており,分化型腺癌(乳頭腺癌,管状腺癌)と未分化型腺癌(低分化腺癌,印環細胞癌)あるいは腸型とびまん型に分類される1)

 本稿では,分化型腺癌に分類される乳頭腺癌と管状腺癌について概説する.

早期胃癌研究会

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 2016年7月度の早期胃癌研究会は7月20日(水)に笹川記念会館2F国際会議場にて,司会は土山寿志(石川県立中央病院消化器内科)と斉藤裕輔(市立旭川病院消化器病センター)が,病理は海崎泰治(福井県立病院病理診断科)により行われた.画像診断教育レクチャーは,八尾隆史(順天堂大学大学院医学研究科人体病理病態学)により,「臨床医が知っておくべき病理 その2【大腸】鋸歯状病変」と題して行われた.

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欧文目次

「今月の症例」症例募集

第23回「白壁賞」論文募集

早期胃癌研究会 症例募集

学会・研究会ご案内

次号予告

編集後記 長浜 隆司
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 本号の企画「知っておくべき胃疾患の分類」を赤松,九嶋,長浜の3名で企画した.

 現在さまざまな胃疾患の臨床・病理分類があり,病変の所見記載,診断,治療方針の決定にはこれらの分類に準じて行うことが必須となっているが,初学者のみならず専門医でもこれらの分類をすべて理解しているとは言い難く,本特集ではそれらの分類の歴史的経緯や成り立ちも含めて11名の先生方にわかりやすく解説し執筆していただいた.

基本情報

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胃と腸
52巻1号 (2017年1月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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