胃と腸 15巻3号 (1980年3月)

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黒色表皮腫Acanthosis Nigricansは臨床的に皮膚の角化充進,乳頭状増殖,色素沈着を特徴とする疾患で,その悪性型Malignant Acanthosis Nigricansは内臓の悪性腫瘍,特に胃癌を高頻度に合併するため注目されている.皮膚病変の他,口腔や食道粘膜などの消化器病変をも伴うことが知られているが,X線や内視鏡による食道病変を観察された報告例は極めて少なく本邦では坂井ら8)9)の2例のみである.胃スキルスに合併した黒色表皮腫で,著明な食道病変をX線と内視鏡で観察出来た1例を剖検する機会を得たので報告する.

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 薬剤性食道潰瘍は,原因と思われる薬剤の服用により,食道に急性潰瘍をきたす稀な疾患ではあるが,最近診断技術面の進歩も加わって報告数がしだいに増加しており,われわれもあいついで3例を経験したので報告する(Table1).

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 消化管重複症の報告は近年わが国においても増加しており,それほど珍しくはなくなったが,それらの多くは小腸および大腸の重複症であり,食道および胃の重複症はまだ稀である.またそれらは囊腫状で消化管と交通のない場合が多く,消化管と交通を持ち,相接する腸管と似た管状の重複症は比較的稀であり,記載の明らかな本邦の食道

重複症報告例は現在まで30例であるが,管状重複症はその内の3例に過ぎない.

 著者は先年,成人の大きな管状胃重複症の治験例を報告したが28),本例はその後の経過観察中に食道癌に罹患し,その根治手術に際して,癌を有する本来の食道の全長にわたり,これと接して走る,完全に近い重複食道を認め,これも摘除,治癒せしめえたので,若干の文献的考察を加えて報告する.

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 カルチノイド腫瘍は既に1907年にOberndorfen1)が,小腸腫瘍の症例で組織学的に癌に似ているが,臨床的に良性経過をたどる症例に命名したものである.更にMasson2)は,この腫瘍の細胞中に銀親和性顆粒の存在を発見し,この細胞をargontaffin cellと呼び,カノレチノイド腫瘍がamentaffinomaともいわれるようになった.われわれは最近胃原発性の2例のカルレチノイド腫瘍を経験し,その1例は過去報告されたことがないほど大きいもので,肝転移をみないが,カルチノイド症候群を呈したので報告する.

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 Cronkhite-Canada症候群は,消化管ポリボージスに皮膚の色素沈着,脱毛,爪の萎縮,低蛋白血症を伴い,非遺伝性に主として中年以後に発症する稀な疾患で,予後不良とされている.

 最近われわれは,特別の治療を行わなかったにもかかわらず,比較的短期間に臨床症状の著明な改善をみた本症候群の1例を経験したので報告する.

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 最近消化管に特異なmucosal bridgeを形成する症例のあることが注目され,とくに大腸では既に本邦にて数例の報告がみられ1)~4),その原因として炎症性ポリポージスとの関連が論じられている.また食道でも最近1症例が報告された5).しかし胃においては,その診断技術の目覚ましい進歩と,広範な検診の症例があるにもかかわらず,いまだこのような症例の報告をみない.

 最近われわれは,胃の,主として胃体部のほぼ全域にわたって,奇異な形をしたmucosal bridgeが集簇をなして形成され,また多数の小潰瘍を併発した1症例を経験したので報告する.

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 胃の結節性肉芽性病変には,胃結核,胃梅毒,胃サルコイド,胃クローン病などがあげられる.このうち前二者については,凝固壊死をきたす肉芽結節であり,起炎菌の証明や血清学的検査などで鑑別される.しかしサルコイドとクローン病については,両者の鑑別は困難であり,病因についても種々の問題を残している.また胃ザルコイドは,全身サルコイド症の部分症と,金身症状を欠き,胃に限局するサノレコイドとの間にもいろいろな相違点があげられる1)~4)

 われわれは,胃限局サ1レコイドの1例を経験したので報告する.

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 近年,胃原発性悪性リンパ腫は数多く報告され,早期の胃悪性リンパ腫も散見されるようになった.またいわゆる胃のreactive lymphoreticular hyperplasia(以下いわゆるRLHと略す)も報告が増し,悪性リンパ腫との胃X線,内視鏡での鑑別診断や病理組織学的な鑑別診断が諸家によりなされているが,未だ暗中模索の段階である.さらに術前,いわゆるRLHの診断で経過観察中に急激な変化を呈した胃悪性リンパ腫の報告も自験例を含め少数ながらみられる.私共は確定診断ができないままに,1年間の経過観察の後に検査所見の推移も合わせて,悪性リンパ腫を疑診し手術したところ,病理組織学的に一部に明らかな悪性リンパ腫と診断しうる1症例を経験したので報告する.

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 消化管原発アミロイドージスは比較的稀な疾患で,生前診断はつきにくい場合が多いといわれていたが,近年,生検法の発達により生前診断の報告例もふえてきた1).われわれは小腸および大腸に多彩な潰瘍性病変を有し,直腸,S状結腸の生検でアミロイドの沈着を認めた1例を経験したので報告する.

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 Colitis cystica profundaは比較的稀な良性の大腸疾患で,そのほとんどは直腸に発生する.その臨床症状および所見から悪性腫瘍として広汎切除を受ける例も少なくない.著者らは最近S状結腸に発生し,いわゆる大腸早期癌との鑑別を要した1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.

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 消化管の稀な先天性奇形の1つであるIntraluminal Duodenal Diverticulumは,現在までに外国では78例,本邦では8例の報告があり,その治療としては,約2/3の症例で外科的憩室切除術が行われている.最近,われわれは本邦第9例目を経験し,内視鏡的憩室切除術を施行したが,現在までに本症に対するこのような治療法の報告はなく,第1例目と考えられるので,ここに報告する.

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 潰瘍性大腸炎の長期罹患者の癌化率は一般人と比較し5~10倍高いと言われる1.前癌病変に関する病理組織学的検討は,欧米ではYeomans2以後,多くの報告をみる.本邦でも潰瘍性大腸炎に合併する癌の報告例はあるが前癌病変に関する記載は極めて少ない3)4).埼玉医大で,約15年の潰瘍性大腸炎罹患歴を有すると思われる症例を剖検し,多発する大腸癌および前癌病変の合併を認めたので若干の文献的考察を加え報告する.

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 戦後都市農村の別なく,多くの感染率を示した回虫症は,「稀な胃病変」の症例特集1)2)にとりあげられるほど急速に低下した.しかし,地域的にはいまだ相当の感染率を示しており2)10),当院においても,腹部の痂痛ならびに不定愁訴で受診する患者の中に,回虫が原因であることがかなり多い.当院において,過去2年間の消化管X線検査および内視鏡検査で観察した回虫症は11例になる.このなかの興味ある1症例を中心に,当村の一地区を調査した寄生虫卵保有の現状などについて報告する.

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 腸管囊腫様気腫は,主に小腸または結腸の漿膜下および粘膜下に多発性の含気性囊胞を形成する比較的稀な疾患で,現在までにわが国では約200例近い報告例があり,全世界では1,000例以上の報告例がある1)

 最近,S状結腸に限局し他に消化管疾患を伴わないprimary typeの本症で,経過観察中,囊腫が消失した症例を経験したので報告し,若干の文献的考察を加える.

一冊の本

Magenfrühkarzinom 木下 一郎
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 この書物は,消化器病便覧の1つとして発行された全文76ページの小冊子である,

 著者のElster教授は現在西ドイツにおける代表的な消化器病病理学者で,Bayreuth市立病院病理の所属であり,数年前来日した,Seifert教授はKoblenz市立病院第1内科

の所属で,消化器病に関する業績が多い.

入門講座 胃癌診断の考え方・進め方・15

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●経験の積み重ねが基本

 市川 次は内視鏡の質的診断です.生検はあとにして,内視鏡観察による,また撮影したフィルムによる質的診断,癌がどうかという診断を下すということですが,その場合に一番大切なことを総論的にいうと,城所先生.

 城所 質的診断になると多分に経験的な要素が入ってきます.同じ疾患でも,ずいぶんバラエティに富んでいますから,多くの症例を経験し頭の中にそれらのイメージを描きながら質的な診断を下していく.

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欧文目次

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 日本人にとって語学のハンディキャップが大きいことはいろいろな機会に繰り返し,繰り返し痛感させられることであるが,医書の中でも英文で書かれていればいかに大きく世界の医学の進歩に貢献し,またその著者も大きく評価されるだろうと考えられる場合が少なくない.

 その点,谷川さんは昔から彼のこの本の故に―と申し上げると失礼かも知れないが,私は彼の卒業した旧制中学の数年先輩であったということでお許しを願うなら―世界的に有名である.

編集後記 西沢 護
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 本号は,症例ばかり集められた特集号である.食道から大腸まで,早期胃癌研究会に呈示された4例を含む14編がのせられている.

 どの症例をみても珍らしいものばかりで,経験したことのないような症例のほうが多い.

基本情報

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胃と腸
15巻3号 (1980年3月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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