胃と腸 5巻8号 (1970年7月)

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患者:佐○弁○郎 64歳 男

主訴:胃部の膨満感

Patient:a64-year-01dmale

Chief complaint:feeling of fulness in the stomach

総説

微小胃癌の肉眼診断 高木 国夫
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1.はじめに

 胃疾患に対する各種診断の驚異的進歩はここ数年間めざましく,早期胃癌として診断する病変が漸次小さいものを対象とするようになったのは自然のなりゆきであった.とくに1966年の日本内視鏡学会秋季大会では,直径2cm以下の表面型早期胃癌を微細病変と呼んで,この微細病変の診断およびその限界がとりあげられ検討された.さらに1969年の第7回日本内視鏡学会秋季大会では,1cm以下の小胃癌(微小胃癌)を対象として検討を加えるまでにいたり,微細病変として直径2cm以下のものから,ついに1cm以下の小病変の診断となって,診断の限界も肉眼的にぎりぎりの線まで到達して早期胃癌の診断進歩のすさまじさを物語っている.2cm以下の微細病変としてとりあつかった胃癌の診断にあたっても,肉眼的単位の診断学は良性,悪性の質的診断が困難であることは,すでに発表したが8),肉眼的診断として病変の存在診断に,細胞診,胃生検による組織学的,質的診断が加わって存在診断と質的診断の両者を必要としてきている.

 直径1cm以下の小胃癌の診断にあたって,その病変の存在を肉眼的に検討して,その大きさの診断の限界について言及してみたい.

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はじめに

 小さな胃癌を探そうとする試みはかなり前から多数の人々により追求されてきたが,ことにこの数年来,X線,内視鏡,胃生検の併用が盛んに行なわれるようになってきたため,とみに報告例が増加し,第4回内視鏡学会秋季大会(昭和41年11月)のシンポジウム微細病変の診断および診断限界1)では2cm以下,第7回内視鏡学会秋季大会(昭和44年10月)のシンポジウム2)では1cm以下の小胃癌の診断を討論するまでに至った.

 X線診断については,白壁は大きさ,高さ,型について早期胃癌のX線診断の限界を追求してきたが,6年前にすでにⅡaは透視で2cmまではみえるといい,Ⅱcは透視でみえにくく写真診断をするようにと述べ,おおよそX線診断の限界と小胃癌に対する検査方法を言いつくしており3),第3回世界消化器病学会(昭和41年9月)で4),表面型早期癌ではⅡaは3cm,Ⅱcは4cmの大きさまでなら容易にみつけることができると報告し,また病変部位を狙った精密検査では1cm以下の表面型早期癌の写真も呈示している5)

 その他,1cm以下の表面型早期癌に市川らのⅡa6),村上らのⅡc7)ほか多数の報告がみられるが,ごく最近では胃生検を併用して術前に胃癌と診断した4mmのⅡaを高木が2),4mmのⅡbを大井ら8)が報告し,どうやら微小胃癌の診断も肉眼ぎりぎりの線までせまってきたようである.

 著者らもX線内視鏡を併用して,しばしば小胃癌の診断限界について報告9)10)してきたが,1cm以下の微小胃癌となると,なにぶんにも多数の症例を持ち合わせていないため,今まで報告した症例と重複していること,また肉眼的に計測のむずかしいものについては切片上で計測し直したため,幾分数値に訂正のあることをお断りしておきたい(表1).

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はじめに

 内視鏡による早期胃癌の発見は,この数年飛躍的に進歩し,その診断の正確さは生検の導入により著しく向上した.しかし,癌病巣がより小さくなり1cm以下の小胃癌になってくると,内視鏡診断はもとより肉眼標本による診断もきわめて困難になってくる.できるだけ小さい状態,できるだけ浅い状態で胃癌を発見するには,どのような点に留意しなくてはならないかを主として内視鏡の立場で論じてみたい.

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はじめに

 現在のX線,内視鏡の進歩,これにともなう胃生検法の発達により,どの程度まで微細な病変を診断しうるかについては,しばしば問題にされてきた.中でもごく小さな胃癌,特にⅡb病変を発見することは,X線および胃内視鏡にたずさわる者のひとつの大きな目標である.しかし,一般に長径1cm以内の小胃癌の診断は,現在の優れた内視鏡,胃生検法を駆使してもなお至難である.幸いわれわれは現在までに16病変のこの微小胃癌を経験しており,これをもとに,この内視鏡診断,生検成績に検討を加え,このような微小病変に対する胃生検法の特徴,意義について述べてみたい.

 なお,われわれはlcm以内の微小胃癌を次のような基準のもとに検討した.

 1)病巣は原発性のもので,他の部位の癌転移を含めない.

 2)X線,内視鏡所見を検討する必要上,非癌部分をも含めた全病変の最大径が1cm以内のもの.

 3)病変の最大径は摘出生標本からの計測による.

アンケート

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 X線,内視鏡診断技術の向上と生検,細胞診の普及につれ,1cm以下の小胃癌を見つけること,診断することが大きくクローズアップされてきた(第7回内視鏡学会秋季大会,徳島,1969).

 本号ではこれを特集テーマとして,アンケートにより日本の微小胃癌診断の現状を整理,収録し,今後,診断を進めるうえに指針を得ようとしたものである.

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はじめに

 これまで幸いかなり数多くの早期胃癌症例を経験することができた.日頃痛感することであるが,X線検査にしても,内視鏡検査にしても,数少ない人間で常にレベルをピークに保って症例を待機していることはたいへん難しいように思う.症例によってはくり返し検査することからして困難なことがある.この例は家庭の都合上ゆっくり検査している余裕がなく,早々に手術した症例で,検査不充分の点が少なくない.しかしそれだけに,唯一の機会をも逃がさない網の目の細かさの必要を感じさせられた.

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はじめに

 X線および内視鏡検査で多発性の潰瘍病変をともない,粘膜下腫瘍と鑑別困難であったⅡa+Ⅱc型早期胃癌の1症例を経験したので報告する.

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症例

患者:70歳 男性 ブリキ職入

家族歴,既往歴:特記すべきものなし.

現病歴:約2~3カ月前より,心窩部の不快感がありこの頃より初診時までに約3kgの体重減少を認めた.

 約3週前,某医にて胃レントゲン検査を受け,胃角附近に病変を指摘された.

昭和44年6月30日,本院を受診した.

現症:体格中等.栄養中等.貧血なし.リンパ腺腫脹なし.胸部理学的所見なし.腹部では心窩部に軽い圧痛を認めた.肝二横指触知したが,脾・腎は触知しなかった.抵抗なし.腫瘤も触知しなかった.

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 胃カメラ,ファイバースコープが開発改良され検査技術も進歩し,現在では理論的には胃内に盲点は存在せず,胃内視鏡を用いた直視下の細胞診,生検も同様盲点はないわけである.しかし,微小病変ともなればその存在診断や質的診断が必ずしも容易でないときがある.ここでは微小病変のとらえ方として,内視鏡的存在診断と精密診断,質的診断としての直視下の洗滌細胞診と生検について手技の要点をのべる.

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はじめに

 胃内視鏡診断技術の向上により,胃下部の診断にはほとんど盲点がなくなってきた.しかし,胃上部の診断にはまだ完全とは断定できず,特に噴門直下の小彎側は反転法にてもファイバースコープ自体の影になり,最も観察,撮影の難点となっている.

 ファイバースコープで胃体部の観察を行なう時,胃角附近にてUpをかけると空気量と患者体位の変換により遠景ながら噴門附近が観察可能なことがある(図1).しかし遠景であること,近づけようとするとレンズ面が胃壁についてしまうこと,また上部小彎側は斜め下から見上げるかDownにて見下すしか方法がないなど,噴門直下の正確な観察はむずかしい.

 筆者は,従来行なっている反転法が大彎側を支点にスコープ先端をつけ反転してゆくのに対し,逆に小彎側に先端をつけて反転操作を行ない,噴門直下小彎側をなるべく正面から観察撮影できる「逆反転法」(Reverse U-turn Method)を試みたのでその実際についてのべる(図2).

診断の手ほどき

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 Ⅱcは,早期胃癌のなかでは最もしばしば遭遇するが,Ⅱc内部の潰瘍の動きによってはⅡc←→Ⅱc+Ⅲ←→Ⅲ+Ⅱcと変化するので,一応本型は陥凹型早期胃癌の基本型とでも言うべきであろう.

 X線および内視鏡診断の手順は原則的に切除標本の肉眼所見を基礎にして進められる.Ⅱcの肉眼的特徴は図1に示すように,不整形の浅い陥凹の存在で,陥凹の境界は,新鮮標本では時に不明瞭なものもあるが,フォルマリン固定ないし半固定標本ではほぼ全周性に輪廓を指摘することができる.時に癌の浸潤を免れた粘膜が残存し,陥凹内部の粗大な顆粒としてみられることがある,Ⅱc内部に潰瘍性病変がみられる時には皺襞の変化が,ペン軸様のヤセ,中断,時に融合としてみられる.したがって,X線および内視鏡診断のコツはいかに病変を詳細に描写し,読影するかにかかっていると言える.

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欧文目次

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 本書の内容は,大きく二つに分けて,検査法と診断の部よりなっており,診断の部の参考資料として,最初の63頁まで原色写真248枚とその簡潔な説明が付せられている.著者らによる本書のあとがきに,本書をあらわすについての目的が記されている.すなわち,患者の苦痛を最少にして,もっともよい診断ができる胃内視鏡検査に関する著者らの考えや工夫をわかりやすい形でかきたいということである.また序において,本書は国立がんセンター病院発足以来8年の間,多忙の診療,研究のかたわら,孜々として続けられてきた内外の諸学者に対する研修諸講義の集成であるとも記されている.

 本書を監修された崎田博士は,その恩師である田坂博士や久留博士の序文にもあるように,胃カメラ改良に心血をそそいだ草分けの1人であり,東大第一内科八研から国立がんセンターに至るまでの10年に近い歳月を,胃カメラ診断学の開拓およびその普及に努めてこられた人であることは,江湖にあまねく知られているところである.それだけに今回同博士とそのスタッフによって完成した本書は,細心の注意のもとに懇切丁寧な説明がなされており,今から初めようと志す人にとって誠に有益な本であるといえる.

編集後記 白壁 彦夫
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 まがりなりにも,診断は行きつくところまで行ったものである.可視的診断の限界をきわめたことになった.各執筆者が,めいめい苦労のあとをそのままに示して教えてくれている.これらをお手本にして,明日からの診療に生かそうと私も決意している.今まで不慣れだった点を補い,新しいことをつけ加えることができる軌道を,われわれは見出したのである.

基本情報

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胃と腸
5巻8号 (1970年7月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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