麻酔 73巻5号 (2024年5月発行)

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巻頭言

定量的な麻酔のすすめ重見　研司 73巻5号 , 2024年5月 , pp.297-297

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特集　麻酔科学会とその関連学会の現況と課題

緒言とまとめ花岡　一雄 73巻5号 , 2024年5月 , pp.298-299

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　日本麻酔学会（当時）が誕生したのは1954年5月2日のことであった。そして，第1回日本麻酔学会学術会議が同年10月22日東京都豊島公会堂において開催された。当時の会員数は700名，評議員数は39名，そして，本「麻酔」誌が学会準機関紙となった。

公益社団法人日本麻酔科学会―過去・現在を見直すことで未来を考える― 山蔭　道明 73巻5号 , 2024年5月 , pp.300-308

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はじめに

　著者が大学を卒業し，麻酔科学を目指したのは1988年。その当時の麻酔環境は，吸入麻酔薬はハロタン・エンフルラン・亜酸化窒素（笑気），麻酔器は100％亜酸化窒素になる危険なタイプで，気化器には温度が示されていた。静脈麻酔薬はチオペンタールとジアゼパム，麻薬はモルヒネとフェンタニル，筋弛緩薬はスキサメトニウムとパンクロニウム，拮抗薬はワゴスチグミンであった。モニターは心電図と聴診法の血圧計のみ。人工呼吸器は付いていたが，先輩医師からは麻酔中はバッグで常に換気し，口唇の色を観察するように指導された。手術終了に向けて，患者の自発呼吸をバッグに感じると，ホッとしたのを今でも覚えている。患者の把握のために術前診察は行っていたが，同意書などなかったように思う。

　さて，2021年から公益社団法人日本麻酔科学会の理事長を拝命し，現在二期目を務めている。14,000名あまりの会員から選ばれた330余名の代議員がおり，その代議員から選出された24名の理事で理事会活動を行っている。国民が受ける麻酔科医療を少しでも安全で快適なものにしようと，70年前に前身である日本麻酔学会が設立してから，今までに多くの学会員が尽力してきた。本論文では，世界のそしてわが国での麻酔に関する軌跡をたどることで，わが国における麻酔科医療がどのように発展してきたかを改めて記し，そして国民のために今後われわれが進むべき道を，私的事項・私見も含めてこれを機会に考えてみたい。

一般社団法人日本産科麻酔学会照井　克生 73巻5号 , 2024年5月 , pp.309-315

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1　学会誕生の必要性と経緯

　日本産科麻酔学会の前身である “無痛分娩研究会” は，妊娠，分娩，産褥の生理，病理と周産期麻酔に関連する臨床研究および母子の健康保持と向上を目的とし，1961年に第1回が開催された。研究会誕生の必要性は，初代会長を務めた安井修平先生（東京逓信病院産婦人科）によれば，“東西交流も盛んになり，全国に麻酔科が設立されつつある状況で，日本における産痛緩和が時代に適したものとなったのではないか” との認識があった^1）。研究会書記を務め，後に日本医科大学麻酔科初代教授となった西邑信男先生によれば，日本での産科医による全身投与薬物による産痛緩和の歴史を踏まえて，“無痛分娩については，実は一般的麻酔法は現在ほぼきまりつつあることであり，これら欧米の方式をいかに我が国にとりあげ，しかも普及してゆくかというのが，この研究会の第一歩であろう” と記している^2）。研究会設立当初から，研究会を通じて麻酔科医は産科学を学び，産科医は麻酔科学を学び，それぞれの施設に応じて安全な産痛緩和を提供すべく，本研究会に集まったことがわかる。

一般社団法人日本ペインクリニック学会―現況と課題― 飯田　宏樹 , 井関　雅子 73巻5号 , 2024年5月 , pp.316-321

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はじめに

　日本ペインクリニック学会は，日本ペインクリニック研究会として1969年に発足し，1985年の第19回大会から日本ペインクリニック学会総会として開催されるようになった。第50回大会を記念大会として2015年に開催し，本年の第57回大会まで50年を超えて開催されている。会員数は2023年5月現在4,738名であり，麻酔科医が90％以上を占めている。専門医数は1,622名である。2020年6月1日から学会下部組織としての支部がスタートし，全国の支部組織で支部学術集会を開催するようにした。2020年から評議員制度の改革として，支部を基本とする選挙制度を導入し，現在までに2年ごとに2回の評議員選挙を実施した。学会の立場・位置づけを明確にするために積極的にガイドライン，プラクティカルガイド，ステートメントを発行し，科学的な標準治療を確立させていくことを目指している。痛みに関する治療・研究を行う学会が連合し，医療者・研究者の交流を図り，国際的な研究機関などとの連携協力を行うことを目的として2020年10月1日に発足した痛み関連学会連合に参加した。

日本臨床麻酔学会森松　博史 73巻5号 , 2024年5月 , pp.322-324

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1　誕　生

　日本臨床麻酔学会は1980年に岡山大学麻酔科の初代教授小坂二度見先生を中心とした7人衆〔小坂二度見先生（岡山大学），青池修先生（名古屋市立大学），武下浩先生（山口大学），藤森貢先生（大阪市立大学），村上誠一先生（金沢大学），渡部美種先生（秋田大学），後藤裕先生（長崎大学）〕を発起人として設立された学会である。麻酔科医のために臨床麻酔を中心とした学会を目指して設立された。当時の小坂先生は本学会設立の趣旨を “近年，麻酔の分野が非常に広くなってきて，日本麻酔学会の演題のうちには内容が臨床とかけ離れて特殊分野のものが多くなってきている。それで，臨床の麻酔に携わる，われわれ麻酔科医に，ただちに役立つような演題のみを集めた学会，臨床の麻酔に直結する勉強会の必要性を数年前より数人の発起人と真剣に検討してきた。設立の真の目的は臨床に直結する学問，研究の進歩と普及を図ることで，麻酔科医の勉強する会以外の何物でもない。対外的，社会的に活動を行うような委員会ももたない。本会に賛同する人は誰でも参加でき，また不参加も自由な学会である。日本臨床麻酔学会と日本麻酔学会の関係は基本的にはまったく関連はない。もちろん，日本麻酔学会のサブ・ソサイエティでもなく，あくまで麻酔科医の勉強の場である。” と述べている^1）。設立当時の会則には日本臨床麻酔学会の事業内容として ① 学術集会，講演会など，② 会誌の発行，③ その他の必要な事業，とだけ記載されていることをみても，本学会が臨床麻酔に特化した学会で，その他の対外的，社会的な活動を行わないという覚悟が伺える。10年後の1990年にはこの会則は前述の2つに加えて，③ 臨床麻酔学に関する調査および広報活動，④ 内外の関連学術諸団体との協力活動という項目が付け加えられた。

日本老年麻酔学会―現況と展望― 山内　正憲 , 山浦　健 , 川股　知之 , 鈴木　孝浩 , 坂口　嘉郎 , 濱口　眞輔 73巻5号 , 2024年5月 , pp.325-329

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はじめに

　日本の高齢者（65歳以上）の割合は，世界でも類を見ない勢いで50年間上昇し，2021年の政府統計では28.9％と世界トップで，今後約20年間はさらに上昇すると予想されている（図）^1）。手術患者における高齢者の割合も，令和4年政府医療統計では57％と半数以上を占め，75歳以上の後期高齢者だけでも35％に達している^2）。

　超高齢化社会における老年麻酔と高齢麻酔科医の活躍は日本の重要なテーマであるため，本学会の運営と今後の展望を記載する。

日本静脈麻酔学会―現況と課題― 木山　秀哉 73巻5号 , 2024年5月 , pp.330-334

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はじめに

　狭義の静脈麻酔薬に限らず鎮痛薬，筋弛緩薬，血管作動薬など，静脈内に投与される薬物とその投与法の臨床および基礎研究が日本静脈麻酔学会の主題である。2023年秋には第30回の学術集会を迎え，人間に喩えれば漸く一人前になってきたところである。しかし残念ながら，本学会の活動に対する関心は他領域の学会と比べてけっして高いとは言えないのが実情である。その理由として著者は下記の2つを考える。

　1）Too mathematic?

　静脈麻酔の薬物動態と薬力学を解説する際，数学的な説明になるのは避けられない。概略は高校数学Ⅲの知識で理解できるものであるが，敷居が高いと感じて敬遠する初学者がいるのは事実であろう。静脈麻酔学会の学術集会では当然のように数式が現れて，この分野に近寄り難い印象を与えてきたとすれば，何度か講演を行った著者も猛省すべきところである。

　2）静脈麻酔なんか，誰でもできる⁉

　“患者の静脈内に薬物を投与する” ことは気道管理と並ぶ，安全な麻酔の根幹であるにもかかわらず，静脈確保は日常的に行われる手技で高度な技量を要しないため，末梢神経ブロックや心エコーのように若い麻酔科医を惹きつけることもない。末梢の静脈1本と薬があれば “静脈麻酔なんか学会にわざわざ出かけて学ぶほどのものでない！” と思われるのも止むを得ないのかもしれない。

　本論文は “日陰者” の存在である日本静脈麻酔学会の過去を振り返り，現在を論じた上で未来（単に学会の未来にとどまらず，広く麻酔全般にわたって）に向けた提言を述べたい。

一般社団法人日本心臓血管麻酔学会岡本　浩嗣 73巻5号 , 2024年5月 , pp.335-338

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1　学会設立の経緯

　日本心臓血管麻酔学会（以下，本学会）は初代藤田昌雄理事長のもと，より安全で質の高い心血管治療の周術期医療を実践することを目的として1996年に設立された一般社団法人である。2023年で28回を数える学術大会や各種セミナーの開催，学会雑誌の出版などさまざまな学会活動を行ってきており，会員数も2023年10月現在3,500名を超えている。

日本神経麻酔集中治療学会川口　昌彦 , 飯田　宏樹 73巻5号 , 2024年5月 , pp.339-342

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はじめに

　神経麻酔は，当初は脳外科手術の麻酔を意味していたが，近年は麻酔集中治療領域におけるすべての神経科学を意味している。日本神経麻酔集中治療学会の目的は，“麻酔・集中治療および疼痛領域における神経科学に関する基礎的および臨床的研究を通じ，会員相互の連携を深めるとともに，本領域における臨床・教育・研究の発展に寄与する” としている^1）。神経麻酔集中治療の発展は，患者アウトカムの改善に大きく関与する。神経麻酔集中治療の変遷，関連学会の現状と今後の課題について述べる。

一般社団法人日本区域麻酔学会―設立経緯ならびに現況と課題― 横山　正尚 73巻5号 , 2024年5月 , pp.343-347

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はじめに

　近年，周術期管理における区域麻酔の重要性が注目されるなか，国際的にはそれぞれの地域の区域麻酔関連学会が中心となり，区域麻酔に関する臨床・教育・研究が急速に発展してきた。区域麻酔の領域に含まれるものとして，手術麻酔はもちろん，術後鎮痛，ペインクリニック，緩和医療，無痛分娩，そして局所麻酔薬など多くの分野が挙げられる。残念ながら日本においてはこれらの領域を統合してリードする学会が当時はなく，早急にこの分野の臨床・教育・研究の発展を進める学会の設立が必要であった。このような背景のもと，日本区域麻酔学会は2013年に設立された。設立10周年を経過したが，検定試験ならびに認定医制度を確立し，学会公認の有資格インストラクターによるハンズオンワークショップを開催するなどの努力を重ね，会員数も約2,500名まで増加した。学会の設立の経緯とともに現状を概説し，今後の課題についてまとめる。

総説

キネシン：麻酔科領域における今後のターゲット分子モーター田口　真也 , 小幡　典彦 , 溝渕　知司 73巻5号 , 2024年5月 , pp.348-354

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要旨

　キネシンは微小管上を移動して主に細胞内輸送に働く分子モーターである。

　慢性疼痛に関与するNMDA受容体のNR2Bサブユニットはキネシン-2ファミリーのKIF17によってシナプスに輸送され，熱性痛覚過敏に関与するTRPV1受容体もキネシン-3ファミリーのKIF13Bによってシナプスへ輸送されることが知られている。したがってキネシンの移動を調節できれば，痛みに関与する受容体の発現を間接的に抑制できる可能性があるため，創薬や治療の新しい標的として近年注目が集まっている。

　また，最近プロポフォールによってキネシンの移動を抑制できることが報告され，麻酔薬による慢性疼痛治療の可能性が期待されている。

症例報告

抗うつ薬の内服中断により術後に悪性症候群を発症した乳房再建術の1症例南川　侑介 , 德永　友里 , 藤原　淳 , 中平　淳子 , 南　敏明 73巻5号 , 2024年5月 , pp.355-360

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要旨

　悪性症候群は，発熱，意識障害，錐体外路症状，横紋筋融解症などの症状を呈する一連の症候群として定義されている。今回，抗うつ薬の自己中断によって，全身麻酔後に悪性症候群が発症し，治療した症例を経験したので報告する。

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目次 73巻5号 , 2024年5月

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英文目次 73巻5号 , 2024年5月

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外国文献紹介 73巻5号 , 2024年5月 , pp.361-362

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投稿規定 73巻5号 , 2024年5月 , pp.363-368

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奥付 73巻5号 , 2024年5月 , pp.369-369

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定期購読申込みシート 73巻5号 , 2024年5月

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基本情報

麻酔
73巻5号
(2024年5月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0021-4892 克誠堂出版

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