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は じ め に
超高齢社会において,運動器疾患および軽微な誘因に伴う外傷は日常診療におけるcommon diseaseである.外来診療にて筋骨格系症状を主訴とする患者の割合は高く,外来疾患の分布では,消化器系,循環器系と並び,運動器・外傷系は主要な領域の一つである1).今後,高齢者の増加,ロコモティブシンドローム対策,健康寿命延伸に伴い,運動器・外傷疾患の罹患率は上昇し,診療機会はさらに増加することが予測される.四肢・脊柱の身体診察に基づく迅速かつ的確な臨床推論は,整形外科医のみならずプライマリケアを担うすべての医師に求められる基盤的能力である.
臨床推論とは,患者の疾病を明らかにし解決しようとする際の思考過程や内容のことであり2),高度な画像診断技術が発達した現代においても,臨床推論の根拠となる身体所見は診断仮説を構築し検証するための中核的情報源である3).しかし医学教育では,head-to-toe(HTT)アプローチにより身体診察手技の習得は保証される一方,各所見の意味づけや鑑別診断への統合が十分に扱われていない可能性がある.これに対し,Nishigoriらは仮説駆動型身体診察(hypothesis-driven physical examination:HDPE)を提唱し,診断仮説に基づいて必要な診察を選択・実施・解釈する教育モデルを提示した4).さらにYudkowskyらは,HDPEに基づく学習・評価手法を開発し,身体診察を臨床推論の文脈で統合的に評価できる可能性を示している5).整形外科診療では,従来,症候と所見の組み合わせから鑑別を絞り込む能力が重要視され診療の質を左右する.しかし,一般プライマリケアの現場において,腰痛や膝痛などの非特異的症状に対し,画像検査が先行する場面が少なくない.画像所見は必ずしも症状と一致せず,偶発所見が診療を混乱させることもある.適切な身体診察と臨床推論に基づく検査の選択は,不要な画像検査の抑制および医療資源の適正利用の観点からも重要である.本稿では,整形外科臨床推論教育の質向上に向け,HDPEを整形外科臨床実習に導入するための教育モデルを提示する.

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