病院 75巻8号 (2016年8月)

特集 新専門医制度─どうなる,病院?

巻頭言 山田 隆司
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 新専門医制度の行方が混迷を深めている.

 2013年4月「専門医の在り方に関する検討会」報告書において,これまでの専門医制度が各学会で独自に運用され,認定基準に統一性がなく国民にとって分かりにくいという反省から,新たな専門医に関する仕組みが必要であるという認識が示された.そのもとに2014年5月,国民に良質な医療が提供されることを目的に,専門医の認定と養成プログラムの評価・認定を統一的に行う,中立的な第三者機関として日本専門医機構が設立された.そこでは国民のための視点から,これまでの各学会主導の専門医制度をどのように統一性をもって変えるのかという議論が行われるはずであった.単に質の担保にとどまらず,国民にとっての利益を優先する改革が期待されていたのである.専門職としての医師には,単に高度な知識や技能を習得する能力を持つことだけではなく,それによる社会貢献が期待されているからこそ,活動の自主性や裁量権が社会から委ねられている.そういったプロフェッショナルオートノミーを発揮することが機構の最優先のミッションでもあった.

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●これからの高齢社会を考え,日本の社会,また同時に日本の地域社会ごとにふさわしいやり方をそれぞれが考えていく時代である.その中で,臓器別の専門医がどのような役割を演じ,そしていわゆる総合診療医がそれをどう支えるかというような検討こそが今求められるものではないか.フリーアクセスや自由標榜性といった制度もその中でこそ見直されるべきであり,新専門医制度のみを議論することはほとんど無意味である.

●わが国の持続可能な社会保障制度を考えるとき,諸制度を横断的に連携させ,機能させることが大切である.その中にこそ,社会文化を背景としたそれぞれの地域医療構想,地域包括ケアビジョンがある.

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●新専門医制度で医師の偏在がより進行する.

●立ち止まって考え,消費税と同じように新しい判断で延期という選択も視野に入れるべきである.

●医学部ルネッサンスのために提言する.

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●現行の医療提供体制は,国際的に高い評価を得ていることを認識すべきである.

●医療提供体制全体の枠組みの中で,専門医の仕組みについて議論する必要がある.

●国民のため,日本医師会は新たな専門医の仕組みの構築に全面的に協力していく.

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●新専門医制度はプロフェッショナルオートノミーを基盤として制度設計がなされており,都道府県は新専門医制度に対応できる体制になく,地域医療に悪い影響が出ることを懸念している.

●新専門医制度は法律に根拠を持つ制度ではなく,都道府県が協議会を設置し,プログラムの検証・調整を行うなど主体的な役割を担うには法的な根拠を整備する必要がある.

●新専門医制度が国民からも医師からも納得される制度となり,地域医療に悪い影響をもたらさないことを期待したい.

インタビュー

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─今,専門医制度がいろいろ混乱しています.先生も委員を務められた「専門医の在り方に関する検討会」(高久史麿座長,2011〜2013年)の結論は,米国のACGME(Accreditation Council for Graduate Medical Education ; 卒後医学教育認可評議会)のような中立的な第三者機関を作り,研修の質を担保するということでした.しかし,現状は専門医機構が十分なガバナンスをとれず,きちんとした議論ができない状態になっています.プログラム認定も各学会主導で,自らあるいは大学に有利なシステムを作りがちになっています.初期臨床研修の導入時に,研修医が研修の質を求めて動いた結果,地域偏在につながったことから,今回の専門医制度でも影響が危惧されています.こうした課題も含めて,臨床医の養成について先生のお考えをお聞かせください.

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■新専門医制度の何が問題なのか

山田 新専門医制度が実施される準備段階となった今になって,非常に多くの議論が起こっています.まず,日本専門医機構(以下,機構)での各診療科のプログラム申請は,総合診療を含めて遅れました.これからプログラムの審査が始まりますが,その審査基準の調整も難しい状態です.どこがどのようなプログラムを出したかが明らかになったことで問題も明らかになってきたのですが,その問題は「第44回社会保障審議会医療部会で指摘された論点」にまとめられています.これはほとんどの病院関係者が危惧していたことで,先生方のご意見を伺いたいと思います.

 神野先生とは総合診療の部会に一緒に参加していますが,今の状況についてお考えをお聞かせください.

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医療界が固唾をのんで行方を見守る新専門医制度.

2017年4月開始予定とされていたが,ここにきて修正の必要が叫ばれている.

この制度が本来目指した日本の医療のあり方とは何か.

日本専門医機構前理事長がその意義と“産みの苦しみ”を語る.

連載 Data mania・20

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調査概要

 今回は前回に引き続き「社会医療診療行為別調査」を掘り下げます.社会医療診療行為別調査は,診療行為別,年齢別,病院・診療所別など,診療行為・調剤行為データを複数の切り口で提供しているため,他の調査データと組み合わせて,特定の項目に着目して詳細な分析が可能です.

 今回,社会医療診療行為別調査に,医療機関の施設,検査機器等の整備状況が把握できる「医療施設調査」と組み合わせて分析を行います.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・20

新潟市民病院 江川 香奈
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■はじめに

 新潟市民病院は,1973年に新潟市紫竹山に設立された,新潟市を開設者とする公立病院である.建物の老朽化が目立ってきたことと,さらなる医療の充実を図るため,鳥屋野潟南部に2007年に新築移転した(図1).病院の理念は,ウィリアム・オスラーの言葉を基にした「患者とともにある全人的医療」であり,特に救命救急,周産期医療,がん治療に重点を置いて運営されている.移転新築から現在までの約9年,地域の医療ニーズなどに対応するための改修や増築を重ね(図2,3),地域医療に主軸を置いた運営がされている.

 移転新築時の建物の概要と設計意図は本誌1)および,文献2, 3)に記載されている.本稿では,①病院が重点を置いて運営している救命救急・循環器病・脳卒中センター(以下,救命救急センター),総合周産期母子医療センターの現況,②機能に合わせてプランニングされた病棟の使用状況,③病院全体において,移転新築後に行われた増築・改修の経緯と内容(表1)についてまとめる.

 なお,本稿をまとめるにあたり,片柳憲雄院長と,設計時からこれまでの運営に携わっている広瀬保夫救命救急・循環器病・脳卒中センター長,永山善久総合周産期母子医療センター長,管理課の坂田一春課長補佐,および伊藤喜三郎建築研究所の江口紀子氏からお話を伺った.

連載 ケースレポート

地域医療構想と民間病院・8

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■病院の概要1)

 戸畑共立病院は福岡県北九州市戸畑区にある社会医療法人共愛会の中核施設で,218床(看護基準7:1)の一般病院である.診療科は内科,消化器内科,呼吸器内科,循環器内科,内分泌・代謝内科,血液内科,外科,消化器外科,肝臓・胆のう・膵臓外科,呼吸器外科,乳腺外科,血管外科,整形外科,形成外科,脳神経外科,泌尿器科,放射線診断科,放射線治療科,眼科,皮膚科,麻酔科,病理診断科,救急科,精神科,リハビリテーション科,歯科,歯科口腔外科の27科で,法人内には他に戸畑リハビリテーション病院〔154床.うち回復期リハビリテーション病棟94床,一般病棟43床(ただし37床は地域包括ケア病床),緩和ケア病棟17床〕,あやめの里(介護老人保健施設,通所介護,訪問看護ステーション,単独型短期入所生活介護),2カ所の診療所が併設されている.開設は1912(明治45)年で2012(平成24)年に100周年を迎えたが,この間一貫して戸畑地域の急性期医療を支えている.特に救急医療およびがん診療は充実しており,また地域医療支援病院として地域の他の医療機関との連携を重視した経営を行っている.週刊誌の「頼れる病院」ランキングでも常に上位にあり,財務状況でも健全経営を行っている病院である.

 フランスには「公的病院サービス(Service public hospitalier)」という概念がある.これは設置主体にかかわらず「24時間365日,社会経済状況にかかわらず全ての患者を受け入れる」病院を指し,この条件を満たす施設は公私にかかわらず補助金や診療報酬上同じ扱いを受けることができる.わが国では機能よりは設置主体の違いによって,税制や補助金などに差があるが,本来はフランスの公的病院サービスのような概念のもと,イコールフッティングで病院の評価が行われるべきであろう.筆者の視点では戸畑共立病院はフランスの公的病院サービス的な機能を果たしている病院である.そしてそれは本来の地域医療支援病院の在り方を考えるための視点でもある.本稿ではこうした問題意識に基づき,戸畑共立病院の概要を紹介したい.

連載 赤ふん坊やの地域ケア最前線!—全国各地の取り組みに出会う旅・[10]

埼玉県幸手市 中野 智紀
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 埼玉県幸手市には,都市近郊の急激な高齢化に対応すべく,5年前にはなかった地域のネットワークを見事に構築し,理想的な地域包括ケアを実現させた病院があるんだ! 連載第10回目の今回は,市や医師会から在宅医療連携拠点を受託する地域の病院・JMA東埼玉総合病院の,住民主体の地域包括ケアシステム「幸手モデル」の取り組みを紹介するね! 地域のコミュニティデザイナーをつなぎ続ける中野智紀医師にお話を聞きました!

連載 医療・病院をめぐる文献ガイド・8

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■医事法領域の動向

 「医事法? ああ,医療法ですね! 学生時代,関係法規で学びました.」─私が自己紹介をするたびに返ってくる回答である.残念ながら,この返事はちょっとズレている.医療法という返事は,おそらくは医療にかかわる法律という意味で理解してくれているのだろう.医事法とは,狭義では医学および医療に関する法のことをいうから,その限りで間違ってはいない.だが,「医療法」という名前の法律が実際に存在するため,普通,混乱を避けるために医療法という言葉をそのような形で使わない.では,関係法規はどこがズレているのだろうか.職種ごとに学ばなければならない関係法規の範囲は変わってくるが,衛生法規といわれる法令のカテゴリーがその中心的なものであることは今も昔も変わらない.衛生法規は,もちろん医事法に含まれる.しかし,医事法は衛生法規よりも射程が広い.例えば,インフォームド・コンセント.むろん医事法でとり上げられるテーマではあるが,衛生法規の中にこれを正面から規定する法令は存在しない.医療事故訴訟で用いられる法律は,主に民法や刑法である.これらは衛生法規に位置づけられる法律ではない.

 では,今回の文献ガイドのテーマである医事法とは何か注)

連載 病院組織コーチング・3

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 前回,リーダーが他者に対する影響力を発揮していく上で,コーチングを学び,実践していくことは重要な要件の一つであると述べた.今回から3回にわたり,コーチングの具体的なスキルを紹介する.コーチングスキルとは,誰かによって新しく創られたものではなく,コミュニケーションがすでにうまくいっている人の行動を体系化したものである.今回は,病院組織のリーダーに焦点を絞ってスキルを紹介するが,米国では糖尿病1)や心血管系疾患2)の対患者コーチングにおいても論文が発表されるなど,医療現場での応用も進んでいる.

 今回紹介する「聞く」「質問する」スキルは,100種類以上あるスキルの中でも最も重要である.相手の話を聞くことが大切だということは広く認識されているが,実際に「聞く」という行為について本当に理解している人は稀であり,ましてやそのトレーニングを受けたことがある人はほとんどいない.また,質問する行為は,相手が「わかったつもり」になっている状態から,「まだわかっていないことがあった」ということに気付かせ,行動に導く力がある.コーチの重要な役割は相手の主体的な行動を引き出し,目標を達成させる」ことである.相手の話を聞き,問いかけることを繰り返すことで,相手が自分自身で気付いて行動していくよう促せるのである.

連載 病院勤務者のためのDPCデータ解析入門・5

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 今回から5回にわたり,自院で作成しているDPCデータを加工・可視化する方法を取り上げる.自院データの分析には,複数のデータを一つにまとめて分析する必要があることやファイルサイズが大きいことから,Accessなどのデータベース管理システムに関する技術が必要となる.公開データ分析で習得した内容を応用し読み進めていただきたい.

 今回はDPCデータの種類とそれぞれどのような構造でどのような内容が含まれているか解説する.6・7回はDPCデータの加工からデータベース構築までの一連の流れについて順を追って解説する.8・9回では分析の一例として診療プロセスやQuality Indicatorについて掲載する予定である.

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病院
75巻8号 (2016年8月)
電子版ISSN:1882-1383 印刷版ISSN:0385-2377 医学書院

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