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特集 精神分析はたのしい――人文知との邂逅・民主化の未来
正義を精神分析的に考える――臨床家コミュニティにおける不正義とその再生産
北村 隆人
1
1東洞院心理療法オフィス
pp.143-149
発行日 2026年8月20日
Published Date 2026/8/20
DOI https://doi.org/10.69291/cp26070143
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1 はじめに
近年,本邦においても,社会的文脈を踏まえて臨床を考えることの重要性に,あらためて注意が向けられるようになっている。それは社会的に抑圧された人たちが体験している困難を,その人たちの「病理」や「脆弱性」とみなしてきたことへの反省を私たちにもたらす点で,非常に重要な動向である。
そうした思考を行う際に鍵となる概念のひとつが,正義である。私たちが臨床的関与を行う際に,無意識的に身につけてきた旧来の価値観によってクライエントの尊厳を傷つけることは,臨床家という権力を有する私たちによって行われる不正義として捉えなくてはならない。
しかし,その意義と重要性に比して,正義という観点から臨床を振り返る努力はいまだ十分には行われていない。例えば出版状況を見ても,正義の観点から臨床行為を検討しなおした書籍や論文は,一部の例外を除いてほとんど存在しない状況にある。このことが示唆するのは,臨床における正義概念の重要性を,私たちがいまだ切実には理解できていないということだ。
この問題を乗り越えるために,本稿では,すべての臨床家にとって切実な問題であるはずの,私たちのコミュニティに存在する不正義のひとつである,抑圧的な指導文化の問題に焦点を当てることとする。その際,この構造的な不正義に伏在している無意識的力動を,精神分析的視点から説明し,私たちがコミュニティにおける不正義の維持にどのように加担しているのか,そしてそれをどのように乗り越えればよいかについて考えてみたい。

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