臨床検査 46巻13号 (2002年12月)

今月の主題 臨床検査技師の教育

巻頭言

臨床検査技師の教育 菅野 剛史
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 衛生検査技師法が制定されたのは1958(昭和33)年である.この制定により,衛生検査技師学校養成所指定規則が定められた.システム的な衛生検査技師の教育はこれに始まると考えてよい.紆余曲折を経て,衛生検査技師法が改定され,臨床検査技師,衛生検査技師等に関する法律が制定され,検査技師の教育は3年制教育に変わっていった.この制度では,厚生大臣の指定を受けている大学当該学部の卒業生は,国家試験の衛生検査相当の試験科目の免除を認められ,臨床検査技師の国家試験の受験生は拡大していった.薬学部以外の栄養学部,獣医学,理学部,工学部でも厚生大臣の承認を得て指定科目を教育の過程に取り入れ,受験生は急増していった.

 時期は,医療の内容の急激な変化に対応した.臨床検査技師の必要性の高まりとともに専門学校,短期大学が臨床検査技師の教育に参画した.臨床検査技師の教育にはこれまで2,300時間であった必須時間が,2,800時間を越えるようになった.さらに,時代の新しい要請に応えるため,選択科目を加えて3,100時間に至る教育時間が割かれるようになった.1999年の時点で臨床検査技師の養成に携わる施設は,厚生大臣指定校35校,文部大臣指定学校29校,受験資格を取得できる大学が50校にも及んでいる.

総論

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 臨床検査技師の卒前教育に今求められるのは,基本的な臨床検査の技術の修得である.それ以外では専門技術,診療支援,臨床診断学,医療経済学,ラボラトリーマネジメント(検査管理)などの教育が臨床検査の現場で求められている.また,臨床検査技師が患者と接する時間が増えるので,人間教育も重要である.

最近新カリキュラムが大綱化され,それに基づいた国家試験の出題基準も作成されたので,その内容を提示した.これに沿った十分な卒前教育が要求される.

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 1985(昭和60)年に作成された日本医師会の生涯教育制度化ガイドラインに「医師は生涯にわたって学習し続ける義務がある」と記されており,「医師」を「技師」に置き換えればそのまま検査技師の生涯教育の理念となる.

 医学が日々進歩するなかで,検査技師も臨床ニーズに対応しながら医療専門職として学習する努力を怠ってはならない.医療全体の質の担保は医療従事者の質の向上にある.そのために日本臨床衛生検査技師会が行っている会員の資質向上を目的とした学習支援システム「生涯教育研修制度」と専門性の向上を目的とした評価システム「認定検査技師制度」について述べる.

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 当初,衛生検査技師は名称独占,都道府県知事免許で教育は2年制,指定規則・指導要領によって教育し,免許は衛生検査技師試験に合格することが条件であった.法律改正で,臨床検査技師に独占業務が加わり国家試験制度に昇格し厚生大臣免許となった.教育は3年制となった.衛生検査技師は承認大学で厚生大臣指定科目を履修することで国家資格の免許を取得できることになった.その後,指定規則改正を受けて,すべての受験者が全科目を受験することとなり,直近の改正では,主となる教員は,臨床検査技師3名以上とし,学校の責任で多様な教育をすることとなった.今後の課題として,資格制度を統一すること,一様一律の教育から脱却すること,EBMによる医療科学の発展をめざすことが求められる.

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 4年制大学での臨床検査技師教育は,資質の高い学生の受け入れを確保して,将来に向けて彼らが発展していくための柔軟な思考や考え方を学習支援することである.Laboratory Scientistとして高度な専門知識や技術を修得するとともに,医療人としての幅広い教養と豊かな人間性を培うことのできる臨床検査技師の育成が必要である.医療施設にとどまらず関連分野にも進出することのできる能力を身につけ,医療の質の向上に貢献することが望まれる.

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 臨床検査技師教育の教育体制は複雑な制度の上に成り立っている.その教育の最高峰としての大学院教育について,教育施設の分布,入学方法,教育内容,卒業後の進路などについて概説する.さらに,こうした技師教育の問題点と今後の展望について論ずる.

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 薬学教育における臨床検査技師教育は,臨床検査国家試験受験資格が取得できるか否かで異なる.すなわち国家試験受験資格を取得するためには,①臨床生理学,②臨床化学,③臨床検査総論,④放射線同位元素検査技術学,⑤医用工学概論の5科目を履修し,併せて①②③の実習を終えていなければならない.本稿の「薬学教育における臨床検査技師教育」では言及する内容が限られるので,「薬学教育における臨床検査学の必要性」を中心に述べるほうが,医薬分業の急速な進展と服薬指導が義務化されている現状に合致している.

話題

技師教育とIT 千葉 正志
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1.はじめに

 近年の医療法改正などから,各医療機関の財政基盤が揺らいできている.そのため,検査部門も従来からの体制で運営を継続することは難しい状況になりつつある.単に検査結果を報告するだけの機能ではなく,存在意義を高める付加価値が求められている.これからの検査部門は,より有効な情報提供のできる体制作りが必要であり,Information Technology (IT)などがよりいっそう推進される可能性が高い.臨床検査部門に必要なITとは何かを理解し,それに対応できる人材の育成が急務の課題といっても過言ではない.

 今回は,日常業務を遂行するうえで,検査技師に求められているIT知識・技術は何かを,主に検査室管理において必要なIT知識・技術について触れる.

臨床検査技師の新しい展開 山名 琢薫
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1.はじめに

 外来・病棟で実施される臨床検査は,主に看護師をはじめとする他職種の医療従事者が実施している.検体採取前の検査説明,検体採取,検体の搬送,検査の実施,検査結果の報告・説明など,検査室以外で実施されている臨床検査業務をわれわれ臨床検査技師が責任をもって行うことを目標に,当科が取り組んできた外来・病棟での臨床検査業務について述べる.

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1.はじめに

 生理機能検査とは,各種診断機器により直接,生体から検査情報を抽出し解析,診断する検査法である.一般に,医師の診察(問診,打診,聴診,触診など)により得られた情報から患者の病状分析が行われ,ふるい分け検査としての臨床検査(検体検査および生理機能検査)が実施される.検体検査では患者の血液,尿などを材料として検査が行われるが,生理機能検査では生体からの信号(情報)が直接採取される.前者は血液,尿などの生化学的な分析から生体の病的状態の有無,およびその程度が数値で表示され診断に提供される.一方,後者は脳や心臓の電気的現象を波形として(脳波,心電図検査など),また各臓器の形状・性状を画像として描出し(超音波検査,サーモグラフィ検査など),解析・診断される検査法である.

 現在,臨床検査技師が法的に関わることが認められた生理機能検査は16項目ではあるが,実際にはそれ以上の検査を行つているのが実状である(表1)1).それらは①循環生理検査,②呼吸生理検査,③神経生理検査,それに④画像診断検査の4種に大別できる.そのなかでも超音波を用いた画像診断検査の発展はめざましいものがあり(別項に譲る),現在では臨床生理検査の中核をなしている.また一方では循環生理検査の分野では,最近の電子化に伴いデジタルHolter心電計の実用化が始まり,虚血性心疾患において精度の高い診断が期待されている.

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1.はじめに

 日本超音波医学会が設立され本年でちょうど40年になる.その間超音波検査装置は長足の進歩を遂げ,現在では科を問わず,また病院だけでなく多くの診療所にも置かれている.主たる会員も,当初学会の中心的な役割を果たしていた脳神経領域,眼科領域の先生方に代わり,1980年代からは,循環器,消化器領域へと移っている.現在の会員数は医師,工学関係の研究者などの正会員約9,000名,検査技師を主とする準会員が4,500名余りである.

 検査を直接担当する者についても,当初医師により行われてきた超音波検査は,1980年代より,装置,表示法が改良され画像が理解しやすくなった,検査方法が確立された,さらに検査件数が増加し医師だけでは対応しきれなくなったことなどにより,検査の一部すなわちスクリーニング的なものや検査目的が明確である場合は,技師が行った検査・画像を医師が診断するというスタイルの施設が増加してきた.この流れは,今後検査件数がますます増加してゆく状況を考えると元に戻ることはなく,今後もお互いに良好なパートナーシップが求められていくものと思われる.

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1.はじめに

 わが国で院内感染が医療の現場で真剣に問題視されたのは,1990年代から高頻度に検出され始めたmethicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)からであろう.しかもこのMRSA感染症による死亡例が,マスメディアでの報道や富家恵海子氏による『院内感染』(1990)の出版により,社会的な問題にまで発展した.

 院内感染が蔓延する背景には,医療技術の進歩により患者の救命率は高くなった反面,易感染状態の患者が増加したことも要因の1つに挙げられる.このような医療の現場において,医師,薬剤師,看護師,臨床検査技師などが部門別に行動しては,病院や患者側にとっては適正医療・医療費の面でメリットが少ない.院内感染は医療スタッフ全員の問題として捉える必要があり,部門を超えた横断的な支援が求められる.

今月の表紙 電気泳動異常パターンの解析シリーズ・12

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 前回に続いて,CK(クレアチンキナーゼ)アイソザイムに関する話題である.前回述べたように,CKには通常認められるCK-MM,MB,BBの各アイソザイム以外に,マクロCKと呼ばれる異常な活性が出現する場合がある.マクロCKにはタイプⅠとタイプⅡの2種があり,前回はタイプIの本態であるCK-BBと自己の免疫グロブリンが結合した複合体の検出と同定法についてお話しした.今回は,タイプⅡの本態であるミトコンドリア由来のCK例をお示しするとともに,これらの異常CKと正常CKの鑑別法についてお話ししようと思う.というのは,図1に示すようにこれらマクロCKは通常のアイソザイムと易動度が重なる,あるいは近接している場合が多く,電気泳動のみでは鑑別が不可能だからである.また,CK-MBの近傍には非特異活性が認められることもあり,これとの鑑別も必要となる.

 われわれが用いているのは電気泳動と免疫学的手法を組み合わせた免疫電気向流直接法と呼ばれる方法で,前回マクロCKタイプIの結合免疫グロブリンを同定するのに用いた方法である.前回使用したのは抗免疫グロブリン抗体であるが,今回使用する抗体はCKのMサブユニットに対する抗体,抗CK-Mである.これはCK-MBを自動分析で測定するのに用いられる抗体と同一のものであり,Mサブユニットと結合するとその活性を失わせる失活抗体である.この抗体はBBと反応しないが,MMは100%,MBは50%失活させる.

コーヒーブレイク

うたかたの記(2) 屋形 稔
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 同学の人で年長者との別れはある程度やむを得ないが,若い人に有為転変が起こることは予期しないことでもあり,痛い思いをすることが多い.

 内科の内分泌研究室にいた頃,机を並べていた2人の後輩を相次いで失ったことがあった.坂内昇君は副腎ホルモンの測定法や治療法の開発を手伝ってくれた人で,学究肌であったがスポーツマンで野球やバレーボールも共に楽しんだ.学位論文ができあがると発足早々の国立がんセンターの検査室に赴任,間もなくベーラー大学に数年留学して最新のステロイドガスクロマトグラフィーの仕事を土産に帰国した.これは当時注目を浴び彼の最盛期であったが,程なく自分の病院の一室で癌死することになってしまった.病院ではseri-ous君というニックネームだったと聞き余計に暗然とした.

シリーズ最新医学講座―免疫機能検査・24

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はじめに

 ヘリコバクター・ピロリ(以下H.pylori)のは,グラム陰性桿菌でヒトの胃に感染し,消化性潰瘍,胃癌,MALT lymphomaなどを引き起こすことが知られている.多くの研究により,それらの疾患の発生には菌側の要因と宿主側の要因とが関連していることが知られている.H.pylori感染の多くは幼少期に感染し,そのまま持続感染していると考えられている.つまり,H.pylori感染の特徴の1つとして宿主に生涯感染し続け,炎症反応が持続するということが挙げられる.そのためには宿主側の免疫応答をうまく回避して感染し続ける必要がある.そこで,H.pyloriに対する宿主がどのような免疫応答をしているか,また,H.pylori側がそれに対してどのようなメカニズムでそれを回避しているのかを,これまでの知見を中心に述べてみることにする.

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1.はじめに

 L型アミノ酸トランスポーター1(L-typeamino acid transporter 1;LAT 1と略)は,広い基質選択性を示すアミノ酸輸送蛋白である.細胞の増殖能の高い細胞に多く発現するとされ,近年悪性腫瘍細胞について知見が集積されつつある.

 本稿では,乳癌ならびに乳腺の腫瘍性病変・腫瘍類似病変を中心に悪性腫瘍とLAT 1の関係について述べる.

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基本情報

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臨床検査
46巻13号 (2002年12月)
電子版ISSN:1882-1367 印刷版ISSN:0485-1420 医学書院

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