臨床婦人科産科 72巻2号 (2018年3月)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

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●安全面からHRT開始前の患者の評価をさまざまな角度から行うことが肝要であるが,多くの検査を実施することよりも家族歴を含めた詳細な問診が最も重要である.

●効果的にHRTを施行するには,画一的な処方は避け,患者背景を十分に考慮した投与法の選択が鍵となる.

●HRT施行中は患者の訴えを真摯に受け止め,臨機応変な対応を行うことが,医師─患者関係の信頼構築と安全で効果的なHRTの継続に貢献する.

ホルモン製剤による違い

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●HRTは目的,年齢,合併症を考慮して用量や投与経路を考える.

●更年期障害の改善を目的とするのであれば通常量,骨量増加や骨折抑制など骨の健康を考えるのであれば低用量,泌尿・生殖器症状の改善を目的とする場合には経腟投与が望ましい.

●60歳以降では加齢による静脈血栓塞栓症や脳卒中の増加を考慮して経皮や低用量,また肥満,胆囊疾患,肝機能障害を合併している場合には経皮が望ましい.

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●ホルモン補充療法における黄体ホルモン投与の目的は,全身的なエストロゲン投与による子宮内膜がんや子宮内膜増殖症のリスクを増加させないことにある.

●黄体ホルモン投与中は浮腫,不安や抑うつなどが起こりやすく,エストロゲン単独に比べ乳がんや静脈血栓塞栓症の発症率が高くなる.

●子宮を有する女性には黄体ホルモン併用を原則とするが,乳がん発症を抑えるため近年ジドロゲステロンの使用が増加している.

効果と注意点(発がんリスクを除いて)

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●HRTの治療効果が期待できる閉経周辺期の症状には,更年期障害,気分障害,皮膚症状,性器萎縮が当てはまる.

●ホットフラッシュを中心とした更年期障害や性器萎縮に対するHRTの治療効果は周知の事実であるが,それ以外にも睡眠障害,精神的症状,関節・四肢痛に有効な場合がある.

●HRTにより,更年期の抑うつ気分または抑うつ症状は改善するが,うつ病に対する効果は一定しない.

●皮膚組織に対するHRTの効果は証明されているが,積極的にHRTを推奨するには臨床データが十分でない.

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●心血管系の有害事象を減らすためにHRTの開始時期・開始年齢を考慮すべきである.

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●HRT投与期間の継続(延長)の可否・要否を考える場合には,HRTの目的の確認を行うとともに,対象者の年齢や状態における有害事象,とりわけ急性かつ致死的なもののリスク評価を行い,その情報を共有することが大切である.

●目的,リスク評価を理解したうえであれば,原則的に投与期間の制約はない,というのがグローバルコンセンサスとなっている.

●大規模なRCTでの評価からいえることは,長期投与の点からは通常投与量の結合型エストロゲン/酢酸メドロキシプロゲステロンに限られる.低用量やエストラジール(経口,経皮)では有害事象が増えないことが予測されている.

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●VTEリスク,すなわち①高齢,②肥満,③喫煙,④手術・骨折などによる長期臥床,⑤VTEの家族歴,を有する症例には慎重に閉経期ホルモン療法(MHT)を行う必要がある.

●MHTに伴うVTEリスクは,①経口投与でEの高用量化とともに上昇し,②経皮投与ではEの用量にかかわらず上昇せず,③用いるPの種類によって異なる.

●MHTに伴うVTEリスクを可能な限り低下させるためには,経皮投与を行うことが望ましく,さらにPとしてはDYDを選択するとよいかもしれない.

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●内科合併症を有する女性にHRTを検討する際には,HRTの禁忌症例・慎重投与症例に該当しないか,十分な問診をとり,投与前検査を確実に評価する.

●HRTの施行にあたりリスクとベネフィットを説明し,実際の薬剤はリスクの少ない処方を選択するとともに,内科主治医と密に連携をとり,合併症の有無など細かく診療する.

●リスク回避の方法として,低用量,経皮剤の使用,黄体ホルモンの選択,内科薬剤の使用などがあるが,個々の症例において安全に行えるか検討する.

悪性腫瘍との関連

HRTの発がんリスク 尾林 聡
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●ホルモン補充療法は更年期障害の治療に有用であるが,エストロゲンの副作用として子宮内膜がん,乳がんなどの発生に留意する必要がある.

●日本での発生が増加している卵巣がんであるが,HRTにより1,000人に1人程度増加すると最近報告された.

●一方,結腸がんではETでRR 0.77,EPTで0.88とむしろ低下すると考えられている.

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●乳がんの既往がなく,発症もしていないBRCA遺伝子変異を有する女性へのHRTは,一般女性へのHRT同様に有用である.

●現在までのところ,これらの女性へのHRT施行により,乳がん・卵巣がん・子宮内膜がんリスクの上昇を示唆する報告はない.

BRCA遺伝子変異を有する女性に対しては,RRSO後や自然閉経後の諸症状・疾患に対し,あるいはヘルスケアの目的でHRTの可能性を提示することはQOLの維持・向上の点から必須であると考えられる.

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●子宮頸がん術後のHRTは扁平上皮癌においては問題ないと考えられるが,腺癌に関してはエビデンスが乏しいため十分なインフォームド・コンセントが必要である.

●子宮体がん術後のHRTは初期においては許容されるが,Ⅲ期以上の進行症例には推奨されていない.

●卵巣がん術後のHRTは進行期,組織型にかかわらず可能と考えるが,血栓症などの副作用には注意が必要である.

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 高齢になると骨格筋が失われ,体重が低下し,運動機能も低下する.この状態は臨床的にはサルコペニア(sarcopenia)と呼ばれる.これらの高齢者は歩行の困難,椅子から立ち上がることの困難,階段を上ることの困難,転倒時の困難,などを示す.運動能力だけではなく,社会的あるいは感情的な側面から見たQOL(quality of life)も,高齢者の幸福を形作る重要な要素である.

 最近のハワイ大学および南カリフォルニア大学の研究者らは42,500人の高齢者を対象に,人種の相違に基づいて比較した動作の困難さを示す調査を行った.男女別にみると,過去2年間に転倒を経験した高齢者は,女性の18%,男性の12%にみられた.椅子から立ち上がることの困難さを経験している高齢者は,女性43%,男性35%で,重量10ポンド以上の物を持ち上げることの困難さは,女性の37%,男性の18%,階段を上ることの困難さを経験した高齢者は女性31%,男性19%であった.

連載 教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール

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症例

▶患者

 73歳,2回経妊2回経産,閉経55歳.

▶主訴

 自覚症状なし.

▶既往歴

 直腸がん,高血圧,子宮筋腫.

▶現病歴

 71歳時に直腸がんに対して,前医外科で腹腔鏡下低位前方切除術を施行し,直腸がん,25×25mm,SE, ly0v0n0,stageⅡの診断となり,後療法不要で術後フォローアップ中であった.術後に一度CEA 1.9ng/mL,CA19-9 8.8U/mLまで低下していた腫瘍マーカーが,当院来院2か月前から徐々に上昇する傾向にあった.胸腹部造影CT検査で子宮体部に造影効果を認めたが,大腸内視鏡検査にて直腸粘膜に異常はなく,子宮体がんを強く疑い,精査目的に当院当科へ紹介受診となった.若年時より多発子宮筋腫の指摘はあった.不正性器出血などの本人の自覚症状はなかった.

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 本稿では,ACOGの早産予防に対する推奨の要約について,2016年と2012年の比較を行う.

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基本情報

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臨床婦人科産科
72巻2号 (2018年3月)
電子版ISSN:1882-1294 印刷版ISSN:0386-9865 医学書院

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