病院 74巻10号 (2015年10月)

特集 病院の外来戦略

巻頭言 山田 隆司
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 国の方針である地域医療構想の策定に向けて病院の機能分化が進もうとしている.来たるべき超高齢社会に向けて,医療機関がどのように役割分担し,現在ある医療資源を有効活用していくかが問われている.病院を運営する身にとっては,病院の生き残りをかけた大きな変革の時でもある.

 病院の機能分化,一言で言うのは簡単かもしれないが,各病院にとってはそんなに簡単なことではない.それぞれの病院にはこれまで地域で担ってきた役割があり,それに合わせて必要な各専門職が雇用され,それぞれの能力を活かしながら地域のニーズに応えてきたからである.

病院の機能分化と外来機能 遠藤 久夫
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●外来医療の機能分化は入院医療の機能分化に連動している.大病院勤務医の負担軽減の意味ももつ.

●紹介の有無と施設基準,選定療養費,診療報酬を関連付ける政策がとられてきた.

●大病院への紹介なし受診に定額負担の導入が検討されている.

●ポイントは軽症患者の逆紹介である.大病院と中小病院・診療所との連携が重要となる.

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●近年,欧米諸国では病院の日帰り入院やアウトリーチとしての外来医療センターにおける専門診療が広く行われるようになってきている.

●他方で,一次医療の側が,病院の救急医療対応の負荷を軽減するために,わが国の休日・夜間救急センターのようなものを設立することも一般化しつつある.

●国際的に見ても,病院と診療所という二分論ではなく,ネットワークで動く仕組みの構築が進みつつある.

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●2025年に向けた医療提供体制の指針の中で「機能分化と連携」がキーワードとして挙げられるなか,大規模病院外来(特定機能病院中心に)の在り方について検討した.平成27(2015)年4月,全国医学部長病院長会議において,大学病院の外来実態調査を行い,その結果を見据えながら,今後の方向性について検討した.

●結論としては,大規模病院の外来は,紹介状を持参した患者,専門外来を受診する患者に限られ,新たに紹介状を持たないで大規模病院外来を受診する患者には選定療養費が義務付けされ,さらに再診料にも選定療養費がかけられる方向になりそうである.したがって,大規模病院は,今からその準備を進めていく必要があると考える.

[事例]病院外来の新機軸

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●日本の医療制度,病院の医療経営の現状から,大病院では高度医療を提供する一方で,多忙などの理由により患者が納得できる患者本位の医療とはいえない部分もある.

●時間をかけて患者の話をよく聞き,説明して,患者が納得・満足できる肝胆膵領域に限っての専門施設を自ら設立した.

●医療機関,患者知人からの高率な紹介やアンケートによる患者満足度の結果などは,当院が実践してきた患者本位の医療内容に対する高い評価を示している.反面,設立当初は病院開院でなかったため多額の債務に苦しんだ.昨年病院となり通常の診療報酬を請求できるようになり,周囲の高い評価をもとに,共に理念を実践している職員の環境の改善も含めてさらなる向上を目指している.

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●薬剤師外来は,薬剤師の専門性を生かした外来患者に対する必要な薬学的知見に基づく個別指導であり,外来医療における医師,看護師の負担軽減につながる.

●薬系大学・薬学部と連携することにより,一般外来が縮小の方向にある大学病院でも薬剤師外来を継続することが可能となり,保険薬局と連携することで多数の外来患者に対して適切な薬学的指導を提供することができる.

●喘息・慢性閉塞性肺疾患(COPD)薬剤師外来において,患者の自覚症状と肺機能,服薬アドヒアランスは有意に改善し,薬剤師外来に対する患者の満足度は高い.

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●緩和ケア外来は,病院の位置付けによって,求められる診療内容は異なる.

●がん患者が安心して療養をするためには,形だけの緩和ケア外来ではなく,在宅医療との連携や,緊急時の対応も含めた体制作りが求められる.

●高齢化が進み,多死社会を迎えた昨今,非がん患者も含め,治療困難な病気と向き合う患者への支援の重要性は増している.

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●認知症疾患医療センターの目的は,鑑別診断と初期対応,周辺症状と身体合併症の急性期対応,専門医療相談,研修などを通して,地域における認知症医療サービス提供体制の構築を図ることにある.

●基幹型,地域型,診療所型の3類型があり,全国に約300カ所設置されている.新オレンジプランでは平成29(2017)年度末までに約500カ所設置する目標が立てられている.

●地域の特性に応じた認知症疾患医療センターの拠点機能を確保していくために,都道府県レベルでの事業評価と創意工夫が求められている.

対談

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病床再編が加速するなか,外来もまた機能分化が求められている.

どのような役割分担が望ましいのか,中小病院はどうすれば生き残ることができるのか.

次期診療報酬改定を視野に,病院の外来機能の方向性を探る.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・10

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■病院紹介

 小倉リハビリテーション病院の前身である南小倉病院は,精神神経科単科の病院として1962年に開設された.精神科病床を廃して以降は診療の中心を高齢者医療に移し,当時の厚生省モデル事業として老人保健施設を開設する(1987年)など,先駆的な取り組みを重ねてきた.建物の老朽化や医療体制の陳旧化に対応するため,2001年12月に開設された小倉リハビリテーション病院は,組織の再編を行いながら,回復期リハビリテーション病院(以下,回復期リハ病院)として,寝たきりの予防と家庭復帰を目的に運営されている.

 回復期リハ病院の患者は,新たに発症した自身の病や障害に対して,心身ともに負担のある状態で入院してくる.自立した在宅生活へ円滑な復帰を目指すためには,必要に応じた適切かつ確実なリハビリテーションにより機能回復を図るとともに,障害を受け入れ,在宅生活へのその人なりの納得や自信などの心理的な立て直しが不可欠である.一般に発症後1カ月前後で急性期病院から入院し,在院期間の制約から約3カ月で退院する回復期リハ病院では,患者が抱える深い絶望や苦悩に対し,生活全体をリハビリテートするための機能回復と障害受容のための心理的な支援がしやすい環境整備が求められている.

連載 Data mania・10

受療行動調査 中島 秀和
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調査概要

 「受療行動調査」とは厚生労働省が主体となり平成8年より開始された比較的新しい調査です.それまで医療分野に関する統計調査は医療を提供する側である「医療施設」への調査が実施され,その把握がなされてきたところですが,近年の「急激な高齢化」「疾病構造の変化」など医療を取り巻く状況の多様化を踏まえ,医療を利用する側である「患者側」からの情報を把握するために導入されました.受療行動調査は「医療施設静態調査」などと合わせ3年周期で実施されており,その対象は全国の一般病院(層化無作為抽出した500施設)を利用した「患者」を対象としています.ただし,在宅患者および時間外に受診した患者についてはその対象外です.

 調査項目は,比較的新しい調査であるため定まっていないということに加え,調査年次ごと医療環境の変化を踏まえ柔軟に対応がなされています.調査開始年度となった平成8年は基礎調査6項目からスタートし,平成11年には「カルテ開示の要望」など10項目となり,平成14年には項目について若干の整理が行われ8項目となる一方で,医師から受けた説明として「入院期間の見込みについての説明」などの調査が導入されるなど,環境変化に対し柔軟に変更が加えられています.現時点で最新の結果概要が公開されている平成23年度の調査では「セカンドオピニオン」関連などが加わり13の項目について調査が行われました.

連載 医療の可視化と病院経営・10

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■はじめに

 2015年6月に厚生労働省から地域医療構想策定のためのツールが提供され,7月,8月と2回にわたり都道府県および医師会関係者を対象としたツールの使用方法に関する説明会が開催された.これを機に,各都道府県で地域医療構想の策定に向けた具体的な検討会が開始されている.6月15日に公開された病床機能別病床数の推計結果の基礎となったツールを用いた二次医療圏(構想区域)別の病床数推計などの資料がすでに議論の場に提出されており,都道府県側の関係者の間では,そうした数字を出すことで年内には地域医療構想の策定が終わるのではないかという楽観的な見方もあると聞く.しかしながら,地域医療構想の策定に関しては,その前提となる2025年,2040年の傷病構造に関する共通認識が不可欠である.そして,それに対応した医療提供体制をどのように整備していくかを,当該地域の医療機関自らが考え,そして実行に移していくことが今回の構想の特徴である.こうした難しい作業を短期間で行うことは不可能であり,数年のスパンで考えるべきものであるだろう.地域医療介護総合確保基金の活用に関しても,こうした中期的過程に対応したものであることが望ましい.例えば,地域医療計画を医療提供体制改革に活用しているフランスでは地方医療庁と個別の医療機関が複数年契約を結ぶことで後者が中期的に構造転換を行うことを可能にしている.

 地域医療構想は策定することが目的ではない.それは手段であり,行動計画になっていなければ意味がない.行動計画であるためには,地域医療構想に記載された内容が当該地域の個別の医療機関にとって経営方針を考えるための指針になっていることが求められる.構想策定の事務局機能を担う都道府県関係者は,これまでの地域医療計画がなぜ十分に機能しなかったのかを改めて検討する必要がある.

 地域医療構想の本来の目的は病床を削減することではなく,2025年の傷病構造および医療・介護を担う人材の状況を考慮した上で,各地域の住民の安心を保証するための医療介護提供体制を構想することである.低経済成長下の少子高齢化という厳しい現実を踏まえて,各地域の医療をどのように保証していけばよいのかということを,医療関係者が主体となって構想していくというのが今回の事業の大きなポイントである.また,地域医療構想の策定プロセスは,医療の現状を関係者に理解してもらい,医療に対して適切な理解とファイナンスを獲得していくための絶好の機会であると筆者は考えている.その意味でもデータを開示し,そしてオープンな議論が行われなければならない.

 本稿では,地域医療構想の意義と考え方について改めて論考してみたい.

連載 赤ふん坊やの地域ケア最前線!〜全国各地の取り組みに出会う旅〜・[5]

東京都新宿区 秋山 正子
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 東京都新宿区では,団地に住む高齢者や独居の方などが,健康のことや生活のことを気軽に相談し交流できる場として,2011年7月から「暮らしの保健室」が設置されているんだ! 連載第5回目の今回は,都心から全国に広がる「暮らしの保健室」の取り組みを紹介するね! 新宿区で訪問看護の経験から暮らしを支える取り組みを展開されている,秋山正子看護師にお話を聞きました!

連載 医療・病院をめぐる文献ガイド・1【新連載】

医療経済学領域を知る文献 井伊 雅子
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■医療経済学領域の動向

 日本の医療分野は,複雑な規制と制度が現場をしばっているというイメージがあり,昨今の医療制度改革の議論では,「市場原理を導入すれば効率化できる」という主張をよく聞く.しかし,日本の医療サービスの提供の場面では,通常,患者と医師の間には知識面でも大きな情報格差があることも相まって,多くの患者はより高価なあるいはより多くの検査や治療ほど質が高い,と評価してしまいがちだ.日本の医療は過度に商業化されつつあり,医学知識のない一般の人々が,新薬や画像検査,手術などの高価な診療や健康食品などを過剰に利用する傾向にある.安易な民間活力の導入だけでは,過度な商業主義による医療費の高騰化など深刻な問題を引き起こしかねない.

 このような医療問題を医療経済学の視点で分析している文献として,井伊雅子「医療の在り方を経済学で模索する」1)や井伊雅子・関本美穂「日本のプライマリ・ケア制度の特徴と問題点」2)がある.筆者が責任編集をつとめた『フィナンシャル・レビュー』123号の特集「地域医療・介護の費用対効果分析に向けて」3)は,全文がインターネットからも入手できるので序文だけでもぜひ読んでほしい.

連載 地域医療構想と〈くらし〉のゆくえ・7

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 沖縄県立中部病院では,4年前より在宅医療に取り組む診療科として地域ケア科を立ち上げています.専従の医師はいませんが,退院後の療養に不安のある患者さんやご家族の相談に乗ったり,退院直後のフォローアップを各科連携する形で行っています.また,悪性腫瘍の終末期にある患者さんについては,看取りの日まで私たちが訪問診療を行うようにしています.

 当初は,「病院から出て行って診療するなんて非効率ではないか?」と指摘されることもありました.けれども,医師が毎日のように回診したり,検査を行ったり,看護師がさまざまなケアを提供する病院医療と比べれば,早めに在宅医療に切り替えた方が人的資源を注がずにすむのです.在宅緩和ケアについても,訪問看護ステーションや介護事業所など地域との連携さえあれば,急性期病院の医師が訪問するようにしたとしても,トータルでの診療時間は短縮しますし,ベッドも空くわけで,つまり効率的になるのですね.

連載 病院経営に効く1冊・10

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本書は,終戦直後わが国の医療・福祉制度改革を指導した,連合国軍の公衆衛生福祉局(PHW:Public Health and Welfare Section)の局長であったクロフォード・F・サムスの自伝の編訳である.

 サムスが日本に進駐した当時の日本は,長期間の戦時体制により国民の衛生状況は非常に悪く,外国からの引き揚げ者もあり,天然痘や発疹チフス,赤痢,日本脳炎などの伝染病が蔓延していた.医療提供体制も戦災により多数の医療機関が消失,残った施設も設備が荒廃し,医療供給能力は大幅に低下していた.医師の教育水準も,戦時中の医学専門学校の急設や教育期間短縮などの措置により極めて低い状況にあった.

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次号予告

基本情報

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病院
74巻10号 (2015年10月)
電子版ISSN:1882-1383 印刷版ISSN:0385-2377 医学書院

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