連載 多文化社会NIPPONの医療・25
地域の外国人生活支援リソース活用と行政への働きかけ
堀 成美
1
1国立国際医療研究センター国際診療部
pp.774-775
発行日 2019年10月1日
Published Date 2019/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541211063
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■アウトブレイクなど地域の緊急情報を誰が翻訳するか
2018年の末に三重県でワクチン接種率の低い集団に麻疹ウイルスが持ち込まれた.その集団内でアウトブレイクしただけでなく,地域や周辺県へと感染が拡大した.このような時,自治体は麻疹が流行していることをアナウンスし,ワクチン接種の呼びかけを始める.周辺の医療機関の感染管理スタッフは,救急外来を受診する人たちの中に麻疹患者がいるかもしれないことを院内に周知し,迅速に隔離対応ができるよう一時的に体制を強化する.しかし,行政や病院だけではどうにもならないことも多いので,市民や受診者に協力をしてもらう必要がある.このような「事件」は各地で起こりうる.そして,今や多言語対応なくして感染症の対策はできない時代になっている.
麻疹流行の注意喚起を地域の外国人に伝えるためにはどうすればいいだろうか.まず,保健所や行政は日本語で資料を作成するので,それを翻訳するのがシンプルな方法だ.院内で翻訳できるのは英語くらいで,他の言語になると院外の誰かにお願いをしないといけない.ボランティアでやってくれる人がいればラッキーだが,それが正確な翻訳なのかはどう確認すればいいだろうか.翻訳業者に依頼するとなれば費用もかかるし,資料は急ぎ作りたいから,仕様書を作成したり見積もりをしている時間もない.
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