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■はじめに
「同一労働同一賃金」という言葉を耳にしたことがある読者は多いと思われる.
2018(平成30)年6月29日に成立した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(以下,働き方改革法)において,長時間労働の是正と共に改革の目玉となった制度であり,近時,社会的耳目を引いた最高裁判所の判決もあって,世間でも広く浸透しつつある.
具体的には,短時間・有期雇用労働者について,同一企業内における正規雇用労働者(無期雇用労働者)との不合理な待遇が禁止され,派遣労働者についても,①派遣先の労働者との均等・均衡待遇,②一定の要件を満たす労使協定による待遇,のいずれかを確保することが義務化され,厚生労働省も,平成30年12月28日付で「同一労働同一賃金ガイドライン」(厚生労働省告示第430号)を策定し注1,同一企業における正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間でのいかなる待遇差が不合理とされるかについて具体例を挙げて示している.
紙幅の都合上,同一労働同一賃金ガイドラインの詳細まで紹介することは叶わないが,基本給,賞与および各種手当などの待遇について,非正規雇用労働者であることを理由に正規雇用労働者との間で区別を設けている病院においては,それが不合理な待遇差となっていないかを検証し注2,働き方改革法や同一労働同一賃金ガイドラインに照らしても合理的と言えるような待遇差の理由を説明できるよう準備する必要がある.
そもそも,同一労働同一賃金の根本には,賃金が労働者の「生きる糧」であり,最も守られるべき権利である以上,差別的な取り扱いは許されないという基本的理念があり,裁判所も,賃金を労働者の権利の中でも最重要視し,同一労働同一賃金だけに限らず,賃金制度の有効性は厳格に解される傾向にある.
今回は,病院経営においてよく問題になり,なおかつ見落としがちな賃金に関する問題を取り上げる.
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