臨床皮膚科 44巻3号 (1990年3月)

カラーアトラス

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患 者 36歳,男

初 診 昭和62年7月10日

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 Livedoid vasculitis(Winkelmann)の3例を報告するとともに,本症に対する抗凝固療法について考察した.すなわちアスピリンは少量では血小板のcyclooxy-genaseのみを抑制し強力な血小板凝集促進因子であるトロンボキサンA2産生を抑えることにより抗凝固作用を発揮するが,多量では血管内皮細胞のcyclooxygenaseをも同時に抑制し血小板凝集抑制因子であるプロスタサイクリンの産生を抑えてしまうため逆に凝固促進作用を発揮するという二面性を持つ.そのため従来から300mg/日以下の少量投与が推奨されてきたが,我々は1000mg/日投与の方がより効果的であったという印象をうけた.その根拠としてアスピリンは上記の作用以外に凝固線溶系の様々な経路においてdose dependentに抗凝固作用を有することなどを挙げることができるのではないかと考えている.

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 尋常性乾癬に全身性エリテマトーデス(SLE)およびmixed connective tis-sue disease(MCTD)の合併をみた2例を経験した.臨床所見,組織所見共に各々の疾患に特徴的であった.免疫学的検査にて多くの異常を示し,共に抗核抗体陽性(speckled pattern),抗RNP抗体単独高値を示し,SLE合併例はlupus band test陽性であった.尋常性乾癬と自己免疫疾患の合併報告は比較的少ないが,乾癬の発症病理における免疫学的機序の関与を考える上で興味深い症例と考え報告した.

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 昭和62年に経験したドクガ科Euproctis属の昆虫による皮膚炎すなわち毒蛾皮膚炎153例中73例はドクガの幼虫が原因であった.そのうち,4月から7月にみられた68例は分散して活動する成熟幼虫による例であり,8月から11月に受診した5例は越冬前の群居性が強い若齢幼虫による症例であった.長崎市とその近郊でドクガの成熟幼虫による皮膚炎が多発した原因として,暖冬などの気候的因子の影響で越冬を好条件の下に経過したので春から夏にかけてドクガの幼虫が大発生したこと,山林部開発による宅地の造成で幼虫と人の住む場所が近接したので両者が接触する機会が多くなったこと,および,幼虫の食草となる柿,桜,梅などが市街地の保育所,幼稚園,公園,民家の庭など広範囲に存在していたことなどが考えられた.

研究ノート・3

58年卒 宮地 良樹
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 慶應義塾大学の消化器内科にS先生という,図体もでかいが,仕事のスケールも大きい先生がいる.彼は,微小循環を専門とする研究者で,好中球由来活性酸素を顕微鏡レベルで,はじめて動的に視覚化し,この領域の研究者をうならせた.私もはじめてこの映像をみたとき,しばらく言葉が出なかった.

 実は彼とは,数年前に,見知らぬうちに研究面で火花を散らしたことがある.潰瘍性大腸炎や壊疽性膿皮症の治療に用いられるサラゾピリンの抗酸化作用の研究に,ほぼ同時期に着手していたのである.結局,1年ほどの間に世界各地から7つの同様の論文がpublishされることになったこの研究を,私は彼より数カ月早く論文にすることが出来た.彼があとから述懐したところによると「自分たちと同様の研究を皮膚科の先生が,消化器の英文誌に出したのを見て,まっ青になった」のだという.私はDDS(ダプソン)の研究から出発してサラゾピリンに到達したのであり,彼は,炎症性腸疾患から出発して同様の発想に行きついたわけで,その偶然の符合は,興味深い.

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 60歳,女性のCowden病の1例を報告した.顔面の多発性丘疹,四肢末端の疣贅状丘疹,掌蹠の点状角化性丘疹と,歯肉の肥厚,舌背中央の深い溝と広汎な口腔粘膜乳頭腫症を認めた.その他,甲状腺腫,難聴があり,胃癌,十二指腸憩室,胃腸ポリポージス,肝内多発血管腫,腎嚢胞,胆嚢炎を認め,既往に乳癌があった.顔面の丘疹の組織はtrichilemmoma様,舌尖の軟腫瘤は線維腫であり,手背の丘疹は限局性非特異的な表皮肥厚と過角化を示した.胃癌手術後,顔面の皮疹は一時消退傾向を示したが,皮疹の再燃に伴い転移が確認され,本症にみられる皮疹の一部は,内臓悪性腫瘍に伴うparaneoplastic dermatosisとしてとらえるべき変化であると考えた.

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 アトピー性皮膚炎(AD)患者のⅠ型アレルギーの抗原の年齢的消長を明らかとし,乳児期における食物アレルギーの存在とそれ以後における気道アレルギー発症との関係を知る目的で自験AD患者につきIgE-RAST(RAST)法による検索を行った.RASTスコア2以上の陽性率は,1歳未満のADでは,卵白が53.2%と最も高く,ダニは6.5%に過ぎなかった.4歳以上のADでは,いずれの年齢層でもダニは77.2-79.8%と高かったが,卵白は18.2-3.7%と加齢と共に低下する傾向が示された.4歳以上のADでは,鼻炎,喘息などの気道アレルギーの合併率はダニ抗体陽性群で有意に高く,卵白抗体陽性群では有意に低かった.発症年齢による気道アレルギー合併率の差は認められなかった.すなわち,乳児期以後での新アレルゲン獲得や気道アレルギー発症に,乳児期の卵白アレルギーなどの食物アレルギーの存在が影響を与えるという結果は得られなかった.

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 環状の紅斑を呈した新生児エリテマトーデスの2例を報告した.症例1は3カ月女児.抗核抗体,抗SSA,SSB抗体陰性.軽度の肝障害あり.組織は典型的.母親は抗核抗体640倍,抗SSA抗体512倍以上,抗SSB抗体4倍,RA2+.症例2は1カ月男児.抗SSA抗体16倍,抗SSB抗体8倍.生後70日頃より消化管出血を合併したが,皮疹の消退より少し遅れて生後7カ月頃には軽快した.母親は抗核抗体640倍,抗SSA抗体64倍,抗SSB抗体32倍,RA2+.症例1,2ともに母親は初診時,自覚症状はなかったが精査によりシェーグレン症候群と診断した.消化管出血を合併した新生児エリテマトーデスは稀であると思われた.

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 38歳男性.躯幹,上肢に散在する丘疹性紅斑と,下肢の紫斑を主訴として来院した.内科で血小板減少と抗核抗体陽性を指摘されており,問診で口腔内の乾燥感,味覚の異常,眼の疲労感などの自覚症状が明らかになり,精査の結果,Sjögren症候群(SjS)と診断した.SjSに伴う皮疹のなかでも特に診断に際し,重要と思われる紅斑と紫斑につき考察した.

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 70歳,女.比較的予後良好とされているCRST症候群に進行性の壊死を生じ,下腿切断に至った1例を報告した.下肢動脈造影では,足関節部における前脛骨動脈および腓骨動脈の完全閉塞を認め,抗セントロメア抗体は,10240倍と強陽性を示した。Progressive systemic sclerosisにおける趾端壊死の発生要因としては,内膜肥厚,血管炎,血栓,Raynaud現象などが考えられている。

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 79歳,男性.慢性湿疹のため抗アレルギー剤であるオキサトミド(セルテクト®)を60mg/日内服していたところ,約1カ月後に熱発し,痒みが激化した.その後,四肢にほぼ対称性に,多形紅斑様ないしは扁平苔癬様皮疹が出現し,炎症性変化の強い部分には水疱を伴っていた.同時に肝機能障害も併発した.病理組織学的には,リンパ球の強い表皮向性浸潤および角化細胞の空胞変性や好酸性壊死を伴う表皮基底細胞層の液状変性が著明にみられ,水疱を形成していた.貼布試験,LSTはともに陰性,内服テストで皮疹が誘発され肝機能障害もみられた.以上,自験例は肝機能障害を伴った水疱性扁平苔癬型オキサトミド疹と診断した.オキサトミドによる扁平苔癬型薬疹の報告は今のところ他にない.

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 52歳,男.近医にて両上肢の皮下結節を皮膚サルコイド(皮下型)と診断され経過観察されていたところ,初発より3年後頃より皮下結節の増加と共に腰背部に帯紫紅色,表面萎縮性の浸潤性小局面が多発してきたため当科入院となった.病理組織学的には皮下結節,小局面ともに,一部にラングハンス巨細胞を混える類上皮細胞肉芽腫を認め,リゾチーム染色では類上皮細胞に一致して陽性所見を示した.以上の所見より皮膚サルコイド(皮下型と局面型の混在)と診断した.検査所見では血中アンジオテンシン変換酵素とリゾチーム値の軽度上昇,両眼ブドウ膜炎の併発,および胸部CTでの肺門リンパ節腫脹が認められた.皮膚サルコイドの2型以上の混在例は稀であり,特に本症のごとく皮下型と局面型の混在例は我々が調べ得た限りでは本邦4例目である.

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 フェニトイン内服療法を行った劣性栄養障害型先天性表皮水疱症の1例について報告した.症例は生後14日の男児で,生下時に下肢に限局性の潰瘍,四肢,体幹に水疱形成を認めた.臨床症状,組織学的および電顕的所見より,劣性栄養障害型先天性表皮水疱症と診断した.フェニトインの経口投与を開始し徐々に増量したところ,水疱の新生は漸減し,臨床症状の改善が認められたが,その投与の中止により水疱は新生し,再投与により軽快した.以上よりフェニトインは臨床的に有効と考えられた.ただし,投与期間中フェニトインの血中濃度の有意な上昇は認められなかった.

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 34歳の母親から,吸引分娩により仮死状態で生まれた女児にみられた新生児皮下脂肪壊死症を報告した.生後11日目から,頸部,顎下部,耳下部に碗豆大から直径約3cm大の弾性硬の皮下硬結が多発し,組織学的には,リンパ球,組織球,巨細胞の浸潤がみられ,変性した脂肪細胞内に放射状に配列する針状の空隙が認められた.我々は病巣部の脂肪組織の脂肪酸分析をガスクロマトグラフィーを用いて行い,飽和脂肪酸の上昇,なかでもミリスチン酸の増加を認めた.また患児は分娩時に産道内で頸部を圧迫された既往があり本症例の発症原因として,飽和脂肪酸の上昇とこの分娩時における圧迫が重要な因子となっていると考えられた.

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 61歳,66歳,75歳女性の乳房外に生じた外傷性脂肪壊死を報告した.それぞれ右大腿,左大腿,左上腕に大小の皮下結節を数個集簇して触知し,炎症所見はなかった.いずれも数カ月から3年前に強い打撲症を経験しており,組織では皮下脂肪の変性,大小の油性嚢胞,軽度の細胞浸潤・脂肪肉芽腫像がみられ,嚢胞壁に担鉄細胞の集合をみた.以上の経験から,臨床像と問診で本症の臨床診断も可能であると思われた.あわせて,皮膚科領域では論述の少ない本症について若干の文献的考察を加えた.

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 62歳,女性.リンパ節転移で発見され,原発巣が消褪したと考えられる悪性黒色腫の1例を報告した.左鼠径部腫瘤摘出後悪性黒色腫のリンパ節転移と診断されたが,原発巣と考えられる左足第一趾基部には黒褐色斑のみが存在した.同部の組織学的所見では,真皮上層に多数のメラノファージおよび小円形細胞浸潤が見られるのみで,メラノーマ細胞は認められなかった.全身検索の結果,他に原発巣と考えられる病変は見出せず,左足の病変を消褪した原発巣と考えた.左浅鼠径リンパ節郭清ならびにこれと左足第一趾基部を連絡するリンパ管を,皮膚を含めて切除したが,9カ月後その上流のリンパ節に転移が発見され,電子線照射,温熱療法,拡大リンパ節郭清術を施行した.1年4カ月後,放射線腸炎と瘻孔形式のため死亡した.

治療

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 最近我々が経験した陥入爪(ingrowing toenail)54症例ついて,統計的観察を行うと共に我々の手術法を紹介した.手術に際して,再発や爪甲狭小化等の整容上の問題を防ぐためには,爪床切除を爪床小稜と爪床小溝に対して平行に進めることと爪床,特に爪母部分を完全に切除することが重要である.

基本情報

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臨床皮膚科
44巻3号 (1990年3月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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