検査と技術 38巻6号 (2010年6月)

病気のはなし

心不全 吉川 尚男 , 鈴木 真事
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サマリー

 わが国において心疾患は悪性新生物に次ぐ第2位の死亡原因であり,そのうちの約60%は心不全によるものといわれている.心不全とは心臓のポンプ機能の低下,それに起因する末梢循環障害に基づいて起こる症状の症候群であり,診断には胸部X線撮影,心電図,心エコー,採血検査などを用いる.治療は病態によって異なり,急性心不全と慢性心不全では治療法が異なる.治療原則は,①心臓ポンプ機能を規定する心拍数,前負荷,後負荷,収縮能のうち問題となる因子を調節する,②心不全の誘因を除去する,③長期予後を改善する治療法を選択する,④長期投与による合併症を予防する,⑤外科治療などの根治治療のタイミングを決める,などである.

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新しい知見

 腎性全身性線維症は,皮膚における結合組織の過形成を特徴とする稀な疾患であり,皮膚の肥厚と強直が特徴である.骨格筋,肺,肝,心などの臓器や組織の線維化もきたす.患者の5%は急速に進行する劇症型の臨床経過をたどり,死に至る場合もあるとされる.原因は明らかではないが,過凝固,抗リン脂質抗体症候群,深部静脈血栓症,代謝性アシドーシス,外科あるいは血管内治療が関与しうるとされる.本症の発症とガドリニウム含有造影剤の関連も指摘されており,重度の腎機能障害を有する患者や透析患者でガドリニウム含有造影剤を投与した症例に多いと報告されている.

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新しい知見

 男性において,血中テストステロン(testosterone)値が低下している群では正常群に比して死亡率(全死亡率,癌死亡率,心血管系疾患死亡率)が高いことが明らかとされた.また,メタボリックシンドローム症例では血中テストステロン値が低下していること,逆に血中テストステロン値が低い群ではメタボリックシンドロームになりやすいことも疫学的研究から報告されている.今後,血中テストステロンは男性における健康のマーカーとして注目される可能性がある.

技術講座 輸血

クームス試験 曽根 伸治
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新しい知見

 クームス試験(抗グロブリン試験)は,赤血球上の血液型抗原と抗赤血球抗体あるいは赤血球と非特異的に反応した抗体を検出するために,クームス(抗ヒト免疫グロブリン)試薬を加えて赤血球の凝集を検出する検査法である.従来は,試験管を用いて検査を実施していたが,現在ではゲルやガラスビーズを充塡したマイクロチューブ(カラム)やマイクロプレートを利用して,ABO血液型やRho(D)血液型,不規則抗体検査,直接クームス試験が行われている.カラム凝集法やマイクロプレート法は,自動で適切な血球浮遊液の作成や正確な血漿量の分注が可能で,臨床検査技師の技量による差がなく適正な条件で検査ができる.また,結果を自動判定して上位システムにオンラインで取り込むことで,判定や結果入力などの過誤が防止でき,安全な輸血検査が可能である.

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はじめに

 1983年,WarrenとMarshallが慢性胃炎患者の胃生検組織から分離培養に成功したHelicobacter pylori(H. pylori)は,その後胃十二指腸潰瘍1,2),胃癌3,4),胃悪性リンパ腫5)をはじめとする上部消化管疾患や,特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura,ITP)6)などの消化管以外の疾患との関連性が明らかにされてきた.

 H. pyloriは3~5μmの緩やかな右巻き螺旋状構造をもつグラム陰性桿菌であり,4~8本の有鞘性鞭毛を用いて活発な運動を行う.酸素濃度3~10%の微好気性環境でのみ発育し,発育環境が悪いと球状体(coccoid form)に変化する.H. pyloriの最大の特徴は菌体表層の強力なウレアーゼ活性により,胃液中の尿素を分解してアンモニアを生成し,胃酸を中和することで自らの菌体を保護していることである7)

 わが国でのH. pyloriの感染率は若年層で低く中高年層で高い傾向を示しており,10~20歳代では10%台にとどまっているものの,30歳代では30%台に上昇し,40歳代を境に60%以上と急激な増加傾向を示す8).H. pyloriの感染経路として飲用水を介した経口感染が考えられており,これらの傾向は第二次世界大戦後の1950年代に公共用水施設がわが国に導入され,上下水道の整備が進んだことと関連があると考えられている.

オピニオン

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 大学卒業の学位を“学士”といいますが,大学に行きたくても色々な事情で行けず,実際に仕事について一定の経験を積んだ今,大学卒の学位を改めて取得したいと考えている方は案外多いのではないのでしょうか.しかし,仕事をもちながらではとても無理だと諦めている方も多いのではないかと思います.

 私は2005年まで東京大学医学部附属病院の検査部長をしていましたが,退任後,大学評価・学位授与機構に勤務しています.当機構は,大学以外で学位を授与することが法律で認められているわが国で唯一の組織です.当機構のシステムを利用すれば今からでも学位を取得することが可能です.本稿ではその取得方法を概説します.

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【症例の概要】

 60歳代,男性.検診で多発性肺結節と甲状腺腫瘤を指摘され来院.超音波検査で甲状腺左葉に3.6cm大の結節がみられ,同部位の穿刺吸引細胞診から濾胞性腫瘍が疑われた.FT41.2ng/dl,TSH0.8μIU/ml,サイログロブリン244.0ng/ml.胸部CTで両側肺野に多発性結節陰影が認められたため濾胞癌の肺転移が疑われ甲状腺全摘術が施行された.

ラボクイズ

細胞診 田上 稔

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はじめに

 大腸癌とは結腸癌・直腸癌の総称であり,近年わが国で罹患率・死亡率が漸増している疾患である.大腸癌検診は癌の早期発見のために有効であり,スクリーニング検査としては,もっぱら便中ヘモグロビン(hemoglobin,Hb)を免疫法で検出する便潜血検査が利用される.しかし,大腸癌における腸管出血は必ずしも普遍的な症状ではなく,また一方,癌に由来しない出血も検出されるため,出血マーカーであるHbの測定だけでは大腸癌の検出に限界がある.そこで,筆者らは炎症マーカーに着目し,便中ラクトフェリン(lactoferrin,Lf)測定が大腸癌の検出に有用であることを見いだした1)

ラクトフェリン(Lf):好中球の特殊顆粒内に存在する分子量約80kDaの鉄結合性の糖蛋白質であり,細菌増殖抑制作用,免疫系細胞の分化制御作用,サイトカインの産生抑制などの免疫反応調節作用をもち,初乳・唾液・涙液などの分泌液に多く含まれる.

役に立つ免疫組織化学●免疫組織化学で注目すべき抗体

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はじめに

 消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor,GIST)は消化管の粘膜下腫瘍であり,発症頻度は年間10万人に約2人と見積もられている.胃に最も多く(60%),次いで小腸(30%)であるが,消化管のどの部位にも発生する(大腸<5%,食道<1%).

 GISTでは85~90%の症例にKITチロシンキナーゼの活性型,すなわち腫瘍発生の原因と考えられるc-kit遺伝子の突然変異がみられる.突然変異のうち最も多いのは傍細胞膜領域をコードしているエクソン11のさまざまな点突然変異や欠失・重複であり,全GISTの約70%にみられる.細胞外領域(エクソン9)の重複が約15%に,チロシンキナーゼ領域I(エクソン13)とチロシンキナーゼ領域II(エクソン17)の点突然変異がそれぞれ5%未満に認められる.約5%のGISTにc-kit遺伝子と相同性をもつチロシンキナーゼPDGFRα遺伝子の突然変異が認められる.突然変異は傍細胞膜領域(エクソン12),チロシンキナーゼ領域I(エクソン14)およびチロシンキナーゼ領域II(エクソン18)にみられ,いずれも機能獲得性突然変異であり,そのGISTの発生原因となっている.残りの5~10%のGISTには,c-kit遺伝子にもPDGFRα遺伝子にも変異が認められない.

 GISTの95%以上では免疫組織化学的にKITの発現が認められる.ほとんどの症例では細胞質がびまん性に強陽性となる.ドット状(Golgiパターン)や細胞膜パターンの陽性所見も認められることがある.KIT陰性のGISTの大部分はPDGFRα遺伝子変異をもつが,c-kit遺伝子変異を認めることもある.それゆえ,免疫組織化学的にKIT陰性であるからといってGISTの診断を除外するものではない.GISTと他の紡錘形細胞腫瘍との鑑別には,臨床所見,肉眼・組織形態所見,適切な免疫染色パネル(表),時には遺伝子変異解析を総合して判断することが重要である1).また,この免疫染色パネルを用いることで複数の専門病理医によるGISTの病理診断とKIT免疫染色評価は一致率が高い2).最近,GISTのPDGFRα遺伝子変異例で市販のPDGFRα抗体による免疫染色の陽性所見との関連性が指摘されている3).そこで,GIST病理診断標準化のために,PDGFRα免疫染色を加えた免疫染色パネルを用いて地域の一般病理医におけるGISTの病理診断と免疫染色の一致率を検討した.

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はじめに

 当院では,脳腫瘍の術中迅速診断に,必ず細胞診と組織診を併用している1~4).グリオーマ(図1:星細胞腫G2)など脳原発の腫瘍の多くは組織が軟らかく,迅速診断のための凍結組織標本(図1a)では,ホルマリン固定による組織標本(図1b)と比較して,凍結時の氷の結晶によるアーティファクトのために凍結切片による組織診での診断に難渋することが少なくない.そのため組織を凍結させることなく標本を作製する細胞診との併用が必須である.

 術中迅速細胞診は1927年に既に有用な診断方法として認められているにもかかわらず5),いまだに十分に活用されているとは言い難い実情にある.その理由として,術中迅速細胞診は迅速組織診断の補助診断という病理医の固定観念によることも否めない.しかし,15年間脳腫瘍の術中迅速診断1,878例を細胞診だけで迅速診断し,その正診率が95%という報告もあり6),また脳腫瘍の迅速診断では,組織診(凍結切片)よりも細胞診のほうが診断に役立つとする報告もあるが7),筆者も自分の経験からその報告は首肯しうるところである.実際,病理専門医の多くが細胞診専門医の資格を有する現在では,迅速細胞診が迅速組織診の補助診断という固定観念もなくなりつつある.

 術中迅速診断時に提出された組織片は米粒大程度と小さい場合が多い.その小組織片をプラスチック台の上で,電顕用のピンセットとカミソリを用いて半割し,一方の半割組織片を組織診(凍結切片)に用いる(図2).残りの半割組織片の割面から①捺印法で細胞診標本を作製したのち,その半割組織片をさらに粟粒大程度に細切し,その細切組織片から,②圧挫法および③合わせ法を用いて細胞診標本を作製している.

 そこで,本稿では①捺印法,②圧挫法,③合わせ法による標本作製方法およびその特徴(長所,短所)について述べる.

 なお,当病理部では,1996年以来,術中迅速診断時に必要に応じて迅速免疫染色(所要時間10分)を行い,組織発生学的診断に役立てている3).染色性は迅速免疫細胞染色のほうが迅速免疫組織染色より良好であるが,その理由としてはガラス面に薄く塗抹されたのち,速やかにアルコール固定されるためと考えている.

Laboratory Practice 〈生化学〉

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はじめに

 亜鉛は,健全な生体を構成する必須栄養素の一つである.本表題は,生体内での亜鉛の充足度を血清亜鉛濃度から読みとって栄養指導に役立てようとするものである.したがって,表題の成立には「血清亜鉛濃度で生体内の亜鉛の充足度を観測できる」ことが前提条件ということになる.よってまず,「血清亜鉛濃度測定で生体内亜鉛充足度の観測は可能か?」から述べることにしたい.

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はじめに

 採血前に患者さんに手を握ってもらうことはよく行われている.しかしこの際,強く握ったり,手を握ったり開いたり(クレンチング)した後,肘静脈から採血すると,カリウムが有意に上昇してしまう.手に力を入れることにより筋肉からカリウムが放出されることが原因である1).クレンチングによるカリウムの上昇は,The New England Journal of Medicine(NEJM)誌をはじめとして度々報告され2~4),注意喚起されていることから比較的周知されていると考えるが,手を強く握るだけでもカリウムが上昇すること3,5)はあまり注意されていない.本稿では,カリウムの偽高値が患者さんの自主的な手を強く握る動作によって簡単に起こることを示すとともに,当院の採血室における偽高値対策を紹介する.

Laboratory Practice 〈生理〉

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はじめに

 肺高血圧症とは,肺動脈における血管内圧の上昇を認める疾患であり,安静時の平均肺動脈圧が20mmHg以上と定義される1).従来,原発性と二次性といった単純な区分がされていた肺高血圧症は,5年ごとに開催されている国際シンポジウムでその病態や治療法に共通性を有する疾患をまとめた分類が整理されつつあり,2008年アメリカのDana Pointで開催された第4回肺高血圧症世界会議では,改訂版の肺高血圧症臨床分類(表)が提唱された2).肺高血圧症は病態をもとに5種類のカテゴリーに分類されており,特発性および遺伝性肺高血圧症を含む第1群の肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertention,PAH),第2群は左心系疾患に関する肺高血圧症,第3群は呼吸器疾患/低酸素血症に関連する肺高血圧症,第4群は慢性血栓塞栓性肺高血圧症,第5群はまだ機序が解明されていないさまざまな要因による肺高血圧症とされている.この改訂版肺高血圧症臨床分類(表)をみるとわかるように,肺高血圧症とは肺動脈圧の上昇を認める病態の総称であり,肺動脈圧の上昇の原因は実にさまざまである.

 では,肺高血圧症の呼吸機能評価という本稿における本題であるが,臨床分類のカテゴリーよりわかるようにその病態により呼吸機能は異なるので,その疾患概念と病態への理解が必要となる.まず,肺高血圧症の診断における呼吸機能の検査の位置づけを診断アルゴリズム(図1)を追いながら確認する.労作時呼吸困難や易疲労感などの症状や身体所見からこの疾患が疑われた場合,もしくは無症候でも発症危険度の高い高リスク例に対し,一般的にスクリーニング検査として心電図,胸部X線,心エコー検査が施行される.特に心エコー検査は有用な非侵襲的検査法として推奨されており,三尖弁逆流からの圧較差が30mmHg以上および右室圧負荷所見などの所見より肺高血圧の存在が確認できるとされている.心エコーにて肺高血圧症が強く疑われるにもかかわらず弁膜症などの第2群の左心系疾患が否定的な場合,呼吸機能検査や換気血流シンチグラフィー他の検査が必要となる.つまり,第3群の呼吸器疾患・低酸素血症に関連する肺高血圧症および第4群の慢性血栓および/もしくは塞栓性疾患における肺高血圧症の可能性の有無についての鑑別診断を行うための検査が必要となる.これらの検査にて肺高血圧症をきたす疾患の鑑別診断と臨床分類を行い,右心カテーテル検査により肺高血圧症の確定診断となる.これらの検査は,肺高血圧の存在診断,肺高血圧症をきたす疾患間における鑑別診断,治療方針決定のための重症度評価および臨床分類のため施行される.

 以上を踏まえ実際の症例を検討する.

Laboratory Practice 〈微生物〉

予防接種 日野 治子
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予防接種の必要性

 予防接種は感染症の発症と周囲への蔓延を防ぐために行われるが,近年では先天奇形を予防するために,妊娠前にあらかじめ抗体を獲得するなどの目的でも行われる.

 予防接種を法令化した予防接種法は,現時点では表1,2のように施行されている.義務接種がなくなり,勧奨接種が行われている.勧奨接種とは,個人の健康のために,国が接種を勧め,国民は接種を受けるように努力するというものである.勧奨接種になったことで,罰則規定がなくなり,集団接種から個別接種へ変更された.さらに副反応などの被害が発生した場合は迅速な救済がなされるようにもなった.しかし,一方で,副反応を恐れ,接種を受けたくない・受けさせたくない群の出現も決して少なくない.あらゆる機会に予防接種の重要性を呼び掛けて,広めていく必要がある.

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はじめに

 新生児・乳児のミルクや母乳に対する消化管アレルギーは近年,患者数が急増しつつあると言われている.その症状の多くは,下痢・血便・下血・嘔吐などである.当院でも年間4~5名の患者に発症がみられる.

 当院検査科では,このアレルギー疾患の補助検査として便中好酸球検査を行っていたが,生便からの陽性はなかった.そこで,好酸球の検出を高めるために小児科と連携し,検体採取から処理までの一連の作業(肛門生食注入直腸洗浄好酸球検査法)を考案し効果を上げたので本稿においてこれを示す.

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はじめに

 臓器移植医療は,従来の患者と医師を中心とした医療チームとで行われる医療と異なり,臓器を提供する人が存在して初めて成り立つ医療である.そのためこの医療の推進には,適正な移植システムの確立と社会の理解と信頼を得ることが大切である.また,この医療の実施においては,臓器を提供する患者とその家族,臓器移植を受ける臓器不全患者とその家族,そしてそれぞれの患者・家族に対応する主治医・臨床検査技師などの医療スタッフが,広い意味の医療チームとなって協働することが重要となる.

 わが国では,1997年に施行された「臓器の移植に関する法律」(以下,臓器移植法)を遵守して移植システムを構築している.移植システムの運用は,わが国唯一の斡旋機関である日本臓器移植ネットワーク(以下,NW)が担い,移植コーディネーター(以下,Co)が臓器提供病院の普及啓発,移植希望者登録更新,臓器提供時のコーディネーションを行っている.日本臓器移植ネットワークが発足してからの死後の臓器斡旋は1,986件であり,2,651件の臓器移植につなげた.また,移植希望登録者数は12,620人(2009年12月末現在)である.

 本稿では,わが国における臓器移植医療の歴史を紹介したうえで,NW・Coの役割についてまとめる.また,わが国の臓器移植法の一部改正が2009年7月に国会で決議され,2010年7月17日に施行されるが,この改正法についても触れたい.

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あとがき 曽根 伸治
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 鬱陶しい梅雨の季節です.今年も暖冬で桜も早く咲きましたが,4月は寒い日が続き桜も長く楽しめました.新年度がスタートして,新たに臨床検査技師として働き始めた方々は,職場にも慣れて活躍されていることでしょう.学生時代の臨地実習とは異なり,毎日,多種多様な出来事に遭遇して悩まれていることはないでしょうか.知らずに行っている作業が検査結果に大きな影響を与えてしまうピットフォールが,臨床検査には多くあります.授業では習わないような検査の現場で起きるトラブルを未然に防ぐ知識なども“Laboratory Practice”などで取り上げています.今月号では,正確なデータを臨床に役立てるのが難しい亜鉛は,日内変動も大きく,採血から血清分離までの放置時間が長くなると上昇する傾向があること.また,採血時に肘静脈の静脈が確認し難い患者に手を強く握らせたり,握ったり開いたりを繰り返す行為が,血清カリウム値を上昇させてしまうことを解説しています.画像診断で臨床検査技師がかかわることが多いのは超音波検査ですが,腹部領域ではMRIやCTなども検査に利用されることも多く,画像診断入門を連載している“技術講座”では,これらの検査法の優れた点や劣る点を解説しています.さらに癌に関連した新しい検査もいくつか紹介しています.“ワンポイント・アドバイス”では,大腸癌の健診に利用される便潜血検査(便中ヘモグロビン)に代わる検査として便中ラクトフェリン検査を,また“疾患と検査値の推移”では胃潰瘍や胃癌の原因として注目されたピロリ菌の除菌時の確認に必要な感染診断法の利用を紹介しています.

基本情報

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検査と技術
38巻6号 (2010年6月)
電子版ISSN:1882-1375 印刷版ISSN:0301-2611 医学書院

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