連載 医療・病院をめぐる文献ガイド・1【新連載】
医療経済学領域を知る文献
井伊 雅子
1
1一橋大学大学院国際・公共政策大学院
pp.766-769
発行日 2015年10月1日
Published Date 2015/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541209946
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■医療経済学領域の動向
日本の医療分野は,複雑な規制と制度が現場をしばっているというイメージがあり,昨今の医療制度改革の議論では,「市場原理を導入すれば効率化できる」という主張をよく聞く.しかし,日本の医療サービスの提供の場面では,通常,患者と医師の間には知識面でも大きな情報格差があることも相まって,多くの患者はより高価なあるいはより多くの検査や治療ほど質が高い,と評価してしまいがちだ.日本の医療は過度に商業化されつつあり,医学知識のない一般の人々が,新薬や画像検査,手術などの高価な診療や健康食品などを過剰に利用する傾向にある.安易な民間活力の導入だけでは,過度な商業主義による医療費の高騰化など深刻な問題を引き起こしかねない.
このような医療問題を医療経済学の視点で分析している文献として,井伊雅子「医療の在り方を経済学で模索する」1)や井伊雅子・関本美穂「日本のプライマリ・ケア制度の特徴と問題点」2)がある.筆者が責任編集をつとめた『フィナンシャル・レビュー』123号の特集「地域医療・介護の費用対効果分析に向けて」3)は,全文がインターネットからも入手できるので序文だけでもぜひ読んでほしい.
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