はじめに
実体顕微鏡から始まった大腸腫瘍の拡大観察1)~3)は,拡大内視鏡の開発・改良により生体内で応用されるようになり,工藤らによりpit pattern診断学として確立された4)5).現在,拡大観察によるpit pattern診断を行うことで,高い精度で大腸病変の腫瘍・非腫瘍の鑑別,腫瘍の質的・量的診断が可能となっている4)~9).
拡大観察は,超音波内視鏡検査のように特殊な器械は不要で水を充満する必要がなく,通常観察の延長線上で検査可能である.挿入性に関しても,拡大内視鏡の太さ,先端硬性部長や操作部などのスペックは汎用機と同じであるため操作性に全く差を認めない.しかしながら,pit pattern診断学への理解不足,若干の煩雑さ,これまで施設間でpit pattern診断(特にV型)基準が統一されていなかったことなどから,拡大観察をルーチン検査の一部として取り入れていない施設・内視鏡医もまだまだ多い.
また,近年,narrow band imaging(NBI)system の開発により,拡大内視鏡による腫瘍表層の微細血管模様の観察が新たな診断学として注目されつつあり10)~12),ますます拡大観察の臨床的重要性が高くなっている.
本稿では,大腸拡大観察の手順とコツを中心に解説する.