臨床検査 31巻5号 (1987年5月)

今月の主題 輸血;新しい技術

カラーグラフ

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 現在使われている自動血液型判定装置は,検体識別のためのバーコードを貼付した抗凝固剤入り試験管に採取された血液を遠心して,機械にセットすると自動的に検査が進み,反応結果を読み取り,それと判定を検体番号とともにプリントアウトするいわゆる全自動のものである.これらの機器には,連続流れ方式のAutoGrouper 16C,ディスクリート方式のGroupamatic,マイクロプレートを用いるPK−7100がある.わが国では,Groupamatic360,2000とPK−7100が多く用いられている.

技術解説

自動血液型判定装置 細井 武光
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 血液型の検査を自動的に行おうとする試みは1960年代から始まり,最初に連続流れ方式(continuous flow system)によるAutoAnalyzerが実用化され,続いて試験管方式(discrete system)のGroupamaticが実用化された.これらはやがてマイクロコンピュータの制御の下に検体識別をバーコードで自動的に行い,反応結果,判定結果をプリントアウトする全自動の機械として,採血量の多い大規模血液センターで広く活用されることとなつた.

 血清学の領域において感度や精度が高く,経済的で融通性に富むマイクロプレートを用いる自動血液型判定装置が開発され,その一つとしてPK-7100が実用化されるようになった.

HLA抗原の検査法と解析法 赤座 達也
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 HLA抗原の検査は血小板輸血や,臓器移植における患者と提供者との適合性の決定,親子鑑定,いくつかの疾患の診断および習慣性流産夫婦間の適合度の検定などで行われる.クラスI抗原(HLA-A,B,C)を検査するためには,比重の差を利用して血液よりリンパ球を分離する.さらにクラスII抗原(HLA-DR,DQ)を検査するには,ナイロンウールを使ってBリンパ球に分離して用いる.HLA抗原の検査(HLAタイピング)は,NIH法として国際的に標準化されている細胞傷害試験で行う.HLAタイピングにとっていちばんたいせつなのは抗血清である.抗血清の特徴(HLAの特異性)を表すには,Mickeyにより提案された,多特異性を解析するのに優れたQスコア(quality score)が適している.HLAの判定は慣れた人でも難しいが,使用した血清のQスコアをパーソナルコンピュータを使って計算することにより,HLAの判定を機械的に行わせることを試みた.以上のHLA抗原の検査と解析法とについて述べたい.

不規則抗体の検出法 古川 研
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 血液型抗体の検出法は,食塩水法,アルブミン法,酵素処理血球法および抗グロブリン試験がほぼ定着し,抗血清,パネル血球も豊富に出回って,検査がより普及してきた.しかし,術式ではその後独創的な原理やくふうを凝らした新しい方法は見当たらず,術式はほぼ完成されたとみてよいように思われる.また,最近の二十数年間の検査の中から,日本における輸血,型不適合妊娠,自己免疫疾患などの症例の主な不規則抗体の産生の状況や分布もほぼ出そろった感がある.このあたりで,日本人に適した不規則抗体の検査の手順を考えてみる時期にきているのではないかと思われる.そこで,初心に帰って,採血,血清の分離,保存から,術式のポイント,検査法の選択などについて,古くて新しい問題をもう1度掘り起こし,整理してみることにした.

 抗体の検査は,「入り易くして成り難し」と言われているが,不規則抗体の検出がそれぞれの検査室に適した範囲で的確な方法で行われることが望まれる.

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 成分血液採取法は,患者に不足している血液成分,例えば血漿,血小板,顆粒球あるいは赤血球を分画採取する方法である.まず成分血液採取ができる3種類の成分採血装置(Cobe2997,CS-3000,Haemonetics V-50)の機構の違いを述べ,これらの機械を操作する際に遭遇するvasovagal反応や,クエン酸中毒の症状とその処置を解説した.また,採取される血漿,血小板,顆粒球,LAK細胞,そして幹細胞の各血液製剤の特徴を明らかにして,それらの製剤の投与方法と適応疾患を説明した.特に,単一な供血者から得られる血液製剤は,HLA適合血を確保したり,輸血副作用を軽減するために好つごうであることを強調した.成分採血装置を用いて大量に自己LAK細胞を作製して,インターロイキン2とともに末期癌患者に投与すると腫瘍の縮小がみられるというadoptiveimmunotherapyも紹介した.

総説

血漿交換 湯浅 晋治
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◇はじめに

 医療技術の進歩には目覚ましいものがあるが,その中でも血漿交換は新しい血液浄化療法として登場してきた.血漿分離技術や機器の開発も遠心分離による連続血液成分採血装置から膜濾過分離法,そして最近では免疫吸着法も行われるようになってきた.中でも膜濾過分離法は本邦で一早く開発され,血漿交換の主流をなすに至った.このように,本邦における研究および臨床応用は世界でももっとも進んでいると言える.この実績を背景に1986年,東京で第一回の国際アフェレーシス会議(Ist International Congress of the WorldApheresis Association)が開催された.

 この血漿交換の普及とともに,一方では致命的な副作用や合併症も報告されるようになり,その適応基準や効果判定も改めて見直されるようになってきた.

主題を語る

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 臓器移植と同じ意味を有する輸血において,血液製剤の第一次選択を行い臨床へ供給する輸血検査は,治療に直結している.そのためその意義は重大である.そこで,安全で効果的な輸血を目指して,輸血に携わる全スタッフが,どのように作業・データを精度管理すれば良いのだろうか.

検査と疾患—その動きと考え方・122

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◇はじめに

 輸血は,それを必要とする患者に的確に行えばきわめて優れた治療効果を示すものであるが,しかし,時として思わぬ副作用や合併症を引き起こすものでもある.それらの副作用や合併症は,輸血前の検査やチェックを適切に行えば避けることができるものと,それを実施しても避けることが不可能なもの,あるいは現在の医療レベルでは避けることが困難なものとがある.輸血は患者の治療に有効な手段であるが,一方には絶えず危険を随伴する性質のものでもあると言える.

 輸血に伴う副作用および合併症を分類すると,表1のように分けられる.これらはいずれも患者に重大な障害をもたらすことがあるので注意しておかなければならないが,ここでは特に検査する側にとって重視しなければならない副作用について述べることにする.

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 電子染色の手順で鉛染色後の再蒸留水水洗(以下洗浄)はシートメッシュに付着した鉛ゴミを除去するうえでたいせつな操作である.

 洗浄には一般にポリエチレン製の瓶を使用するジェット水流水洗が行われるが,電子染色のシートメッシュの数が多い場合には洗浄に使われる水も多く,水の受容器は洗浄に用いた汚水で直ちに一杯になる.そのため,汚水は頻回に捨てなければならずむだな時間や労力が費やされる.また,誤ってシートメッシュが水受容器内に落ちたときは水受容器の底に沈んでいた鉛ごみが付着しやすく,さらにピンセットで摘まんだ際にキズやひずみ,変形が生じ観察時に支障をきたす.

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はじめに

 免疫(immunity)とは,生体が自己と異なるものを認識し排除するという生体内恒常性保持機構である.この機能になんらかの異常が起これば,生体は非常なダメージを受けることになる.免疫機構には,侵入してきた異物(抗原,antigen)に対しB細胞により産生される抗体(antibody)が主役をなす体液性免疫(humoral immunity)と,T細胞が主役をなす細胞性免疫(cellular immunity)とそれぞれ呼ばれる二つの機構がある.近年では分子生物学の進歩により,何百万という異物抗原を生体がいかに認識し,それぞれの抗原に対する免疫応答を行うかという免疫応答の多様性と特異性の発現機構が解明されつつあり,それが非常に柔軟性に富んだ生体反応であることが明らかにされつつある.

 本稿では,ヒトIgGの構成成分である糖鎖構造について概略し,さらにその機能や構造異常と疾病との関連性について考察を加えてみたい.

センサの応用・3

化学センサの応用 石山 陽事
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はじめに

 MEによる生体計測技術はコンピュータなどによる情報処理技術とともに,近年急速な進歩をとげている.特に生体計測用の医用センサの開発は,従来の臨床検査法を大きく変えつつある.中でもイオンセンサ,バイオセンサなどの化学センサによる生体成分の測定法は今や検体検査の主役となっている.血液中のPCO2,PO2,pH,あるいはNa,Kなどの電解質,グルコースや尿酸など多くの血中ガスや化学物質を,小型でしかも短時間で何日も安定に使用できる電極もすでに開発され,人工臓器システムや各種の術中モニター機器などに応用されつつある.

 これらの化学成分の計測で特に重要なことは,多くの物質の中から特定の物質を選択的に効率よく検知することである.従来検知手順は,生体より一度検体を取り出した後,分離したり比色反応を起こさせるなどの行程が必要であった.しかも,種々の色素や酵素を使い捨てにすることが多く,反復使用が難しいなどの問題も残されていた.したがって,このような計測方法では検体そのものも損われ,消耗する物質も多いばかりでなく,生体内または体外循環回路内の連続測定は困難であった.そこでこれらの問題点を解決するために,最近ではガスセンサ,イオンセンサ,あるいはバイオセンサ(生物電気化学センサ)のような小型で性能の良い種々の電極の開発が試みられている.

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はじめに

 抗核抗体は全身性エリテマトーデス(SLE),Sjögren症候群(SjS),慢性関節リウマチ(RA),全身性進行性強皮症(PSS),混合結合織疾患(MCTD),各種肝疾患のとき出現する.抗核抗体の中で特に抗ENA抗体は上記疾患群のうちSLE,SjS,PSS,MCTDなどでしばしば出現する抗体として注目されている.今回私どもは,市販のウサギ胸腺アセトンパウダー(RT)から得た抗原液で感作した赤血球凝集反応,およびRNase処理した感作血球を用いて抗ENA抗体の検索を試み,対向免疫電気泳動法との比較検討を行った.さらに,抗ENA抗体の同定が可能となるように標準血清と被検血清とを同時に泳動する対向免疫電気泳動法(三穴-CIE法)をKohnの方法1)に準じて検討した.

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はじめに

 ナイアシン試験は結核菌を他の抗酸菌より鑑別するための重要な一検査法であり,臨床面での重要性も高い.従来,本試験はブロムシアンと芳香族アミンを用いた方法(以下アニリン法)が主流であったが,試薬調製がやや煩雑で,その取り扱いに注意すべき面もあり,最近では簡易なナイアシンテストペーパー法1,2)を行っている施設が多いようである.

 ナイアシンテストペーパーは現在,国内および国外メーカー数社から発売されているが,それらの有用性を比較検討した報告は少ない.そこで今回われわれは,市販ナイアシンテストペーパーに,先にわれわれの考案した「ナイアシンテスト"小林"3,4)」をも加えてアニリン法との比較を行ったので,以下報告する.

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はじめに

 ヘマトキシリン—エオジン(以下H-Eと略す)染色は,病理組織学における基本的染色である.近年,ミクロトーム刀の替刃が普及し切片が2μm程度に薄切できるようになり,Mayerのヘマトキシリン染色液として細胞核の染まり上がりがわずかに淡いようである.しかしながら,基本的な染色液のため今日でもMayerのヘマトキシリン液を繁用している施設が少なくない.今回,われわれはMayerのヘマトキシリン液の組成を変えることなくヘマトキシリン液の改良を試みた.すなわち鍍銀染色として用いられるアンモニア性銀液とMayerのヘマトキシリン液の混合液について検討し,Mayerのヘマトキシリン液を用いたH—E染色と混合液(アンモニア性銀—ヘマトキシリン液)のH-E染色とを比較したので報告する.

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はじめに

 最近,ヒトヘモグロビンに特異的に反応する免疫学的便潜血検査法が各種開発されており,特に大腸癌のスクリーニングに応用され注目されている1〜6).私たちも新たに開発されたラテックス凝集反応を用いた免疫学的便潜血反応法(栄研化学株式会社,OC—ヘモディア栄研®)を臨床に用いる機会を得たが,本法の大腸癌に対するスクリーニングのための有用性と問題点について臨床評価したので報告する.

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 〔問〕最近粒子イムノアッセイ(金属コロイド粒子,ラテックス粒子)が行われるそうですが,原理,操作法,将来性についてご教示ください.

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 〔問〕トロンボエラストグラフィーを同じ患者さんについて2回行うと違った結果が得られます.トロンボエラストグラフィーはどのような精度管理を行えばよいかお教えください.

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 〔問〕Duke法で出血時間を測定しようとしたところ,耳朶から脈うって出血が続き,その量も多かったので,結局10分まで測定した後押えて止血させました.もう一方の耳朶で再検したところ,明らかな延長はみられませんでした.この脈うつ出血の原因は何が考えられるでしょうか.ドクターは「動脈を切ったのだろう」と言うのですが,切開の際耳朶を圧迫するようなことはしませんでしたので,それは考えられないように思うのですが,ほかに何が考えられるでしょうか,お教えください.

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 〔問〕網赤血球をテルモ社のキャピロットを使用して毛細管法で測定していますが,次の三点についてご教示ください.

(1)採血後すぐに作製したものとEDTA−2Kも使用して一晩室温に放置後とでどれくらい差があるのか.

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 〔問〕ニキビや毛嚢炎を起こす原因となっている毛嚢虫(ニキビダニ)と,皮膚の軟らかな指間部,腋窩などに寄生し皮疹を生じさせる疥癬虫(ヒゼンダニ)とは,ともに自覚症状として掻痒を訴えるようです.形態学的な点は成書でわかりますので,これらについて発育史と検出率の高い検査法とをご教示ください.

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 〔問〕電量滴定法で尿中食塩濃度が測定できるそうですが,その操作法と,また,Clを測定することでNaClが測定できる理由とをお教えください.

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 〔問〕例えば成人T細胞性白血病で,初め悪性リンパ腫とされ,しばらくして白血病化する例もありますが,リンパ球の腫瘍であるリンパ性白血病と悪性リンパ腫との関係はどうなっているのでしょうか.分類上同じであるのか,またはリンパ性白血病はリンパ腫に含まれるのか,どちらでもなければリンパ腫のリンパ球と白血病のリンパ球とはどのように違うのか,ご教示ください.

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 〔問〕腎炎と腎盂炎とを鑑別するための臨床像,臨床検査におけるパラメーターをご教示ください.また,40〜50歳以後の患者について,どのような臨床検査を行えばよいでしょうか.

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 〔問〕心筋梗塞と皮膚筋炎との鑑別で,CPKの上昇値はどれくらいとみればよいのでしょうか.また,次のデータでどれがポイントなるのかをお教えください.

基本情報

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臨床検査
31巻5号 (1987年5月)
電子版ISSN:1882-1367 印刷版ISSN:0485-1420 医学書院

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