作業療法 11巻4号 (1992年10月)

◆総説

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要旨:わが国の住宅は,欧米の住宅に比較して独特の構造を持っていることと独自の生活習慣を持っているために,障害を持つ人々にとって使用しにくい状況にある.これを障害に適した形に整備していくには,まず障害者自身の生活目標,日常生活,身体機能,家族関係,経済状態等を知ることから始め,住宅整備の効果を予め見通すべきである.

 具体的には間取りと詳細計画について多くの留意点が挙げられる.しかし,これにもまして重要なことは,疾病,特に進行性疾患の障害者は予後の状態を慎重に検討すること,また日頃から福祉機器や住宅問題について関心を払うことがよい住宅整備につながる.

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要旨:座位保持機能未獲得の重症心身障害児一症例(10.6歳)に対して,姿勢保持具を用いた座位姿勢と,玩具を用いた遊び刺激の効果を,感覚—運動反応の出現頻度より調べた.その結果,臥位姿勢に比べ座位姿勢の方が,刺激に対する反応頻度が有意に高くなることを認めた(p<0.01).また,姿勢と刺激の組合せでは,座位姿勢における玩具を用いた遊び刺激のうち,能動的な働きかけに対して,聴覚的反応をフィードバックする玩具が,より多くの反応を誘発させることが分かった.

さらに,本調査より得られた知見の臨床的意味について論じた.

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要旨:近年,大学入試制度では学力偏重の問題点が指摘されており,国立医学校をはじめ理学療法学科入試成績において入試成績と入学後の学業成績とは関係がない場合が多いという報告がみられる.最近,本学院の作業療法学科において適性に悩み退学する学生や学力不振の為に学内浪人となる学生がいる.そこで過去5年間の作業療法学科学生の入学成績と学業成績との追跡研究をした結果,学業成績は入学試験科目には相関を示さず,入学試験合計点に相関がみられた.また,学業成績は高校成績との相関も示した.一方,学業成績が高い群として大学卒業後3年以上の社会経験者が浪人群や現役群に有意な差を示し,入学選考試験のさらなるあり方の検討の必要性が示唆された.

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要旨:脳卒中片麻痺男性41例に麻痺側上肢の手関節屈曲および伸展運動を行わせ,表面筋電図でとらえた前腕と上腕の筋活動パターンを,健常者の共同筋活動パターンと比較し,その特徴とMFSおよびBr.段階との関係について検討を行った.筋活動パターンは,上肢の運動が共同運動パターンに支配されている時期では多くの異常要素の出現を伴いながら正常要素の出現に対応し,分離運動の出現につれて異常要素の減少に対応する.32段階の準間隔尺度であるMFSはこれらの変化をよく反映している.腕と手指を別々に評価するBr.段階では手指のBr.段階≧4は異常要素の変化と連関がない.また6段階尺度であるため筋活動の細かな変化が評価に反映されにくい.

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要旨:当院では,昭和60年より片手動作訓練やコミュニケーション手段の獲得を目的に,作業療法の一環としてワープロを導入している.脳卒中患者のワープロ使用は年々増加しており,ワープロ訓練を自ら希望する比較的高齢の患者も増えている.そこで当院におけるワープロ訓練の指導方法の紹介と共に,その実用性について退院後のアンケートによる実態調査も含め多面的に検討した.この結果,必ずしもワープロを高齢者に用いることは容易とは言い難いが,使用上の利点をワープロの機能性だけでなく精神・身体面のリハビリに求める姿勢もうかがえ,脳卒中患者,特に高齢者のワープロ訓練目的は多様であったことからも,ワープロを活用する価値は大きいということが確認された.

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要旨:多発性脳梗塞・脳血管性パーキンソニズムで嚥下障害を伴った症例を経験し,頭部と体幹の位置が一直線となるよう坐位姿勢改善を目的にOTアプローチを実施した.看護婦・家族が中心となり摂食訓練を実施し,経口栄養を試みた.その結果,常食摂取可能となり家庭復帰を果たすことができた.誤嚥と姿勢の関係を含め,その経過を報告する.

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要旨:今回,当院新生児集中治療室から処方された超未熟児に対して作業療法を実施し,その効果と必要性を検討した.症例は,超未熟児で生まれ,他にも多くのハイリスク因子を持っていた.また発達面に関してもかなりの遅れが認められた.そこでOTアプローチとして,児の開始時の状態から,姿勢運動反応の促通と視・聴覚機能の向上の2項目を中心に介入したところ,2項目ともかなりの変化がみられた.これは,新生児集中治療室における症例への作業療法が有効であったことを裏付けるとともに,残された問題への積極的なアプローチの必要性を感じさせた.本症例を通して,当院での新生児集中治療室における作業療法について考察してみる.

基本情報

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作業療法
11巻4号 (1992年10月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0289-4920 日本作業療法士協会

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