Neurological Surgery 脳神経外科 39巻8号 (2011年8月)

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 去る2011年3月11日に発生した東日本大震災では,2次的に発生した津波によって多くの尊い命が失われる事態となりました.改めて,犠牲者の方々のご冥福をお祈りすると同時に,被災地にてご尽力いただいている医療関係者,ボランティアの方々の献身的努力に敬服の念を表したいと思います.医療安全でも行われているrisk managementでありますが,本災害では「想定を超える」規模により甚大な被害が出ており,また福島原発も「想定を超える」事態となっております.災害予防におけるrisk managementの困難な面を改めて痛感した次第です.一方,重大な危機(crisis)が発生してしまった場合には,crisis managementと呼ばれる対応が必要となります.今回の教訓は,起こってほしくない重大な事態(crisis)が生じた場合の準備(最小限の被害に食い止める算段)が不十分であったことかと思います.現在の危機的状況の原因には,起こってほしくない危機に対しては感情論から議論も避ける国民性があるようです.さまざまな国難が押し寄せている中で,感情論を捨ててcrisisの議論をするべき時期ではないかと思います.海外では,日本崩壊のシナリオまで話題となっているようです.

 Crisisはさまざまな分野で生じており,医療も例外ではありません.初期臨床研修制度導入,医療安全への不安や訴訟の増加,医学教育改革など,さまざまなことが同時に起こり,まさに医療崩壊が叫ばれています.もはやrisk managementの段階を超えてcrisis managementの段階に入っているのではないかと思われる状況です.初期臨床研修制度の一部変更,医療安全への体制整備が進む中で,医学教育モデル・コア・カリキュラムが2010年度に改訂されました.この中で「医学研究への志向の涵養」が盛り込まれ,実践的知識の教育から,研究的側面にも配慮するように変更がなされました.さまざまな意見があるとは思いますが,従来のカリキュラムではスタンダードな教育によってボトムアップに貢献した反面,画一的な知識教育となってしまい,講義,実習自体の魅力が低下する(個性の消失)傾向も想定されます.また,年々変化する医学的知見に関しては,その知見自体の背景を知り,批判的な姿勢を常にもつこと(研究的考え方)も,ある意味で軽視されてきたかもしれません.さらに,専門教育の前段階でも,医学準備教育は重視された反面,リベラルアーツ(一般教養)の軽視によって人間教育に歪みが生じてきている傾向もあるかと思います.これらの結果,自己目標を掲げられずに,マスコミも含めた大衆に迎合する学生や研修医が増加してきているのが,医療崩壊の背景にあるのではないでしょうか.

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Ⅰ.はじめに

 頭部外傷の後遺症は多彩である.多発外傷であることも多く,神経系に限らず多くの臓器に損傷をみることも珍しくない.その中で特に高次脳機能障害を今回のテーマに選ぶのは,医学的に重要であるのみばかりか,社会保障制度の中で重要な位置を占めるようになったことによる.

 高次脳機能障害という用語は英米圏で一般的に使用されるcognitive dysfunctionやcognitive disturbancesに相当し,認知障害のことである.Cognitionが示す認知機能は知識や知能といった全般的な知的能力を獲得するための能動的機能まで含むので,その障害では行動面での異常まで含む8).したがって失語,失行,失認などのいわゆる巣症状にとどまらず,中枢が明確でない注意の障害なども主要な高次脳機能障害として列挙される.

 一方で障害者手帳に代表されるわが国の障害に関する社会保障制度を論じる上で,高次脳機能障害という用語を行政的に定義する必要が生じ,高次脳機能障害診断基準(Table)という形式でまとめられた.この診断基準では原因疾患を外傷性脳損傷(traumatic brain injury:TBI)に限定していないが,本稿はTBIを発症し,社会復帰を考慮し得るレベルの症例を主たる対象にして論述する.頭部外傷を負った患者が慢性期に至って,患者自身がどのような困難に直面するのか,それをどのように診断するのかという諸問題を,この診断基準を強く意識しながら解説することを試みたい.また,軽度外傷性脳損傷(mild TBI:MTBI)という用語に接する機会が増えているが,これは異なった研究者間の結果を比較することや,予後について確かな合意を得るために,受傷時の昏睡期間やGCS(Glasgow Coma Scale)のスコアなどをパラメーターとする操作上の定義であって4),そのような疾病があるわけではない.脳震盪やMTBIについては逐次触れていくが,遷延性意識障害のような重度の症例や知的能力の低下が著しい症例については触れない.また,パンチドランカーに代表される打撲の繰り返しによる累積的なTBIについても触れない.以下,「外傷」は閉鎖性頭部外傷のことを指す.

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Ⅰ.はじめに

 脳神経疾患において,病変の局在診断は重要であり,詳細な病歴聴取と綿密に行われた神経学的診察により,脳,脊髄,末梢神経,筋肉のどの部位に病変が存在するかを診断することで,疾患レベルを推測することが可能となる.これらの神経学的診断により,ある程度病変高位を決定した後に,このレベルに的を絞った各種画像検査などの必要な補助診断を行い,総合診断へ至り,手術を含めた加療が考慮される.偽性局在徴候とは,神経徴候から一般的に推測される病変の局在と,実際の病変の解剖学的局在部位とが一致しない場合の徴候をいう.例えば脳神経系で代表的な病態として,頭蓋頚椎移行部病変では,両手,手指の感覚異常,上肢末梢の筋萎縮がよく知られており,下位頚髄病変を示唆するような症状が出現する8).また,胸腰椎移行部病変では,脊髄円錐部,脊髄円錐上部に相当するため,脊髄障害,神経根障害が混在して多彩な症状を呈する.そのため,下位神経根のデルマトームに一致した感覚障害,下腿以下の筋力低下,筋萎縮,下垂足が出現することがあり,下位レベルでの腰椎病変を示唆するような症状が出現する15).このように,神経学的高位診断と画像上の高位診断が一致しない場合は稀に遭遇する.本論文では腰椎変性疾患において,上位腰椎のみに圧迫性責任病変が画像上確認され,下位のL5神経根症を呈した自験3症例について報告する.さらに過去の文献例を含めて腰椎レベルに出現する偽性局在徴候について,その症状発現のメカニズムについて検討を加えた.

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Ⅰ.はじめに

 脳神経外科手術の術後合併症として,術野外の遠隔部位に頭蓋内出血を合併することは多くはない6,7,10).これまでの報告では,テント上の開頭術に伴い,反対側の大脳半球やテント下に発生した硬膜下血腫や脳内血腫例が散見されており1,8,11,15,16,18,20,21),高血圧や脳血管病変の合併,抗凝固・抗血小板療法などの条件下での術中の急激な減圧による脳の架橋静脈の破綻が誘因の1つとして推定されているが12-14,27),その確実な病因は不明である.こうした遠隔出血の頻度は非常に低いものの,一度発症すると患者の予後に重大な影響を及ぼしかねない9).また症候としては頭蓋内圧亢進症状が一般的であり,早期発見に役立つが,高齢者に発生した場合は,潜在する脳萎縮により頭蓋内圧亢進症状は少なく,一見して術後不穏や血腫減圧に伴う一過性の低脳圧症状と見誤る危険もあるため注意が必要である.さらに最近では,こうした病態がより低侵襲な治療手技である慢性硬膜下血腫の穿頭術にも起こり得るとの警告もある2,5,23)

 今回われわれは,高齢者においてテント上慢性硬膜下血腫の穿頭術後に発症した遠隔小脳出血を経験したので,各種検査上の知見と病態を検討し,文献的考察を加えて報告する.

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Ⅰ.はじめに

 肥厚性硬膜炎(hypertrophic pachymeningitis)は,脳脊髄硬膜に線維性肥厚を来す慢性炎症性疾患であり,感染(結核,真菌など)や自己免疫性疾患(Wegener肉芽腫症,関節リウマチなど)によって生じる二次性のものと,原因が明らかでない特発性のものに分けられる.頻度は不明であるが,近年CTやMRI検査の増加により発見され,報告例が多くなっている7).症状としては頭痛が最も多く,硬膜肥厚の部位により脳神経麻痺,小脳失調などの神経症状も呈する3,8)

 一方,2002年に世界に先がけてわが国で自己免疫性膵炎の診断基準が発表されてから11),血中IgG4値の上昇,高齢男性に好発などの特徴とともに,諸臓器にもIgG4が関連する炎症性変化が認められることが報告され,近年注目されている5,6,13,14).頭蓋内病変では,下垂体炎とともに肥厚性硬膜炎もIgG4関連の発症機序が提唱されている13)

 今回,自己免疫性膵炎に併発し自己免疫性の発症機序が推測された肥厚性硬膜炎を経験したため報告する.

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Ⅰ.はじめに

 急性頚部痛を生じる疾患として,頚椎症などの変性疾患,硬膜外血腫,椎骨動脈解離性動脈瘤などの血管性病変,脊椎腫瘍などさまざまな病態が考えられるが,その1つに椎体周囲への石灰沈着によるものが挙げられる.多くは偽痛風の部分兆候で,軸椎歯突起周囲にcalcium pyrophosphate dehydrateが沈着し,頚部痛や発熱を生じる疾患である.今回われわれは,急性の頚部痛を来した環椎石灰沈着症(crowned dens syndrome)の1例を経験した.このような症例は日常診療で見逃されている可能性も示唆される.過去の文献例を含め報告する.

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Ⅰ.はじめに

 椎骨動静脈瘻は頭蓋外の椎骨動脈,またはその分枝とそれに近接する静脈との異常な交通を本態とする稀な疾患である.症状は一般に拍動性の耳鳴(血管雑音),頚部痛,盗血流現象によるめまいなどが挙げられるが,拡張した静脈の圧迫による神経根症状や脊髄症状も報告3,8,24)されている.椎骨動静脈瘻の病因としては外傷性,医原性の報告24)のほかに,特発性として神経線維腫症1型や線維筋異形成症,Ehlers-Danlos症候群に伴うものが報告8)されている.今回われわれは,左上肢の神経根症状で発症した特発性の椎骨動静脈瘻の1例を経験したので,その文献的考察を加えて報告する.

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Ⅰ.はじめに

 頭蓋前頭洞骨折は主として,交通事故に伴う鈍的外傷や衝撃性を伴うスポーツ中の事故において発生し,海外の報告において成人10万人あたり9例程度の発生があるとされており,最近の自動車交通量の増加,スポーツアクティビティの多様化に伴い発生例は増加していると考えられる21).一般に成人における前頭洞骨折は外力として同部に800~2,200ポンド(約360~1,000kg)の荷重が加わった場合に生じ得ると報告されており10),高速衝撃,貫通外傷に伴う前壁(anterior table),後壁(posterior table)両者の骨折や,鈍的外傷に伴う前壁のみの骨折,骨折片の偏移(displacement)の有無など発症状況は多様である.このうち脳神経外科分野において同骨折が問題となるのは,前頭洞後壁骨折,硬膜損傷を生じた結果認められる髄液鼻漏であり,前頭洞骨折を生じた患者の20%に髄液鼻漏が認められたとの報告もある22).髄液漏を生ずる好発部位は前頭洞後壁下方の篩板(cribriform plate)に隣接した骨菲薄部位であり,これまで同骨折に伴う髄液漏に対しては可能な限りの硬膜修復および,前頭洞からの頭蓋内感染波及予防を目的としたpericranial flapによる被覆9,16),さらに感染予防,髄液漏孔ルート閉鎖を目的とした前頭洞への自家組織(骨,骨膜,脂肪)3,5,7,14,18),人工物(レジン,ゲルフォーム,ハイドロキシアパタイトセメント)13)の充塡(frontal sinus obliteration)が行われてきた.自家組織が人工物に比べ合併症リスクが低いことは現在周知であり15),充塡を行う場合は適切な自家組織を選択することになるが,さらに感染防止の観点からは遊離組織ではなく,有茎の組織が望ましい.既に前頭部pericranial flapの前頭洞内充塡法の有用性が報告されているが4,12,19),今回われわれは,前頭洞~前頭蓋底骨折により髄液鼻漏を遅発性に発症した成人患者に対し,側頭部疎性輪紋状結合織(temporal loose areolar connective tissue)を前頭部pericranial flapに付随させる形で採取し,髄液漏孔部前頭洞内に有茎の形で疎性輪紋状結合織を充塡させた後,連続するpericranial flapで同部を被覆する新規方法で外傷性髄液漏の治療を行った.充塡組織としての疎性輪紋状結合織の適応を含め検討する.

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 パーキンソン病治療は,10年前と比較しても多くの薬剤が使用できるようになり,薬剤選択の上でいろいろな工夫が可能となったため,患者ADLも上昇している.一方で,パーキンソン病の治療薬は,ほとんどの薬剤が神経系に作用するという性質上,副作用も多く,進行期には薬剤量や種類が増加するため,治療の選択が難しいと考えられている.そのため,エビデンスに基づいた治療の指針を提示することで,標準的な治療を開始できるように,2002年日本神経学会から初めてパーキンソン病の治療ガイドラインが作成された.そして今回,2011年版のパーキンソン病治療ガイドラインがついに出版された.前ガイドラインの良い点をそのままに残し,さらに分かりやすく,実地で使いやすいように工夫されたガイドラインである.

 前との大きな変更点は,各論部分をクリニカル・クエスチョンと題し,臨床上の具体的な質問に答えるという形式になっていることで,大変実践向きになっている.治療法で難渋することが多い非運動症状については,14項目で48ページも割かれており,治療法,対処法が細かいところまで記載されている. パーキンソン病のアパシー,疲労についての治療法や対処法など,他ガイドラインには書かれていないような内容まで網羅されており,臨床の場で重宝することは間違いなく,神経内科外来にはぜひ置いておきたい一冊である.

連載 脳神経外科手術手技に関する私見とその歴史的背景

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Ⅰ.はじめに

 「Suboccipital craniotomy(SOC)―sitting position―linear incision」と判じ物のような英文タイトルになったが,それが今回のテーマである.Zürich大学病院に1993年に着任して以来,このテーマに関しては聴神経腫瘍(acoustic neurinoma,Akustikusneurinoma)を第1例としてSOCを座位,linear incision(線状切開,lineäre Inzision)で行い,定年退官直前の2007年5月末に878回目のSOCを同じく座位,linear incision,paramedian supracerebellar transtentorial (SCTT) approachによるoccipital artery-superior cerebellar artery(OA-SCA)bypassで終えた19).ちなみに,このSOCという用語はあまり用いず,当科ではかつてKleinhirnexplorationというのが一般のSOCに用いられていた.1970年初頭頃に骨弁をSOCでも整復するようになった. 聴神経腫瘍に対する開頭としては,retroauriculäre retromastoidale osteoplastische Kraniotomieというのが当科初代のProf.Krayenbühl,その後継者Prof.Yaşargil以来使われてきた用語である.この用語のほか,近年はsuboccipitale osteoplastische Kraniotomieの名称のもとに,これに,mediane,paramedianeをつけて用いている.したがって前記の聴神経腫瘍用の開頭はlaterale suboccipitale osteoplastisch Kraniotomieということになるが,この名称はあまり使っていない.

 手元に医学書院の『解剖を中心とした脳神経手術手技(1999年版)』10)があるが,その中でSOCに頻用されている馬蹄形,hockey-stick,Hokeystockの皮切は用いず,もっぱらlinear incisionを行っているが,この方法で不都合を経験したことがない.Linear incisionの利点は,対象物のorientationに関して最近頻用されるnavigationを利用しやすい,開頭,閉頭が簡単迅速にできる,術後のpseudomeningocele,Liquorkissenの合併症がまずないということなどである.また,画像診断技術,navigationの発達で,開頭骨弁が4~5cm以下で済むようになったことにもよる.

 これまで述べてきている脳深部のstructuresの局所解剖を理解して手術を進めるには,経験の積み重ねがいる.空気塞栓(air embolism,Luftembolie:LE)などのいくつかの欠点はあるものの,座位手術そのものがSOCに際して側臥位,腹臥位手術に比べるとはるかに解剖学的orientationをつけやすいことはその大きな利点の1つでもある21,23).聴神経腫瘍のように比較的頻繁にみられる疾患では,解剖学的所見位置に慣れているので頭部を20~30度回転した頭位が術野の正面の病変の扱いには便利であるが,比較的稀な疾患,慣れない病変では頭位を正中にした座位手術のほうが解剖学的なorientationがさらにつけやすいことも,Prof.Malisの言を引用して既に本連載でも述べ,討論してきた22).本稿では,後頭蓋窩,およびthalamus,midbrain側頭葉内側後方に所在する病変の位置に対応してのlinear incisionでの座位手術について,私の手術経験例を集約し分析を試みるが,読者諸兄の日常の手術施行の参考になれば幸いである.Fig. 1に示すごとく,SOCをlateral,paramedian,midlineに分け,さらに各々を水平面でcranial,intermediate,caudalに分け,討論解説を試みる.

連載 先天奇形シリーズ

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Ⅰ.疾患の概説

 症候群性頭蓋縫合早期癒合症は,頭蓋骨だけでなく顔面骨の早期癒合,合指趾,関節拘縮,幅広母趾など先天性病変を合併する疾患である.手足の先天異常を伴うものには,Apert症候群,Pfeiffer症候群,Saethre-Chotzen症候群,Carpenter症候群などがある.手足の先天異常を伴わないものにはCrouzon症候群が挙げられる6,7,9-11,16,20)(Table).症候としては,単純性頭蓋縫合早期癒合症に比し,出生後早期から頭蓋内圧亢進症状を呈することが多い17).また,頭蓋骨だけでなく顔面骨の早期癒合を合併するため,中顔面の低形成により致死的な呼吸障害を合併したり,重度の眼球突出を合併することも稀ではない.そのため,早期より積極的な医療の介入が必要となる点が非症候群性頭蓋縫合早期癒合症と異なる.また,fibroblast growth factor receptor (FGFR) 2, 3,TWIST,MSX2などの遺伝子変異を伴うことが多く2,10,12,14),家族内発生の頻度,発達遅延の合併頻度も非症候群性のものより高い18)

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 2011年4月9日から13日にかけて,アメリカ,デンバーにて開催されたAmerican Association of Neurological Surgeons(AANS)の第79回総会の会長を務めさせていただいたことは大変名誉なことでした.AANSは米国内では脳神経外科領域の単独診療科で構成される最大級の組織であり,会員の対象は全世界の脳神経外科医となっています.会員は現在,それぞれがさまざまな分野にわたっていますが,総勢で8,000人を超えています.この組織は,各種の専門委員会により構成されており,会員にとってさまざまな有益となる情報を発信しています.例えば,学会誌であるJournal of Neurosurgeryには脳神経外科学の学術論文を収載し,その他にも医療訴訟におけるサポート,多様なオンライン教育の場の提供,脳神経外科学における最新の重要な知見を提供する総会の開催など,さまざまな役割を果たしています.

 さて,デンバーにおけるAANSの総会は私にとって特別な総会であり,それにはいくつか理由があります.まず,名古屋大学脳神経外科の若林俊彦教授,信州大学脳神経外科の本郷一博教授のご協力により,AANS杉田虔一郎記念国際シンポジウム(The AANS-Kenichiro Sugita International Symposium)を開催できましたことは,私にとって大変喜ばしいことでした(Fig. 1).杉田教授は私にとって最も重要な指導者の1人であります(Fig. 2).私は彼から,微小脳神経外科手術(microneurosurgery)の芸術性と鍛錬について非常に多くのことを学びました.杉田教授のご指導による多くの技術は,今日でも,私が実際に脳神経外科手術において駆使しているものです.事実,私は手術において複雑な手順を踏む場合,今も杉田教授によって描かれた素晴らしい微小脳神経外科解剖図と手術症例を参考にしています2).彼が中大脳動脈瘤のクリッピング術の直後に,その詳細を描いた時,私はその描写を観察することで,脳裏に克明に刻み込むという恩恵を受けることができました.

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欧文目次

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 第20回日本脳神経外科漢方医学会を下記の通り開催致します.本会は日本脳神経外科学会生涯教育クレジット(3点)の対象学会となっておりますので,多数のご参加を賜りますようご案内申し上げます.

 

日  時 2011年11月5日(土) 13時開会予定

会  場 都市センターホテル5階「オリオン」

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会  期 2011年11月10日(木)~12日(土)

会  長 木村彰男(慶應義塾大学月が瀬リハビリテーションセンター)

会  場 グランシップ(静岡県静岡市駿河区池田79-4)

お知らせ

「読者からの手紙」募集

投稿ならびに執筆規定

投稿および著作財産権譲渡承諾書

略語および度量衡単位について

次号予告

編集後記 新井 一
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 3月11日の東日本大震災の発生から,4カ月が過ぎようとしています.被災された方々に,改めて心よりお見舞い申し上げます.今回の大震災により,多くの尊い生命が奪われました.自然の脅威にわれわれ人類が,いかに無力か感じざるを得ません.しかし一方で,福島原子力発電所の事故発生から現在までの経過をみると,「扉」で川原信隆先生がご指摘されているように,起こってほしくない事態を「想定を超える」と称して議論することを避け,それに対する準備を怠ったために生じた人災の側面もあるのではないかと思われます.起こってほしくない事態を敢えて直視しないのは,日本人の国民性なのでしょうか.少し大袈裟かもしれませんが,昭和20年以降の戦後の時代を,経済の復興・成長を最優先にして,国家の在り様などの基本的な事柄については敢えて国民的な議論をせずに過ごしてきたこととも関連しているような気がします.ただ,このような状況のなかで,被災地におけるボランティア活動に医療従事者を含む多くの人々が汗を流している姿をみると,被災された方々ばかりでなく私達も元気づけられる思いです.私自身4月に入り,福島県いわき市に行く機会を得ました.海岸近くにある病院は,津波により大きな被害を受けておりましたが,そのなかでも一部の診療が再開されており,それが患者やその家族,さらには地域の住民に大きな安心を与えていることを知りました.十分な設備やスタッフが揃って診療を行うのが当たり前となってしまった現代の医療ですが,医療の原点を見せつけられた思いでありました.

 本号の総説には,中島八十一先生による「頭部外傷後の高次脳機能障害の診断」が掲載されています.最近しばしば社会問題として取り上げられることも多い頭部外傷後の高次脳機能障害ですが,その診断に苦慮することも少なくありません.中島先生による総説が,日常診療の現場において読者諸氏の助けになれば幸いです.また,本号には米川泰弘先生から,後頭下開頭に関する20ページ以上にも及ぶ熱のこもった原稿をお寄せいただきました.本邦ではなかなか行われることのない座位の手術ですが,米川先生のすばらしい手術,特に小脳上面からのアプローチは非常に印象的であります.その他研究1編,症例報告5編などいずれも力作で,読者必読の論文が揃った本号となりました.脳神経外科医は,こういう時だからこそ一生懸命勉強をしなくてはなりません.そして,その本分を果たすことによって,被災地の復興に少しでも役に立てるのではないかと思っています.

基本情報

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Neurological Surgery 脳神経外科
39巻8号 (2011年8月)
電子版ISSN:1882-1251 印刷版ISSN:0301-2603 医学書院

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