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■はじめに
今回レポートする医療法人博愛会宇部記念病院(以下,宇部記念病院)は,山口県宇部市にある一般病床66床(地域一般入院基本料1),医療療養型病棟62床(療養病棟入院基本料1),障害者施設等一般病棟62床(障害者施設等入院基本料10:1),介護医療院60床〔Ⅰ型介護医療院サービス費(Ⅱ)(看護6:1,介護4:1)〕からなるケアミックス病院である1).標榜科目は内科,外科,放射線科,循環器科,整形外科,歯科,神経内科,泌尿器科,肛門科,性病科,皮膚科,呼吸器科,消化器科,脳神経外科,リウマチ科,リハビリテーション科で,また人間ドックや健診などの予防医療や,老人保健施設,デイケア,訪問リハビリテーション,訪問看護などの介護保険サービスの提供にも力を入れている.
図1に示したように,宇部・小野田医療圏は急速な人口減少の過程にあり,今後さらなる少子高齢化の進展により後期高齢者の増加とそのケアを担う若年者の減少という課題に直面する2).DPCの公開データを見ると,すでに急性期の入院患者数はピークアウトし始めているが,2019年6月に建て替えを終了した山口大学医学部附属病院への急性期患者の増加が予想される中,周辺の医療機関の機能の見直しが課題となっている.
表1は2015年のNDBに基づく宇部・小野田医療圏と隣接する山口・防府医療圏,下関医療圏のSCR(Standardized Claim Ratio)を示したものである.入院に関しては急性期から慢性期まで,全国に比較して数倍の医療提供が行われており,特に療養病床の入院が多くなっている.外来に関しては全国平均並みであるが,在宅に関しては提供量が少なくなっている.このSCRのデータから考えても,宇部・小野田医療圏における医療提供体制のあり方については,今後の人口動態と合わせて検討が行われる必要がある.
宇部記念病院はこうした社会環境変化にいち早く対応し,ニーズの変化に合った医療機能および介護などの周辺サービスの整備を行ってきている.国の政策動向を注意深く分析し,地域の傷病構造およびそれに伴う医療・介護需要の変化に適切に対応し,その上で理想の高齢者医療・介護サービスを提供している同院の実践は,今後同様の状況に直面する他地域の病院にとって,今後の方向性を考える上で参考になるものと考える.今回は,特に介護医療院への転換に着目して同院の経営戦略について紹介する.
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