公衆衛生 84巻9号 (2020年9月)

特集 スマホ・ネット・ゲーム依存対策—子ども・若者を守る!

「公衆衛生」編集委員会
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 誰でも簡単にインターネットを利用できる環境が整備され,スマートフォン(スマホ)やタブレット端末,携帯型ゲーム機等が急速に普及している中で,スマホ依存,ネット依存,あるいはゲーム依存(ゲーム障害)が社会問題となってきました.スマホ・ネット・ゲーム依存の有病率は成人でも未成年者でも増加傾向にあります.特に子どもや青少年において増加が顕著であり,学業や日常生活に支障を来すなどの問題が数多く報告されています.その一方で,コンピューターゲームで競う「eスポーツ」の五輪種目への採用が取り沙汰されるなど,これらの依存症を取り巻く環境はとても複雑な様相を呈しています.

 こうした中,2019年10月に開催された第78回日本公衆衛生学会総会(高知市)では,青少年や子ども(小中学生,乳幼児)の依存症対策に関する2つのシンポジウムが組まれ,注目されました.一つは「スマホ・ネット・ゲーム依存対策の最前線〜公衆衛生学的アプローチ」,もう一つは「子どもとインターネット依存〜モニタリングレポート委員会親子保健・学校保健グループ」という題名のシンポジウムであり,公衆衛生,教育,および依存症専門医療などの最前線で治療支援活動や研究等に取り組んでいる方々からの発表と討論がありました.

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【ポイント】

◆スマホ,ネット使用が青少年に広まり,長時間使用が高頻度となり,小学生からの対策が必要となっている

◆中高生でネットの過剰使用者割合が増加.過剰使用者は他の健康関連生活習慣も悪い.

◆ゲーム障害の診断基準に相当する状況に該当する者の割合も高く,家庭や学校での対応では限界がある.

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【ポイント】

◆各種調査から国内の中学生におけるインターネット依存の有病率は9〜12%

◆富山県の約1.3万人の小学生を対象とした調査では,インターネット依存の有病率は4.2%であり,全体の21.6%が課金の経験,2.4%が知らない人と会ったと回答

◆対策には子ども,保護者,学校・医療関係者がインターネットの利点と危険性を共有し,適切な利用方法を模索することが重要

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【ポイント】

◆電子メディアへの接触が長い乳幼児には,健康と睡眠,言語発達および情緒社会性の発達に悪影響が出ている.

◆電子メディア利用におけるルールが守れるように親子を支援することが望まれる.

◆乳幼児の親が適切なインターネット利用をできるよう,育児に自信が持てるように支援していきたい.

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【ポイント】

◆インターネットの普及とともに,インターネットコンテンツに過度に依存する問題が世界中で注目されている.

◆インターネットコンテンツのうち,ゲームのみが「ゲーム障害」として精神疾患に位置付けられた.

◆ゲーム障害について,医療だけでなく,家庭や教育現場などでの包括的な対策が求められている.

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【ポイント】

◆ギャンブルやゲームなどへの行動嗜癖の形成は,薬物依存同様の快楽報酬系のメカニズムによるものと考えられ,薬物再乱用防止目的等で用いられている集団心理療法による治療効果が期待される.

◆嗜癖の問題の背景には発達障害や精神病性の障害などがあることが少なくないことから,精神科医の助言を受けて対応を検討することが望ましい.

◆さまざまな窓口への嗜癖や依存に関する相談が,依存症相談拠点への相談,あるいは専門病院への受診につながり,治療に結びつく仕組み作りが重要である.

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【ポイント】

◆学校では「治療」までは期待せず,その予防および依存傾向にある児童生徒の実態把握や軌道修正の「きっかけづくり」を重視したい.

◆現行の学校カリキュラムの中で,どの教科・どの単元でスマホ依存の予防教育を実施できるかを明確に位置付ける.

◆単なる注意喚起だけではなく,「判断力」を養うために,ワーク形式の授業実践が効果的であり,そのための指導教材を開発・提供した.

ゲーム依存症の家族支援 吉田 精次
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【ポイント】

◆ゲーム依存症は家族支援が最も効果を発揮する疾患である.

◆10歳代と社会人のケースでは治療目標が異なる.

◆家族支援のカギは家族のサポートと対話による関係性の改善である.

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【ポイント】

◆工学分野ではスマホ依存の予防・回復を支援するアプリや技術開発が行われている.

◆スマホの一部機能を制限するものやゲーミフィケーションにより行動変容を促すものがある.

◆スマホ自体もスマホ依存予防・回復支援アプリ自体も使い方や使わせ方を人間が身に付けることが重要である.

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はじめに

 生きてきた軌跡が,公衆衛生に対する視点に何らかの影響があろうことから,人生を振り返って考えてきたことを述べます.

 私は,インドネシアのジャカルタで生まれ育ちました.長年,海外赴任にあった父から教わったことは,広い視野で物事をみる,捉えることの大切さでした.年末年始の一時帰国の際に,2人の妹と1人の弟と一緒に聞く外国の話は何よりの楽しみでした.学問でも日常生活でも,困った時やつまずいた時は,視界を広げるように心掛けています.大体のことは思考の転換につながり,前進できる気がしています.

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はじめに

 私は地方公務員の心理技術者として20年以上働いてきました.主な配属先は児童相談所(18歳未満の児童の福祉に関するあらゆる相談に応じる行政機関)です.児童相談所は,児童虐待に関する相談の主な対応機関としての位置付けがなされてきました.

連載 今さら知らないといえない 科学技術イノベーション—iPS,AIを説明できますか・4

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はじめに

 1978年に世界で初めて体外受精によって妊娠した児が出生し,わが国でも1983年に体外受精児が初めて生まれ,その後,凍結胚(受精卵)を用いた体外受精や顕微授精などの技術が生まれ,これらの技術により多くの児が出生している.本稿では,公衆衛生の専門家にとって重要と考えられる,体外受精に代表される生殖補助医療技術(Assisted Reproductive Technology:ART)に関連した知識や,最近の知見について概説する.

予防と臨床のはざまで

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 5月末には入院患者数が落ち着いたこともあり,2カ月間続いたCOVID-19専従の入院チームがいったん解散することになり,医局で報告会が開かれました.最前線で奮闘してきた医師の視点から,COVID-19の臨床経過,検査,治療について報告があり,中でも重篤化例の振り返りは非常に示唆に富む内容でした.一度サイトカインストームを惹起すると,一気に治療抵抗性となる印象で,アビガンやレムデシビルだけでなく,ステロイド,免疫抑制剤,抗凝固薬,血漿交換なども検討されますが,濃厚な治療のかいなく亡くなられる方もいらっしゃいます.高齢(70歳以上)や透析中,がん・放射線治療後など明らかなリスクを抱える方もいますが,中には現病歴のない60歳代の方が急性増悪したケースもあり,経過の個人差が大きいのが治療の難しさにつながっていると感じました.

 6月4日,米国・欧州で職域ヘルスプロモーションを手掛けるWolf Kristen氏から「産業保健とコロナについての国際ウェビナーで発表しないか?」とのお誘いをいただき,トップバッターで発表させていただきました.時間は全体で90分,演者は5名で,日本,タイ,シンガポール,インド,UAEから,各国のコロナの現状と産業保健分野での取り組みについて報告がありました.私も日本での1号症例のニュース,クルーズ船を含む政府の対応,自粛の効果,企業のコロナ対応についてお話しました.興味深かったのは,自粛の程度に差こそあれ,各国ともにテレワークの健康影響とその支援の話題が多かったことです.Kristen氏からは,英国での調査結果ではテレワークで身体的・精神的・生活習慣に影響が出ており,多くの方に睡眠障害,頭痛や目の疲れ,運動不足,食生活の乱れ,飲酒量増加がみられるとのお話がありました.実はこの日は,午前は横浜にある大学の遠隔授業,午後は診療後に国際ウェビナーで発表し,夕方はさんぽ会6月月例会のZOOM開催と,自席にいながらまさに「新常態」な1日でした.

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 市街戦でしょうか.市民をスナイパーが狙撃している場面から映画が始まります.その様子を破壊されたアパートの一室から眺めている老人がいます.その部屋には赤ちゃんを抱えた若い夫婦がかくまわれていて,ベイルートへ脱出する相談をしています.

 夫は脱出の手はずを整えるために,アパートを出て行きます.玄関が厳重に施錠されていることから,治安がかなり悪いことも推察されます.メイドのデルハンが夫を見送りますが,夫は外出直後に駐車場の脇で狙撃され倒れてしまいます.その一部始終を目撃したメイドはすぐにアパートの女主人オームに伝えますが,若夫婦の妻ハリマに夫が撃たれたことを知らせることを止められます.知らせれば,ハリマは夫を助けに行くでしょうし,外に出れば今度はハリマが狙撃されるでしょう.夜までは動けないというのがオームの判断です.

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 最近は,スマホやインターネットの利用なしでは社会経済活動がうまく機能しない,いわば「社会全体がスマホ・ネット依存」といってもよい環境下で,子どもや若者が生活しています.さらにスマホ・ネットでゲームが楽しめるようになり,「ゲーム障害」という新たな疾病名を生むほど,その依存に伴う深刻な影響が明らかになってきました.

 本号の特集でも,「ゲームは本質的にはまりやすいようにできている」「面白いゲームはユーザーを飽きさせないように綿密に設計されている」と解説されていましたが,スマホ・ネット利用のプラス面を活用したい産業界等の強者が,子ども・若者ら弱者にマイナス面を押し付ける形で依存症を増やすという構図が見えてきます.

基本情報

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公衆衛生
84巻9号 (2020年9月)
電子版ISSN:1882-1170 印刷版ISSN:0368-5187 医学書院

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