病院 75巻7号 (2016年7月)

特集 地域づくりの核としての病院

巻頭言 伊関 友伸
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 現在,わが国は世界でも例を見ない少子化・高齢化・人口減少社会に突入している.現状のままで何もしない場合,高齢化が進むとともに,人口の減少の幅が年々大きくなり2008年に1億2,808万人いた人口が,2110年には4,286万人にまで減少する.人口減,少子化,高齢化の進行により,経済規模の縮小,国民の生活水準の低下,地域の消滅など,日本という国そのものが危機に直面する可能性が高い.

 少子化・高齢化・人口減少を解決していくために,病院の担う役割は考える以上に大きい.何よりも重要なのは「地域の健康を支え,地域の崩壊を食い止める」という役割である.医療のない地域では,人は安心して住むことができず,移住せざるを得なくなる.また,「地域の雇用を支える」という面もある.医療は介護とともに地方において雇用を伸ばしている唯一の産業である.さらに言えば,地方の病院は,都市と地方の税の格差を埋める再分配機能を有している.

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●少子化・高齢化・人口減少社会における病院の意義として,「地域の健康を支え,地域の崩壊を食い止める」「地域の雇用を支える」「地域づくりの中心となる」「都市から地方への移住を支える」ことが挙げられる.

●地方の病院は,都市と地方の税の格差を埋める再分配機能を有していると考えられる.

●条件の悪い地方の病院こそ,積極的に職員の勤務環境の改善を図り,人材の育成に力を入れ,魅力ある医療現場とする必要がある.

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●医療と地域の在り方が変化する時期を迎え,一定のエリア内に医療機関や介護施設,商業施設,住宅,交通などの都市機能を集積させることで生活者のQOLを支える「まちなか集積医療」への転換が必要である.

●病院を中心とするまちづくりのタイミングは既存施設の老朽化による建て替え時期に限られており,ここ数年が再構築のチャンスとなる.

●二次医療圏全体の将来を俯瞰し,長期的な時間軸の中で,病院,住民,行政,議会など,そこに関わる全ての人々が持続可能なまちづくりを進めていくことが重要であり,病院はその要となることが求められている.

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●日南市の地域医療対策室では,医師確保対策として宮崎大学と協働して研修医・医学生を対象とした夏合宿や,高校生を対象とした医療講座を開催した.また,地域医療出前講座や「地域医療を学ぶ市民公開講座」「地域医療リーダー養成『日南塾』」の開催など住民への理解促進・啓発にも取り組んでいる.

●日南市では積極的な定住移住促進を図っており,医療をまちづくりの重要なインフラととらえて,市民が必要とする医療サービスを適切に・適時に受けることのできる医療提供体制の構築を目指したい.

[事例]地域に愛される病院とそれを支える住民

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●都市部から医師をはじめとする医療従事者を集められないのは,多くの地方立地の病院が共通に経験している.当法人では地元出身者が地域に残って活躍できるような環境を整えたいと考え,幾つかの取り組みを行っているので,その一部を紹介する.

●地域とのつながりの中で,地域に質が高くかつ多くの人材をとどめるためには,長い期間と労力をかけ,多くの関係者を巻き込んだ活動が不可欠であり,病院という事業体にはその中心的な役割が求められている.

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●寺岡記念病院は,医療・介護・福祉を包括した全人的トータル&シームレスケアを推進してきた.

●高齢者に適したスローメディシン的アプローチを加味した上で,医療と介護というコミュニティの共有資源を地域空間と多世代交流の中に組織化していくための事業として「ローカルコモンズしんいち」を構想した.

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●赤平市の財政悪化から市立病院がなくなることが懸念された.それは何としても避けたいと考えた住民は,ボランティアとして「清拭用タオルたたみ」「院内案内」を受け持ち,院内食堂を切り盛りすることにした.

●あかびら市立病院は,ボランティアとの意見交換会と交流会を開催するなど,開放的な環境と優しさがあるから,人は関わっていきたいと思うのだろう.病院を通して,高齢化に負けないまちづくりにつながることを願っている.

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●地域完結型医療は,市民も交えて考え,これからの在り方を一緒につくる必要がある.

●地域完結型医療の実現は,マーケティングによるメディアミックスの視点と,参加の継続を楽しめるストーリーを重視している.

●共催病院の広報や地域医療連携室の担当者が事務局を運営することにより,地域医療に対する理解が深まり,ヒューマンネットワークの形成が促され業務に活かされる.

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病院は,地域の住民に医療を通じて安心を提供する施設であり,地域の重要な雇用の場でもある.

地方創生を支える病院の可能性を議論する.

連載 Data mania・19

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調査概要

 今回は,「社会医療診療行為別調査」に「将来推計人口」を掛け合わせて分析し,在宅療養患者数の推計や在宅医療現場で行われている処置の実態などに迫りたいと思います.

 「社会医療診療行為別調査」は,本連載第3回でも登場しましたが,厚生労働省が毎年実施しているもので,全国健康保険協会管掌健康保険,組合管掌健康保険,共済組合などの保険,国民健康保険および後期高齢者医療制度における医療の給付の受給者にかかる診療行為の内容,傷病の状況,調剤行為の内容および薬剤の使用状況などを明らかにし,医療保険行政に必要な基礎資料を得ることを目的としたものです.つまり,レセプトを調査対象にし,どのような診療行為が行われているのかを表したものです.なお,調査対象は6月審査分ひと月分のものです.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・19

医療福祉建築賞2015 山下 哲郎
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今回は特別編として一般社団法人日本医療福祉建築協会が主催する医療福祉建築賞2015を紹介します.

連載 ケースレポート

地域医療構想と民間病院・7

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■病院の概要1)

 今回取り上げる社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院は石川県七尾市にある.図1および図2に示すように,同病院は公立能登総合病院と並んで能登中部医療圏・能登北部医療圏の急性期入院医療を支える中核病院である.総病床数は426床で,その内訳は一般病棟282床(看護基準7:1),HCU10床,回復期リハビリテーション病棟47床(看護基準13:1),地域包括ケア病棟47床(看護基準13:1),障害者病棟40床(看護基準10:1)となっている.また,診療科は24科(外科,消化器外科,乳腺外科,内科,消化器内科,心臓血管外科,循環器内科,脳神経外科,神経内科,整形外科,呼吸器外科,形成外科,美容外科,産婦人科,家庭医療科,緩和医療科,小児科,眼科,耳鼻咽喉科,泌尿器科,麻酔科,皮膚科,リハビリテーション科,放射線科)の総合病院である.

 恵寿総合病院は先端医療から福祉までを総合的にカバーする「けいじゅヘルスケアシステム(KHS)」の中核施設である.この「けいじゅヘルスケアシステム」は表1に示すように医療,介護,予防,生活支援,住まいという地域包括ケアサービスを実践する組織となっており,また医療・介護の垣根を越えて1患者(利用者)1カルテの総合的な情報管理システムを構築している.このような組織づくりを実践してきた経緯を神野正博理事長は以下のように説明する.

連載 事例から探る地域医療再生のカギ・10

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■何が問題だったのか

①急激な医師数減少に苦しむ国公立3病院

 滋賀県東近江市は人口約12万人,額田王と大海人皇子の相聞歌の舞台となった蒲生野など多くの名勝があり,中世以降交通の要衝の地として栄えてきた.近世からは近江商人が活躍し,多くの企業家を生んだ土地である.2005年2月に1市4町(八日市市・永源寺町・五個荘町・愛東町・湖東町)が合併して「東近江市」が誕生し,さらに2006年1月に東近江市と能登川町および蒲生町1市2町の合併が行われた.

 東近江市には,国公立病院として,市の中心地である旧八日市に立地する国立病院機構滋賀病院(220床),東海道本線・能登川駅近くの交通利便地に立地する市立能登川病院(120床),郊外の蒲生地域の医療を支えてきた市立蒲生病院(120床)の3つの病院があった.しかし,3つの国公立病院は,2004年の新医師臨床研修制度導入以降,大学医局の医師引き揚げにあい,2003年には3病院合計で62名在籍した常勤医師数が2010年には24名(61%減)にまで落ち込む.

連載 病院組織コーチング・2

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■リーダーの「専門力」と「コーチ力」

 リーダーシップに関する要素はさまざまなものがあるが,その中でも重要な一つの要素は「人に対する影響力」であることについては誰しも異論はないと思われる.高度専門職の集団である病院組織において,自分自身の専門的知識や技術の向上に重きが置かれることは当然のことであるし,より高い専門知識,技術を持つことこそが,リーダーとして他者に影響を与えるための必須の条件であると考えるのは極めて自然なことである.そこで,他者に対する影響力を測る要素として「専門力」と「コーチ力」に注目した.

 ここで「専門力」「コーチ力」とは,それぞれ以下のように定義する.それぞれは他者評価により7段階で測定される.

連載 病院勤務者のためのDPCデータ解析入門・4

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 今回はMicrosoft Office Access(以下,Access)を用いた厚生労働省公開データの加工方法の一例について解説する.

 厚生労働省公開データは複数のファイルを統合して分析することで,より詳細で有用な情報を得ることができる.厚生労働省公開データであればファイルサイズも小さいため,Microsoft Office Excel(以下,Excel)の関数を駆使して,Excelだけで2つのテーブルを結合することも可能である.しかしながら,自院のDPCデータを分析する際にはデータファイル数やデータ量も多くなるため,それらのテーブルを格納・結合するためのデータベース管理システムが必要となる.そこで,厚生労働省公開データを練習課題として基本的なAccess使用方法について学習し,次回以降に掲載予定である「自院データ分析」を読み進めるための基礎力を養うことが今回の目標である.前回の内容を十分に理解できなかった方や,前回をお読みいただいていない方にも作業できるよう,当教室ウェブサイト1)に配布資料「病院7月号.zip」を準備したのでダウンロードし読み進めていただきたい.なお,説明のための図表に使用するAccessのバージョンはWindows用のAccess 2013である.

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要旨

[背景]医療機関の総合的機能を評価するストラクチャー指標としてDPC群分類や病床数などが用いられてきたが,病院機能を細部にわたって評価しているとはいえない.本研究では,個々の高度な医療技術・サービスを評点化し統合するtechnology indexを用いて機能を評価し,従来のストラクチャー指標と比較した.

[方法]2014年度の病床機能報告データからtechnology indexを算出し,technology indexとDPC群分類および病床数との比較を行った.

[結果]Technology indexは最小値0,最大値9.60,中央値0.65となった.Technology index中央値は,DPCⅠ群7.66,Ⅱ群6.67,Ⅲ群2.97,非DPC群0.14となり,4群間で有意差を認めた(p<0.001).一般病床のみの施設では,どの病床数群にもtechnology indexの高い施設が存在した.療養病床のみの施設においても,technology indexの高い施設は存在した.

[考察]Technology index はDPC群分類と有意な相関を認めたものの,非DPC群にも高いtechnology indexを有する施設が認められた.また,療養施設にも高いtechnology indexが認められ,病院機能分化が不十分である現状も示唆された.

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基本情報

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病院
75巻7号 (2016年7月)
電子版ISSN:1882-1383 印刷版ISSN:0385-2377 医学書院

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