小児科 65巻10号 (2024年10月発行)

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特集　一括アップデート！　子どものワクチン・予防接種

Ⅰ　総論

１．そもそもワクチンとは岡田　賢司 65巻10号 , 2024年10月 , pp.918-922

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「予防接種」とは生体に免疫をつける医療行為であり，「ワクチン」とは免疫をつける薬液を指す．

Ⅱ　ワクチン・予防接種にかかわる法令等

２．予防接種法・予防接種基本計画中野　貴司 65巻10号 , 2024年10月 , pp.923-928

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近年の変更点・トピックス＆今後の動向

☑予防接種法は1948年の制定以降，社会情勢の推移もふまえて複数回改正された．

☑近年の予防接種法の改正は，海外諸国とのワクチン・ギャップを解消する方向性であった．

☑2024年度から5種混合ワクチン，15価および20価肺炎球菌ワクチンが定期接種に使用可となった．

☑新型コロナワクチンは，導入当初は特例臨時接種で実施され，2024年度から高齢者を対象とした定期B類接種となった．

☑予防接種基本計画は告示後10年が経過し，現状に合わせて改定すべき時期となった．

３．感染症法・感染症サーベイランスと予防接種谷口　清州 65巻10号 , 2024年10月 , pp.929-934

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近年の変更点・トピックス＆今後の動向

☑COVID-19パンデミックを受けて世界は呼吸器系ウイルスの包括的監視に向かっている．

☑日本も急性呼吸器感染症を感染症法五類に位置づけ，包括的サーベイランスを行っていく計画である．

☑WHOは呼吸器感染症対策のための包括的なモザイクサーベイランス枠組みを勧告した．

☑日本も予防接種の効果・副反応などをリアルタイムで監視していくシステムを含めたモザイクを構築していかなければ，次のパンデミックには堪えられない．

４．ワクチン・予防接種に関連する国の審議会・委員会とその役割和泉　誠人 65巻10号 , 2024年10月 , pp.936-940

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近年の変更点・トピックス＆今後の動向

☑予防接種制度に関する検討は，厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会等で行われており，この体制となったのは平成25（2013）年の予防接種法改正以降．

☑「予防接種プログラム」「ワクチンの研究開発・生産・流通」「安全性評価」の各事項について，会議ごとに分担して検討している．

☑今後は，新たなワクチンが開発・上市されている状況をふまえ，最新の科学的知見の整理が必要．また，今後，国立健康危機管理研究機構の設置も念頭に，体制の強化を進めていく必要がある．

Ⅲ　ワクチンの種類・接種方法

５．ワクチンの種類（モダリティ）と免疫応答中山　哲夫 65巻10号 , 2024年10月 , pp.944-950

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近年の変更点・トピックス＆今後の動向

☑mRNAワクチンの免疫能は自然免疫に強い刺激を入れることで免疫記憶を誘導（prime）できる．

☑免疫能の減衰と変異株の出現から繰り返し接種をしてきたが，追加接種（boost）を他の剤型で行う選択肢ができた．

☑インフルエンザ経鼻生ワクチンが承認されCOVID-19も呼吸器感染症であり，経鼻精製蛋白ワクチンでのboostも検討すべきである．

☑カルタヘナ議定書の規制からわが国では組換え生ワクチンが承認されていないが，世界ではワクチン株をベースにした組換え生ワクチンの開発も進んでいる．

☑遺伝子組換え精製蛋白ワクチンの開発には安全で有効なアジュバントの開発が必須となる．

６．予防接種接種方法 -――皮下接種，筋肉内接種，皮内接種，経皮接種，経口接種落合　仁 65巻10号 , 2024年10月 , pp.951-955

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近年の変更点・ポイント＆今後の動向

☑5種混合は筋肉内接種が可能となり，今後，筋肉内接種が可能なワクチンが増えることを考え，筋肉内接種の部位と適応針の確認が必要である．

☑経鼻接種のワクチンとして，経鼻弱毒性インフルエンザワクチン（フルミスト点鼻薬）が2024年10月に発売された．COVID-19に対する経鼻ワクチンも開発中である．

☑新たなワクチンデリバリーシステムとして，痛みがなく皮下接種より免疫応答が効率的な新規経皮ワクチンが開発され，下気道の免疫を賦活する吸入ワクチンも開発中である．

７．ワクチン接種前の注意 -――予約，用意すべき器具・環境等，予診，接種間隔・同時接種，有効期限峯　眞人 65巻10号 , 2024年10月 , pp.956-959

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近年の変更点・トピックス＆今後の動向

☑新型コロナワクチン接種はワクチンの供給と準備，注射器と針の準備，集団接種会場準備などの接種体制，予診担当者や接種担当者の職種変更など，今までと接種前準備状況が大きく変わった．

☑接種手技において皮下注射だけでなく筋肉注射ワクチンが登場したことで，事前の接種手技の確認，資料の準備，保護者への説明などが必要になった．

☑多価ワクチンなどの登場により，交互接種などにおける事前情報の共有が必要になった．

☑今後も新しく導入されるワクチンにおいては，新規多価ワクチン，血清型カバー率が拡大されたワクチン，小児を守るための妊婦接種ワクチンなど，事前説明がさらに重要なワクチンが増えることが予想される．

☑新しいワクチンの接種率向上と維持のためには，接種前の準備や説明は最も重要である．

８．ワクチン接種後の注意中村　豊 65巻10号 , 2024年10月 , pp.962-967

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近年の変更点・トピックス＆今後の動向

☑予防接種ストレス関連反応（ISRR）はワクチン接種に伴う「不安」によるストレスから生じる．主に急性期症状として，交感神経が優位に働く急性ストレス反応と，副交感神経症状が強い迷走神経反射に分けられる．

☑接種数日後より認められる解離性神経症状反応（DNSR）は，診察や検査に異常がないにもかかわらず，麻痺や異常運動など説明がつかない神経症状を呈するものである．

☑新規ワクチンは筋肉注射で行われることも増えているが，皮下注射にくらべ局所副反応は少なく，今後は筋肉注射が選択されるようになるであろう．

９．定期予防接種における “間違い接種” -――最近の動向と今後奥山　舞 65巻10号 , 2024年10月 , pp.969-975

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近年の変更点・トピックス＆今後の動向

☑2017年からの5年間において定期予防接種（新型コロナワクチンを除く）の間違いは年間5,000～7,000件台報告される．

☑間違いの態様として，接種間隔の間違いが60％前後，不必要な接種が15％前後と多い．

☑近年，5種混合ワクチンや15・20価肺炎球菌ワクチンなどの新たなワクチンの定期接種に導入され，とくに移行期においては間違いの発生も考えられる．

☑今後の予防接種事務のデジタル化が，間違い接種防止につながることも期待される．

Ⅳ　定期接種・任意接種

10．B型肝炎ワクチン（HBワクチン）須磨崎　亮 , 酒井　愛子 , 杉山　真也 65巻10号 , 2024年10月 , pp.979-983

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近年の変更点・トピックス＆今後の動向

☑定期接種：1歳前に3回の接種を終了する（図1）．

☑キャッチアップ接種：2016年以前に出生した人の接種率は低い．HBワクチン未接種者にはキャッチアップ接種を勧奨する．

☑母子感染予防処置：妊婦がHBs抗原陽性の場合は，出生児に生後12時間以内を目安に抗HB人免疫グロブリンとHBワクチンを使用する．さらに2回のHBワクチン接種を行う．1歳頃にHBs抗原とHBs抗体価を測定して予防処置の効果を判定する（図1）．

☑医療従事者への接種：0，4週，20～24週の1シリーズ3回のワクチン接種を行う．接種終了4～8週後にHBs抗体検査を行い10mIU/mL以上であれば免疫獲得である．それ未満の場合は，もう1シリーズ接種を行う．それでも10mIU/mLに達しなければ，不応者として針刺し事故時に厳重な対応を行う．

☑6種混合ワクチンの開発：5種混合ワクチンにHBワクチンを加えた6種混合ワクチンの開発により同時接種の負担軽減が期待される．

11．ロタウイルスワクチン河村　吉紀 65巻10号 , 2024年10月 , pp.984-988

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近年の変更点・トピックス＆今後の動向

☑2019（令和元）年12月にロタリックス^®とロタテック^®の交互接種について，安全性や有効性が確認された順番で組み合わせた接種が認められるようになった．

☑2020（令和2）年10月からロタウイルスワクチンが定期接種化された．

☑定期接種化により，重症複合型免疫不全（SCID）患児へのロタウイルスワクチン接種のリスクが高まっている．

☑SCIDスクリーニングは2023年11月時点で38の都道府県で行われている．

☑ロタウイルスワクチンの導入後，流行するロタウイルス遺伝子型に変化がみられるようになった．

☑SCID患児へのロタウイルスワクチン接種を回避するため，SCIDスクリーニングの全国での実施が望まれる．

☑流行するロタウイルス遺伝子型の変化に注視していく必要がある．

12．5種混合（DPT-IPV-Hib）・4種混合（DPT-IPV）・3種混合（DPT）・2種混合（DT）・ポリオ（IPV）ワクチン菅　秀 65巻10号 , 2024年10月 , pp.989-992

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近年の変更点・トピックス＆今後の動向

☑2024年4月1日より5種混合ワクチンが定期接種化された．

☑すでに4種混合ワクチン接種が開始されていた場合は，原則として同一のワクチンで接種スケジュールを完了するが，やむを得ない事情がある場合には，5種混合ワクチンとの交互接種も認められる．

☑5種混合ワクチンは皮下接種に加えて筋肉内接種も可能である．

☑海外では，5種混合ワクチンにB型肝炎ワクチンを加えた6種混合ワクチンも使用可能であり，国内でも開発が進められている．

13．BCGワクチン徳永　修 65巻10号 , 2024年10月 , pp.993-998

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近年の変更点・トピックス＆今後の動向

☑わが国は2021年に結核低まん延国の仲間入りを果たした．

☑国の指針に基づいて，定期のBCG接種の中止または選択的接種の導入の検討に資するための研究が進められている．

14．麻疹ワクチン中島　一敏 65巻10号 , 2024年10月 , pp.999-1005

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近年の変更点・トピックス＆今後の動向

☑COVID-19パンデミックに対する国際的かつ局所的な人の交流の抑制で，世界および日本における麻疹報告数は大きく減少したが，近年増加傾向にある．

☑2020年以降，WHOの6地域すべてで麻疹含有ワクチンの接種率低下が生じ，世界レベルで麻疹の感染拡大リスクが高くなっている．

☑COVID-19の感染症法上の類型が5類になり，国際的な人の往来が急増しており，今後，麻疹ウイルスの国内への持ち込みリスクは高まっていくことが予想される．

☑2021，2022年のMRワクチン接種率が低下しており，国内の感受性者の増加が懸念される．再度，定期ワクチン接種の推進を行い，今後の麻疹ウイルスの持ち込みの増加に備える必要がある．

15．水痘ワクチン・帯状疱疹ワクチン後藤　研誠 65巻10号 , 2024年10月 , pp.1006-1012

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近年の変更点・トピックス＆今後の動向

☑2014年の水痘ワクチン定期接種化により水痘患者数は激減してbreakthrough varicella（BV）の占める割合が増加している．

☑水痘ワクチン定期接種対象以外の世代では帯状疱疹が増加．

☑2023年に不活化帯状疱疹ワクチンの接種対象者に「帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる18歳以上」が追加された．

☑帯状疱疹ワクチンの定期接種化については現在検討中である．

16．おたふくかぜワクチン多屋　馨子 65巻10号 , 2024年10月 , pp.1014-1019

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近年の変更点・トピックス＆今後の動向

☑現在の国内外でのムンプス流行株は遺伝子型Gが中心である．

☑米国とカナダではJeryl-Linn株，RIT-4385株ワクチン既接種の大学生でのムンプス流行が問題となっており，長期免疫維持が課題になっている．

☑おたふくかぜワクチン株としてRIT-4385株を混合したMMRワクチンが国内で開発され，2024年3月に製造販売承認申請され，2024年8月現在，審査中である．

☑2015～2016年のムンプスの流行で，少なくとも359名がムンプス難聴を発症し，4.5％は両側難聴で，一側難聴の90％以上が高度以上の難聴であった．

☑2024年はインドで大規模なムンプスの流行が発生している．

☑おたふくかぜワクチン接種後の副反応に関する全国調査によると，無菌性髄膜炎の発生頻度は添付文書で知られていた頻度より低かった．

17．日本脳炎ワクチン宮崎　千明 65巻10号 , 2024年10月 , pp.1022-1028

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近年の変更点・ポイント＆今後の動向

☑2016年以降，日本小児科学会は，日本脳炎の感染リスクが高い地域に住む小児等は，標準的接種年齢（3歳）より早く，生後6か月以降の早期接種を推奨している．

☑3歳未満にはワクチン0.25mLが接種されるが，初回1期2回＋追加接種（計3回）で0.5mLの3回接種に劣らない抗体獲得ができると考えられる．

☑WHOは2019年にファクトシートを出して，南東アジアと西太平洋地域に住む約30億人に日本脳炎ウイルスの感染リスクがあり，安全で有効なワクチンがあるので国の予防接種スケジュールに入れるべきとしている．

☑2022年にオーストラリアの東部で日本脳炎ウイルス（遺伝子型Ⅳ）による日本脳炎患者の多発がみられ，ウイルスの生息域の拡大が懸念されている．

☑国が示している定期接種実施要領上の標準的接種年齢の低年齢化や，抗日本脳炎ウイルス抗体の保有率が低い中高年への接種の議論等が期待される．

18．季節性インフルエンザワクチン田村　大輔 65巻10号 , 2024年10月 , pp.1029-1034

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近年の変更点＆今後の動向

☑2023年3月，国内で経鼻接種による生ワクチン（フルミスト^®）が薬事承認された．2024-25年シーズンから，国内で供給が開始され接種可能になる．

☑2024-25年シーズンから，不活化ワクチンの製造メーカーは4社から3社（KMバイオロジクス社，阪大微生物病研究会，デンカ社）になる．供給量に問題はない．

☑2025-26年シーズンから，不活化ワクチンは4価（A型H1亜型，A型H3亜型の2種類と，B型Victoria系統とYamagata系統）から，3価ワクチン（A型H1亜型，A型H3亜型の2種類と，B型Victoria系統）に変更される可能性が高い．2024-25年シーズンは，4価のままである．

☑インフルエンザワクチンとCOVID-19ワクチンを合わせたコンボワクチンの開発研究で，Moderna社のメッセンジャーRNA-1083ワクチンは，第Ⅲ相臨床試験において良好な結果を示した．

19．ヒトパピローマウイルス（HPV）ワクチン宮城　悦子 65巻10号 , 2024年10月 , pp.1035-1039

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近年の変更点・トピックス＆今後の動向

☑2022年度よりHPVワクチン積極的接種勧奨差し控えが中止された．

☑平成9年度生まれ（17歳）から平成19年度生まれ（27歳）までの女子へキャッチアップ無料接種期間は2025年3月で終了予定である．

☑12～16歳女子への9価HPVワクチン定期接種では，15歳未満のみ2回接種が許容されている．

☑男性への4価HPVワクチン公費補助を行う自治体数が増加している．

☑9価HPVワクチンの男女区別のない定期接種化が望まれる．

☑9価HPVワクチンの2回接種年齢の拡大が望まれる．

☑新たなキャッチアップ無料接種体制の構築が望まれる．

20．新型コロナウイルスワクチン森内　浩幸 65巻10号 , 2024年10月 , pp.1040-1045

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近年の変更点・トピックス＆今後の動向

☑新型コロナウイルスの変異は続いており，現時点（2024年9月）ではKP.3系統（JN.1系統から派生）が主流．

☑2024年10月からはJN.1対応1価ワクチンの接種が開始される．

☑世界保健機関は，健康小児への接種は他のグループへの接種，およびこの年齢に行われる他のワクチン接種とくらべて利益/リスク比は非常に低いので，国・地域ごとに疾病負荷，利益/リスク比，対費用効果，他の医療プログラムとの優先度，そして機会費用などを考慮して決めるべきだとしている．

☑日本小児科学会では，生後6か月～17歳のすべての小児への接種（初回シリーズおよび適切な時期の追加接種）を引き続き推奨している．

☑今後もウイルスは変異し続け，それに応じてワクチンもupdateされるだろう．

☑新たなモダリティのワクチンも開発されており，子どもへの適用も検討されるだろう．

21．肺炎球菌ワクチン石和田　稔彦 65巻10号 , 2024年10月 , pp.1046-1050

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近年の変更点・トピックス＆今後の動向

☑2020年5月から，肺炎球菌による疾患に罹患するリスクが高いと考えられる者の肺炎球菌による感染症予防として，13価肺炎球菌結合型ワクチン（PCV13）の適応が拡大された．この結果，すべての年齢に対してPCV13の接種が可能となった．

☑2024年4月から，15価肺炎球菌結合型ワクチン（PCV15）が定期接種化され，5歳未満のすべての小児に対して，定期接種ワクチンとして接種可能となった．

☑2024年10月から，PCV13に代わり20価肺炎球菌結合型ワクチン（PCV20）が定期接種ワクチンとして，5歳未満のすべての小児に対して接種可能となった．

☑PCV15，PCV20ともに皮下接種に加え，筋肉内接種が可能となり，局所反応の軽減が期待される．

22．RSウイルスワクチン橋本　浩一 65巻10号 , 2024年10月 , pp.1051-1056

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近年の変更点・トピックス＆今後の動向

☑乳児のRSV感染症重症化予防を目的に母子免疫ワクチンとしてRSVpreF 2価ワクチン（アブリスボ^®）が欧州連合，米国において2023年8月に，日本においては2024年年5月31日に妊娠28～36週の妊婦を対象に接種開始された．

☑日本小児科学会から「RSウイルス母子免疫ワクチンに関する考え方」，日本産婦人科学会から「妊婦に接種するRSウイルスワクチンについて」が公表されている．

☑長期間作動型抗RSVモノクローナル抗体のニルセビマブ（ベイフォータス^®）がすべての乳児へ欧州で2022年秋に，米国では2023年8月に接種開始された．日本では2024年3月に製造販売承認され，同年5月22日販売された．

☑日本小児科学会から「日本におけるニルセビマブの使用に関するコンセンサスガイドライン」，「日本におけるニルセビマブの使用に関するコンセンサスガイドラインQ & A」が公表されている．

Ⅴ　そのほかのワクチン

23．トラベラーズワクチン田中　孝明 65巻10号 , 2024年10月 , pp.1060-1064

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近年の変更点・トピックス＆今後の動向

☑2019年に世界標準の狂犬病ワクチンが国内に導入され，2024年に腸チフスワクチンおよびダニ媒介性脳炎ワクチンが新規で製造販売承認された．

☑上記の新規ワクチンの導入により，トラベラーズワクチン分野におけるワクチンギャップが解消されつつある．

☑近年，黄熱ワクチンの予防接種実施機関が増加している．

☑わが国の定期接種に該当するワクチン予防可能疾患が諸外国で流行しているため，定期接種のワクチンもトラベラーズワクチンとして重要である．

☑デング熱やマラリアに対するワクチンが流行地域で導入され，将来的にわが国の海外渡航者にも普及することを期待したい．

24．開発中のワクチン伊藤　澄信 65巻10号 , 2024年10月 , pp.1065-1070

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近年の変更点・トピックス＆今後の動向

☑新型コロナ感染症（COVID-19）の蔓延によってパンデミック可能性のある重点感染症に対する開発はSCARDAが担い，わが国で疾病負荷が高く公衆衛生上必要性の高いワクチンについては予防接種基本計画で議論する体制になる予定．

☑ワクチンギャップの多くは改善された．今後の定期接種化は先進諸国での導入実績，わが国の疾病負荷と医療経済分析，副反応などが判断材料になると考えられるが，承認前からファクトシート作成の準備が始まるなど期間短縮が図られている．

☑ワクチン製造モダリティはmRNA技術によって開発期間など急速な変化を遂げている．mRNA技術によるインフルエンザやRSVワクチンも開発が始まっている．

25．新興感染症発生時のワクチン -――先進的研究開発戦略センター（SCARDA）とは濵口　道成 65巻10号 , 2024年10月 , pp.1071-1076

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近年の変更点・トピックス＆今後の動向

☑国家戦略の1つであるワクチンの研究開発の管理・運営を行うために，2022（令和4）年3月，先進的研究開発戦略センター（SCARDA）がAMED内に設置された．

☑SCARDAはワクチン開発に関する広範な情報収集・分析に基づく戦略的な研究費のファンディングを行うことが特徴であり，2つの事業を通じて，平時・有事を通じた全体調整を行っている．

☑「ワクチン・新規モダリティ研究開発事業」では，現在30以上の研究課題を支援している．また，昨年には異分野参入型の公募枠も新設した．「ワクチン開発のための世界トップレベル研究開発拠点の形成事業」では，フラッグシップ拠点，シナジー拠点，サポート機関を採択・支援している．

☑今後は，情報学，化学，工学などの境界を越え協同したワクチン開発を促進させ，ワクチン研究開発基盤の体制整備や研究振興に貢献していく．

コラム

① 予防接種ストレス反応（ISRR）三﨑　貴子 65巻10号 , 2024年10月 , pp.941-943

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予防接種ストレス関連反応（immunization stress-related response：ISRR）は，ワクチン接種に起因するストレスが原因で生じる一連の反応である．これらは，身体的，心理的及び社会的因子が複雑に絡み合って生じており，周囲や社会的環境の影響を受けやすい（図）．ワクチン接種前に症状が出現する場合もあり，接種によるストレスを原因とする反応のすべてをより明確に説明するために「ISRR」という概念が提唱されることになった．

② 子ども・保護者とのコミュニケーション -――子どもにワクチンを接種しないでいる保護者の思い田中　敏博 65巻10号 , 2024年10月 , pp.960-961

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「2歳の子ですが，破傷風のワクチンを打ってもらえますか？」―これまで小児科でさまざまなワクチンを扱ってきましたが，その電話は普通の接種予約とは少し違っていました．しかも市内ではなくやや離れた地域にお住まいで，込み入った背景もありそうでした．そのため，まずは外来にお越しいただいて，相談して進めていきましょうということになりました．

③ 予防接種事務デジタル化について松岡　克朗 65巻10号 , 2024年10月 , pp.976-978

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予防接種事務デジタル化（デジタル化）については，令和4年に予防接種法の改正が行われ，令和8年度以降のデジタル化の実現に向けて準備を進めているところである．

④ 日本小児科学会予防接種・感染対策委員会の活動齋藤　昭彦 65巻10号 , 2024年10月 , pp.1020-1021

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日本小児科学会には計34の委員会があるが，その中でも，子どもの予防接種や感染症の課題を議論するのが予防接種・感染対策委員会である．近年の新たなワクチンの導入や，予防接種制度の改革，そして，2020年からの新型コロナウイルス感染症のパンデミックなどにより，その課題はとても多く，活発な活動を行っている委員会の1つである．

⑤ 予防接種推進専門協議会とは岩田　敏 65巻10号 , 2024年10月 , pp.1056-1059

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「予防接種推進専門協議会」は，当時独立行政法人国立病院機構三重病院院長でいらっしゃった故神谷齊先生を委員長として，予防接種にかかわりのある関連学会の専門協議会として，2010年10月に発足した^1）．発足当初の参加学会数は日本小児科学会，日本小児科医会，日本産科婦人科学会，日本感染症学会，日本ワクチン学会などの14団体であったが，現在は27団体が参加している（表1）^1）．

［連載］　最近の外国業績より

神経日本医科大学小児科学教室 65巻10号 , 2024年10月 , pp.1078-1081

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背　景　睡眠時棘徐波活性を示すてんかん性脳症（EE-SWAS）は，小児てんかん症候群で，発生頻度1％未満の非常にまれな疾患である．この症候群は2歳から12歳にてんかん発作を起こし，認知低下や行動障害を伴う．睡眠中の85％以上にわたる棘徐波活性（棘徐波指数：SWI 85％以上）を特徴とし，従来はelectrical status epilepticus during slow wave sleep（ESES）と呼ばれていた．認知機能の予後は通常悪く，永続的な認知障害が残ることが多い．原因は不明な場合が多いが，一部の遺伝的および多小脳回などの構造的原因が関連しているともいわれている．EE-SWASの治療目標は認知退行を防ぐことであり，従来の抗てんかん薬やベンゾジアゼピン，免疫調整薬の使用が報告されているが効果は限定的である．本研究は，コルチコステロイドとクロバザムがEE-SWASの初期治療としての有用性，耐容性を評価することを目的とした．

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目次 65巻10号 , 2024年10月 , pp.916-917

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お知らせ 65巻10号 , 2024年10月 , pp.950-950

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許諾済複写物シールについてのお知らせ 65巻10号 , 2024年10月 , pp.998-998

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バックナンバー 65巻10号 , 2024年10月 , pp.1082-1082

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次号予告 65巻10号 , 2024年10月 , pp.1083-1083

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投稿規定 65巻10号 , 2024年10月 , pp.1084-1085

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編集後記 65巻10号 , 2024年10月 , pp.1086-1086

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基本情報

小児科
65巻10号
(2024年10月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0037-4121 金原出版

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第1位５．溶連菌感染後急性糸球体腎炎西野智彦,藤永周一郎小児科 59巻 11号 pp. 1535-1540 (2018年10月1日) 金原出版
第2位９６．小陰茎と男性ホルモン製剤室谷浩二小児科 57巻 13号 pp. 1708-1709 (2016年12月1日) 金原出版
第3位新生児ミトコンドリア病の特徴海老原知博,村山圭小児科 66巻 4号 pp. 387-396 (2025年4月1日) 金原出版
第4位６．軽度の知的障害（神経発達症を除く）吉野豪,稲垣真澄小児科 64巻 10号 pp. 999-1005 (2023年10月1日) 金原出版
第5位８．遺伝性球状赤血球症の診断と治療石井睦夫小児科 61巻 11号 pp. 1521-1528 (2020年10月1日) 金原出版
第6位急性巣状細菌性腎炎（AFBN）の早期画像診断について中村舞,田中征治小児科 61巻 2号 pp. 187-191 (2020年2月1日) 金原出版
第7位１．Excluded and Invisible 島袋梢小児科 66巻 6号 pp. 547-553 (2025年6月1日) 金原出版
第8位 6．心臓カテーテル検査・血管造影鍵山慶之,須田憲治小児科 61巻 8号 pp. 1085-1094 (2020年7月1日) 金原出版
第9位５．貧血の鑑別診断細野茂春小児科 61巻 11号 pp. 1497-1502 (2020年10月1日) 金原出版
第10位周期性嘔吐症候群の疾患概念や診断・治療とその問題点疋田敏之小児科 61巻 12号 pp. 1651-1657 (2020年11月1日) 金原出版

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小児科 65巻10号 (2024年10月発行)

特集 一括アップデート！ 子どものワクチン・予防接種

Ⅰ 総論

Ⅱ ワクチン・予防接種にかかわる法令等

Ⅲ ワクチンの種類・接種方法

Ⅳ 定期接種・任意接種

Ⅴ そのほかのワクチン

コラム

［連載］ 最近の外国業績より

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Ⅳ　定期接種・任意接種

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